ダイバーシティ&インクルージョン
「以上が、人手不足に関する講演内容の骨子です」
そう言って、天野次長がスライドの表示を止めた。
「要するに——」と大杉さんが補足する。
「人手不足を解決するには、“多様な人が活躍できる職場”が必要です。
そのために、ジェンダーギャップをなくし、ダイバーシティを尊重し、
“公平”かつ“公正”な職場環境をつくることが、企業としても社会としても重要だということですね」
皆が深くうなずく中、俺は一つ、気になる点を投げかけた。
「質問してもいいかな?」
「どうぞ」
天野次長がすぐに応じる。
「今回のセミナーの全体テーマは『女性の活躍とダイバーシティ&インクルージョン』だったよね。
この“インクルージョン”って言葉……ダイバーシティとのつながりが、感覚的にちょっと分かりづらい気がするんだ」
すると、大杉主任が「お任せください」と言わんばかりに手を挙げ、パソコンを操作して映像を表示した。

「まず、“Diversity”とは、“いろいろな人が『いる』状態”のことを指します。
それに対して“Inclusion”は、“その人たちが『活躍できる』状態”を意味します」
画面には、「Diversity」と「Inclusion」を対比させた簡潔な図解が映し出された。
「言葉の意味としては、“Inclusion”は『包摂』や『受け入れ』と訳されますが、
ここでのポイントは、“ただ受け入れる”だけでは不十分だということです。
たとえば——誰もが発言しやすい会議、障がいを持つ社員が使いやすいオフィス設備、
子育て中の社員が働きやすい制度づくり。
そうした『仕組み』が整って初めて、真のInclusionが実現するんです」
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