『トロン:アレス』を観てきました。
今や巨大IT企業となったエンコム社と、それに肉薄するディリンジャー社。両社はコンピューター内にあるデータを実体化する技術で先を越そうとしのぎを削り合っていた。
ディリンジャー社のジュリアンは最強の警備プログラムであるアレスを始め、数多の兵器の実体化に成功するが、その姿を保っていられるのは29分が限界だった。
一方、妹のテスと共にエンコム社の事業を引き継いだイヴは、創業者フリンの言葉をヒントに、実体化したデータが消滅しない永続コードを発見する。
ジュリアンに命じられたアレスはイヴをコンピューター空間=グリッドに取り込み、彼女が知る永続コードを引き出そうとする。しかし、自分らを消耗品としか見ていないジュリアンに疑問を抱き始めていたアレスはイヴを連れて脱走するが……といったお話。
要約すると、デジタル世界のプログラムだったアレスが現実世界にやってくる話です。
シリーズ第3作。
これまでは人間がデジタル世界=グリッドに入り込むばかりのお話でしたが、今作では逆にデジタル世界の人間(や兵器)が現実世界にやってくるという触れ込み。
これをネタ切れと感じる人もいるでしょうが、そもそも現実とデジタル世界間の行き来=物質転送は第1作=『トロン(:オリジナル)』からやっている事。
対象物をデータとしてコンピューターに取り込めるのなら、データさえ作っておけば現実世界に出力できるのも当然なので、一応はシリーズの世界観に則した話になっているんですよ。
前作=『トロン:レガシー』でも、大勢の兵隊がこっちの世界に攻め込もうとしていましたしね。
ここで素朴な疑問が湧きまして…。
データを現実世界に出力できるのは分かった。兵器類についてはモデリングしているという説明もあった。
では、人間の姿として出力されるプログラムはどうやって外観が決まるんだろう?と。
アレスは最強の警備プログラムと言われるくらいだから、強そうな見た目になるのは想像できるんですが、あんなヒゲモジャなオジサンとして出力されるとビミョーじゃないですか(笑)。
逆にアテナはイイ感じ。いかにも戦う気満々な『エイリアン2』のバスクエス並みのインパクト。
この辺、プログラムと作った人=ユーザーの顔が一致している(一人二役)という前作までの設定を活かすつもりはなかったのかな。
アレスを始めとするプログラムたちは、コンピューター内にデータさえ残っていれば何回でも実体化できるし、どれだけ死んでも蘇れます。
使う側としては1ミリの良心も痛まない、使い捨てできる命です。
そんなジュリアンに忠義を尽くす事に懐疑的になったアレスは、時間制限のない実体化を可能とする永続コードを手に入れるために戦い、その中で永続コードが不完全である事を教えられます。
なるほど、現実世界には永遠の命もなければ、やり直せる命もないという意味においては、永続コードとは見せかけのものなんですよね。
監督のロアヒム・ローニングさんは、アレスを演じるジャレッド・レトさんに『ピノキオ』を例え話に用いたそうですが、本作はピノキオのその後までを想像させる作品でもあるんだなと。
1作目から出演しているジェフ・ブリッジスさんが出演しているという事で、もちろんフリンの登場は確定です。
今や世捨て人となったフリンの、色々と達観的な物言いや衣装はエピソード7以降の某スカイウォーカーさんを思い出しますね(笑)。
もう現実世界に戻れないようですが、ならフリンはどこにいるのかと思えば……そんな所かよ!とただただ歓喜です。個人的に、最も心拍数が高まったシーンです。
フリンはやはり失踪したまま。ならエンコム社はどうなっているのかと思えば、まぁ色んな意味で大変な事になってますね。
前作に登場したフリンの息子のサムが頑張ってるんじゃないの?と思いきや、今ではイヴとテスという、中国系だか韓国系のキム姉妹が経営を引き継いでいるというウゲ~な展開…。
さらには、かつてフリンと敵対していたディリンジャーの一族はディリンジャー社を創立し、エンコム社と互角の立場にあるようです。
そのCEOであるジュリアンやエリザベスといったディリンジャーの一族も登場しますが、そのポジションは前作で登場したエドワードでしょ? キリアン・マーフィーさんとのダブル主演でも良かったのにねぇ。
ヒロインがアジア系ってのは最後まで馴染めませんでした。あんま綺麗な人だとも思えなかったし。
今やアメリカは雑多な人種が住む国になっているからって、そんなのをわざわざ映画に反映させなくていいんだよな。
個人的に『トロン』の世界観にアジア人は合わないと思っています。
いくつかの問題は未解決のまま、続編を臭わせるような終わり方は嫌らしいですね。
ハッキリ言ってしまえば、続編を作れるほどの評価は得られないんじゃないかなと思っています。続きはお得意のネットドラマにでもするのかね。
本作もそれなりには楽しめたものの、今に思えば『トロン:レガシー』って割と面白かったんだな。
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続編と言いつつも前作との関連がほとんどない作品も稀にありますが、本作はしっかり続編している作品です。
前2作を見てないとサッパリ分からないという事はないけど、やはりシリーズ作品は前作を見ておく方が感慨深いものを多々感じると思いますよ。
劇場プログラムは990円。主にキャスト&スタッフのインタビューで構成されています。
この手のビジュアルを重んじる作品は、メカをいっぱい載せて欲しいんだよ。
で……タイトルになっているトロンって何なの?と思った人、それで正解です。
ちょっとしたタイトル詐欺ですね…。
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