地方の課題解決策は、地方から。
笑いが収まると、
「なるほど、地方の課題解決を、地方そのものから提案する形になるわけか」
部長が腕を組み、唸るように言った。
天野次長は、ひと呼吸おいて続けた。
「はい。『地方には人がいない、働き口がない』――ではなく、“働く場所は創れる”という前提に立ちたいんです。沖縄の名護市のような取り組みは、まさにその先行事例。都市部で疲弊した人材が地方で再生し、地元と融合する。これが私の考える“持続可能な地方創生”です」
大杉さんがモニターに次のスライドを映し出す。

【データ】
・名護市マルチワーケーションセンター 利用者:年間1,200名超
・そのうち半数が都市部の企業に所属
・家族同伴率:38%
・その中で「沖縄への移住を検討中」と回答した人:22%
「この22%という数字が意味するのは、“観光”や“出張”ではなく、“生活の場所”として地方を選ぶ可能性が芽生えている、ということです」
天野次長はそう言いきった。

「それは面白い。で、それをどうOISTの聴講者に届けます?」
成瀬代理が問う。
「はい。今回の聴講者の中には、博士課程の学生やポスドクの研究者も含まれていると聞いています。つまり、“これからどこで、どう働くか”を考えている人たちです。彼らの中には企業に進む人もいれば、起業する人、研究を続ける人もいるでしょう」
「なるほど、つまり『地方でキャリアを積む』という選択肢を提示する、というわけか」
と、俺は皆が分かりきっている結論を、さも得意げに口にしてしまった。
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