我が国の根本的な課題。それは…。
8人の外国人女性リーダーたちの顔写真が並んだスライドの横に立つ天野さんの表情が、少し引き締まった。
「とはいえ、日本は——」
自分のPCを前に着座しながら、彼女は続けた。

「こうした提言の“根本”にある課題を、まだきちんと見つめられていません」
「根本的な課題……それは、“人口減少”の問題だよね」
と俺が言うと、天野さんは「その通りです」とうなずいた。
そのやりとりを受けて、大杉主任がパソコンを操作する。
「ちょっと、ダサい英語の言い回しかもしれませんけど……」と口添えしながら、次のスライドを表示した。
"Regions Women Flee Will Disappear:
How Tokyo-Centric Policies Are Destroying Japan"
女性が逃げ出す地方は消滅する
~東京一極集中が日本を滅ぼす~
一瞬、会議室の空気が止まった。
俺と成瀬代理は言葉を失ったまま、画面を見つめていた。
「……かなり攻めたテーマですね」
ようやく、成瀬代理が静かに口を開いた。
そのとき、会議室のドアが音もなく開いた。
「なかなか、いいじゃないですか」
入ってきたのは、千﨑部長だった。
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