ずいぶんと秋が深まってきましたね。

近所の公園のイチョウ並木もすごくきれいです。







スポーツ選手のパフォーマンスに関わるみなさん、JARTA認定トレーナーのみなさん。





ご自分が関わっている(担当している)選手がやっている競技における「トッププレイヤー」の名前を言えますか?





その選手の競技特性や動きについては選手や指導者に解説できますか?

その選手に指導する機会がもし訪れたら実際何をしますか?






今日僕がお伝えしたいのは、非常にシンプルなことです。

「自分が関わる選手の競技のトッププレイヤーについて熟知する」


これです。





自分が実際に競技者としてやっていたスポーツなら当然知っていますよね。

ただ、我々のようなトレーナーという立場だと、必ずしも詳しく知っている競技をやっている選手とばかり関われるとは限りません。

まったく詳しくない、ルールさえもほとんど知らないような競技と関わることは当然出てきます。

僕の場合は大学まで野球一筋だったので、野球の一流選手はメジャーリーガー含めてかなり詳しく知っていました。

しかし、それこそサッカー、相撲、ラグビーなどはそれぞれトッププレイヤーなんて全然知りませんでした。

ルールはさすがにそれなりには知っていましたが…笑






「担当したその選手の動きが十分わかればいいのでは??」

という意見が出てきそうですが、僕はそうは思いません。


なぜなら、僕がやりたいことは、パフォーマンスアップ

※ケガからの復帰も含めて。






ということは、パフォーマンスをアップしていく「ベクトル」が必要なのです。
方向性ってやつです。

闇雲に筋力をつけたり、柔軟性を増そうとしたりすることは、「限られた競技人生における時間と努力の浪費」というリスクになり得ます。






「身体の使い方」などの動き作りも同様です。

最終的にどのような動きを身につける必要があるのか。

その「ベクトル上」に、全ての動き作りが展開している必要があるのです。


JARTAでは、全ての競技に必要な、全ての競技に通づる「ハイパフォーマンスの前提条件」を整える必要性を説いていますが、ここで
も同様に最終的にどのようなパフォーマンスを身につけるのかが見えていないと、話にならないのです。



自分が選手や指導者だったら、と考えてみて下さい。

トレーニングを提供、指導する人が、その競技のトッププレイヤーについて詳しくなかったらどう思いますか?




「僕らがどんな能力を獲得していく必要があるか、ほんとにわかってます?」ってなりませんか?






僕が選手や指導者なら、パフォーマンスアップをうたっているのにトッププレイヤーについて詳しくないトレーナーは信頼しません。

パフォーマンスアップの方向性が見えていないってことですから。






要するに何が言いたいのかというと、自分の関わる競技におけるトッププレイヤーについては、まずしっかり分析しておきましょうということです。

これはその選手の「憧れの選手」に対しても同様です。




こんなに食いついてサッカーを見ている子どもに関わったとします。
例えば子ども選手に指導するとき、彼が憧れている選手のことをめっちゃ知っているのと全然知らないのと、どちらがハートを鷲掴みできそうですか?
JARTAイタリア研修2014|ミラノ





ちなみに僕はトッププレイヤーのプレイをビデオで録画し、それをスロー再生してスマホで動画として保存し、選手に見せながらディスカッションしたりしています。

結構泥臭いことやってます笑

先日はそれをやっていてクリスチャーノ・ロナウド選手について新しい発見をしました。

気になる方は、僕の主催するJARTA講習会で僕にお尋ね下さい。






こちらが講習会情報などが掲載されているJARTAのオフィシャルホームページです。

最近リニューアルしたので、まだご覧になられていない方は、ぜひ。

JARTAオフィシャルサイト









JARTA

中野 崇







昨日東京で開催しましたJARTAアドバンス3セミナーに、先のアジア大会で陸上5000m日本代表の「村山紘太選手」が遊びに来てくれました。


15番が村山鉱太選手です。隣は、双子の兄弟です。






JARTAの講習会には、時々本物のアスリートが勉強や体験をしに現れます。
これまでもビーチサッカー日本代表、フットサル日本代表、なでしこ女子サッカー選手、プロボクサー、乗馬選手、ラグビー元日本代表などが来られています。
※急な参加になることが多いので、告知はできませんが…。
もし会うことができたなら、ぜひ彼らにいろいろ聞いてみて下さい。
僕が伝えたいことの意味がわかると思います。




なでしこリーグの選手。
講義終了後にそのままトレーニングに入ることもあります。
その際には、みなさんにもその場で見学していただけます。






村山選手は、箱根駅伝にも出場している超有望株のランナーです。

2015年の箱根駅伝にも城西大学のエースとして出場する予定です。

双子のランナーとして注目されていますので、箱根特集とかでは目にすることがあると思います。

ぜひ応援お願いします。




村山紘太選手
後ろの選手との前腿の盛り上がりの違いに注目。
前方への推進力はハムストを使って前腿を使わないことが肝腎なのです。
彼も感覚としてわかっていました。
http://photozou.jp/photo/show/3086665/202890968より転載






こちらがいろいろ説明するまでもなく、彼はランナーとしての肝腎な身体や意識の使い方を身体の感覚で理解しており、とても素晴らしい感性の持ち主です。












いくつか現在の悩みを伝えてくれたので、少し改善方法と今後のパフォーマンスアップの鍵となる部分についてお伝えしました。




村山選手には当日の講習会の様子も見学していただいたのですが、受講者の方々が必死でトレーニングを習得しようともがいている姿を見て、トレーナーの陰の努力に驚いていました。
あそこまで追い込むのは選手に手本を見せられるレベルをJARTAが厳しく要求しているからですが…笑

※JARTAではトレーナーに対して、「トレーナーが提供するトレーニングを、トレーナー自身が手本として高いレベルで見せることができること」を要求しています。






また、JARTAアドバンス1~3では、新しい取り組みとしてセンタリングトレーニングのゲーム化という演習に取り組んでいただいていますが、(彼から見れば)おじさんたちがゲーム形式のトレーニングでワイワイやっているのはどう見えたのか…笑






受講者の方々がゲーム化したトレーニングを考案してプレゼンし、それをみんなでやってみるという流れでしたが、ほんとに斬新で楽しさ満点でした。

もともとは子どもたちや若い選手たちに楽しんでもらいながらトレーニングを導入するためにやり始めた流れではありますが、実際の現場ではそもそも負けず嫌いが激しい選手たちは本気で取り組んでくれています。






実際、新たに考案していただいたゲームトレーニングは非常に魅力的なものばかりでした。
普段病院で勤務している医療職が受講者の方々には多いので、こういった遊び感覚やゲーム感覚を使ってトレーニングをやるという機会がなく(当たり前ですよね…)、それがスポーツ現場では逆に弱点になってしまっていることが多いように思っています。
ただ、機会を得るとこんなにも柔軟な発想が生まれてくるのだなということにも感嘆しました。




こう見えても指導の練習「いかに伝えるか」の練習場面です。





トレーニングゲームを考案したトレーナーたち自身も童心に返ってめちゃめちゃ楽しんでいました。
というか完全に子どもになっていました笑

そして皆さん最終的には思いっきり本気…笑




村山選手を囲んで記念写真。(小さくてすみません。。)
個別で一緒に写真を撮ってもらっている方もいらっしゃいました。
サインは、まだないそうです笑







村山選手の今後のご活躍、楽しみにしております。







JARTA
中野 崇



11月10日発売の双葉社「サッカー批評」に僕のインタビュー記事が連載されます。

こちら





メンタル面と身体の影響についてはこれまでも様々な観点から語られてきましたが、実は逆もありえるという話を、ワールドカップでの出来事を例にとって話させていただきました。






つまり、身体の状態が試合での精神面に影響があるってことです。

もっと言うと、身体の本質力を高めずにメンタルトレーニングしても効果は…ということを説明しています。






また、パワーや体格で劣る相手の力を封じるという意味についても説明していますので、興味のある方はぜひご一読下さい。



撮影、、なんとも恥ずかしかったです…笑




以前NHKの朝イチに出演したときは、ハプニングがあったので、今回はそんなことが起こりませんように…笑





JARTA
中野 崇



今朝、新聞に大相撲で最近話題の逸ノ城関の記事が掲載されていて、少し思うところがあったので書いてみたいと思います。


逸ノ城は、「いちのじょう」と読みます。

モンゴル出身です。

愛称は「モンスター」。




何がすごいかって、初めて入幕した先の9月場所(プロ野球の一軍みたいなもの)で、いきなり横綱一人と大関二人を破って、13勝2敗で白鵬と優勝争いしたのです。

そして何と次の11月場所ではいきなり関脇(上から三つ目の強さの階級)になってしまいました。






彼の強さの理由は、いくつも考えられますし、いろんな視点があると思います。

僕の場合、今朝の記事で彼の生い立ちについて書いてあったのを読んで何を思ったのかというと、最近の一般的なトレーニングと、彼が育ってきた環境によるパフォーマンスへの影響の違いです。






まず朝刊の記事を抜粋します。

-以下一部抜粋-


モンゴルに住む、逸ノ城の父アルタンホヤグさんは、馬40頭、牛30頭、羊400頭、ヤギ100頭と暮らしている。季節ごとに住む場所が変わる移動生活である。

「イチコ(逸ノ城の愛称)は働き者だった。この生活が息子を強くしたのだと思う。」

小学校に入学した8歳までは両親を手伝う日々だったという。

「馬や牛の世話は、幼い子にとって格闘のようなものです。」


乳を吸う子馬を母馬から引き離したり、体重が500キロ以上の牛を引っ張ったり。

森から丸太を運び、のこぎりで切ったり。


-抜粋終わり-






彼の父が言うように、幼いときから仕事を手伝うことで、確かに強い身体が自然に出来てきたと言えるでしょう。

そしてこれは逸ノ城だけに限ったことではありません。

例えば双葉山に代表される昔の力士たちも、形は違えど似たような環境下にあったことは十分予測がつくことですし、現在活躍しているモンゴル人力士たちも同様でしょう。




伝説の横綱、双葉山






今回何が言いたいのかというと、「仕事として」身体を使っていたことが彼らに高いパフォーマンスの根底部分、すなわち身体の使い方を習得させたのではないかということです。

決して「子どもの頃から身体を鍛えていた」ことそのものに対する話ではありません。

ここで子どもの頃という要素は話がややこしくなるので、一度除外して話を進めます。






身体を鍛える(鍛えられる)行為には、

①トレーニング(ここでは分かりやすくするためにウエイトトレーニングとする)

②仕事


大きく分けてこの二つがあります。

※①は、この場合、JARTAが提唱する統合化トレーニングではなく、一般的なトレーニングとしています。






二つの違いは何でしょうか?

一つ目の答えは「目的」です。

①は、身体を鍛える(筋肉を肥大させる)ことそのもの。

②は、物(逸ノ城の場合は馬や牛)を移動させるなど、行為を遂行すること。


どちらも結果としては筋肉が肥大して身体はたくましくなるでしょう。



しかし、問題はそのです。
身体を鍛えるという行為を通して習得する身体の使い方の質。
これが二つ目の答えです。

①や②を通して、人間はその身体の使い方まで学習して覚えていくのです。

つまり、①を通して身体の使い方を学習した人は、物をより重く負荷がかかるように扱おうとする、

なぜなら①は筋肉に負荷をかけることそのものが目的だから。
筋肉に負荷がかかっているという感覚を求めるという特徴があります。






対して、②を通して身体の使い方を学習した人は、物をより軽く簡単に扱おうとする傾向にあります。

なぜならそれは仕事だから。

「なるべく疲れないようにしたいという心理」
「なるべく効率よくやりたいという心理」


が働くからです。






考えてみて下さい。

10キロの重さがあるものを持ち上げるという課題に取り組む場合。

Aさん:より重くより大きい負荷がかかるように扱う人

Bさん:軽く扱えてしかも疲れないように扱える人、


どちらが身体の使い方が上手いと言えますか?

どちらが、パフォーマンスが高いと言えますか?


もちろん言うまでもなくBさんですね。






モンゴル人の力士が、このようなバックグラウンドのある身体の使い方を根本的に身につけて居るのに対して、日本の力士は、バックグラウンドは我々の子どもの頃と大きくは変わらない(「仕事」として身体を使ってきてはいない)ことが予測される上、トレーニングとしてボディービルダーの指導の下、ジムに通っていることが増えてきています。






日本人力士が勝てない理由はいろいろ言われていますが、こういった部分も理由としては深く関わっているかも知れませんね。

※もちろん、これは相撲だけでなく、日本のスポーツ界全てに通じる問題です。




ちなみに僕が関わっている力士が白鵬と当たった際、「分厚い柔らかいゴムにぶつかったみたいでした。力を全部吸収されてしまう感じでした。」と教えてくれました。








それを日本人力士にできるようになってもらいたいのですが…。

まだまだ差は大きなものかも知れませんね。。






最後に、誤解のないように気をつけていただきたいのですが、これは子どもの頃から労働しましょうという意味ではありません。

例えば筋トレをする場合でも、「目的」が重要ですよ、という意味です。

「筋トレなので目的は筋肉を付けることでしょ?」


いえいえ、自分の競技が上手くなることでしょ?

だって上手くなるために、トレーニングしてるんでしょ??






筋肉をつけることそのものを目的にトレーニングしていいのは、ボディビルダーだけです。




昨日の記事に少し誤解してる人がいるな~って思っていたら、朝刊にこういう記事が載っていたのでよいきっかけでした。
→昨日の記事|
かっこいい身体と使える身体の違い






JARTA

中野 崇




主に男性の方々、この身体と、この身体、どっちになりたいですか??


1.有名ハリウッドスターの肉体




2.江戸時代の飛脚の身体|葛飾北斎の「富嶽百景 飛脚」より




ほぼ全員が1ですよね?
確実に1の方がモテますよね笑
サッカーのユニフォーム交換のときには、1のような肉体を見せつけたいですよね?
わかります。。



では同様にこの二枚の写真、どちらが様々な面でパフォーマンスが高いと思いますか?






答えはおそらく後者です。

パワーを出したり、重力下で動的なバランスを保持したりする際に筋肉は当然重要な要素にあたりますが、良い筋肉とはどんな質のものなのか聞いたことありますか?

固い筋肉と、柔らかくてしなやかな筋肉はどちらが組織としての質が高いでしょうか。

どちらがケガに強いでしょうか。

どちらがしなやかなかつパワフルな動きを実現できるでしょうか。

どちらが持久性が高いでしょうか。

答えは明白ですね。





これらのように、運動に関する要素はほとんどが後者の柔らかくてしなやかな筋肉が優位を占めます。

なぜなら、筋肉として質の高い性能を発揮するためには、より柔らかく、かつより硬くなれる機能が必要だからです。

筋肉の作用は縮むだけでなく、緩む、伸びるも含むからですね。

必要な時には当然硬く、その必要(信号)がないときには、極限まで柔らかくなれる筋肉である必要があるのです。

事実、この絵にあるような飛脚の職にあった方々は1日に数十キロ走っていたというのは有名な話です。

→詳しくはこちら。



そしてこのような筋肉を得るためには、大前提として、常に必要最小限の筋力しか発揮しないという状態が必要です。






例えばこれは立っているだけの時はほとんどの荷重を骨で支え、「足りない分だけ」筋力を発揮するということです。

道具を操作するときは、道具に働く重力や遠心力を感知し、それを最大限に活かしながら、足りない分だけ力を発揮するということです。






ほとんどの人は、立っているだけで無駄な筋力を発揮しています。

でも一流選手になると、ほんとうにゆるやかに無駄な力を使わずに立っているのです。


それを突き詰めていくと、例えば胸の筋肉は使っていない時は非常に柔らかいために少し垂れ下がって胸の上の方に肋骨が浮いて見えるような状態になります。

一流選手になってくれば、全身のほとんどの部分でこのようにぱっと見たら脂肪に見えるぐらいになります(突き詰めれば)。






我々JARTAは、固めて使う身体ではなく、身体を柔らかくして機能的に使える部分を増やすことをパフォーマンスアップの前提条件だと考えています。

なぜなら、これはすごく重要なことですが、

筋肉が固い人がプレーや動作の中で柔らかく使うことは困難です。
そもそも通常で固い状態の筋肉がプレーの中で急に柔らかくなるはずがありません。





それに対して、筋肉が柔らかい人は、いつでも固めることができるのです。

「動き」そのものでも同様です。
柔らかい動きができる人は、固い動きを作ることは可能ですが、固い動きの人が柔らかい動きを実現するのは困難を極めるのです。






これが我々JARTAが弛緩力と表現している、「身体を機能的に使える幅を広げる」ということの重要性です。






しかしながら冒頭でお尋ねしたように、多くの男性(もちろんスポーツ選手も含めて)は、女性にモテるためにスポーツやトレーニングをしてきているかも知れないので笑、当然そのための身体を作りたいはずなのです。






モテるための身体と、高いパフォーマンスを発揮する身体。

両者には、確かに見た目にギャップが存在します。

でも、仮にプロであったとしても、スポーツをやっているのが人間なのだから、そういう選手心理もわかってあげないとな、っていうお話でした。





身体の見た目はちょうどいいバランスをとれるはずなので、JARTAトレーニングしている男性のみなさん、ご心配なく笑







JARTA
中野 崇







少し更新の間隔が空いてしまいました。

この間、福岡、金沢、北海道、と飛び回っていました。






今回は「伸びしろを伸ばす」ために必要なことについての記事の続きです。
ここまでの流れをお読みでない方は、先にこちらを読んでいただくとわかりやすいかと思います。
その1→「相手の力を封じる」
その2→「伸びしろを伸ばす」意味

その3→「上手くなるための絶対条件」






前回は、選手が楽しい、気持ちいいと感じることの重要性、そして指導する際の表現の方向性について触れました。

要するに選手自らが気付き、もっと上手くなりたい・自分にはその可能性があると感じ、指導者も選手がそうなっていけるような表現や選手が気付きを得られるような関わり方が必要というお話でした。






今回はさらに踏み込んで、では選手がもっと上手くなれると感じられるために必要な能力についてのお話です。

その鍵となるのは、「内的認識力」です。

内的認識力を高めると選手の可能性はグッと広がります。






内的認識力とは、自分の状態を認識する能力のことです。

自分の重心はどうなっているのか。

自分が今どこに力を入れているのか。

どの程度力を入れてどの程度力を抜くべきなのか。

そしてもちろん、その時の自分の精神状態を認識するという能力も含みます。

つまりパフォーマンスを構成する要素のうち、メンタル面もここに含まれます。

※パフォーマンスを構成する要素としては、これに加えて外的認識力というものも存在します。そのあたりはまた別の機会に。



イタリア挑戦中の西澤選手。大学選手権優勝経験を持っています。
成人してからでも、内的認識力は向上させることが可能です。





その局面における自分の状態を認識する力。

これは一流選手は必ず高いレベルで保有しています。

よく、調子が悪いときにも試合中に自分で修正する能力が高い、という表現がありますが、これも内的認識力が前提となっています。

自分の状態が繊細に感じられていなければ的確に修正しようがないですよね。






そして内的認識力が高い選手は、今やったプレイをフィードバックし、フィードフォワードする能力が高いのです。

つまり、さっきのプレイは、「ここをこうしたらもっと上手くできるはずだ」、「もう少しこうすればもっと良くなる」という具合です。

そしてそれに合わせてプレイを修正したり、そこを改善するトレーニングや練習に望むことが出来たりします。



イタリア挑戦中の星子選手(GK)。このような肩甲骨の状態を獲得する際にも当然内的認識力は重要です。




ここまで言うともうお分かりかと思いますが、前回出てきたイチロー選手や武豊選手などは、この内的認識力が非常に高いと言えるのです。

彼らは、決して「結果が良かったからOKだ」ということはしません。

結果の善し悪しにとらわれず、「さっきのプレイはもっと上手くやれることができたはずだ」という観点で振り返っています。

これが内的認識力を高いレベルで持つ者の思考回路であり、伸びしろを伸ばしていくために必要な態度です。






内的認識力についてお話すると、重力や遠心力感知などまだまだ話は続くのですが、キリがないので詳しくは講習会やトレーニングの場で尋ねてみて下さい。






では、この内的認識力を高めるためには何をどうすればいいのか。

そのあたりは前回も簡単に触れましたが、指導者がまずはとにかく選手に問いかけることが必要です。

「今のプレーの感覚はどうだったか」

「気持ちよく動けたか」

「無駄な力みはなかったか」

「もっと気持ちよく動くにはどうしたらいいか」

などです。


多くの選手は聞かれて初めて自分の感覚に意識を向けます。






ただし他者から問いかけられてもそれを感じるためのセンサーそのものの感度が悪いと当然うまく捉えることができません。

問いかけられたときにより精密にその感覚を認識するためには、身体がゆるんでいることが必要です。

非常に簡単に一部を説明すると、例えば筋肉の中には「筋紡錘(きんぼうすい)」というセンサーがあって、筋肉がどれぐらい伸びているのか、どれぐらい収縮しているのかを感知しています。

このセンサーが高いレベルで働くためには、筋肉に無駄な力が入っていないことが条件です。

つまり、普段0のレベルから5になったときに感知するレベルと、普段4から5になった場合、どちらがより高いレベルで感知しやすいかということです。





そういう意味から、「絶対上手くなりたい」というスポーツ選手には、ぜひ日頃から「最小限の力で動く」つまり無駄な力を絶対に入れない、という難しい課題に挑戦していただきたいです。


そして日常の動作においても、「今の動きは無駄な力が入っていなかったか」という観点で身体の使い方を常に認識する作業を繰り返していただきたいです。


日頃よりお世話になっている中西哲生さん。
中西さんもこのあたりは非常に重視されている方です。
元選手とは思えないほど深く理解されています。




ここまで何回かに分けてお話してきた内容は、概して「筋力をつければ必ずパフォーマンスが上がるということではない」という理由についても述べたつもりです。
そしてスポーツ選手がそのパフォーマンスを高めていくために、高め続けるために必要なことについても述べました。






我々スポーツ選手のパフォーマンスに関わる立場にある者は、選手の「努力の方向性」を決める立場にあります。

選手はとんでもない努力をします。

その際の方向性が、もし間違っていたら、選手にはとんでもないロスを強いることになるだけでなく、場合によってはケガに向かって努力させてしまっている可能性だってあるのです。






「努力は選手の責任、努力の方向性は指導者(トレーナー)の責任」






この言葉をぜひ覚えておいて下さい。






次回は、「かっこいい身体」「使える身体」についてお話しようかと思います。






JARTA
中野 崇








話の流れ上、まだご覧になっていない方はこの二つの記事を先にお読み頂けると幸いです。

→「相手の力を封じる」という戦略

→「伸びしろを、伸ばす」重要性



今回はその流れを汲んだ内容です。

前回までは選手の伸びしろを伸ばすという観点を持つ事の重要性についてお話ししましたが、「伸びしろを伸ばす」ために必要なことは大きくは次の2点。




〈伸びしろを伸ばすために必要なこと〉

①本人にとって「成長したい」「良い動き」というベクトルの基準を作ること。


1)まず、選手がその競技を「楽しい」、「やってて気持ちいい」と感じられているかどうか。

これは高いレベルでケガが少なく選手寿命が長い選手に共通していることです。

彼らの多くが、とにかくその競技が楽しくて仕方ない、やっていて気持ちよくて仕方ない、

という経験を持っています(継続しています)。




「好きこそものの上手なれ」




考えてみれば当たり前ですが、楽しくなくて、気持ちよくなかったら誰がその競技を長く続けたいと思うでしょうか?

誰が寝る間を惜しんでその競技のことばかり考えて没頭する事ができるでしょうか?

これはイタリアでも学んだことですが、とにかく、その競技が好きであること、楽しいと感じられること、やっていて気持ちいいと感じられること、これが何にも勝って肝腎です。

その根底があって初めて全ての上達理論が乗っかる事ができるのです。

本来、スポーツは娯楽なのですから…。




そして身体運動という、僕の専門分野的な観点からしても「気持ちよく動ける」「動いていて気持ちいいと感じる」ことは非常に重要なポイントです。

人間には、自分にとって良い動きならばそういった感覚を感じるセンサーが備わっています。

理屈抜きで、非常に原始的で動物的な部分です。






動物は、自分にとって不快な動きは絶対に運動様式として採用しません。

非効率な動きだからです。
自然の中では非効率な動きは死に直結します。

幼い子どもも同様です。

なのに成長して頭で理屈っぽく考えることを迫られてきた選手たちは、そのセンサーに蓋をしてしまうのです。





筋肉増強の理論を知った選手は、自分の感覚よりも、「筋肉をつける感覚」「筋肉を強く使っている」を追い求めるようになってしまいます。

これは僕のブログでもJARTAの記事でも度々表現していることですが、筋力=パフォーマンスアップではありません。

むしろ良い選手は筋力の発揮は最小限にとどめる、すなわち力まないことに重点を置いています。





テレビで見ていても、良い選手は力みが少ないですよね。

ぜひプレーの合間の選手の行動に注目してみて下さい。

ほとんどの選手が、身体をほぐすように揺らします。これは力んでいると動きにくいと無意識に感じているからですよね。





一流アスリートまで上り詰めることができるアスリートたちは、その点に関しては非常に我を通すことができます。

というより、我慢がならないのかも知れませんが…。

つまり自分にとって不快な感覚が入るフォームは採用しないし、そのような練習は手を抜こうとするのです。



インテルユース|JARTAイタリア研修2014



それが誤解されて(本人も説明することが出来ず)、「あいつはワガママな選手だ」というレッテルを貼られていることもあります。

(ほんとにただワガママな選手もいると思いますが…)


指導者の方、チームで扱いにくいと感じている選手は、もしかしたら超一流アスリートになれる感性を持っているのかも知れませんよ。






選手にそのような基準を選手に備えさせていくためには、具体的な指導場面では、とにかく選手に問いかけることが必要です。

「今のプレーの感覚はどうだったか」

「気持ちよく動けたか」

「無駄な力みはなかったか」

「もっと気持ちよく動くにはどうしたらいいか」

などです。


多くの選手は聞かれて初めて自分の感覚に意識を向けます






2)指導の際の表現ベクトル

根性、気合い、忍耐力などは非常に重要なものされて指導されてきていると思います。

それらの要素の重要性は確かに否定することは出来ません。

ただ、それを育むための手段には首肯できないものも多く存在します。






つまり、特に子どもたち対象の場合ですが、
「怯えさせて」ませんか?
「失敗を恐れさせて」いませんか?





結論から言いますと、それは選手のパフォーマンスをあげる事、学習させることにおいてはマイナス作用になります。

様々な心理学分野・脳科学分野での検証から、明らかにネガティブな結果が出ているのです。

つまり、例えばネズミでの実験を例に出すと、褒美(エサ)と罰則(痛み刺激)の両方を与えるよりも、褒美だけを与える方がネズミは早く学習し、しかも行動が積極的になったのです。





ではエサ+痛み、または痛みのみの場合はどうなったかというと、ネズミは動かなくなります。

消極的になったのです。

エサを欲しいという欲求よりも、痛みを避けたいという欲求の方が勝るのです。

(指導場面だと、よくやったと褒めることと、何やってんじゃ!と怒ることに置き換えられます。)






これは実際に子ども達にもよく見られる現象ではありませんか?

もしご自身が選手だったらと想像してみて下さい。

怒られると次は「積極的にチャレンジ」するのではなく、「怒られないように」ということが行動の基準になりませんか?

何を目的に指導しているのか、子ども達にどうなってほしいのか、選手にどうなってほしいのか、今一度見直すことが必要な場合もあるかも知れません。







もちろん、嘘をついたり、人を罵倒したりすることに対しては全力で怒っていただきたいので、怒ってはいけないという話ではありませんのでそこはご理解いただければと思います。






続く。

次は伸びしろを伸ばすために必要なこと、その②内的認識力です。







JARTA
中野 崇






前回ラグビー記事からの続きです。
今回は、
指導という行為の本質に踏み込みたいと思います。

ラグビーに関わらず、トレーニングや競技の指導に関わる方にはご一読いただきたい内容です。
前回記事(相手の力を封じる)はこちら参照。




当日は、指導に携わる方々が集まられるということだったので、僕なりに捉えている指導における要点を、トレーニング理論に加えてお話させていただきました。





要点と言いましても、何を目的とするかで要点など無限にあります。

ここでは、「子ども達の身体能力を伸ばす上で重要な要点」としました。
身体能力には、「ケガをしない」という要素も含むとしています。






では、そもそもトレーナーも含めて指導者の役割を一言で表現すると何でしょうか?

それこそ運動にどのような価値付けをしているかによって無限にあると思いますが、僕は、「選手の伸びしろを伸ばすこと」と考えています。






「伸びしろを伸ばす」






この表現には実はたくさんの重要な意味が含まれています。


例えば、よく指導者やトレーナーにありがちな落とし穴は、「選手を伸ばそう、育てよう」と思い過ぎてしまうことです。

そもそも伸びるのは選手自身であって、その意思を持つのも選手自身であるべきはずです。

そして伸びる努力をするのは選手自身でないと意味がありません。

我々の立場は、その伸びる努力をする方向性やアイデア、コツを提示してあげることだけです。

伸びしろを伸ばすという表現は、まずその部分をもちろん僕も含めて認識しておく意味を込めています。






そしてこの表現には「常にその選手の可能性を探り続ける」という指導者・トレーナー側に求めたい姿勢も含んでいます。

この姿勢は非常に重要です。

なぜなら選手として「あなたにはもう伸びしろはない」と言われたらどうでしょうか?

もし選手が「自分にはもう伸びしろはない」と感じてしまったらどうでしょうか?





現役のサッカー日本代表選手が僕に言ってくれました。

「例えば全てのトレーニングが簡単に出来てしまうことほど、僕にとって怖い事はないです。だって自分には伸びしろがないってことを感じてしまう事につながるから。」





これはジュニア年代に関わらず、全ての選手が無意識にせよ必ず考えていることです。

競技レベルに関わらず、スポーツをやっている以上、「もっと上手くなりたい」と思わない選手はいないはずです。

それほど選手にとって伸びしろや上手くなる可能性って大事なんです。






僕はこれまで自分の伸びしろ・可能性を自ら見い出せなくなっていた選手をたくさん知っています。

そのように感じてしまって引退した選手もたくさん知っています。

そのうちの数人は、今ではJARTAの関係者や認定トレーナーとなって選手を支える立場になっています。

(それらの選手が、JARTAのトレーニングやトレーナーに出会って、「もっと早く出会いたかった」と言ってくれているのです。)






泣きながら引退を相談されたこともあります。

人は自分の限界に気付いてしまったときに心が折れるのだと思います。

でも自分にはまだ可能性があると気付けた選手は前を向けます。

そう感じる事ができた選手はまた努力できるのです。






指導者やトレーナーが選手の伸びしろに気付いてあげることができて、その方向に気付かせてあげられることももちろん重要で、そこが我々のやりがいにもなっているわけですが、でも最も肝腎なことは、「選手自身が伸びしろを感じ続けられること」です。






イチロー選手やカズ選手、武豊騎手がまだまだ現役でやれるモチベーションって、彼らの発言から察するに、きっとまだまだ上手くなりたい、上手くなれると本人が感じているからですよね。
(武豊騎手はJARTAの長谷川トレーナーが担当しているので、直接の話です。60歳まで現役を目指すと言われていますよ)






ではそのために必要なことってどんなことなのでしょうか。

選手がそうなれるために、我々トレーナーや指導の立場にある方々はどうすればよいのでしょうか。


続く。







JARTA
中野 崇


先日、東京の門前仲町にあるスペイン料理のお店に、知り合いのツテで紹介していただいて食べにいってきました。





門前仲町駅のすぐ近くにあります。





そこのパエージャ(パエリア。正式にはパエージャと言うらしいです)は、何とパエージャの世界大会で4位に入ったこともあるらしく、絶品でした。






桜海老と細いパスタのパエージャ。パスタのパエージャなんて初めて食べましたが、むちゃくちゃ美味かったです。


スペイン、バレンシアでは王道のパエージャ。
文句なしです。


臨場感。



わざわざ食べにいく価値のあるお店ですよ。










中野

10月5日、関東ラグビーフットボール協会普及育成委員会のインストラクター向け講義を行いました。






ちょっとややこしいですが、要するにラグビーの指導者の指導者の方々への講義です。






メインテーマは「身体の使い方」です。

・身体の大きい相手に対してどう対処するのか。

・スピードで劣る相手に対してどうするのか。

・子どもの頃からそれを習得してゆくためのアイデア。

つまりラグビーに関わらず、身体運動としての質を高めるための考え方についての講義です。






僕は大学までずっと野球をやってきたので、ラグビーをやったことがありません。

恥ずかしながらこれまで試合もあんまりじっくり観たことがありません。

しかし、人間の運動の本質的な部分に対しての考え方を、ということでしたので今回の講義に至りました。



皆さん、非常に体格がよく、座っているだけで威圧感がすごかったです笑



ラグビーもサッカーと同様に競技力にはフィジカルの部分が影響が大きいと考えられていますが、その「フィジカルの部分」についての考え方を少し見直す必要があると考えています。






どういう事かというと、例えば10のパワーを持つAという選手がいて、相手が7や8など10以下の力だと、勝てますよね。

しかし相手が15や20の力を持つ相手には、当然10だと勝てません。

だからA選手の10の力を15や20まで高めて対処していこうというのがトレーニングの通常の考え方です。

しかしここにはたくさんの弊害やリスクが発生します。

つまりすごく単純に一部を表現するとスピードの低下やケガのリスクです。


あと問題は果たして10の力を本当に15や20にできるのか
これは非常に重大な部分ですが、「トレーニングの数値的にはそうなったとしても、果たして試合で15や20を発揮出来るのか。」

この辺がスポーツのトレーニングの難しいところですね。





そしてこれらの部分には多くの競技において課題としてこれまで長い時間をかけて取り組んできているはずです。


では僕、すなわちJARTAの考え方はどうかというと、A選手が10の力を持っていて相手が15ならば、相手が10より少ない力しか発揮できないようにすればいいということです。


講義の中でこの話をしたとき、皆さん「理屈はわかるけどそんなこと出来るのか」という顔をされていましたので、論より証拠ということで、実際に皆さんの前でお見せすることにしました。






ちょっと写真はないのですが、相手として登場していただいたのは、3名の方々。

みなさん今も100kgオーバーの元ラグビー選手です。(僕の体重は67kgぐらい)

うち一人は元日本代表の斎藤祐也選手。

筋肉番付でも4位に入ったスーパーアスリートです(そして水泳金メダリストの岩崎恭子さんのご主人です)。

→斎藤裕也さんのブログでもご紹介いただきました。こちら。





主な実験としては、より実際の動きに近いようにということで、肩での押し合いです。

まず普通に押し合いをして、どう頑張ってもパワーでは僕が勝てないことを確認しました。

それから僕の提案するような身体の使い方をもって再度肩での押し合いという流れです。






その中で大きな力を持っている方々に対してその力を発揮することができないような関係性の作り方をお見せしました。


どういうことかというと、人間が力を発揮するためには、力を加える対象が固いことが必要ということを逆手にとっています。

人間が力を発揮するために必要な要素をつぶすということです。






このあたりを表現するには難しい部分がありますので、詳しくお知りになりたい方はこちらを参照下さい。

JARTAの理論




また、当日は子ども達の指導に関わる方々という事で、少し指導のポイントにも触れました。


子ども達は誰でも非常に大きな可能性を秘めた存在ですが、それを伸ばすもつぶすも指導者の関わり方が大きく影響します。

このあたりについてサッカー日本代表選手の指導や少年選手の指導の中で得た経験の中から肝腎だと考えている部分について、僕の見解をお話させていただきました。


続く。