シリーズも4作目になり、3作目で結構いい感じに素直な部分を見せ始めたカールなんですが、今度は相棒のアサドが(出世して)異動になりそうで、そんなアサドに対してまたそっけない態度をとるカール。そこに、50年も前の女子収容所で行われていたある「処置」に関する事件が巻き起こり…、という話。
人が住んでいないアパートの壁を開けると、そこにはミイラが3体。二人は女性、一人は男性。この3人の接点は?そして犯人は?動機は?
おなじみのカール、アサド、ローセの3人がそれぞれバラバラに活躍するのがこのシリーズのおかしなところで、普通ならバックアップ頼むとか、必ず複数行動とか、お互い連絡取り合って、とかいうパターンなんですが、それを一切しないので油断とスキだらけ。ツッコミどころはたくさんあって途中イライラさせられるんですが、最後に彼らの間のわだかまりが解けて終わるところがあるので、まあ、よかったかな、という気分で終わって、次も見ちゃうかな、と思ったり。
特に今回、移民としてのアサドには、妹のような距離感の近所の店の娘が事件に関わってしまい、少しパーソナルになったり、戦後の社会民主主義の理想とは別な「ある特殊思想」の暗い歴史がからんだりして、歴史の闇からこうやって顔を背けずにフィクションでも国家が見過ごしてきた悪を正視する勇気も大事だな。日本はどうか、と思ってしまうところもありました。
以下ネタバレ。
1961年、従兄弟との恋に落ちた若い女の子が、父親の申し立てで離れ小島の女子収容所に送られます。そこでは、ある思想の元に実験が行われていて、妊娠していた娘は、そこの専属の医師によって、中絶・不妊手術を行われてしまうのです。まだナチスの優性思想が形を変えて、異民族へのヘイト、という形を残して、社会民主主義のため、の旗印のもとに力を持っていたのですね。
そして、現在に至っても、その思想は隠れた潮流として、医学界、政界、国家権力にまで及んでいた、という恐ろしい話です。
最初は、その島にかつて関係のあった女性二人と、ある弁護士の死体がアパートから見つかって、しかもミイラになっていた。なんのために、誰が?スペインのマラガに看護師が移住している、という情報もあるのですが、捕まえられず。
その頃、アサドの知り合いの娘も、父親に黙って中絶手術を受けたのが不幸にもその医師で、子どもが生めない身体にさせられてしまっていた。その医師の組織を内定していた男はローセに助けを求めるが、殺されてしまい、ローセも危機一髪。なかなかしぶとさを見せました。
カールはカールで、帰国した犯人を追い詰めますが、船の上で事情を聞き、犯人を見逃すことに。なんと犯人は、不妊手術をされた娘だったのです。そのころアサドは医師を問い詰めていますが、仲間と思っていた警官に裏切られ瀕死の重傷、そこにカールが駆けつけ、やっと一見落着。医師を手始めに組織が一網打尽になります。昏睡状態のアサドが目覚めたところに、カールが、やっぱり特捜部Qに残ってほしい、とやっと素直になれたところでエンディング。