”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室 -145ページ目

快楽のすすめ

先日、家で靴を作っていたら左手の親指を深々とカット。真っ赤な血が滴り、一瞬ギョ!としたが指を切るのなんて慣れきっていたので、あまり傷口も見ずに絆創膏を巻いて仕事を続行していたら、どんどん絆創膏から腕の方に血が流れ出して、傷口を見てみたらクラクラしてしまった。こんなに深い傷見たことない。今にも傷口がしゃべり出しそうな顔してこっちを見るので、絆創膏をきつーく4枚使って巻いて仕事を続行。つり込みまではその日に終わらせたかったので、がんがん釘を打ち込んでいたら、何たることか重症を負っている親指をハンマーで思いっきり叩いてしまった。一瞬目の前が白黒画面に!体が打ち震える痛さ!(涙)


その様子を一部始終冷静に見ていた夫がポツリ。「なんか、中毒患者みたい。」 「何の?」  「靴作りの」

は~、やっぱり?なんか最近そんな気がしていたよ。オーダーが詰まってて週に7日靴を作っていると思っていたが、それ以前に靴を作っている時が一番落ち着くのだ。今夜はゆっくりDVDでも見て。。。なんて、考えが浮かぶと『その前に、インソールだけ付けておこう!』って仕事が始まってしまう。


これは一体ナンなんであろうか?と今日一日ワークショップで靴を作りながら考えた結果、私にとって靴作りとは『快楽』なのであると結論。なんだか、巷では「幸運をつかむ、何とかメーク!」だの「幸福な生き方」だの幸福幸福と電車のつりビラがうるさいが、(そうでもないか?)多くの宗教家や道徳家が幸福とは”持続的な生活の満足”であり、「快楽」とは”瞬間的な満足”であるといって、なんだか「快楽」を軽蔑しがちですが、幸福ほど曖昧で、実態がつかめず、生活感みえみえの甘ったるい言葉で、優等生のような響きがあるでしょうか!まったく胡散臭い!それに比べて「快楽」は密かで、とても個人的な美学を秘めた怪しげな響き。いいじゃないか、瞬間的な満足!幸福なんかを求めるのを止めて、快楽へのめり込もう!幸福を求めるから自殺者なんかも増えるのだ。快楽を求めれば、もっと一日が充実すると思います。ちょっと、指の痛さにより脳がおかしくなってしまったのかも知れませんが(笑)、明日も快楽に溺れる私です。(怪しげだな、笑)

オノ・ヨーコ

朝、息子の幼稚園の「作品展」へ母を誘いに行くと、『見た?オリンピックのオノ・ヨーコのスピーチ。かっこよかったわよ~。本当に彼女はかっこいいわね~』と60歳を過ぎた母が『かっこいい!』を連発。私は家を出る15分前に起きたばかりで(笑)ヨーコ・オノを見ることはできなかったが、彼女は実際かっこいい。イギリスにいた時はテレビで彼女を見る機会は多く、彼女のエネルギッシュさといつも何かに夢中になっている様子は本当に素敵だ。飯村隆彦 著 「YOKO ONO オノ・ヨーコ人と作品」 には彼女の波乱の人生が書かれていて、彼女のファンになること間違いなし。お勧め本。彼女のお気に入りの靴は4センチヒールの黒のジップブーツ。彼女は同じものを数足持っているそうです。ふふふ。。。私が普段気に入って履いている黒のブーツは彼女のブーツをそっくり真似して作ったもの。(実はここだけの話ですが(笑)ヨーコ・オノのブーツを実際に触ったことがありまして、その時にすっかりコピーしちゃった!ミーハーだな、はは。)


私には憧れの女性が数人いるのですが、まずはフォト・ジャーナリストの吉田ルイ子。彼女は60年代NYのハーレムで暮らし、当時の黒人運動をハーレムの人々の目で見、黄色い東洋人として見、人間として見てきた人である。彼女の書いた本『ハーレムの熱い日々』『吉田ルイ子のアメリカ』『自分をさがして旅に生きてます』は私の本棚で紙は茶色く変色してしまっているが、何度も何度も読みそのたびにエネルギーをもらってきた。オノ・ヨーコと同レベルで尊敬している。まだ読んでいない方、特に自立した女性を目指す方必読!彼女の写真のモデル達はストリートの子供達であろうと、売春婦であろうと、ブラックパンサー、ジプシー、etcであろうと、やさしく強烈なインパクトを与える目をしてる。私が最も好きな写真はジャズ サックスプレイヤーのウェイン ショーターと娘のミヤ子ちゃんとの写真。彼が子供を優しく愛していることが伝わる暖かいワンシーン。うっとり。


最近夢中になっている方は、月間情報誌『選択』に「思い出の国 忘れえぬ人々」を連載している、元世界銀行副総裁の西水美恵子女史。世界の政界、経済界の大物と対等の立場でずけずけと物申し、気風のよさと男気(?)溢れる言動には驚くばかり。女性というより人間として、こんな人も世の中にはいるんだな、と。しかも、緊迫感のある真剣勝負の会談でも決してユーモアを忘れず明晰さと知性をフルに発揮する。権力悪を極度に嫌い「卑怯者めが!」と怒りを爆発させれば政治作戦を練って乗り込んでゆく。誠にあっぱれ。読んでいて、気分がすっきりする。


巷には「どお?」と聞けば「え~あはは。わっかんな~い。」と応えるであろう女性の多い中、自分の信念を貫き世界で颯爽と活躍している日本女性がいることは、なんと心強いことであろうか。女の子よ大志をいだこう!!






2月11日(土)はお休みです。

今週2月11日(土)は祝日の為お休みです。お間違えのないように。


先週は新しいメンバーの方々がスタートし、ナイフ研ぎ、インソールのつり込みに奮闘していました。インソールのボサボサした繊維をとるのが難しかったようで、『コツは何ですか?』と聞かれましたが、コツとは最上の方法、すなわち『最も合理的な方法でなされている』ということで、「そのやり方が身についている」ということです。ただ何も考えずに毎日やっていれば身に付くということでもなくて、努力工夫にはプラスになる努力工夫と、マイナスになる努力工夫があり、プラスになるものとは「それが正しい方法で行われているということで、マイナスになるものとは、それが正しからざる方法で行われていることだと思います。


ナイフの持ち方一つにもコツがあるわけで、早くそれを身に付けて欲しいと思います。とりあえず、私の手の動き、工具の持ち方を参考にしてくださいね。


何に対しても人生に当て嵌めがちな私ですが、上記の「コツ」は日々の生活にも当てはまるのではないでしょうか?情熱はあるのに空回りしてしまう時などは、いったん冷静になって現在の自分が”プラス”の努力工夫をしているのかどうかと考える必要があると思いますね。


2月に入っても「悩み相談」を受けていますが(笑)、将来のビジョンを持って正しい方法で、前進していってもらいたいと思います。と言いつつ、誰か私の悩みも聞いてよ~(泣)

新しいクラス スタート

本日は新しいクラスがスタートしました。ほとんどの方が、初心者でラップ・スティックのサンドペーパー張りから始まって、インソールのつり込みまで。ナイフを研ぐことに集中して、bench work study恒例の『指先から血』も2名ほど。でも、皆さん楽しそうで良かった良かった。彼らは今日の時点では、これから待ち受けている苦難の日々を知るよしもなかった。。。なんて。(笑)


お教室は既に全クラスほぼ満員。靴作り人気は何処まで続くのだろうか?このまま、どんどん自分で靴を作れる人が増えて、自分の靴は自分で作るのが当たり前!なんて未来が来るのもいいですね。(それはないか。。)


今年は新年早々色んな問題抱えて煮え切らない気持ちが続いていましたが、人間前進あるのみです。考えている暇があったらどんどん行動し、転んでも起き上がっていけばよいのだ。強い肉体と強い精神力を持ち、強い靴(?)を作れる人間になりたい。とにかく強くなりたかばい。(東京タワーを読んで九州弁が移ってしまった。笑 お勧めの本!)

仮縫いのフィッティング

今日は仮縫いのフィッティングのお客さん3名。この仮縫いのフィッティング、最も緊張しどきどきする瞬間です。以前までは、フィッティングの前日は必ずお客さんに靴を履かせるリアルな夢を見て、夢の中では注文と違う靴が目の前に出てきたり、明らかに3サイズくらいも足より大きかったりして、ぎょっと!!として心臓バクバクして目が覚める。。汗でべっとり。。という悪夢をみたりしていたのですが(笑)、最近はこんな恐怖な夢は見なくなりましたが、まだ朝は胃が痛むような緊張をします。で、今日。なんと、3名のお客さん全員から笑顔がいただけて、『ハレルヤ~!』(ゴスペル調に!笑)と叫びたくなる程嬉しかった!!


作っているときは、色々と葛藤があるわけですよ。この足の具合で、この木型の削り方で判断は正しいだろうか?シェープはもっとこうした方がいいかしら?ああした方が。。。。木型にアッパーをつり込んで、トウパフまで付けておいて気に入らず、時間との葛藤になった時、『やっぱり妥協は出来ない!』って全部アッパー外して木型を削り直すとか、結構涙ぐましい努力もしてきて、自分の至らなさに打ちのめされたり。。そんな思いでがんばって、お客さんからの大きな笑顔。もう、これ以上嬉しいことはないです。(号泣)


人から笑顔をいただける仕事を持てたことは、なんて幸せなことなのだろう!笑顔がこんなにも人を幸せな気分にしてくれるなんて!苦労した思い出も一気に吹き飛び、いい思い出に変わります。


妥協せずにやる。真摯な気持ちで、ひたすらやり続ける。自分を信じて正直に向かえば、こんなにも嬉しいご褒美がいただけるのですね。今日は本当に良い日でした。益々ヤル気増強!!(笑)一人でも多くのお客さんから、大きな笑顔がいただけるように、毎日 毎時間 毎分を一生懸命に取り組んでいこう!いや~、今夜はビール片手に幸せっす。(笑)

エプロン職人募集中(笑)

本日も靴が仕上がった方が2名。お2方ともこの1年、四苦八苦してやっと出来た靴。ヒールの積み上げの時には可哀想なくらい、時間がかかってしまって。。。思い出深い1足になったのではないでしょうか?途中で諦めなくって良かったね!


さて、このところ不調が続いていまして、今日の教室でもため息つきながら『このところ、何にもいいことないよ!』など愚痴ってしまいましたが、なんだかんだ皆さんと爆笑して元気をもらいました。今日の午後のクラス、笑いのつぼにはまり過ぎて、また涙流して笑い転げてしまった!面白い生徒さんが多くて、私は幸せ者です。


この午後のクラスで、ソールの蓋開けの時に使う特殊な工具を持っている方がいて、(以前彼がいた靴の学校のオリジナル工具!)見せていただきましたが、見た目が物凄くかっこいい。使い勝手は?と聞くとちょっと『いまいち』(笑)のようですが、私は工具とか大好きなので、つい惹かれてしまいますね。工具屋さんのカタログって、使い方などは書いてないので、色々想像して『これを使えば、時間削減、効率良好に違いない!』などと思って、うっとり。その結果、出番のない工具が引き出しにいっぱい。。。。自分で工具なども一から作って見たいと思うのですが、老後の楽しみに取っておきましょう!(笑)


オリジナルといえば、エプロン問題。日本でかっこいいエプロン売ってるの見たことない。なんか、形や素材がダサい(死語か?)か、デザインは良くても、麻素材の靴作りには実用性にかけるものなど。。。前々から、bench work study オリジナルのエプロンを作ろう!と盛り上がっていて、デザインもほぼ完成しているのですが、だれか作ってくれる人いません?既に、物が出来たら買いたい!って人もいますもの。きっと沢山売れるよ~!(笑)エプロン職人募集中。

年初めの勉強会

今年初めての勉強会。ウェルティング以降の工程について検証。スプリットリフト(鉢巻)、シャンク、フィラー、出し縫い、ヒールについて。


スプリットリフトはスクウェア・ウェイストの場合、ウェルトに繋げるようにして付けます。スプリットリフトの形をしっかり整える事によって、ソール全体の形が決まります。スプリットリフトが出すぎていたり、入りすぎていたりすると、ヒールのバランスが崩れてしまうので、注意を要する。アッパーの踵からのラインが綺麗にストン!と行くように出来ると、ヒールが垢抜けて見えます。べヴェル・ウェイストの場合はソールを付けてから、スプリットリフトをつけることによって、木型の内側と外側のギャップを取り、ヒールを積み上げやすくする。結構気を使うところです。


シャンクは革のシャンクを使っている人と、メタルシャンクを使っている人では、メタルの方が圧倒的に多かったです。私は日本に帰ってきてから悩んだ結果、革のシャンクを使っていますが、今ひとつ違いがどのように出るのか解らないまま、形が形成しやすいのとイギリスで使い続けていたのでコストは高いが使うことにしていました。某職人のお客さんの中にメタルと革のシャンクとでは、やはり履いた感じが違うという人が何人かいらして、革だけを素材としている中に、異物のメタルが入っていると、そこだけ硬さが違うので違和感があるとのこと。でも、一番の違いは修理するとわかるそう。ほとんどの靴が、修理して中身を空けるとほとんど、シャンクは割れているとのこと。木や竹のシャンクは、直ぐに割れてしまうのは聞いていたので、私の中では問題外だったのですが、メタルもとは。。。大体、既製靴でお客さんが「インソールがやわらかく感じて、馴染んで来ました」なんていっているときは、シャンクが割れている時が多いとか(!)既製靴で、折れていないのが『オールデン』の靴だけだった、という話も聞けてちょっと『オールデン』見直しちゃいました。私のお客さんにもファンが多いです。

イギリスのビスポークは革のシャンク。メタルを使う場合は35ミリ以上のヒールの高さの時のみ。


フィラーは練りコルクやシートコルク、フェルトと色々ですが、インソールの処理の違いによって使いやすいものが違ってきます。ある程度のクッション性と防水性があるものであれば良いのですが、私のインソールの溝の掘り方と修理の時の事を考えると、現在使っているシートコルクが適していますね。


今回実感したのは、詰め物も全体の調和が大切ですね。これが、一番!って物はなく、「こういう場合にはこれ」って、作り方や整え方の違いに合わせて、臨機応変に使い分けるのがベスト。靴作りって、本当に面白いな~。まだまだ、勉強しなくっちゃ!

大雪

昨日は大雪の中、皆様ご苦労さまでした!もっと、皆さんお休みするかと思っていましたが。。。(嬉泣!)

午前中は『家庭の悩み相談 後編』(笑)とスピーカー&ヘッドフォンについてあれこれ話して面白かった!新しいワークショップに引っ越したら、手作りスピーカー(Sさん作)から流れる『DEEP SOUL 』でむせび泣きながら、靴作りをいたしましょう!haha


このところ、皆さんひたすら『すくい縫い』と『出し縫い』をしている人が多く、たいして教えることもなく、もてあましてしまって、上記のような会話ばかりしていますが、2足目作っている人達はかなり上達してきていて、いい感じです。今後はもっと全体のバランスと細部のキメや〆について検討していきましょう。益々手を使うのが面白くなっていくことでしょう。工具は今月末に注文出すので、来週まで受け付けます。面白い飾りを注文している方もいるので、届くの楽しみです。




習うということ

寒いですね。私は寒いの好きで、朝の冷たい空気を浴びると、気分も引き締まり『今日もやるぞ!』という気持ちになります。靴を作っていると、体中熱くなり汗かきますし、冬は靴作りに適しています。


腱鞘炎がひたすら悪化していて、医者に「治したければ、仕事を変えること!」と冷たく言われまして、『今更私に何しろっての!ユキコ負けない!』(笑)って闘士がメラメラ。なんか、指を鍛えなくては!と思っていた矢先、Phineas Newborn Jr. という大好きなジャズ ピアニストのDVDを寝る前に見てたら、これだ!と。


小学校の時6年間、嫌々習っていたピアノを再度始めよう!その当時、何が嫌だったって、先生がヒステリックで、私が間違うたびに背中や手にビンタが飛んできて、今思うと虐待だよな~あれは。私も、毎週びくびくしてて、楽しくないの。音楽大好きなのに。楽しさを学べなかった。親に訴えても「一度はじめたものを途中で止めるなんて、ろくな者にならない!」とか言われ、その後パンク道に突き進んでいたわけですが(笑)、あの時、先生が人にものを教えるって事を知っていたら、楽しむことが人を伸ばすって事を知っていたら、と悔しい思いに駆られます。そして、私はこんな腱鞘炎になるような柔な指ではなかったはず!今年はピアノがんばるわ!(って、そんな時間あるのだろうか?)


お教室でもたびたび思うのですが、何かを習う時は必ずその『基礎』はしっかり教えてもらわないと、人は伸びません。習う側も、教える側にとことん食いついていかないと。『一度言ったことは、もう言わないぞ!』なんて先生が高校の時いましたが、愛がなさ過ぎ。まー、よーく聞いておけ!って言いたかったんだろうけれど、自分が面倒臭かったとも取れる。(笑)自分で考えて行動し始めるのは、『基礎』が終わってからでないと、よっぽどの才能がある人意外、一生いい加減な『自己流』で終わってしまうような気がします。まあ、それはそれでいいのかも知れないけれど、お客さんとの共有範囲が狭まりますね絶対。そんなわけで、皆さん、一緒にとことん楽しみましょうね。そして、とことん食いついてきてください。でも、決して噛み付かないでね。

e-job の山村さん

前回、職人希望の方々から相談を受けています。とお伝えましたが、その後、8年前にロブに来店された時にお会いした、靴職人希望だった山村さんという方からメールを頂きました。現在は九州で靴職人として働いてらっしゃるそうで、私も彼のメールから元気を頂きました。以下は地元新聞に掲載された記事を送ってもらったものです。皆様にもヤル気と勇気が出るのでは。人の縁とは面白いものですね。また職人仲間が増えた感じで、”いいぞ!日本!注文靴を発展させようではないか!”などと、落ち気味だったテンションが上がりました。山村さん、どうもありがとう。
夢の“靴職人”に希望の一歩 地元で修業7年余…
靴のオーダーメード、修理をしている山村浩二さん
山村さんがオーダーメードした靴

 「顧客のニーズに自分の感性をプラスして、足にぴったり合う靴を作りたい」。大分市の山村浩二さん(29)は、今では珍しい靴職人として起業した。

 大分高専卒業後、市内の靴店でアルバイトをし、靴への興味を募らせた。二十一歳で単身、英国を訪問。王室御用達の老舗オーダー靴店などを見学し、刺激を受けた。帰国後もアルバイトで生計を立てながら、市内では数少ない靴職人、其田元久さん(79)=王子北町=の店へ七年余り通い、腕を磨いた。

 元久さんと一緒に仕事をする長男の俊一さん(46)は「最初はあきらめさせようとしたが彼の粘りに負けた。朝まで働き、仮眠後に店に通って来る彼に、次第に夢を手助けしてあげたいと思うようになった」と振り返る。

 山村さんは結婚後、高城新町の実家で修理業を始めた。〇五年十月にオーダーメードと修理の工房「e―job(イー・ジョブ)」を開業。年末に市内生石のマンションに移り、靴職人としての道を本格的に歩み始めた。

 既製靴に押され、靴をあつらえる店の多くが姿を消す中、最近は百貨店の靴売り場に十万円を超える高級靴が並ぶなど、静かなブームもある。オーダーメードは東京など大都市で十五万円程度からが相場で、分業も進んでいるが、山村さんは七万円からと低めに設定。採寸から本縫いまで一人で全工程をこなす。

 自宅の一室をサロンとし、顧客とコミュニケーションを取りながら、手入れのアドバイスなどをする山村さん。「もうからないが、靴が好きでたまらない。商売として成り立たせ、将来は店を持ちたい」と夢を語る。

 独立した山村さんに、俊一さんは「長く続けるにはいい仕事をしなければならないが、彼ならできる」とエール。俊一さんの長男も〇六年春に高校を卒業し、元久さんに弟子入りすることになっており、「若い人たちが父の代の技術を伝えてほしい」と期待している。

 「e―job」への問い合わせはTEL050・3444・2471へ。