野口五郎さんとのコラボレーションの興奮も醒めやらぬ中、今月はジャズピアニストの国府弘子さんとのステージが4本開催された。その4本全てが少しずつスタイルの違うライブであったことも興味深かった。ザッと概観すると、

 

●10/2 神奈川・ビルボードライブ横浜 ピアノ・ソングス2022(2ステージ)

●10/8 長野・八ヶ岳高原音楽堂 ピアノ・ソングス

●10/16 北九州・黒崎ひびしんホール 国府弘子スペシャルトリオ with 岩崎宏美

●10/28 東京・浜離宮朝日ホール 朝日ホールひとときコンサート Vol.2 Piano Songs LIVE2022

 

となる。画像のフライヤーもご参照いただきたい。

 全て行きたい気持ちではあったが、様々な事情により、結局私の参加はビルボードライブ横浜の1stと、昨日行われた浜離宮朝日ホールの2本に留まった。特に残念だったのは、3連休の初日で、チケット付き宿泊の予約も済ませていた八ヶ岳である。1ヶ月前を切ってから、何とその日私は休日出勤であることに気づいたのだ。うちの業界的に言うところの“土曜参観”。まさかお休みをいただくわけにはいかない。泣く泣く諦めた、という次第である。😂

 

 

 お互いに“シロ美”“シロ子”と呼び合うお二人。2014年に初の『Piano Songs』ツアー、2016年にはアルバム『Piano Songs』を発表、コンサートのDVD &Blu-rayも発売された。その後も飛鳥Ⅱでのステージなど、時折りお二人の息の合った演奏とトークを聴かせてくださっている。だがお二人の運命的(?)出会いは、さらに遡る。アルバムのライナーノーツや、コンサートのMCでも紹介されているが、ここでもお話ししておこう。

 

 お二人が出会ったのは、もんじゃ焼き『麦』で行われた業界関係の新年会。その場でビンゴ大会の景品に各自が自宅から何か持ち寄る、という企画があった。弘子さんは高級そうな箱に入れた洋酒を持って来たのだが、何と中身が半分以上入っていない飲みかけのお酒だったそうだ。🤣この件もあり、すっかり意気投合したお二人が、後の共演へと親交を深めていくのである。

 

 さて、今月のコラボについて触れよう。昨日で一旦お二人のコラボは終了とのことで、ネタバレも構わないだろう。基本的には以前のツアーやアルバムを下敷きにした焼き直しと言えよう。「スカボロー・フェア」で始まる構成は変わっていないし、弘子さんのオリジナル曲である「ジプシー・バロック」をイントロに引用した「聖母たちのララバイ」、先日NHK『うたコン』でも披露された国府バージョンの「思秋期」や、キャロル・キングの「空が落ちてくる(I Feel the Earth Move)」を引用した「ロマンス」(今回は秋バージョンで、さらにその前に「枯葉」も!)やラテンタッチの「シンデレラ・ハネムーン」など、ファンにはお馴染みのものばかりだ。

 

 

 今回のツアーでの新たな注目曲は、シャンソンの「18才の彼」、『レ・ミゼラブル』で宏美ファンティーヌの歌う「夢やぶれて」、そして最近テレビでも披露されることも多い「ワインレッドの心」の国府アレンジであろう。弘子姐さんとのツアーでは、ピアノソロも楽しみの一つだが、今回も「ピアノ一丁!のテーマ」や宏美さんのご長男・元気クンのご結婚を祝しての「ブギウギ・ウェディング」などで盛り上げてくれた。😍

 

 

 そして昨夜の浜離宮朝日ホール。通常クラシックの演奏会に使用される音響の良いホールで、宏美さんのお声や弘子さんのピアノの音も実に美しく響いて、細かいニュアンスまで聴くことができた感動のステージであった。

 

 前半の曲ではあったが、昨夜の白眉としてはまずお二人の共作である「大切な人」を挙げたい。この曲の創られた当時は、宏美さんのお父様やバンドメンバーだった渡辺茂さんなど闘病中の方々へのメッセージソングであった。今回、素晴らしい歌唱の最後に宏美さんが声を詰まらせたのは、今年亡くなった愛犬のライス君(「パパにそむいて」「You raise me up」のブログを参照されたい)や小学校以来の親友・市橋美子さんのことを想われてのことだったのはではないか。宏美さんのプライベートに関わることなので、ここでは深入りを避けるが、ファンクラブの会報『HIROMI’S CLUB vol.82』では、美子さんの追悼に3ページを割かれ、ライス君については記事に加え、表紙写真にも取り上げている。8月に行われたライブハウスツアーでも、宏美さんは美子さんを想って「いのちの理由」の涙の絶唱を捧げた。

 

 そしてコンサート終盤、「聖母たちのララバイ」の圧巻の歌唱で二部終了。アンコールでは時折り弘子さんのピアノで聴かせてくれる「WHEN I FALL IN LOVE」。その後、シロ美&シロ子のアイコンタクト、そして「もう一曲!」という嬉しいハンドサイン。宏美さんがマイクを置いたところで、私の心に浮かんだ「もしや?」の想いは確信に変わる。そう、何年ぶりであろう、ノーマイクでの「月見草」である!

 

 このホールの響きの良さを活かし、さらにピアノの音数を極限まで減らして宏美さんの声を聴かせるアレンジだ。歌い出しから16小節は全くの無伴奏である。他に音が全くないホールの空間に、宏美さんの生の美声が響き渡る、言葉にすることが難しい瞬間である。このお二人の稀有なパフォーマンスによって、『シロ美&シロ子月間』は幕を下ろしたのである。

 

 

 今年はあとクリスマスクルーズでの共演が残っているとのことだが、来年以降も是非また新しいレパートリーを引っ提げてのコラボ再演を望みたいところである。😊