―8月、K-1にて―
8月に入った。
俺はK-1を一往復したあと、木陰で休んでいた。
そこへθ(シータ)がやって来て、俺に声をかけてきた。
「山ちゃん、熱中症だな。熱中症。」
「いやいや、熱中症には若い頃、上海のゴルフ場で一度なったことがあるけど、こんなもんじゃないよ。」
θはニヤリと笑って言った。
「山ちゃんじゃないよ。タイヤ、タイヤ。フロントタイヤだってば。」
促されるまま、俺はCB650Rのフロントタイヤをのぞき込んだ。

「あー、こりゃそろそろ交換かな……」と俺がつぶやくと、θはわざとらしく周りに聞こえるような声で言った。
「そのタイヤ、山ちゃんのライディングの下手さ、如実に出てますなぁ。」
すると、周囲にいた仲間たちが次々と俺のバイクの前輪のあたりに集まってきた。
θが腕を組んで言う。
「『コース取りが悪い』、あるいは『前輪荷重が過ぎる』、もしくは『コーナーでハンドルに力を入れすぎ』……いや、山ちゃんの走りは、三つ全部乗せかもしれんな。」
「そんなことあるか?」と俺が言うと、
θは笑いながら、「みんなのバイクの前輪、見てみろよ」と言った。
言われるがまま、俺は他の5台のバイクを順に見て回った。
……本当に、どのタイヤもサイドが綺麗なもんだった。溶けてもいないし、荒れてもいない。
「だろ。」
θは満足そうな顔をしていた。
――8月の週末、俺は、ライディングの悪癖をまざまざと突きつけられたのだった。
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