キューブリックの作品へのディスりはそんなにないですが、あの「シャイニング」を受け継ぐ作品としては、期待したほどの完成度ではない、というところでしょうか。
あのダニー少年の後日談と、同じ素質を遥かに強く持った少女の心の交流、それとは別に能力を駆使して幼い子供たちを食い物にする恐ろしいヴァンパイア的なグループとの対決、という要素があり、戦い自体は大したピンチもなく順調に進んでしまう、というのがやや肩透かしかも。
部分的にはキューブリック演出の映像の強さにあやかろうとする部分もあり、でもダニーの両親の強烈な個性は凡庸さにとってかわり、そして、何よりもエンディングでまたあのオーバールック・ホテルを焼け落ちさせる、というのは、キューブリックが原作に反してホテルを燃やさなかったことを、キングが根に持っていたことの現れかな、と思ったりしました。
そういう感じなので、ストーリーは、かつてちょっと超能力を持っていた少年がその後凡庸に成長したけど、少女を守るために自分の能力を改めて再認識して、アル中だった親の過去とも向き合う、最後はわりにお決まりの自己犠牲、となって、オビワン的な霊になって少女を見守る、という。スター・ウォーズか。
「シャイニング」を知らずにこの映画を見てもポカーン、でしょうが、「ドクター・スリープ」を知らずに「シャイニング」を見ても全く問題ないです。
タイトルの「ドクター・スリープ」、「ドクター・ストレンジ」みたいですが、そんな風に名付ける必要があるほど、「眠り」の世界が重要な描かれ方はしていないので、やや疑問に思いました。
いかにも続編ねらいという終わり方で引っ張りましたが、1本通してのカタルシスはなかったですね。バトル・エンジェルというネーミングもちょっとチープなんですが、暴力にたいするためらいの一切ないキャラクターばかりで殺伐としているのがマイナスです。
記憶を失ったサイボーグ・アリータというのと、それを死んだ娘のように育てる博士イド、というのは一つの軸ですが、そこに互いに対する理解が深まるか、といったらそうでもなく、300年前の戦争でテクノロジーが失われた、というのもにわかには信じがたい。実際計器で分析はできるわけだし、接合手術はできるわけだし、イドの技術も程度がわからない。
さらに、元妻チレンの扱いがひどい。なんでベクターの元にいたのかと思ったら上空の暮らしに戻りたい、だけ?しかも元々は上で暮らしていたのが娘の病気で下ろされた、というのがなんだかなぁ。そして、アリータを見ているうちになんで同情したのか全くわからない。そして最後はパーツにされてしまう無残な最期。
そしてヒューゴ。なんで死にかけたのを助けて、結局死なせるかなぁ。
原作があってのことかもしれませんが、話としては支離滅裂以外のなにものでもありませんでした。
一部の熱狂的な受け入れられ方ほどには絶賛、という感じではないけれど、満身創痍になりながら、きわどいところで勝利を収めた、という感じではあるのでしょうか。
前回の終わり方があまりにショッキングで、しかもその後少し話があってから、5年が経過する、というところ。キャプテン・アメリカが禁酒会のようなところでこころのもやもやを告白するあたり、ちょっと雑な描写じゃないかな、と思ったり。でもそうやって人類の半分を失ったことを引きずる人々、というのは案外多いんだろうな、というのはうなずける。バートンはなんで本人以外全員失ったんだろう、比率が酷だ、とか思ったり。
ナターシャが軸になって、平和維持活動はそこそこつづけているアベンジャーズ。このあたり、各国政府機関がそんなに腑抜けになって5年も経過する、というのはちょっとリアリティーないぞ。
そこに、たまたまの偶然から(偶然すぎ)、現実世界に戻ってきたアントマン、スコット。彼がアベンジャーズにコンタクトをとったことから、もしかしたら、タイムトラベルして、サノスより先にインフィニティー・ストーンを集められるかも、そしたら大量虐殺もなかったことにできるかも!というできすぎな発想。
反面、その世界で5年後にはポッツ女史と結婚してかわいい娘ももうけているトニー・スターク、あの時点にはもう帰りたくないと、いったんはみんなの提案を拒絶するけど、自分のせいでピーター・パーカーを死なせた、という自責の念と、研究者としての好奇心から、つい成功の可能性が少なくないことを発見してしまう。
そこから、インフィニティー・ストーンができるだけ集まっているタイミングを狙って、ちょっと過去に戻っては石を集める、という作業に。6つ全部ちゃんと集められるか。
ここからは、過去の戦闘場面やら登場人物との遭遇でいかに豪華キャストの再会とすれ違いを見せるか、という妙味。個人的にはエンシェント・ワンのティルダ・スウィントンが見られたり、ソーのお母さんのレネ・ルッソとの再会シーンが見られたのがよかったかな、と。
ところが、順調にいっていたかと思うのも束の間、ネビュラが潜入すると、どこかで過去のネビュラの脳と交信してしまい、計画が漏れてしまう。このへん、どのくらいの距離だとつかまるのか、とかご都合っぽい。でも、そのせいで、石は集まったけど、サノスもタイムマシンを経由して船団ごと襲いに来てしまう。一度は蘇生に成功した地球の人口だけれども、また絶滅の危機に?!そしてソウル・ストーンを手に入れる過程では、ナターシャが自分の身を犠牲に。前作ではガモーラがこれで命を落としている訳で。
そこに、キャプテン・マーベルが駆けつけたり、復活したアベンジャーズの面々がやってきて、ほとんどデビルマン終盤の神々対悪魔の様相を。で、壮絶な奪い合いの末、トニー・スタークが石のついたグローブで相手を滅ぼして、でもその反作用で力尽きると。ここにアイアンマンの系統は終了なのかな。
そして、石を戻しに行ったキャプテン・アメリカもなかなか戻ってこない、と思ったら、すっかり歳をとって帰って来た。過去に戻って、元彼女のペギー・カーターのところで人生を生き直してきたのだと。キャプテン・アメリカの盾をサムに引き継いで終わり。てっきりペギーの姪のエミリー・ヴァンキャンプと一緒になるかと期待していたので、彼女がしり切れとんぼになったのは残念至極。
ソーは地上のアズガルドをヴァルキリーに託し、あてのない旅にでると。でも乗る宇宙船はピーター・クイルの船。ピーターはまた自分にほれる前のガモーラを探すべく、また宇宙を旅することに。みんな仲良くできるのかな。
ということで、5年後の世界に、5年前に消えて亡くなった人達を蘇生する、というやや不自然なプロジェクトになりました。そのひずみって、子どもだとすっかり大きくなる訳だし、決して元通りの暮らしを送れるようなモノではないですけどね。まあ、それでもハッピーエンドのうちではあるでしょう。
残念なのは、ロキ。いいキャラクターだったけど、彼は戻った時間よりも前の時点で死んでしまっているので、蘇生不可能でしたね。過去のシーンで四面体を盗んで立ち去るところはありましたが、ちょっと残念。
リアム・ニーソンが、普段の刑事くずれとはちがった、マフィアの殺し屋としてワルを演じているんですが、途中からストイックで冷静で、息子とその家族を稼業に巻き込むまいとする愛情あふれる父親になっていくので、結局普段とはかわらない善玉感あふれるアクションものになるという。つまりいつものやつです。
昔からの盟友としてマフィアのボス・ショーンをやるのがエド・ハリス。名前からするとアイリッシュマフィアですかね。ただ、やってることはイタリアマフィアっぽい。昔はなんでもやったけど今はビジネスとして合法的な運営をしている、らしい。ところがその息子ダニーは麻薬に溺れ、わるい友達もでき、アルバニアのマフィアと退っぴきならない関係に。麻薬の取引を父に取りなす、と空手形を与えてしまいひっこみがつかなくなり、殺してしまう無軌道ぶり。
そして、たまたま目撃したマイクまでも殺そうとしたので、父親ジミー(ニーソン)が殺す、という事件です。そこから、息子の復讐に燃えるショーンとジミーがどう決着をつけるか、そして第三の追手は…。
父親を嫌って家族から切り離そうとする息子マイク、自分が巻き込まれた世界に対する自覚がちょっと薄くて、序盤イライラしますが、だんだん調子出てきます。
ラストは案外あっけない、と思ったらなんで油断してたの!みたいな話です。
エンディングはすがすがしかったのに、エンドタイトルが再度おどろおどろしいの、なぜ!と思います。
でも、かっこいいオヤジさんぶりは堪能できますかね。アクションが暗い中でよく見えなかったところもありました。
前作の主役クラスからはポール・ウォーカーだけが継続してのシリーズ。カーレースをどう見せるか、みたいな部分では物量で攻めた圧巻の映像もあったりします。
今回は女性の潜入捜査官が先に敵方にいて、その彼女を信じられるのか、みたいな心理的なあやがあったのが新しいでしょうか。それから、幼なじみでブライアンが警官になりたての頃に逮捕されて逆恨みしているローマンとの関係で友情も描かれて、心理的な縦軸はより強化されてますかね。
最終的に検挙するべき犯罪についての謎解きや困難さはないので、ラストはあっけないですが、その代わりにあるのがカーアクション、というジャンルの映画なのでしょうから、そこはあまり贅沢は言うべきではないのかも。
キャストでは、「プリズン・ブレイク」のスクレ役アマウリー・ノラスコが陽気で間抜けなキャラクターで出ています。
イギリスの青春映画。すごい運転技術を持つラッキーという名の少年が巻き込まれた犯罪とその結末、という体の物語なのですが、狭い社会の中でここまで偶然と間抜けが同居しすぎると、ちょっといい加減にしてほしい、と思えてしまうという。
キャスティングがイギリス中心に活動している人ばかりなので、知名度としてもそれほどないのですが、なかなか魅力的な人材はいたと思います。演技の質は別にして、プロットが粗すぎるかな、と。
以下ネタバレ。
ラッキーが拉致されてきた先は、兄のボクシング・ジム。早速夜の街に繰り出すと危なげなお兄さんたちがいっぱい。旧友とも再会。そんななかで目を引かれる美女。実はロシアのゴロツキの彼女。でも強引に口説く。なぜ?よくわからない。そうしているうちに、友達から車の運転を依頼され、実はヤバい仕事だった。友達は殺され、金を返さないと殺されることに。兄に泣きつく。
兄のラファエルは違法カジノを強盗する計画を立てる。そこでいろんなメンバーを寄せ集める。その中に、たまたま声をかけた彼女の夫がいる。でも見ている側だけしか気づかない。全編、こんな偶然と、それに気づかない間抜けが横行。
カジノ強盗はうまくいくが、するはずのなかった殺しもやってしまう。ロシアのゴロツキは、強盗をやったカジノが、ボスのロシアンマフィアのものだったと後から気づく。まじですか。
そして、どうも、ラファエルとラッキーの両親を殺し、店を焼いたのがロシアンマフィアで、ラファエルは1年がかりでそれを計画していたのだと知る。それでこいつらを強盗に誘ったのか、というのは説明つきますが、彼らの素性を気づかずにのこのこやってきたロシアンマフィアって何?
最後は金のありかをめぐって、倉庫で全員集合で対決、生き残ったけどせっかく口説いた彼女に金は奪われ、車だけが残った。待てよ、車には少し金が残っていたのだった。やったぜ、じゃあマフィアのボスを殺しにいこうぜ、と兄弟が出発したところで終わり。
え?
目を疑うような終わり方。いや、彼女がラッキーの部屋に入って図面を見ていたのは知っていましたが、それでここまで狡猾に振る舞う理由になる?そもそも、ロシアのチンピラのところから逃げ出せない程度の子でしょ?
まあ、なんか先の見えない、行き当たりばったりの行動をとるのがイギリスの青春だ、という主張ならばそれはそれでいいですが。
シリーズの第1作なので、ちょっと面食らったのもありますが、こんなものかなぁ、というのが正直な感想。登場人物の紹介の仕方も荒っぽく、人間関係も類型的かなぁと思ってしまいました。
途中で人物関係のひねりが少しあり、おっと思ったのですが、終盤に至るとどうしてそうなるのかな、と首をひねったり、謎っぽいものが実は謎じゃなかったり、肩すかしをくらった印象です。
以下ネタバレあり。
ストーリー的には謎のお兄ちゃんブライアンがツナサンドのまずい店にやってきて、奥の機嫌悪そうな兄ちゃんに目をつけてたり、いきなりけんかを売られてたり。で、それは兄ちゃん(ドミニク)と接触するためのとっかかりだったと。夜になるとストリートカーレースが。そこに貫祿十分でやってきたドミニクにレースを挑むブライアン。惜敗するけど、そのあと警察に追われてるときに助けたりして気に入られる。
で、なんとなくファミリーに引き入れられる、みたいな流れ。その途中で警察に引っ張られるのでどうしたのかな、と思ったら、実は潜入捜査をしている刑事だったと。FBIと合同捜査でトラックごとかっさらう強盗を行うスピードカーの集団を探していると。で、ドミニクとその周辺が怪しいのだと。
調べているうちにドミニクの仲間に疑われて正体がばれかけたり、妹のミアと恋に落ちたり。で、トラックの連中も気が立っていて復讐に燃えているから早く犯人を挙げないと、と急かされるブライアン。でも状況証拠ばかりだし、と渋っているところ、中国系のグループを強制的に捜査したらシロだったと。じゃあ、あとはドミニクたちしかいないだろ、ということで次逮捕するよ、みたいな話に。でもブライアンは踏み切れない。
レースの夜に口論するドミニクとミア、そこでミアに正体を打ち明けて、ドミニクたちの向かっている場所を突き止めて追っかけると。ここまできたところで、強盗団はドミニクたちだったのか、そのオチはなんか一ひねりするのが普通じゃないですか。ひねらないんですよ。そして強盗に出発するドミニクたちを客観的に描写しちゃうんですよ。目を疑いますよ。
で、トラックを襲うけどショットガンで反撃されて、一人は重症、トラックに張りついたところを助けようとするけど、ドミニクもレティも反撃されて車はおシャカ。そこに駆けつけたブライアンがなんとか仲間を救出してくれるけど、救急ヘリを頼むときに正体ばれてしまうと。
そして、ドミニクの家についたら今度は仲間が中国グループに狙撃され死亡。ブライアンとドミニクがやり返す。最後は二人でカーレースして、最後はブライアンは自分の車をあげてドミニクを逃がしてしまう。これでいいのかな、と思うところがあったり。
カーレース的には、最初のが一番印象に残って、後になるほど地味になる感じもちょっと惜しいな、と。
配役的には、ヴィン・ディーゼルがまだ若いな、というのと、ポール・ウォーカー、中途半端なイケメンぶりだな、というのと、ミシェル・ロドリゲスはこのシリーズとバイオハザードシリーズだけで有名人になったのだな、というのと、ミア役のジョーダナ・ブリュースターはかわいかったな、というあたり。
トニー・スコットの最後の監督作品だったのですね。
デンゼル・ワシントンって、知的な役と、荒くれ者、どっちのタイプでもアクションをしっかりできる人ですごいなぁ、と思います。トニー・スコット監督との相性のよさはそういうところにあったのかもしれません。
実際に起きた列車の暴走事件に題材を得て、なんてことないヒューマンエラーをきっかけに起きる大災害の危機、それに対して知恵を振り絞って対抗する人たち、自分のミスを棚上げして権力に頼ろうとする会社、傍目でショー化するマスコミなど、いろんな視点からアプローチしています。
主人公二人のベテランと若手の対比、それぞれに家族との距離感、会社で給料の高いベテランが冷たく窓際においやられ、登用される若者には反発があるなど、今どきの世相や家族像など、社会の切り取り方も示唆に富んでいて、過不足なく見られたと思います。
もともとの題材が実在の事件、ということもあり、ものすごい派手なアクションもなく、あり得ないような悪者とかは出てませんが、それでも最後までどきどきさせられたからいいんじゃないでしょうか。
以下ネタバレ。
いろんな職を転々とした末に車掌になったウィル。妻とのけんかがきっかけで、保護観察期間で家族との接触ができない状況。新しく組むことになったのがベテラン、フランク・バーンズ。気難しい職人肌だが、腕は一流、後でわかるけれども会社から早期退職を言い渡されていた。彼らのこの日の仕事はなんてことないものになるはずだった。けど。
別の操車場で貨物列車を動かすときに、ブレーキがちゃんとつながっていないままに発車させ、しかも切り替えポイントが合ってないことに気づいた運転士が車両を降りて切り換えようとしたことで、電車においていかれてしまい、無人のまま列車が暴走。貨物に可燃性の劇物があったことから大事に。操車場長のコニーは市街地に入る前に脱線させることを提案するが損害をきらった会社上層部は却下。しかしお偉いさんの作戦はことごとく失敗。このままだとスタントンの急カーブで脱線、大災害になることは確実。
この列車を一度は支線でやり過ごしたウィルとフランクの機関車。列車の連結器があったことから機関車を逆走させ、連結してからブレーキをかけてスピードを落とす、という提案を。会社幹部は反対するがコニーと一緒に強行を決断。
そのあとは、テレビの報道でそれを知った家族のドキドキとかで盛り上げて、最初この人はなんのために登場したんだろうと思っていた、車で並走する溶接工のネッドが、ラストで意外な大活躍を見せて終わるという。
現場でのお祝いにコニーも駆けつけて大団円。
シリーズも4作目になり、3作目で結構いい感じに素直な部分を見せ始めたカールなんですが、今度は相棒のアサドが(出世して)異動になりそうで、そんなアサドに対してまたそっけない態度をとるカール。そこに、50年も前の女子収容所で行われていたある「処置」に関する事件が巻き起こり…、という話。
人が住んでいないアパートの壁を開けると、そこにはミイラが3体。二人は女性、一人は男性。この3人の接点は?そして犯人は?動機は?
おなじみのカール、アサド、ローセの3人がそれぞれバラバラに活躍するのがこのシリーズのおかしなところで、普通ならバックアップ頼むとか、必ず複数行動とか、お互い連絡取り合って、とかいうパターンなんですが、それを一切しないので油断とスキだらけ。ツッコミどころはたくさんあって途中イライラさせられるんですが、最後に彼らの間のわだかまりが解けて終わるところがあるので、まあ、よかったかな、という気分で終わって、次も見ちゃうかな、と思ったり。
特に今回、移民としてのアサドには、妹のような距離感の近所の店の娘が事件に関わってしまい、少しパーソナルになったり、戦後の社会民主主義の理想とは別な「ある特殊思想」の暗い歴史がからんだりして、歴史の闇からこうやって顔を背けずにフィクションでも国家が見過ごしてきた悪を正視する勇気も大事だな。日本はどうか、と思ってしまうところもありました。
以下ネタバレ。
1961年、従兄弟との恋に落ちた若い女の子が、父親の申し立てで離れ小島の女子収容所に送られます。そこでは、ある思想の元に実験が行われていて、妊娠していた娘は、そこの専属の医師によって、中絶・不妊手術を行われてしまうのです。まだナチスの優性思想が形を変えて、異民族へのヘイト、という形を残して、社会民主主義のため、の旗印のもとに力を持っていたのですね。
そして、現在に至っても、その思想は隠れた潮流として、医学界、政界、国家権力にまで及んでいた、という恐ろしい話です。
最初は、その島にかつて関係のあった女性二人と、ある弁護士の死体がアパートから見つかって、しかもミイラになっていた。なんのために、誰が?スペインのマラガに看護師が移住している、という情報もあるのですが、捕まえられず。
その頃、アサドの知り合いの娘も、父親に黙って中絶手術を受けたのが不幸にもその医師で、子どもが生めない身体にさせられてしまっていた。その医師の組織を内定していた男はローセに助けを求めるが、殺されてしまい、ローセも危機一髪。なかなかしぶとさを見せました。
カールはカールで、帰国した犯人を追い詰めますが、船の上で事情を聞き、犯人を見逃すことに。なんと犯人は、不妊手術をされた娘だったのです。そのころアサドは医師を問い詰めていますが、仲間と思っていた警官に裏切られ瀕死の重傷、そこにカールが駆けつけ、やっと一見落着。医師を手始めに組織が一網打尽になります。昏睡状態のアサドが目覚めたところに、カールが、やっぱり特捜部Qに残ってほしい、とやっと素直になれたところでエンディング。
TOHOシネマズ新宿でIMAXレーザーという新方式で見ました。
冒頭で「え、そうくるの?」とびっくりしましたが、話そのものはテンポよく楽しく見られました。前半タイトに、設定上のひねりも少しずつ明かして、後半は少しユーモアも交えて、最後の決戦は感動的に、な感じ。その意味では「T2」のフォーミュラを受け継いだ正統的な作品ではあります。
やはり「T2」が作られた時代とは、技術も、映画の作劇上のリテラシーも変わってきていて、その面では、「映画における女性を、女性性から解放する」というスタンスで作られているんじゃないかな、と思いました。
科学技術がある程度進歩するとそれは魔法のようになる、という現象が、この世界設定の中でも起きていて、すごい映像技術を見せようとすると、もうそれは科学ではなく、魔法のようになってくる。最後、不死身のように見える敵を殺すにはどうするか、という段になって、初めて少し科学っぽくなりました。
最後、エンドロールで、ハンガリーの全人口の名前があるんじゃないか、ぐらい大勢クレジットされてました。一目でハンガリーとわかる場所は印象に残っていないけど、結構たくさん撮ってたんですかね。映画制作スタッフの勢力地図も、少し変わってきているのかも知れません。
エンドロールの長さも今回はハンパなく、途中で左右に分かれて名前を並べてました。知り合いに「これに出るからエンドロール見てね」とか言われても見逃してたかもしれません。