月組全ツ、福岡市民会館公演を配信視聴しました。
BJは昔からたまーに単発アニメを見てたくらい。
子供時代は楽しく見てたけど、最近は古さや、ご都合主義が目について、自分の中では色褪せた名作扱い。
ところが、この危険な賭けというエピソードが良かったのか、脚本が良かったのか、分からないけれど凄く面白かったです。
ブラックジャックにとって命は絶対価値で、他の人間たちにとっては相対価値で、この価値観のぶつかり合いや擦り合わせが興味深い。
これが素晴らしい原作リスペクトになっていた。
ブラックジャックといえば、そこだもんね!
女王だろが、クーデター首謀者だろうが、命の価値に変わりはない。
生きていることが何にも勝る素晴らしいことで、生きてさえいれば罪を償うことはできる。
国家権力などあらゆる大義名分のために、名もない一人の命が犠牲になることに心を傷めている。
制限ある生き方に反発し道を誤るケイン、ケインの為に危険な手術を依頼しながらも、組織を裏切ったことで、彼が刑務所に入るより死んでしまった方がマシかもと逡巡するアイリス、医師の立場から命の尊さを説くBJ。
誰の気持ちも分かるから、三人のクロストークがいい緊迫感を産んで、見応えある芝居になっていた。
コロナ禍において、疾患のある人や老人の命が危険に晒されたことと、人の行動が制限されたことで、命や医療従事者の負担VS経済や若い人の時間の損失、みたいな構図になったり、高齢化社会で尊厳死や老介護とか、原作が発表された頃より、命の価値感ってきっと揺らいでる。
だからBJの割と原始的な主張が新鮮に響いて、令和の時代に再演するに相応しい佳作になってたと思います。
ひとつ欲を言えば、一度見たくらいではギャツビー同様に歌の必然性が感じられなくて、上手くミュージカルとして機能していないかな。
宝塚ファンなられいこさま、歌うま!カッコいい!てトコでも、そうでない人ではせっかくいい芝居してるのに、ココに曲が入ることで緊張の糸が切れた様にも映るんじゃないのかな。
そこは課題かなと思いました。
それにしてもギャツビーといい、BJといい、月城かなとの影のある男が素敵過ぎる。
才能に恵まれた上に努力も怠らず本来なら♪朝日の昇る前に、じゃなくて陽の当たる道を歩く筈だったのに、不可抗力な出来事で運命が変わってしまい…みたいなの何でこんなにハマるんだろう。
これが同じ大人の男タイプのスター、真風の場合、ホームズやボンドみたいにもっと軽やかでスマートな感じなんだけど、月城かなとは真面目だから正面からとことん傷ついて若い頃とは別人になっちゃうイメージ。でもピュアな部分は失ってなくてさ、はーーー!素敵!
礼華はるがこんなにお芝居してるところ、初めて見たけどそもそもガタイがいいのと、声も良くて、カッコよかった。
後は、手術シーンが無かったことに驚き(それでも十分面白い)ピノコの使い方はそう来たか!(横でピノコファンの相方がニヤニヤしてた)海乃美月がやはり上手くて美しかった。
お芝居仕立てのJAZZショーも良かった!
お芝居の後だからこそ、ジェンヌさんの素顔が見れるのがショーと思ってたのに覆された感じ。
まず男役がベースで、そこに歌とダンスが乗ってる、という月城かなとの表現が尊くて感動してしまった。
あと月組の安定感が凄くて、みんな歌うまなんだけど、それ以前に舞台役者としての表現が先に来てるから、ダンスの技術どうのこうの指摘されても、ウチら目指してるのそこじゃないですよ、感が粋でカッコいい。
私は昔からあまりアイドルに興味がなくて、未熟さへの萌えより、表現者としてのストイックさに泣ける体質なので、月組ショー全然アリでした!
ありちゃん抜きでも無問題よ。
そしてロケットの衣装が渋くて好み。
これで別箱なんで、層の厚さが頼もしい。月組の次の大劇場楽しみです!