キューブリックの作品へのディスりはそんなにないですが、あの「シャイニング」を受け継ぐ作品としては、期待したほどの完成度ではない、というところでしょうか。

あのダニー少年の後日談と、同じ素質を遥かに強く持った少女の心の交流、それとは別に能力を駆使して幼い子供たちを食い物にする恐ろしいヴァンパイア的なグループとの対決、という要素があり、戦い自体は大したピンチもなく順調に進んでしまう、というのがやや肩透かしかも。

部分的にはキューブリック演出の映像の強さにあやかろうとする部分もあり、でもダニーの両親の強烈な個性は凡庸さにとってかわり、そして、何よりもエンディングでまたあのオーバールック・ホテルを焼け落ちさせる、というのは、キューブリックが原作に反してホテルを燃やさなかったことを、キングが根に持っていたことの現れかな、と思ったりしました。

そういう感じなので、ストーリーは、かつてちょっと超能力を持っていた少年がその後凡庸に成長したけど、少女を守るために自分の能力を改めて再認識して、アル中だった親の過去とも向き合う、最後はわりにお決まりの自己犠牲、となって、オビワン的な霊になって少女を見守る、という。スター・ウォーズか。

「シャイニング」を知らずにこの映画を見てもポカーン、でしょうが、「ドクター・スリープ」を知らずに「シャイニング」を見ても全く問題ないです。

タイトルの「ドクター・スリープ」、「ドクター・ストレンジ」みたいですが、そんな風に名付ける必要があるほど、「眠り」の世界が重要な描かれ方はしていないので、やや疑問に思いました。