■ Woman They Almost Lynched
南北戦争中、サリーは兄を訪ねて南北の境界の町まできた。しかし兄は殺された。
町では強盗団のクワントリィル一味がはびこっており、また北軍の脅威にさらされていた。
サリーは(本当は南軍の)ランスと知り合い好きになった。北軍が攻めて来てクワントリィル一味は逃亡した。
サリーはランスを逃がすためにわざと北軍に捕らえられた。サリーが処刑されようとした。


製作年:1953、監督:Allan Dwan、脚本:Steve Fisher、原作:Woman They Almost Lynched(Michael Fessier)


■ はじめに

◆ 登場人物

 サリー・マリス(ジョーン・レスリー) 主人公
 ビッタルート・マリス(Reed Hadley) サリーの兄、酒場経営
 ジョン・パブロ(Nacho Galindo) ビッタルートの酒場のバーテン
 デボラ・コートニー(ニーナ・ヴァレーラ) 町長
 Mr.コートニー(?) デボラの夫、鉛鉱山の所有者
 ランス・ホートン(ジョン・ランド) 鉱山の鉱区長、実は南部軍人

◇ クワントリィル一味
 チャールズ・クワントリィル(ブライアン・ドンレヴィ)
 ケイト・クワントリィル(オードリー・トッター) チャールズの妻
 ジェシー・ジェームス(ベン・クーパー)
 フランク・ジェームス(ジェームス・ブラウン) ジェシーの兄
 コール・ヤンガー(ジム・デイヴィス)

◆ 感想・補足

本作は「私刑される女/Woman They Almost Lynched」という題名が少々おかしいものの、なかなか面白い。他のレヴューでも評判が高いようである。

一つは西部劇にも拘わらず主人公二人が女性であること。しかもアクションを含めて女性が活躍するのは少ない。サリーの目つきがしっかりしていて好感度が良い。ついでながら当地の町長デリラ・コートニーも女性である。

ごく簡単に言えば、最初は対立した女性二人だが、それが友情に転化して、今度は助け合うストーリーとなっている。

キャストの順番はジョン・ランド→ブライアン・ドンレヴィ→オードリー・トッター→ジョーン・レスリーの順だが、内容を見るとジョーン・レスリー→オードリー・トッターとなる。

クワントリィル一味として、実在の悪人三人組(ジェシー・ジェームス、フランク・ジェームス、コール・ヤンガー)が登場する。言わずと知れた悪党一味だが、本作では名前を拝借しているだけ。

ジェシー・ジェームスはまだ少年で、しかもサリーに何かと優しくする。

本作は南北戦争中の話で、南北の境界の町が舞台である。登場人物の南北の区別を知らなければ理解できない。町役場(GENERAL OFFICESとの看板になっている)には南北の両方の旗が掲げてある。コートニー町長は、状況に応じて南北を使い分ける。

本作の舞台は「ボーダーシティ」となっているが、町の名前ではなく単に「境界の町」の意味だと思われる。

ランス・ホートンは、最初は普通の服で現れるが、最後には南軍の軍服で現れる。注、北軍軍服は紺色、南軍軍服はグレイ。

サリーとケイトは酒場で殴り合いをして、さらに拳銃で決闘をするが、最後はケイトがサリーを助ける。その後ケイトは北軍に追跡されるが、南軍支配地まで逃げて助かる。

サリーの拳銃の使い方が不思議。ケイトとサリーの決闘。サリーは二挺拳銃をしているジェシーの右腰のガンベルトを借りる。それを左腰に装着する。しかし左手ではなく、右手で拳銃を抜いて撃つ。ついでながらスカート姿でガンベルトをしているのは、すごく変に見える。

ランスはサリーが危機に陥っている肝腎な時に姿が消えている。これはサリーを活躍させるため。

ケイト=オードリー・トッターが歌っている。他の出演作では見たことがないので声は別人かも?酒場の従業員としてアン・サヴェージがこっそりと出演している。

補足、アメリカ合衆国は北部、アメリカ同盟国は南部。
 


■ あらすじ

◆ 駅馬車が襲われた

東部に住んでいたサリー・マリスは酒場を経営する兄のビッタルートに会うために駅馬車でボーダーシティに向かっていた。北軍の部隊が現れて護衛についた。

しかしクワントリィル一味に襲われた。駅馬車は横倒しになり、そのまま馬に引かれて走った。護衛に当たっていた北軍兵士は殺された。サリーは横倒しの駅馬車から救い出された。

そのまま駅馬車と一味はボーダーシティに向かった。一味の中に女性がいる。クワントリィルの妻ケイト。

◆ ビッタルートと再会した

一味のジェシーは馬が死んだために駅馬車に乗り込んだ。ジェシーはまだ少年だったが、サリーに話しかけて、以降も親切にした。

一味と駅馬車はボーダーシティに到着した。サリーは一味と一緒に到着したので、みんなに疑われたがジェシーが守った。

サリーは酒場に入り、兄のビッタルートに再会した。最初ビッタルートはサリーのことを気がつかなかったが、その後は抱きしめて懐かしがった。

サリーは酒場の二階の部屋に入ったが、そこにはケイトの写真があった。昔ケイトはビッタルートの恋人であった。

◆ ビッタルートは殺された

酒場にクワントリィルとケイトが来た。ケイトはクワントリィルの腕を抱えて「私は幸せよ」とビッタルートに話しかけた。ビッタルートは怒りを堪えている顔である。

その後トラブルがあり、ビッタルートは拳銃を出した。そして一味に簡単に射殺された。

二階からサリーが下りてきた。ビッタルートの死体を見て愕然とした。そして怒った。

酒場で働いている女性たちは「(経営者が殺されたので)これからどうしようか?」と困った顔をした。

補足。ここでサリーが拳銃の腕前を見せる場面がある。

◆ 酒場を再開した

コートニー町長とクワントリィルは、ビッタルートが死亡した件について言い合った。

サリーは町役場=コートニーの事務所に出かけた。今後のことを相談したが、何の回答もなかった。当地を立ち去るしかないとのこと。

しかしこれからがサリーの立派なところである。酒場を再開することにした。仕事がなくなったので町を出て行こうとしていた女性たちは、喜んでサリーに協力する。

サリーは今までの印象とはまったく違って、肩と背中を出した派手な衣装を来て酒場に立って客の応対をした。右の頬にホクロをつけている。

◆ サリーとケイトが殴り合い

鉱区長をしているランス・ホートンがクワントリィル一味とトラブった。ランスは一味に拳銃を突き付けられた。

その後、ケイトと一味が酒場に入ってきた。酒場にはランスもいた。サリーとランスは話して気持ちが通じたようである。

ランスと一味が睨み合った。サリーはそれを見ていたが、ジェシーが、ケイトや一味のことについて説明した。

ケイトがバーテンのパブロにクレームをつけたので、サリーはケイトに殴りかかった。女性同士とは思えない激しい殴り合いが展開された。みんなは面白がってはやした。

この戦いはサリーの勝利で終わった。

しかしサリーは泣き出してランスや女性たちが慰めた。

コートニー町長はクワントリィル一味に「この町から出て行って」と言ったが無視された。

◆ サリーとケイトは決闘した

ランスはサリーに「町をでていく」と言う。二人はキスをして別れた。

ランスがサリーと別れて酒場を出たところで、クワントリィル一味に拳銃を突き付けられて拉致された。ケイトがランスに拳銃を突き付けて、今にも引き金を引きそうに興奮した。

これを見て、ジェシーがすでに閉まっていた酒場に駆けつけてサリーに知らせた。「彼女(ケイト)がランスを殺す」。

サリーは二丁拳銃をしているジェシーから拳銃を借りた。サリーはスカートの上にガンベルトを巻いた。注、夜のはずだったのだが、いつのまにか昼になっている。

サリーは一味のアジトに向かった。騒ぎを聞いてケイトが外に出てきた。

二人は路上で距離をおいて睨み合った。みんな遠巻きにする。二人は少しずつ歩み寄った。注、ランスは拳銃を突き付けられた状態で動けない。銃撃戦の後に逃げ出す。

ケイトが拳銃を抜いた。しかしそれよりも早くサリーはケイトの右手を撃った。実に正確な射撃である。ケイトは倒れた。ケイトは手首をケガしただけで、それ以上の傷はない。

◆ 北軍が来た

クワントリィル一味が町から出て行くことになる。コートニー町長たちは一つの心配をした。それは悪党とはいえ、クワントリィル一味が当地の秩序を保っていた。しかしそれがなくなる。

予想通り北軍部隊が入ってきた。北軍は町を制圧しようとする。

クワントリィル一味は町を出て行くときにサリーを拉致した。

ランスはサリーを守って銃撃戦を展開する。しかしランスは撃たれて倒れた。

ここで北軍部隊か襲ってきたので、クワントリィル一味は逃げ出した。サリーは置き去り。

サリーは倒れたランスを助け起こした。ランスは酒場に二階に運ばれた。

ケイトが逃げ遅れたので、サリーはケイトも助けて二階に上げた。サリーは酒場の扉を閉めた。

◆ サリーが拘束された

結局、町は北軍に占領された。これから南軍関係者を拘束しようとする。

酒場に北軍が入ってきた。中を捜索する。酒場の女性たちが文句をつけて(ケイトやランスがいる)二階に行かせないようにする。

サリーは階段を下りて行って逃げ出す。これはランスとケイトを守るために、自分がわざと捕まるため。注、ランスが持っていた南軍への連絡メモをサリーが持っている。しかもメモに上書きして、メモが偽であると偽装している。

サリーは「南軍のスパイ」として拘束された。ランスはここで姿を消す。

◆ サリーの処刑

サリーは拘束された。サリーの処刑が行われる。サリーは木の下に連れていかれて首にロープを架けられる。

みんなはサリーを助けたいのだが武力がないので見ていることしかできない。

いよいよサリーの処刑が実行されようとするとき、ケイトが馬に乗って現れた。「自分がスパイ」と宣言して逃げ出した。

北軍はケイトを追った。北軍が去ったのでサリーは助け出された。

ケイトは逃げ続けて南軍の支配地域まで走り、北軍は追跡を諦めた。

◆ ランスが現れてハッピーエンド

サリーは酒場を再開した。にぎわっている。ケイトはニューオーリンズまで行ったそうである。

ここでランスが現れた。南軍の服を着て南軍部隊を引き連れている。

町の人々は万歳をして迎えた。

ランスとサリーがハッピーエンドになったことは言うまでもない。
 


■ 出演作

◆ ジョーン・レスリー
(1939)邂逅/めぐりあい/LOVE AFFAIR
(1952)虐殺の砂漠/HELLGATE
(1941)ハイ・シェラ/High Sierra
(1953)私刑される女/Woman They Almost Lynched

◆ ブライアン・ドンレヴィ
(1939)大平原/Union Pacific
(1947)死の接吻/Kiss of Death
(1949)狂った殺人計画/Impact
(1940)約束の地を目指せ/Brigham Young
(1952)ハチェット牧場の対決/Ride the Man Down
(1953)私刑される女/Woman They Almost Lynched

オードリー・トッター
(1949)罠/THE SET-UP
(1947)湖中の女/The Lady In The Lake
(1955)暗黒の叫び/A BULLET FOR JOEY
(1947)高い壁/High Wall
(1946)郵便配達は二度ベルを鳴らす/The Postman Always Rings Twice
(1952)パリの記者とハンガリーのスパイ/Assignment - Paris
(1953)私刑される女/Woman They Almost Lynched