新たな船出
天野次長の周りから関係者が去ったのを見計らい、俺は声をかけた。
「ロードマップどおり、しっかり完成させましたね」
次長は少し息をつき、笑みを浮かべた。
「資材の高騰や人手不足には、さすがに参ったけど――伊達木社長のチームが何度もピンチを救ってくれたわ」
「いいパートナーに恵まれましたね」
「ほんと、ホント」
空気が少し静かになる。
「ところで、私、異動になります。出向です」
「お互い還暦ですものね。それで、どちらに?」
「大阪経済同友会だそうです」
「なんだか楽しそうじゃないですか」
「そうですねぇ。あと、私の後任は天野さんだそうです」
「えぇ、まさか……でも、さっき千﨑部長が昇格の話をしていたけど」
「まあ、明日になれば、すべてわかる話ではあるんですけど」
俺は肩をすくめながら答えた。
「新天地でも、ほどほどに頑張ってくださいね、山本さん」
そう言い終わると、他の関係者が天野次長のもとへ集まり、笑い声が戻ってきた。
俺は静かにその場を離れた。
今日という日が、明日への希望をそっと運んでくる。
――新しい航路が、大阪で始まるのだ。
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