The End
11月3日、祭日の月曜日、お昼過ぎ、天気は秋晴れだ。今日はシータとk-1を軽めに流していた。
そして暫くして、俺は近くから聞こえてくる救急車のサイレンの音で目が覚めた。
ここはどこだ?
どうやら、病院のベッドの上のようである。
「お、目が覚めたか?」
そばにはシータが居る。
ここはどこだ。
「病院だよ」
記憶をだどると、俺はシータとk-1をCB650Rで走っていたはずだが...。
「山ちゃん、猪と相撲とって、上手投げされて負けたんだよ。」
「何の話だ?」
「200キロ級の野生の巨大イノシシが、山ちゃんのバイクに体当りしてきて、バイクごと吹っ飛ばされたってこと。」
「なるほど、あの巨大なイノシシは夢じゃなかったのか...。」
「で、俺のCBはどうなった?」
「 ....。 」
暫くの沈黙があり、シータは努めて明るく言った。
「全損。フロントのブレーキディスク盤までグニャっとなってたよ。イノシシもさぞかし痛かったろうて」
「納車が昨年のクリスマス。アラ還ライダーのカムバックストーリーは1年も持たずか...。」と俺はグチた。
「1年。すごいじゃないか。テレビ番組ならワンクールで打ち切りもあるし。四季を楽しめただろう」とシータが慰める。
「いや、俺にとっては、お前らや、40年近く前のバイク仲間と、また走れたことが最高だったよ。」
「そうか、それは良かった。ちなみに、今のお前は全身7カ所骨折だよ。」
「どうりて、全身が痛むはずだ。」と俺が言うと、シータは椅子から立ち上がり言った。
「もうすぐ、奥さんとお嬢さんがここに来る。よく、話し合えよ。」
「分かった。シータ、色々とありがとな。」
「でも俺たち、待ってるぜ。k-1で。」
「娘のクルマで、杖ついて会いに行くよ。」
「そりゃ、いいな。そのあと奥さんと一緒にランチでも行けば。お前、今日は奥さんと初ツーリングの予定だって言ってたぞ。」
「あ、そうだ。今思い出した...。」
アラ還ライダー山ちゃんのカムバックストーリーはここで一時停止。
結果はどうであれ、40年近く前にタイムスリップした俺。
代償は大きかったが、後悔はない。
HONDAとe-clutchに感謝。俺にとってCB650Rは正に“タイムマシン”だった。
The End
皆さま、今日もご安全に!
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