長い人生を生きていると理屈では説明できないことを感じることがあるが、理屈に合わなくても有益なことがあり、そういったものは「経験則」として取っておくと役に立つことがある。これらは一見するとつまらないので人に言うのも憚るが、その場になって思い出すようなものである。
1.タバコ一本吸う間に丼が出ないラーメン屋は80%まずい
今は禁煙の店が多いので、概ね3~5分と考える。調理の順番もあるので必ず当たる法則ではないが、かなりの確率でこの通りになっている。行きつけの店がそうなっていたら料理人が変わったか経営に興味を失ったかのいずれかであり、通うのを止める理由になっている。
※ 自分でも不気味なくらい良く当たる法則である。実は盛り付けに案外時間がかかることは手付きを見ていると良く分かる。また、時間内に供するには食器が良く整頓され、ウェイトレスとの関係も円満でなければならない。
2.官公庁の周囲500mは爆弾が落ちたと思え
旅先などで重宝する法則である。もちろん役所の近くにもコスパが良く美味しい店はあるはずだが、見知らぬ場所で見つけることは不可能に近いし、今のところ、的中率はほぼ100%である。知っていながら出来心で入店してしまったとか、気がついたら近くに合同庁舎が建っていた時には後悔もひとしおである。
※ どうしてこうなのかは書いた本人も分からない。ただ、役所の外はともかく、職員食堂は廉価で良質なものが多い。なお、官公庁には国立大学法人や海上保安庁、自衛隊施設も含む。また、現在は違う場所にあるとはいえ、かつては役所の近くにあった店も原罪としてリストに加えている。
3.民営化は仕事が遅くなる
バランスシートでは効果は上がっているのだろう。しかし、実際の印象では民営化の職員は責任の所在が曖昧で専門的なスキルが低いかなく、結果として仕事が遅くなる。行政庁で「〇〇センター」という文字を見掛けたら、標準処理期間プラス☓日、概ね10日以上と見ておけば安全である。
※ もう一つの問題は派遣職員が増えたことで正規職員の裁量が定見なしに増大していることである。まるで中国の役所のようであり、法律は士業者など外部への規制には熱心だが、対応する職員、つまり行政庁内部の規制については甘いか不十分で、それで勘違いする職員が出てくる。議員の影響力の増大や、裁決と執行の遅い日本の法システムも悪い方向に加担している。今の様子だと、そのうち書類を取るのに賄賂が必要になるかもしれない。
4.金で買った友人は必ず離れる
男でも女でも一見裕福そう、得だからという理由で近づいてくる人がいる。しかしそういう友人は金の切れ目が縁の切れ目で長続きしない。典型的なのは自動車ディーラーの営業とか、仕事や学校で自分から求めていないのに近づいてくるような人である。なお、クルマの場合は、私の担当には最初から言い渡してあるし、十年以上の付き合いだが、商談でも一切の私情を交えない。
※ それでも相手に全く配慮しないということはない。
5.経営者が派手な服装をしていたらオプションを考える
一見商売繁盛に見える事業所でも、長い間やっていると奢りが生じ、経営が弛緩することがある。最初から派手なのは論外だが、黒い大型のSUVやバンで乗り付け、客には一顧だにせずに従業員に文句を言っている経営者を見掛けたら、現在損はなくても同じ内容の代わりを確保し、付き合いを徐々に減らしていくべきである。一見分からないところで、実は必ず損をさせられている。
※ ビッグモーターの例を見れば容易に理解できることと思われる。展示車に関心がなく、顧客に愛想を振り撒かない管理職の会社に関わったことでどんな損があったか、あるいは顧客の不利益が制度化されていたか考えてみるといい。
6.人の噂話をする人間とは関わるな
世の中には頼んでもいないのに、「あの人はこうした」「この人はこう」と人の話を持ち込んでくる人がいる。そういった人に私が言い渡すのは(でも治らない)「人の自慢より自分の自慢をしてくれ」という言葉である。多くの場合、操作的支配を目論んでいるか何か計略があると疑ったほうが良い。
※ もう一つ言い渡していることは「本人の言葉でなければ信じない、一切顧慮しない」という言葉である。基本的に伝聞は信じない方が良い。
7.転換人間に要注意
世の中には面倒な仕事は他人に任せる。人に押し付けるという世渡り上手な人がいる。管理職に多いタイプだが、多くはあまり考えておらず、思慮も浅く、何もしないので知恵もなく、人当たりがよいだけである。あらゆる場面で関わると損なので、関わらずに時間を節約しよう。
※ 筋道立てて説明しているか、その場の事情を理屈に盛り込んでいるか、相手の立場に対する配慮が見られるか、一貫性があり、発言に責任を持っているかといったことは社会階層に関わらず、あらゆる場面で平易に観察できることでもある。それができていなければ、どのように社会的地位の高い人間でも付き合うに値しないし、付き合って得るものも何もないだろう。ただ、往々にして情に流されることはある。
ほかにもあったような気がするが、思い出せないのでこのくらいにしておく、特に食べ物関係は的中率がほぼ100%に近いので、私もこれらが論理的に正しいとは思っていないが、知らない間に意識として残り、結果として活用することの多いものになっている。
皆さんはどうだろうか?
(補足)
上のものは私が持っている経験のセット、つまり偏見だが、語学の学習では弊害になる場合がある。ある外国語の本に「赤ん坊はどうやって言葉を覚えますか、大人みたいに過去の経験から読み込むんじゃないんです、ただ聞くんです」というものがあった。実際これは有益なメソッドだったと思う。経験則は長い時間の試練に耐えて生き残ってきたから経験則であって、単なる知識とは違う。適用範囲はごく狭いものと考えるべきで、万能の法則ではない。上記のようなものを金科玉条と考えず、時には捨てることも必要である。