先のヒガシの会見からジャニーズのキャンセルドミノが続いているけれども、背景にはこういった者の暗躍があると思う。

 

 ポール・クルーグマンは10年ほど前にゴールドマン・サックスやマッキンゼーの上級社員を評して「右に倣えのバカばかり(意訳)」と評したけれども、これは独創性とか論理的思考といった学者的資質がないという意味で、一般的には彼らは有能な人々である。デロイトトーマツもそうだ。MBAの経験主義で筋道もへったくれもなく、一部は呪術的要素も含んだ、「みんながそうしているから」で物事を進めるのは同地ではプラグマティズムという(草葉の陰のパースが泣いていると思うが)。

 

「キリスト教徒は地獄をつくりだすことによって救済への不安を生み(上掲引用)」

 

 これはキリスト教ではなく仏教だと思うが、そんなことは問題ではない。先の会見は私は二点問題があったと思うが、対策としては悪くなかったと思う。

 

 売り上げ1年間タレント分配の提案も、ジャニーズがジュリー藤島100%所有の会社であることを見れば、かなりの自己犠牲を含んだもので評価すべきと思う。ジャニーズ事務所の株式総額は1,000万円しかないが、ファンクラブの収入や出演料など総額は1,000億円を軽く超える。それを全て従業員に還元するというのだから、そんな企業がどこにあるのだろう?

 

※ もちろん素直に受け取ってはいけない話である。が、「出演料だけ」などとしょぼいことを言っていては助かるものも助からないだろう。

 

 先の会見については誤りは二つあったと思う。一つは総株主のジュリー藤島がジャニー氏から相続した遺産の総額を明らかにしなかったこと。これに十分な額があれば財団を構成して賠償責任を個別化でき、少なくとも問題が会社に波及することは免れる可能性があった。これにヒガシが「会社としての」ジャニーズ事務所の求償について言及すれば対策とすれば完璧であった。

 

※ ほか、ジュリー藤島の100%株式保有も間違いとして挙げる者もいる。彼女が性犯罪の共犯ならそれもありだろう。

 

 もう一つは「ジャニーズ」という社名を変更しなかったこと。非難の全体を見れば賠償財団よりもこちらの方が批判を受けており、賠償1:社名9くらいの割合である。性犯罪者の名前を社名に残し続けることにつき、納得できる説明は会見では得られなかった。

 

※ そもそもヒガシも井ノ原も困っていた様子だった。

 

 ヒステリックでバカバカしい非難の様子を見て、さすがに被害者団体さえ契約解除を留保するように要望書を出したけれども、先にも述べた通り加害者はすでに故人で、少なくとも罪については、故・加害者と会社や現経営陣との間には連続性は観念できない。故人のジャニー喜多川と法人としてのジャニーズ事務所は別人格である。法人格否認の法理を適用するような事情も聞いていない。

 

 現在の役員や幹部がジャニー同様、訴追されるべき懲役30年の罪人ならともかく、現在のジャニーズに対する批判には「同じ名前で出ています」以外にまともな理由がない。犯罪として論ずるなら「ファクト」が欠けている。ファクトのないものに責任はない。

 

 これはクルーグマンが当たっている。彼らが大口顧客としていたような人々はおしなべて「ばか」なのである。ばかにはばかの言葉がある。裁判で争うのは時間がかかりすぎる。そしてその「ばか」に合わせることで巨大エンタメ産業になったジャニーズなのであるから、私は狂乱じみているし、バカバカしいと思うけれども、上述の二点(ジャニー遺産と名前)についてはもう一度検討してみてはどうだろうか。

 

 長い人生を生きていると理屈では説明できないことを感じることがあるが、理屈に合わなくても有益なことがあり、そういったものは「経験則」として取っておくと役に立つことがある。これらは一見するとつまらないので人に言うのも憚るが、その場になって思い出すようなものである。

1.タバコ一本吸う間に丼が出ないラーメン屋は80%まずい

 今は禁煙の店が多いので、概ね3~5分と考える。調理の順番もあるので必ず当たる法則ではないが、かなりの確率でこの通りになっている。行きつけの店がそうなっていたら料理人が変わったか経営に興味を失ったかのいずれかであり、通うのを止める理由になっている。

 

※ 自分でも不気味なくらい良く当たる法則である。実は盛り付けに案外時間がかかることは手付きを見ていると良く分かる。また、時間内に供するには食器が良く整頓され、ウェイトレスとの関係も円満でなければならない。

2.官公庁の周囲500mは爆弾が落ちたと思え

 旅先などで重宝する法則である。もちろん役所の近くにもコスパが良く美味しい店はあるはずだが、見知らぬ場所で見つけることは不可能に近いし、今のところ、的中率はほぼ100%である。知っていながら出来心で入店してしまったとか、気がついたら近くに合同庁舎が建っていた時には後悔もひとしおである。

※ どうしてこうなのかは書いた本人も分からない。ただ、役所の外はともかく、職員食堂は廉価で良質なものが多い。なお、官公庁には国立大学法人や海上保安庁、自衛隊施設も含む。また、現在は違う場所にあるとはいえ、かつては役所の近くにあった店も原罪としてリストに加えている。

3.民営化は仕事が遅くなる

 バランスシートでは効果は上がっているのだろう。しかし、実際の印象では民営化の職員は責任の所在が曖昧で専門的なスキルが低いかなく、結果として仕事が遅くなる。行政庁で「〇〇センター」という文字を見掛けたら、標準処理期間プラス☓日、概ね10日以上と見ておけば安全である。

※ もう一つの問題は派遣職員が増えたことで正規職員の裁量が定見なしに増大していることである。まるで中国の役所のようであり、法律は士業者など外部への規制には熱心だが、対応する職員、つまり行政庁内部の規制については甘いか不十分で、それで勘違いする職員が出てくる。議員の影響力の増大や、裁決と執行の遅い日本の法システムも悪い方向に加担している。今の様子だと、そのうち書類を取るのに賄賂が必要になるかもしれない。

4.金で買った友人は必ず離れる

 男でも女でも一見裕福そう、得だからという理由で近づいてくる人がいる。しかしそういう友人は金の切れ目が縁の切れ目で長続きしない。典型的なのは自動車ディーラーの営業とか、仕事や学校で自分から求めていないのに近づいてくるような人である。なお、クルマの場合は、私の担当には最初から言い渡してあるし、十年以上の付き合いだが、商談でも一切の私情を交えない。

※ それでも相手に全く配慮しないということはない。

5.経営者が派手な服装をしていたらオプションを考える

 一見商売繁盛に見える事業所でも、長い間やっていると奢りが生じ、経営が弛緩することがある。最初から派手なのは論外だが、黒い大型のSUVやバンで乗り付け、客には一顧だにせずに従業員に文句を言っている経営者を見掛けたら、現在損はなくても同じ内容の代わりを確保し、付き合いを徐々に減らしていくべきである。一見分からないところで、実は必ず損をさせられている。

※ ビッグモーターの例を見れば容易に理解できることと思われる。展示車に関心がなく、顧客に愛想を振り撒かない管理職の会社に関わったことでどんな損があったか、あるいは顧客の不利益が制度化されていたか考えてみるといい。

6.人の噂話をする人間とは関わるな

 

 世の中には頼んでもいないのに、「あの人はこうした」「この人はこう」と人の話を持ち込んでくる人がいる。そういった人に私が言い渡すのは(でも治らない)「人の自慢より自分の自慢をしてくれ」という言葉である。多くの場合、操作的支配を目論んでいるか何か計略があると疑ったほうが良い。

 

※ もう一つ言い渡していることは「本人の言葉でなければ信じない、一切顧慮しない」という言葉である。基本的に伝聞は信じない方が良い。

 

7.転換人間に要注意

 

 世の中には面倒な仕事は他人に任せる。人に押し付けるという世渡り上手な人がいる。管理職に多いタイプだが、多くはあまり考えておらず、思慮も浅く、何もしないので知恵もなく、人当たりがよいだけである。あらゆる場面で関わると損なので、関わらずに時間を節約しよう。

 

※ 筋道立てて説明しているか、その場の事情を理屈に盛り込んでいるか、相手の立場に対する配慮が見られるか、一貫性があり、発言に責任を持っているかといったことは社会階層に関わらず、あらゆる場面で平易に観察できることでもある。それができていなければ、どのように社会的地位の高い人間でも付き合うに値しないし、付き合って得るものも何もないだろう。ただ、往々にして情に流されることはある。


 ほかにもあったような気がするが、思い出せないのでこのくらいにしておく、特に食べ物関係は的中率がほぼ100%に近いので、私もこれらが論理的に正しいとは思っていないが、知らない間に意識として残り、結果として活用することの多いものになっている。

 皆さんはどうだろうか?

(補足)

 上のものは私が持っている経験のセット、つまり偏見だが、語学の学習では弊害になる場合がある。ある外国語の本に「赤ん坊はどうやって言葉を覚えますか、大人みたいに過去の経験から読み込むんじゃないんです、ただ聞くんです」というものがあった。実際これは有益なメソッドだったと思う。経験則は長い時間の試練に耐えて生き残ってきたから経験則であって、単なる知識とは違う。適用範囲はごく狭いものと考えるべきで、万能の法則ではない。上記のようなものを金科玉条と考えず、時には捨てることも必要である。

 

 ウクライナの戦いはこの一週間で顕著な進展を見せており、ザポリージャではロボティネの第一防衛線を打ち破り、ゾロタ・バルカの第二防衛線からトクマク近郊(第三防衛線)に近づいたことが報告されている。同時にロボティンの東10キロにあるベルボベやトクマク西方のタブリアでも戦闘が行われた。

 ロシア軍の防衛線は評価によると最前線である第一防衛線が最も強固で、ロシアは資材の60%をこれに投入し、以降の防衛線はそれほど強くないという。竜の歯というコンクリート製の防御物はウクライナ戦車に易々と突破され、これが地雷や良く作られた塹壕ほどには役に立たないことを示した。

 典型的な防御陣は最前部に対戦車壕が掘られ、その200~300m後方に竜の歯を中心とした障害物があり、そのさらに後方300mに塹壕と砲撃陣地がある。これまでの戦闘は砲撃戦や対戦車ミサイルが中心で、対戦車壕のかなり手前で行われていた。塹壕への攻撃はドローンが行っており、防衛線の手前の手薄な塹壕では歩兵が装甲車で乗り付けて掃討戦を行っていた。ヘリからの対戦車ミサイルや砲撃もあり、2ヶ月の間、ウクライナ部隊は第一防衛線には近づけもしなかったことがある。

 ロシア軍は砲兵隊に加え戦車や車両も従来の1.5~2倍のペースで破壊されており、また、ロシアでも少数しかない特殊車両の被害も増えている。まだ先があるが、ウクライナ軍が「竜の歯」も含むロシア防衛インフラセットをフルコースで打ち破ったことはトクマクやメリトポリ攻略に向けた大きな進歩といえるだろう。

※ 司令車や通信、レーダー車両といったものである。

 一方で、大砲や機動兵器が破壊されている割にはロシア歩兵の死傷者は少ない。装甲兵員輸送車の損害率も横ばいで、これは車両が払底したのか、歩兵は陣地を捨てて逃げ出したかだが、歩兵については2ヶ月、兵士によっては1年以上も戦っていることもあり、ウクライナの攻撃に対して「逃げ上手」になっていることがあるかもしれない。トラックが破壊される前に脱出するとか、装備を捨てて逃げるとか、囮を使うとか、ロシアでも生存のための様々なノウハウが蓄積されているようだ。

 大規模に攻撃されているのにロシアでは航空隊の損失がほとんどないことも、「逃げ得」疑惑を疑わせる。元々ロシア航空宇宙軍はこの戦いに消極的だった。総司令官のスロビキンが解任されたことがあり、敗勢にあるにも関わらず、空軍の出動は最小限しかない。が、出戦していればウクライナ軍に損害を与えると同時に、ヘリも航空機もそれなりの数を失ったものと思われる。空軍を含む防空能力が低下したため、ウクライナではバイラクタルが再び用いられている。

※ トクマク要塞には防衛線以外にもう一つの問題がある。市内を流れるトクマク川の上流にダムがあり、数十平方キロに渡って水を貯えていることから、ウクライナ軍が市内に突入した場合にはこれを爆破して進撃を阻止する可能性が指摘されている。が、この場合はロシア補給基地も冠水し、防衛拠点としてのトクマクは機能停止することから、最後の手段と思われる。

※ この2ヶ月の戦いでは滅法強かったロシア攻撃機と戦闘ヘリだが、精密攻撃のできるKa-52は戦闘機や対空ミサイルの敵ではなく、ジェット機のSu-25も主兵装は無誘導の大型ロケット弾で、戦闘ヘリは命中までホバリングしなければならず、ジェット機は雑な無誘導攻撃しかできないと、これらは陣地が近接し混戦になるに従い被撃墜が多くなると予想されていた。が、そんなことはなく、出動しないのでこれらロシア航空機は今日も無傷である。

※ この戦闘ヘリにも良いところはあり、二重反転ローターのKa-52はウクライナ軍主力のMi-24ハインドや他のヘリコプターに比べロール性能が良く、ワグネルの乱では撃たれた対空ミサイルをフレアを放って瞬時にかわすなど普通のヘリにはできない機動をしたこともある。が、かわせないことの方が多く、この争乱でも運の悪い機体が撃墜されている。

 英国国防省の定時報告は、従来はウクライナの攻撃線をバフムト、ベリカ・ノボシルカ、ザポリージャの三軸としていたが、数日前からバフムトとザポリージャの二軸に変更している。また、ウクライナ参謀本部もこれまではザポリージャ軸と呼んでいた戦域の表現を「メリトポリ軸」としており、作戦企図を明らかにしている。

 

 クビャンスクを含む東部戦線は膠着している。バフムトは市の南にある高地クリシブカをウクライナ軍有利に戦いを進めているが、戦力不足もあり押し切れずにいる。

 

※ この高地村はバフムト市を見下ろす高台にあり、当初から両軍の争奪戦の中心になっていた。

 

 ロシアはベラルーシから部隊を撤収させ、これらはバフムトかドネツク方面に再配置されると思うが、同時にベラルーシに本拠地を置いていた東部管区軍も撤収したと思われ、これはキエフの戦いで壊滅し、その後の消耗戦でも損耗しているが、我が国周辺を含む極東地域を管轄する部隊でもあり、撤退により懸念されたいたベラルーシ参戦、キエフ再侵攻の線は消えたと見てよいだろう。

 

 ウクライナが秘匿していた戦略企図を明らかにしたことは、国民の大勢と異なり、ゼレンスキー政府はクリミアを交換条件としての講和を考えていることになる。ロシアが講和に応じる可能性は高くないが、反撃の進展次第で両国の間に講和の条件が整う可能性はある。

 

 プーチンはウラジオストクに赴き、独裁者の金正恩との会談を予定しているが、この大きな北朝鮮と小さな北朝鮮の同盟は中国が二の足を踏んでいることもあり、あまり実りあるものにはならないだろう。

 

 

 

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(以上2023年9月10日現在)

 

 Yahoo!のニュースフィードは様々なサイトのいろいろな記事を集めてくれる便利なサービスだけれども、時としてあからさまに不快なタイトルや中身のない記事を連発することがある。なので、私もニュースフィードそのままで使ってはいない。

 上記のリストは私のパソコンの「Y!News excluder」に現時点で登録済みの不快なニュース発信元や含まれる言葉だけども、割と躊躇なく登録しているけれども、気に入らない記事を片っ端から排除しては見方が偏らないか、気づかないうちに少数意見を多数意見と思い込むような誤解をしてはいないかと勘ぐるものである。



※ ダイヤモンド・オンラインやAUTOCAR JAPANもそろそろ抹殺リストに加えようかと思っている。前者はヨタ記事ばかりだし、後者は日本で買えないインド車の新発売なんか読んでも何も面白くない。

 結論から言うと、「何も困らない」というのが本当で、フィードを絞って新聞やテレビを見て世間ズレがとか、ニュースが分からないということもない。煎じ詰めればこれらの情報は「元々要らない情報だった」ということになる。

 

(その他)

 このブログの主な記事タイトルは「今日の覚え書き」だが、同じタイトルが続いていると書いているこちらもわけがわからない。かといってタイトルを付けるほどの内容とも思えず、また考えるのも面倒なことから、今後は「覚え書き101」とか「~号覚え書き」とか番号を付けて整理することとしたい。

 

  あと、フォロー管理だけども、大半はくだらない売り込みブログで申請されても削除しているけれども、内容に関わらず、内容のあるものは承認します。まとめて見るので承認が遅れることがありますがご了承ください。

 

 BBCが端緒となったジャニーズ性加害事件は日本では東山(ヒガシ・少年隊)新社長が就任し、事件の記者会見を行ったが、社長と同席していた井ノ原(元V6、同輩にひらかたパーク園長の岡田准一がいる)の答えは評価の割れるものだった。



 上図はビッグモーターの件で使ったチャートだけども、少し改良してこの件でも用いてみたい。責任の重いものほど左側に書かれており、参考として責任の種類についても例示することにした。死刑が最も重く、金銭賠償は不法行為と契約の双方にまたがり、利得(権利主体の変更に伴うもの)が最も責任が軽い。

※ 通常相続は財産権の移転を伴うが、「相続する責任」は発生しない。来年から相続登記の義務化が施行されるが、これは相続する義務を発生させるものではない。

 刑法とその他は明らかに懲罰の種類が違うが、その理由については「良く分からない」というのが本当のようである。国家の懲罰権は国王の「平穏を守る権利」から発展したものだが、なぜ国王が以前は私人間で行われていた復讐権を独占するようになったのかは中世のイギリスで行われたという以外、確たる理由が良く分からない。もちろん殺人や窃盗などは刑法以前から犯罪として認知されていたが、犯罪の種類には後に国家によって処罰対象になったものも多い。いずれにしろ、このチャートでは責任は一元的なものとして捉えられている。

※ そのため責任の種類も金銭賠償に限定していない。ただし、死刑については責任のとり方として「自発的に死を選ぶ人間はいない」ことが前提になっている。

※ 報復と損害賠償が並立して行使されるのは古ゲルマン法である。同時期のローマ法は復讐権は金銭で買い取るもの(賠償)としていた。特に奴隷や召使が起こした事件の場合は主人が相手方に金銭を支払うことで責任を免れることができた。

※ 古ゲルマン法やローマ法が現在の法律の直接の祖先というわけではないので、刑罰と賠償を峻別する制度の由来については「分からない」としている。


 検討すると性加害の主犯であるジャニー喜多川氏は2019年に死去しており、責任の主体はそもそも存命していない。が、存命していれば累犯加重で懲役30年の罪人である。生きていればこれは責任を取ってもらわなくてはならない。

 

 が、死んでいるので責任は相続人のジュリー藤島氏に相続され、責任の性格上、不法行為による損害賠償請求が求めうる限度となる。今は江戸時代ではないので、大久保長安事件みたいに遺体を引きずり出して磔(はりつけ)にするわけにもいかない。

※ この「モノ」を引き出して制裁する行動は今でもあり、裁判の俎上には載り得ないが、躓いたルームランナーとか自転車、敷石などの無生物に八つ当たりすることは珍しいことではない。が、この感覚で問題を評定することは知性のない行いであるし、事件に対して抱く感情にそのようなものがあれば、割り切るべきである。

※ 制度の都合上、刑事と民事の賠償請求は並立するが、この場合の民事責任は刑法上の責任の派生物なので、チャートでは刑事事件にカテゴライズした時点で責任については評価されているものと考える。

 

※ 加害者死亡により責任の釣り合いが取れないため、この件では仮に賠償を受けても責任は解消されず、円満な解決はありえないことになる。したがって争わず、賠償に注力することが最も適切な策となる。

 性犯罪の賠償額の相場は良く知らないが、聞けば一件50万円ほどだそうである。回数によっても異なるだろうし、明らかに低いと思うが、聞いた所によると、これは裁判官業界のヨタ話におけるパパ活一件あたりの金額が基準だそうである。50万円×被害者数なら数百人だとせいぜい数億円で、ジャニー喜多川なら払えない額じゃないだろう。

※ 本当かどうか知らないが、これは裁判所のエレベータの中で判事が弁護士に漏らした内容だそうである。援交1回が3万円なら10回分くらいで十分だろうということである。この件についての真面目な論考は学者でも見られないことから、パパ活の顧客の対象は裁判官のほか、倦怠期の刑法学者も含まれるようである。

 ジャニーズ事務所という会社にはより高額な責任が残る。社員の生命身体を危険に晒したことで契約上の義務違反(安全配慮義務)を問えるし、諸々の損害のほか、後遺障害のあるケースもあることから、賠償額はより高額なものになる可能性が高い。被害者がおしなべて若く、また優れた資質の若者であったことも賠償が高額化する理由にはなるが、減額の理由にはならない。

※ そういうわけで賠償額の算定に自賠責を一定の参考にしている。


 前社長だったジャニー氏個人に起因する部分については求償が可能である。性行為を拒否したことで降格左遷した場合などが当たる。ほとんどは故・ジャニー氏の変態性格に起因するので、求償額はかなりの額にできると思うが、完全に免責されることはない。

 会見でも取り上げられていたコンプライアンスは契約以下に適用される規範で、犯罪や不法行為は対象にならない。内規で賠償額を制限していても不法行為が優先し、賠償額算定の基準も異なるものである。ジャニーズの責任については会社としての安全配慮義務違反に加え、故・ジャニー喜多川氏から承継した不法行為責任があり、損害賠償は二つの領域にまたがるものになる。



 こういった視点で会見を見ると、社長のヒガシの提示した方針は概ね正しいといえる。被害者への賠償に応じ、相談窓口を設けて心のケアや真相の究明に当たることは妥当な対策である。が、経営体制を変えず、社名を存続したことはコンプライアンスの観点から不満足で、これが批判の対象になっている。しかし、コンプライアンスが万能の特効薬でないことにも留意すべきである。

 一方でジャニー氏の相続人である前社長、ジュリー藤島氏の言質には不満が残る。賠償を請求する場合、原資となるのは会社財産以外はジャニー氏の個人資産であり、彼女が相続した額を明らかにしなかったことは明らかな間違いである。この場合、彼女には額を積極的に開示して総額を明らかにする必要があり、ことジャニー氏の遺産に関する限り、彼女には他に優先する何の権利もない。

※ 藤島氏はジャニー氏の財産を「相続した」ことになっているので、氏の賠償債務も相続したことになる。

 すでに広告を切られる例も出てきているので、会見では存続すると言ったが、ジャニーズという社名についてもいずれ変更することになるかもしれない。会見に出席したヒガシと井ノ原も当惑した顔をしており、「変更するかも」といった雰囲気さえあった。

英語では「ジャニーと仲間たち」

 「ジャニー」という名詞自体はJohnの別称で、英語では「あいつ」、「あの子」といった男性や少年に対する親しみを込めた呼び方で、特定の人物を表す言葉ではなく、指す場合でも「喜多川おじさん(キタちゃん)」といったニュアンスだが、場合によりけりである。

 

81年のケンタッキーCM、当時としてもかなりヤバいCMだった

 

 ケンタッキーフライドチキンも90年代までは発祥地のアメリカ南部の味を売り物にし、サザン・ホスピタリティやオールドサウスのイメージを宣伝の基調にしていたが、これは政治社会的にはいろいろ問題のあるものだった。91年に社名をKFCに変更し、当時は物議を醸したが、味もブランドも傷つかずに今日まで存続している。

※ 例えばかつてのケンタッキーのCMではデキシーが定番だったが、これはドイツでホルスト・ヴェッセル・リードを流してソーセージを売るようなものである。

 南部連合軍や、やや物騒な(人を殺したこともある)カーネル・サンダースのイメージでは成長に限界があった。変更後はグループも大きくなり、総じて見れば社名変更は大成功だったといえる。ジャニーズの社名変更は私としてはやるべきとまでは言えないが、しても問題ないだろうとはいえるし、した方が良いとはいえる。
 

(補記)

 さきほどの図だが、使ってみて使いにくさも感じたので、もう少し手直しすることにした。相続・承継には債務の継承もあるため「利得」は消去した。

 

 

 上のようにマトリクスに行為と責任を順番に記入することで補償関係が適切に処理されているか一覧できるようにした。ジャニーズ事件の場合、被疑者のジャニー喜多川が4年前に死去していることにより刑法上の罪を問うことはできず、責任の上限は不法行為の賠償責任となり、行為と責任の不均衡は避けられない様子がある。したがって、賠償が適切に処理されても当事者間には怨恨やしこりが残ることは当然のことと考えることができ、これは賠償を(通常同種事件の平均以上に)手厚くする以外に緩和の方法がないものと考える。

 

 なお、コンプライアンスはジャニーズ社の問題であるが、適用領域が異なるため、事件における行為と責任の不均衡の解消には直接には繋がらない。ここで社内改革を名目に事件の幕引きをすることは、おそらく最悪の解決である。

 

 京アニ放火事件の青葉被告の裁判が始まったが、一命は取り留めたものの、あまり反省の様子はないらしく、無罪を主張している上、「やり過ぎた」という発言が顰蹙を買っているようである。

 本人も予期できなかった事情として、事件の3年後にウクライナで戦争が始まり、「ジェネリック青葉」ともいうべきロシアのロスジェネ、ワグネルやロシア兵が戦場で略奪強姦の限りを尽くしているのを見れば、被告の言質は驚くに当たらない。歪んでしまった人間に普通の言葉は通じない。少なくとも私にはそう見えた。



 彼の「盗作」主張の内容が京都新聞に書かれていると聞いて該当の記事を読んだが、記事の書き方もあるせいか、どこが盗作なのか首を傾げるようなものであった。被告は小説家志望で、京アニ小説大賞に応募した自身の作品が「ツルネ」、「けいおん」、「Free!」など三作品に盗用されたと主張している。

 「盗作」の可能性については疑惑を完全に払拭することは難しい。京アニは投稿された作品を返還しておらず、著作権も同社が優先することが応募要項に書かれていたからだ。一次審査で落選したから影響はないという主張だが、そういう作品も含めてデータベースで一元管理していたなら雑文でも可能性はある。

 著作権については事件の際、同社の大賞要項を参照した私も疑問に思っていて、落選作品は返送用封筒を同封の上、本人に返却すれば良いものをと思ったし、著作権についても触れられていることには、懸賞の皮を被ったアイディア収集機と思えもした。そもそもヤラセで受賞させる作品は決まっていたようだし、ついでに次の作品のタネの一つでも手に入れば儲けものと考えたとしても、業界の雰囲気を考えればありそうにも見えた。

 ただ、作品というのは多かれ少なかれ他人の著作物の影響を受けるものである。著作権法は良く勘違いされることだが、著作者の権利を守る法律ではなく、著作者の身勝手な権利主張を防ぐための法律である。漫画では構図陰影が誰が見ても類似するほどでなければ認定はされないし、キャラクター(絵の部分は除く)の著作権は認められていない。

※ そういう点では「オマージュ」と称した制作会社の作品の方が個人よりもひどい例が多く、多くは元作品の翻案について公式に言及さえしていない。

 なので私が自分の作品でキャンディなる女性を登場させたり、江戸川コナンなる探偵を活躍させたとしても、それだけでは著作権侵害にならない。それらは記号にすぎず、それだけで作品の類似性を判定することは困難だからだ。

 侵害が認められるのは、その人物がすでにある作品を基にしたもので、その作品を理解しなければ作品自体の理解ができない場合である。そういう作品を二次創作という。それは著作権法に規定があるし、キャンディ、コナンの場合には原作者が創作した作品を勝手に変えられない権利、著作者人格権の主張ができる場合もある。

 つまり、「パクリ」という主張を成り立たせるのは被告本人が思っているほど簡単ではないのである。いや、実は私も覚えがあることがある。「ガンダムシードDestiny」で主人公とヒロインが無重力で抱き合ってクルクル回転する場面とか、登場人物の名前とか、作品独自の設定とした用語とか、全て私が先に書いており、覚えがあるのはすいぶんある。たぶん青葉より多いだろう。

※ 事情を説明すると、今はnoteで半分だけ公開され、しかも有料の私の作品だが、執筆した頃はガンダムSEEDとDestinyの間の時期で、しかも進行はDestinyより数ヶ月早かった。当然無料公開で、作者としてもそれで不満はなかったのだが、掲載していたサーバーが4年前に閉鎖されたために読めなくなってしまった。有料にしている理由はこのAmebaみたいに無料だといつ消されるか分からない上に、勘違い野郎の電凸を受けたり、もっと大きい理由として広告がうざくて作品の雰囲気を損ねることがある。変な広告がなく、快適に掲載できるなら今でも無料で全然構わない。

 もちろん、そんな「こまい」主張は私はしない。証明の難しさを知っているからだし、自分がパクったといえる例もあるからだ。他にも、例えば宇宙戦艦ヤマト2199でヤマトがデスラービルに突き刺さる場面、あれは911だろう。貿易センタービルに旅客機が突入する映像を見て(本当にそっくりだ)、「これカッケー」とアニメに使ったのは実にありそうだ。審査員もこの程度の連中なのである。ひょっとしたら、落選の際、後々まで恨まれるような酷薄な言葉を被告に吐いたのかも知れない。だとしたら放火はされてもしかたないな。

 しかし、そこで思い留まるのが小説書きとしては自意識のはずである。私は京アニという会社に額面通りの同情はしていないけれども、世界中にウヨウヨしているヲタクも大嫌いだけども、だからといって抹殺という思考にはならない。むしろ小説を書くだけ、他人の人生には人一倍の感性があって然るべきである。京アニは嫌いでも、そこに勤める誰かの母であり娘であり友である誰かの生命を断つ理由にはならない。バカにされたのなら、バカにした人間の上を行けばいい。

 私と京アニ作品は相性が悪いので視聴したことはなかったが、事件の後、関連する作品をいくつか視聴してみた。「涼宮ハルヒ」は途中で挫折し、「けいおん」は数話見て視聴していたことを忘れ、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は設定が酷くて見る前に放棄したが、「らきすた」だけはそこそこ面白く最後まで付き合った。オリジナルとしては二流の下という感じだが、素直に楽しめる。ただ、頭が記憶することを拒否するのか、どの場面も全く覚えていない。絵はきれいだが印象に残る中身のない発泡酒みたいな作品群である。

 むしろこの会社は絵のクオリティの高さから版権作品のアニメ化で存在感を示していた。「美味しんぼ」の京アニ回はどれも佳作だし、他にもたくさんあると思う。

 量刑相場からいえば被告は死刑で、それと分かっていながら治療した医師は医療技術の限りを尽くして彼を救い、今日の法廷の場に立たせた。私に言わせればムダな努力、ムダな時間である。もし彼がウクライナの軍医なら、瀕死の患者にその場の医療資源以上の治療を施すか? 青葉とその兵士のどちらが生きるに値する人間か?

 が、葛藤も理解できる。彼の行いは立派だが、おそらく答えは一つではなかったのだろう。せっかく救命した被告も検察官と裁判官の型通りのずさんな審理で体よく処刑されてしまうかも知れない。処刑前に自殺することもありうるし、拘置所の扱いが悪く、症状が悪化して公判中にコロリと死ぬかも知れない。そもそも治療したのが彼以外の医師だったらどうしたか。治療した医師もまた、誰にも答えられない問いの前に苦悶していたのである。

 そこが物書きの迫る場所である。そういう意識が一片でもあったのなら、自分がかわいい人間は自意識もあり、人を殺すという判断には絶対にならない。

 

 ウクライナで国防相のレズニコフが更迭されたが、これは一連の戦いに先が見えたことがあるだろう。支援する欧米諸国のロジスティクスがようやく機能し始め、ウクライナに戦争継続の保証がなされたことがある。

※ レズニコフは陽気な人物で、彼の主宰する国防省のツイッターXは悲惨な戦争にも関わらず陽性で、陰鬱なワグネル軍団のテレグラムとは対照的なムードがあった。戦場視察にも頻繁に訪れ、軍や国民の人気は高かったはずである。

 欧米は昨年のロシアの侵略以降からウクライナ支援を表明していたが、軍事的に有用な援助は遅々として進まなかったことがある。ハリコフの戦いは完璧な包囲殲滅戦だったがウクライナ軍は弾薬不足で戦闘を中断した。ロシア軍を首都から追い払ったキエフの戦いでも弾薬不足が追撃不徹底に繋がった。

 弾薬と兵器の不足はウクライナ軍の宿痾であり、それを解決するに当たってゼレンスキー政権は単純で直截的な方法を取った。それまで犯罪者として追及していたオリガルヒのパシンスキーに依頼して、欧米からの支援金を元手にブラック・マーケットでの兵器調達を依頼したのである。

 昨年に検事総長のベネディクトワが解任されたが、重要な案件を任せたとはいえ、ゼレンスキー政権はオリガルヒへの捜査の手を緩めたわけではなかった。オリガルヒのメドベドチュクがウクライナ保安局に拘束されたこともあり、パシンスキーらは相場の2~3倍で兵器を買い漁ってウクライナ軍に提供した。

※ メドベドチュクがロシアに見限られたことにより、一蓮托生の雰囲気が彼らにあったことは否めない。これは捜査機関の追及を受けつつ戦争に協力するという彼らの奇妙なスタイルの動機にもなった。

 彼らが買った兵器には粗悪品も少なくなかったが、それでも購入された兵器や弾薬はウクライナの防衛を大いに助け、昨年まではウクライナはこれらの兵器を用いて戦争していた。そしてパシンスキーらが売買代金の何割かを懐に入れていたことは想像に難くない。

 オリガルヒと折衝していたレズニコフの更迭と前後してオリガルヒのコロモイスキーが逮捕されたが、これも戦争体制変更の一環と思われる。オリガルヒが購入した兵器は量はともかく質はロシア軍に優越するものではなく、価格も高価であった。また関係者の子弟には賄賂による兵役逃れが横行し、戦争を他所に海外で優雅な生活を送る者もいた。

※ ウクライナで度々起こった更迭劇はこの兵器調達とオリガルヒとの関係という視線で見ると筋の通るものになる。

 ゼレンスキー自身はこのことを良く理解していたように思われる。彼がコロモイスキーの後援で制作した政治ドラマ「国民の僕(2016)」では、分裂に瀕したウクライナにおいて同様の場面が描かれている。

 ドラマでは国家の分裂を防ぐため、古参政治家ユリの助言に従ってゴロボロジコはオリガルヒと手を結ぶが、ドラマではやがて失敗するものとして描かれている。オリガルヒとの同盟を彼は「麻薬」と表現している。効き目はあっても、いずれもっと強い薬が必要になる。対症療法であるが、抜本的解決ではない。

 ザポリージャの戦いは分水嶺であった。ロボティネでの勝利はウクライナ軍が初めて手にした真っ当な戦争体制による勝利である。必要な弾薬を正価で購入して戦場に運び、必要な兵器は購入するか自国で生産するかし、国家の総力を挙げてロシアに立ち向かう総力戦(トータル・ウォー)がようやく形になったことがある。

 何年後になるか分からないが、戦争が終わった後、我々は没落したロシアと共に、東欧の地域大国となったウクライナをその後何十年も意識することになるだろうことは、間違いないことのように見える。

 

 福島の原発処理水の海洋放出で中国が日本製海産物の全面禁輸を決め、中韓との関係が険悪化しているが、今日の日曜討論を見ていると、批判は中国下層階級の鬱積した不満のはけ口で、時間が経てば沈静化するという話だが、面子が偏っていたこともあり、そう言って納得させることができるものかは甚だ疑問である。

 この件での問題は処理水の放出はトリチウムの半減期が12年であることから、用地もその分しか確保しておらず、海洋放出の方針は事故後の早い時期に決まっていたことがある。説明では放射能水を100倍に薄め、無毒化してから放出するという話だが、放出後の海洋調査でも微量ながら検出されている。が、人体に有害ということはなく、場合によっては自然界の放射線レベルの方が高いこともある。その部分についての科学的説明は私でも納得できるものである。

※ そのため、政府には海洋放出の方針と安全性につき、漁民や国際社会を粘り強く説得する義務があった。が、10年以上もの期間がありながら、まとまった方針はなく、組織もなく、その場しのぎの場当たり的な説明で済ませてきた罪がある。

 が、現地で漁業に従事している三陸の漁業者に言わせれば、海洋放出はしない方が良いに決まっており、この件が明らかに政治的利用を目論んでいる中国政府とその国民に加え、我が国の漁業者にも強い反発を招いている理由は、原発事故における我が国の取り扱いが事件処理基準として到底納得できるものではないことがある。


共同体における責任の体系

 上の図は社会的責任とそれに対する法をまとめたチャートだが、責任の大きいものほど左側に書いてある。刑法が最も社会的責任が大きく、相続法がいちばん弱いものである。不法行為は契約より大きな責任となっているが、これは契約によらずして債務を発生させる同法の特質による。が、刑法ほどの非難可能性はない。

※ 通常は刑事裁判と民事上の責任は別と考えられているが、ここでは一元的なものとして理解する。また、責任も金銭賠償に限るものではない。

 刑事・民事によらず、あらゆる事件をこのチャートに当てはめれば、縦軸で妥当な解決には引き起こした事件の加害と責任が釣り合っていることが求められることが分かる。例えば交通事故は被害者への賠償はもちろんのこと、交通刑務所に収監され、車両が没収されることがある。

 被害者への補償がなされたにも関わらず、収監や没収まで加わるのは、それが不法行為よりも強度の責任として社会に認められているからに他ならない。

 民事裁判が刑事裁判より証明責任が軽減されているのは、最大である不法行為においても、究極的に問える責任が刑事より軽いという判断がある。

 ビッグモーターの事件も単なる顧客への不法行為、契約違反ならば個々に賠償することで罪を逃れることは可能だろう。が、同社の行いには刑法事犯である詐欺罪や公共物損壊、恐喝まがいの内容が含まれていた。会社側の取った手段が役員の辞任と営業譲渡(デロイトトーマツへの依頼)であったことで加害と責任の不均衡が生じ、世間の非難が止まらないものになっていることがある。


加害の内容と実際に負った責任の間にズレのある両事件

 海洋放出については、原発事故それ自体は最大級の責任非難に該当する内容である。上のチャートでいえば「刑法」の最左翼で、これはビッグモーターとは比較にならないほど加害性が大きく、事件の本性として賠償だけではとうてい世間を納得させることはできないことがある。

※ 実際の法律はもっと複雑精緻だが、加害と責任の関係についてはどの刑罰規定もチャートのいずれかにカテゴライズできる。一部特殊な分野を除き、ほとんどの法律が一般人を基準にしていることによる。

 加害と責任の均衡を考慮するならば、裁判では免罪された東京電力の役員と原子力保安院の担当者は勾引して処断することが必要であったが、そんなことは行われていないし、損失補償についても東電は行っているが海洋放出については今も曖昧なままである。加害者を処断しない上に責任も負わないというのであれば、毀損されているのは一公署一企業ではなく国家の信用である。

※ より普通の犯罪については概ね上のチャート通りの運用がされていることもある。犯罪者は検事が尋問し、契約上の損害は金銭で支払われる。

 つまり、科学的安全性以前の問題として、また、東京大学の御用学者が中国のネット民を蔑み貶める以前の問題として、それを口にする岸田首相の政府自体に信用がない事実を直視する必要がある。信用がない理由は、近代以降の国家では当然に行われている責任の体系が、この国の政府では機能していないことがある。

 これはロシアと大差ない。プーチンのロシアは法治主義をかなぐり捨て、恣意による勾引や拷問殺害が日常化している。北朝鮮も同じだし、中国もそう良い国ではない。これらの国を見るに当たり、我々はどういった視線を向けているか、考えてみるといい。

 同じ視線を中国や韓国は我々に向けているのである。そもそも邪推でしかない中国賤民の行状を云々する前に、誰が見ても問題であろう海洋放出にはもっと適切なアプローチ、事実の積み上げが必要だったのではなかったか。

 例えば、放出に先立って首相公邸も含む政府諸機関の食堂や大学食堂で三陸産食材を買い上げて提供したり、天皇晩餐会で供されるメニューに三陸産魚介類を提供するなど安全性を実証する活動を行っていればどうだっただろうか。

 これすらたぶん反発がある。福島産食材の使用を理由に学生食堂の利用を拒否する国立大学法人の教授は必ずいるはずだし、魚介類が提供されることで天皇晩餐会の出席を拒否する大使も出てくるだろう。例のマスク怪人のような「食べる自由」を主張する露悪的な人間もいるに違いない。

※ コロナ禍でマスク無しで飛行機に乗り込んでつまみ出された大学講師もいた。

※ 前の天皇陛下なら進んで食べたと思うが、今の天ちゃんがそうであるかは甚だ疑問。ガコさんとアイコは急な体調不良で敵前逃亡かもしれない。

 たぶん大勢いるであろう、我が国の中枢にいる、口先ばかりで信義や誠実の欠片もない人間を良く見抜き、前に進まなければ、福島も我が国も誰も救われない。問われているのは汚染水ではなく、国際社会における我が国の規範である。

 

 メリトポリへの進軍の形が示されたことで、ウクライナの狙いがクリミア半島の孤立化と和平交渉にあることは分かったが、半島を巡っては以下のような状況になっている。

 ウクライナが投入した水上監視・攻撃ドローンによりアゾフ海以南の黒海はロシア艦隊には危険な状態になっている。セバストポリの軍港は機雷で封鎖され、昨年からロシア海軍は拠点をノヴォロシスクに移している。

 ロシア海軍の制海権がアゾフ海に縮減したことは、7月の穀物合意失効でウクライナが設定したオデッサ・イスタンブール間の「人道回廊」がロシアの脅迫にも関わらず機能していることで分かる。穀物貯蔵所はミサイル攻撃を受けたが、ロシア海軍は通商破壊戦に従事してはいない。

これまでを見ると嘘っぽいくらい垢抜けたウクライナ水中ドローン

 最近、ウクライナは従来のFRPボート改造型ではなく、半潜水式の水中ドローンを開発した。潜水艦も攻撃することができ、探知可能性も従来の10分の1かそれ以下になることから、投入されれば従来は妨げるものなく行えたデルタⅢ級原子力潜水艦によるミサイル攻撃も封じられる可能性がある。

 ウクライナがクリミア半島を手中に収めた場合、ロシアが戦争で勝利することは不可能になる。黒海経由の輸送はそれまでとは質量共に違う兵器やインフラの輸送を可能にし、これは戦争全体に影響が及ぶと同時に、戦後のウクライナにも決定的な影響を及ぼすものになる。オデッサ、セバストポリ、ベルジャンスク、マリウポリといった諸港諸都市やケルチ大橋が西側基準で再建再興され、西側の経済システムに組み込まれることになるからだ。

 ロシア本土に対してはウクライナはロシア反政府勢力を使嗾してドローン攻撃を行っている。航空基地など軍事目標への攻撃以外はあまり感心しない行いであるが、戦いが激化するに連れ、ロシア一般市民の被害は拡大する可能性がある。

こんなふざけたもので攻撃されたら目も当てられない

 先日ウクライナが投入した段ボール製ドローンはオーストラリアの会社が開発したもので、段ボールとして可搬でき、現地で組み立てて目標を攻撃するものだが、完全自律式で位置測定はGPSにより行われる。可搬性や航続力も一般ドローンより良く、5キロの爆弾を積んで攻撃できるが、これで反ロシア勢力はミグ機4機を破壊している。しかし軍事基地にはGPSジャマーがあり、以降の攻撃は困難になることが考えられる。

※ 日本でも自衛隊基地の周辺はGPSが使えないことがある。

 スターリンクはイーロン・マスクの変節でロシア占領地・国内では使用することができず、GPSにも対抗策があることから、攻撃目標はより容易な民間施設、防衛の薄い官公庁にシフトする可能性がある。この場合、ロシア国民の犠牲者は現在より1ケタないし2ケタ増えることが考えられる。

 ウクライナ政府は一定時点での講和を考えているが、ロシアと従属する集団安全機構加盟国、カザフスタンやキルギス、タジキスタンの離間を図ってはいない。特にカザフスタンは主要な密輸ルートであり、またベラルーシも戦争開始以降、指導者のルカシェンコが一定の存在感を誇示していることがある。この同盟に揺さぶりを掛ける方策は手つかずか不十分である。

※ 非ロシア人や移民、外国人は現在のロシア軍の主要な兵士供給源である。

 スウェーデンやドイツ製の戦車や装甲車のライセンス生産については、ラインメタル社は装甲車や砲弾の製造工場の建設に着手している。軌道に乗るのは当面先だが、戦火の及んでいないウクライナ西部、リヴィウやイバノフランコフスクは後方支援の一大拠点になっている。

※ ウクライナは多文化国家である。ドネツクを中心とする東部はロシアの影響が強いが、リヴィウなど西部はかつてポーランド王国であったこともあり、カトリックで西側の影響が強い。加えてキーウはキエフ・ルーシから旧リトアニア大公国と異なる歴史があり、クリミアはクリミア・タタールのクリミア汗国である。

 

 ザポリージャ戦線で戦闘に変化があり、過去72時間でウクライナ部隊はトクマクに向けて大きく前進している。ロボティネを落とし、州道408号線を南下してソロダ・バルカの攻略に掛かっているが、場所は第一防衛線を抜けた所である。

 ウクライナ軍はもう一隊が確認されており、第二防衛線の近く、ロボティネから10キロ東のベルドベでも戦闘が行われている。ほか、ヴァシリフカやステロープで戦闘が行われたことが報告されており、報告のあったものだけでも4隊、おそらくは5隊に分かれて要塞正面に穴を開けようとしている。

 このことから、やはりザポリージャ・メリトポリの線が反攻作戦の本当の狙いで、他の正面であるヴェリカ・ノボシルカ、バフムト、ライマン・クビャンスクは陽動ということになる。戦術の緻密さからしても、ザポリージャ正面が主戦場で間違いないだろう。

 ザポリージャと同時にヴェリカ・ノボシルカを攻撃したのはこの付近がちょうどロシア軍管区の境目で、トクマク防衛を担当する南部管区軍とドネツク方面の東部軍管区による指揮統制上の不具合を企図してのものだろう。ヴェリカ・ノボシルカを攻撃したのは機動力の高い空挺部隊で南下を装いつつ東に展開し、東部管区軍の注意をヴフレダル周辺に引き付けていた。この場所が年初でロシア軍が大敗し、因縁のある場所であることがある。

 バフムトは一度ワグネルに奪われたが再攻撃は政治的なものと思われる。ウクライナ最高の指揮官であるシルスキーを配し、攻撃は効果的に行われたがロシアも空挺部隊を投入し、そのためザポリージャ・クリミアの守りが損なわれた。

 クビャンスクは西部管区軍と中央管区軍の連合軍が攻撃しているが防衛線を破ることはできないでいる。が、ロシアはハリコフに近い最北部のここにウクライナ軍を引き寄せ、疲弊した南部要塞への圧力を軽減しようと目論んだようだ。

※ ケルチ大橋やチョンガル橋を攻撃されたことでトクマクのロシア軍は補給上の困難に直面している。ただし、トクマク・ベルジャンスク間の幹線道路37号は戦前から良く整備されており、海路からの武器弾薬の補給が可能である。ベルジャンスクは港湾で昨年から何度もウクライナ軍の標的になっている。

 先にウクライナ軍の作戦企図は見にくいと書いたが、上に挙げたどの正面でも実は主戦場になりうる資格を有していることがある。トクマクの守りが堅いことを見てドネツクに転換することもできたし、ロシアの誘いに乗ってクビャンスクで戦うこともありえた。が、クリミア半島の攻略においては、やはりメリトポリがいちばん効果が大きい。

 大規模な陸上戦闘の場合、大部隊が移動して展開することから、その部隊の初動を観察することで最終的な攻撃目標や戦略企図を読み取ることができる。一度展開した部隊の撤収は難しく、退却戦は大きな犠牲を伴うものである。そのため戦闘開始から数日で攻撃側の意図はハッキリと分かるものになるのだが、今回はそういう様子ではなかった。むしろ従来型の戦術に固執するロシア軍の方が企図が読みやすかったと言えるだろう。

 ウクライナが作戦企図の秘匿に成功したのは戦車部隊から砲兵隊や歩兵まで機動力の活用が作戦の軸に組み込まれていたことによる。砲兵は迅速に陣地転換し、歩兵は装甲車で塹壕に乗り込んで制圧する。そういった戦いが千キロの前線の各所で繰り広げられたことから、本当の狙いは見にくいものになった。

 ふと、昔読んだジョミニのエピソードを思い出した。新兵器の発達に意見を求められた兵法家はそれは戦術の進歩にすぎないと一蹴し、戦略と個々の戦いを勝利に組み入れることの重要性を説いた。スターリンクやドローン、西側製の装甲車といったものは戦術にすぎない。その背後にどういう戦略企図があり、いかなる手段でそれを実行していくかを考察することを忘れてはいけない。

※ ウクライナがドローンでロシアの制海権を脅かし、航空基地を破壊する作戦が同時進行していることも見逃してはいけないだろう。

 今回はむしろジョミニ流の考え方の方が明察により近かったと思われる。ウクライナ軍の意図については2ヶ月悩まされた。ロシアはかなり弱っている。攻撃力とは速度と火力の積である(ジョミニ)。拙速は巧遅に勝る(孫子)。ウクライナ軍には秋までに海を望める場所に来て欲しいものである。