”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室 -144ページ目

う、ぎりぎりですみません

3月17日金曜日の2時~5時のクラス、お休みです。18時~のクラスは平常どおりです。よろしく。お教室内では伝えてありましたが、振り替えを考えていた方、18時半~21時半のクラスならOKです。

黄金比

今日のクラスでパターンを切っている人と、VAMPとCAPの長さのバランスの取り方について話が出ました。このバランスは結構難しくて、パターンナーとして働きだした時結構悩みました。で、「黄金比を使ってみたらどうだろうか?」と思いまして、当てはめると結構良い。『黄金比』はφ(ファイ)と表されるもので、値は1.6180339。。。。。(ま、大体1.6)なのですが、これを当てはめてVAMPの長さに対してCAPの長さを一時割り出していました。そうすると、面白くなってきて今度はQUOTER(腰革)とCOUNTER(カウンター)の長さや、スタンダード(木型の半面のパターン)に対してVAMPの長さなども割り出していました。


なにぶん私は嵌りやすい性格なので、ほとんど数式に当てはめて緻密にやっていくと今度は立体として釣り込んだ後のメジャメントも気になりだし、釣り込んだ後(先芯を入れた後)のVAMPとCAPのメジャメントは変わってくるので、今度はその伸び率を計算し。。。。とやっていたら、少しノイローゼになってしまって。。。(笑)それだけならよいのですが、ふと全体を見るとなんか気持ち悪い。なぜ、気持ちの悪いラインとここだ!と思うラインがあるのかも不思議なのですが、考えれば考えるほど、実際のラインが見えなくなっていきました。ロブのマネージャーはとても数学が得意ですし、困った時には何でも相談に乗ってくださる方だったので、「”黄金比”に嵌ってしまってどんどんラインが見えなくなってしまいました。」と相談に行くと、笑って「面白いことに気づいたね、僕は3:2(1.5)の割合で出して、その後幅とのバランス、トウシェープとのバランスを見て、自分の目で決めるのがいいと思うよ。あくまで数値は目安であって、絶対ではないからね。」とおしゃってくれました。今は当たり前に思えることですが、変なものに嵌ってしまうとシンプルなことも見えなくなってしまうようです。


”黄金比”はエジプトのピラミッドの寸法にも使われていたとか、レオナルド・ダ・ヴィンチやダリも使っていたとか、自然界の花や種の配列も。。。と伝説のようになっていますが、感性が入り込むものには数値では割り出せない「美」があるのではないでしょうか?でも、ま、目安は3:2でやっています。

ビスポークならでは。

今日はお客様のフィッティングの為銀座へ。昨日の事件により気分が落ちていて、「今日のフィッティングでも落ち込む結果になるのでは。。。」と心配しながら出かけたのですが、フィッティングOK!!本縫いへGO!で、最終チェックの為以前に伺っていた革の再確認をしていたら、黒のカーフがエレガントすぎてデザインのカジュアルさが今ひとつ引き立たないことが気になりだし、二人でどうしようかと考えていた時、お客様が仮縫いの靴の上に型押しの革を何気なくおいたら、そのバランスがとてもよく、『これ良くない?』と二人で納得。(私は思わず拍手!!)型押しとのコンビで作ることに。偶然が生み出したNICEなデザイン!こういうことが起きるから、ビスポークって楽しい。この世にたった1足の靴。自分の足にぴったりと合い、自分で考えたデザインであるからこそ本人にマッチする。


上記のことにより気分がだいぶ良くなって、快調!仕事の方も少しペースダウンできるくらいに見通しが付いてきたので、来週あたり時間をとって楽しみにしていたロダンの彫刻を上野に見に行けそうです。私は絵画より彫刻にとても惹かれるのですが、立体の力強さ、迫力に圧倒されるのが好きです。靴が好きなのも靴が3Dな為力強さを感じるからなのですが、力強いものにどうしてこんなにも惹かれてしまうのでしょうか?彫刻の他には建築物も大好きで、特に教会は大好きです。私は宗教は信じていないのですが、宗教の元になされた芸術の凄さは人間技を超えてると思います。14年位前に、教会巡りの旅へ友人とフランスへ出かけたことがあるのですが、感動ものでした。静寂な教会の中にぽつんと座り、柱の美しいアーチや精密な幾何学模様、宗教画、彫刻、ステンドグラスを神聖な気持ちで眺めました。教会は集合芸術です。人間の「手」はこんなにも美しいものをつくれるのかと感動の涙を流しました。私も自分の「手」で人を感動させられるような物を作りたい!今もその時の気持ちは私の中にありますが、まだまだ道は遠そうです。もっともっと多くのことを感じ、見、聞き、考え、手を動かし、自分の細胞の一つ一つに蓄えて生きたい。靴は芸術では決してありません、手製の靴は日常品であり工芸だと思うのですが、美しさを表現する上では芸術家も工芸家も同じ志を持ってもおかしくないと思います。アーティストとアルチザンは両方語源はARTですから。ではARTとは何でしょうか?これはとても難しく未だにちゃんとした定義はないのですが、私はARTには人生を豊かにし、心を自由にし(靴は足を自由に!)てくれるものであって欲しいと思っています。

事件です

悔しい~。今日木型を削って神経をすり減らして狛江駅に着いたら、ない!ない!マイ チャリが。。。駅周辺をいくら探してもない!腹立つ~~~。山のように私の自転車以外はしっかりあるのに!盗んだ人は目が肥えているとしか思えない。御目が高い!!オレンジ色の3段ギアーのママチャリ。仕方がないので怒りに打ち震えながらとぼとぼ歩いて帰宅。普段なら歌を唄いながら、絶好調の時間。至福のひととき。今日はママチャリとの楽しかった日々を思い出しながら、悲しい恋の歌を唄いながら目頭に涙が。。。


この「自転車盗難事件」で被害を被るのは私だけではありません。いいですか、このブログをお読みの生徒さん達!あなた方も今週は被害者になるのですよ!今週はこの事件により私の機嫌は非常に悪いでしょう。生徒の皆さんが私から八つ当たりを受ける可能性は非常に高い!!(既に私の夫は被害を受けている)ですから、被害を受けたくない生徒さんは、今から狛江駅に大集合し私の自転車捜索を開始してください!今すぐです!!


盗んだ方へ   人には魔がさすことがあります。人間は完璧ではありません。しかし、罪は罪。罪悪感に打ちひしがれる前に、私の自転車を速やかに私のマンションの自転車置き場に何事もなかった様にお戻しくださいませ。私は心の広い人間です。戻してくれるのならば許します。


稲森君へ   今日は小梅太夫より「チックショ~」が上手に言えたと思います。

クリッキング

昨日今日はパターン作りとクリッキングに精を出しました。ちなみに”クリッキング”とは栗の王様ではなく、革の裁断のことです。クリッキングはかなり神経を使います。革は同じ1枚の革でも場所によって厚さが違うので、左右の靴を同じ厚さにする為に革の中心線(牛の背骨部分にあたる)から左右対称に取ります。まずはヴァンプ(甲革)のような大きなパーツから傷、引っ張っても消えないしわ、ベインマーク(動脈などの線)を避けて丁寧に場所を選ぶ。クウォーター(腰革)はフェーシング部、クウォーターの外側は特に綺麗な部分を選ぶ。トウのキャップは強くて(丈夫で)キメの細かい部分から。これがなかなか難しい。年々革の質は落ちる一方で、年々クリッキングが大変になってゆく。革の質は決して革屋さんのせいではなく、牛の飼育状態によることが大きい。狂牛病の為に牛を大量に処分しざるおえなかったり、狭い牛小屋で抗生物質と成長剤漬けにされた牛達の革はしまりのない体格と共に、革のキメが荒く、ベインマークが多く、伸縮性が悪くなるのです。


 革の危機は靴屋にとって重大です。ヨーロッパの先進国ではベジタリアンがかなり多いい。ルイ・ヴィトンは早くから革の危機に目をつけて成功しましたし、今後も革の問題は合皮なのだから問題ないでしょうね。ヴィトンを持ちたいとは思いませんが、たいしたものだと思います。


私のイギリスの友人も2人に1人はベジタリアンで、私が肉汁を滴らせながらローストなどを食べていると、嫌~な顔をして『ベジタリアンへの薦め』をとくとくと説かれたりしたものですが、「革を扱う職業の者が肉を食べなくてどうする!!しかも、肉は旨い!!」と反論して、口論へと発展して行きましたが(笑)、皆さんもなるべく自然飼育の良い肉を食べて貢献してください。(笑)


欧米には、ベジタリアンの他に”ベーガン”と呼ばれる、肉も食べない革製品も身に着けない人達と”フルタリアン”と呼ばれるフルーツしか食べない人達もいました。


話が脱線しましたが、クリッキング。現在はゴムシートの上で革を裁断しているのですが、これがあまりよくない。ナイフの入りが今ひとつ力を入れないと綺麗にいかない。イギリスでは、クリッキングはライムの木の分厚い板(クリッキング ボード)の上で必ず裁断していました。ライムの木は程よく柔らかいので革を裁断するとき一緒にボードにもナイフがしっかり入る為、切り口がスパッ!っと力を入れずに切れる。クリッキング ボードは120cm×100cmくらいの大きさで厚さもかなりあり、余りの重さの為持ち帰るのを断念したのですが、悔やんでいます。どなたか、ライムの木材を見つけた方どうぞお知らせくださいませ。(頼むよ~みんな!)

お疲れ様です

先週は、風邪やなんだでお休みする生徒さんが多かったのですが皆様どうぞお大事に!


土曜日の午後のクラスで、生徒さんがフット・プリント持参で足型を取るのを手伝いましたが、興味があったので面白かったです。足の測定をする為の道具は沢山ありまして、フットプリント、ハイトゲージ、ヒールゲージ、なんと呼ぶのか解りませんが石膏で足型を作るものなど。私は紙とテープメジャー、鉛筆、甲の高さを測るために定規を2本(ハイト ゲージの代わり)です。今のところそれらで問題は出ていないのですが、かかとの脇のカーブがしっかり図れるようなものがあると良いかな。木型を作るときに”かかと周辺”は大切。かかとがしっかり押さえられていないと、ジョイントやインステップをしっかり作ったとしても、足が靴の中で滑って位置がずれ、何にもならなくなる。また、かかとが左右に揺れる靴は本当に足が疲れます。たまに注文靴をしている方の中に『紐で絞めりゃー大丈夫だよ!』なんていう人がいますが、何の為の”注文”靴屋なのだろう?と疑問を持ちます。現在お教室で木型を作っている人達がそろそろフィッティングに入るので、楽しみと恐怖でいっぱいです。(笑)


今日は久々に休日を取りました。息子と久々に新宿にショッピング! と言っても、息子も私もショッピングは嫌いなのですが、息子が4月から小学生になるので入学式のスーツを買って、ついでに私のスーツも。息子のスーツは値段に慄きながらも(夫のスーツとほぼ同じ値段!)直ぐに決まったのですが、私のフォーマル スーツはもう過酷なショッピング。普段からスーツなんかとまったく縁がないし、試着するたび鏡に映った自分に『この人誰?』って一瞬記憶喪失に。でも、買い物でだらだらするのって大嫌いなので、”サイズが合う”という理由のみで一着購入。(なんだか情けない大人です。。。)ショッピング後は親子共々ぐったりしてしまった。せっかくの休日が。。。。家に帰って『餃子が食べたい』と言うので、餃子を作ることに。息子の包む餃子の不恰好さに笑っていたら「俺のは味で勝負だ!」と。(笑)夕飯食べたら、元気回復!今夜こそは、買いだめしてある(買っても見る暇がない)DVDを見て、長風呂に入って、ベットの中で最近嵌っている”土屋賢二”の本を笑いながら読んで眠りましょう!今夜は明日のことは考えないぞ!

これでいいのか?

先週、今週共にお教室内が意外と静かです。「どうしたんでしょうね?」「なんか静かですね?」などのひそひそ声も響きわたるほどの無駄話のあまりないお教室。本来のお教室とはこういう空間なのではないだろうか?緊張感を持ち、汗を流し、0.1ミリ単位のラインを大切に技術を上達させ、人間を磨いていく。。。


ところが、今までのbench work studyときたらどうだろう?貧乏自慢と物忘れ自慢に爆笑し、やっと出来上がった靴を先生に見せると先生は「あの袋に入れておきなさい、そうそうあれ、燃えないごみ入れ!」などと言い、不謹慎極まりない。これで、いいのだろうか?今日真剣に悩みました。1分間ほど。


bench work studyの良さはナンだろう?と考えた時、皆さんの「コミュニケーション」がとてもよい。間違いを犯しても笑って見せ合い、自らがみんなの『見せしめ』となってよい方法を伝え合っている。(または馬鹿にし合っている)私のいたわりのある指導に対して(または毒舌に対してとも言う)、『意地悪ばばあ!』と今日言われましたが、こんな和気藹々なお教室が他にあるでしょうか!(特に先生を「ばばあ!」と呼ぶ4歳年下の生徒は他にいるはずはない。)


今日のクラスからは再び無駄話がやっと出始め、腰痛の為のよい腰巻が「通販生活」で買えることや、注文枕は新宿の高島屋で買える、失業保険はあてにならない、などの社会情報を生徒さんから得て、『これでいいのだ』とバカボンのパパの真似をしながら家路を急いだのでありました。


早く春が来て、注文靴屋の方の忙しさが落ち着いて、まともな思考が出来る自分に戻りたいです。(涙)

速いぞ一週間

一週間が経つのが異常に速い今日この頃。仕事の締め切りが3月末にどばっ!!とありまして、時間に追いまくられて生きてるんだか死んでるんだか、神経が麻痺してきました。そんなわけで(?)、昨夜は1ヶ月半ぶりに六本木へ繰り出しました。仕事で疲れている上に、なぜ遊ぶ?とお思いの方も多いでしょうが、その質問の答えは私が知りたいです。(泣笑)


六本木のバーで友人のソウルバンドが演奏するので行ったのですが、途中でぶっ倒れるかも知れないので、看護夫として夫を同伴(笑)。ところが、倒れるどころか一緒に熱唱してしまった!!やっぱり、いいですね~ソウルは!音楽は!心の洗浄になりました。人間遊びは大事。特に私には必需です。


でも、やっぱり疲れたのか、たった2杯のジン・トニックですっかり酔っ払ってしまい、帰りはタクシーに乗って行き先を告げた後意識を失いましたが、自転車を止めてある狛江駅で起された時には疲れがだいぶ回復してました。その後自転車に乗りながら、いつものようにサム・クックの歌を熱唱しながら家路を辿ったのは言うまでもありません。(笑)狛江市の住民の皆様いつもご迷惑おかけして申し訳ございません。でも、日課なんで。。。

海馬 かいば

面白い!『海馬 脳は疲れない』  著:池谷祐二 糸井重里 新潮文庫   


今日のお教室でも話しましたが、この本「30歳を過ぎていよいよ人生楽しくなるわ!」と思わせてくれます。今までの「頭がいい人」「頭の悪い人」に対する考え方ががらりと変わります。この本を早速購入します!とおしゃっていた方もいましたので、あまり細かくは書きませんが、人間の脳自体は30歳や40歳を超えた方がむしろ活発になり、30歳を過ぎたあたりから別の動きに入り、以前自分が発見したものに近いつながりを感じる能力、実生活に結びつけた論理的な思考は30歳を超えてから飛躍的に伸びるそうです。


脳は自分の都合のいいように解釈をするそうで、その実験も出来るページがあり、わーなるほど!!面白いですよ~。皆さんも是非試してみて!目からうろこ。ぽろぽろ。


なんだか、専門用語だらけでカレッジ卒業以来手つかずでいた、足の解剖学と動力学をしっかり一から学び始めよう!と意欲に燃えてきました。解剖学の本を沢山シノミヤさんから紹介していただき、「ユキさん、知恵熱出すんじゃないですか?」と一言余計なことも言われましたが(笑)、私の脳もこれからです。やりたいことは何でもやるぞ!人生の本番はこれからだ!


悲しいお知らせ

本日、シューデザイナーの高田喜佐さんがお亡くなりになりました。まだ64歳でした。喜佐さんに憧れて、シューデザイナーを目指した方も多いことと思います。ご冥福をお祈りいたします。