「では、処方箋は?」
天野さんは大杉さんに指示してスライドをもう一枚進めた。
「そして、地方は元々出生率が比較的高かったにも関わらず、若者の流出で子どもが生まれない。“生まれるはずだった命”が減っている。つまり、東京一極集中によって、出会い、結婚、出産という“人生の三本柱”すべてに負の連鎖が起きているんです。」

会議室に沈黙が落ちた。だれもが、その言葉の重みに圧倒されていた。
「では、処方箋は?」と千﨑部長が静かに問いかける。
「“働く場所”と“暮らす場所”を再設計することです。」天野さんは力強く言った。
「リモートワークやテレワークを活用して、地方にいても都市部と同じレベルの仕事ができる環境を整備する。さらに、地方の企業に多様な人材、特に女性が働きやすい職場環境を作ること。そこにダイバーシティ&インクルージョンの思想が欠かせません。」
「地方で女性が“働ける”“活躍できる”“暮らせる”——その三拍子が揃えば、地方はもう一度、輝きを取り戻すはずです。」
千﨑部長がゆっくりとうなずいた。
「……いいですね。ロジックが通っているし、問題提起と解決策が明確だ。」
そして、部長は俺の方を見た。
「どうだ? 副部長。沖縄旅行、楽しみになってきただろ。」
「部長、遊びじゃないですよ。遊びじゃ…。」
一同が笑った。
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