■ High Wall
スティーヴン・ケネットは「妻のヘレンを絞め殺し、車に乗せて川に突っ込み事故に見せかけた」。
しかしスティーヴンは、以前の事故で頭に傷を負っており、激しい頭痛があり、また記憶もはっきりしない。
鑑定のために精神病院に入れられた。手術をして頭痛は良くなったが、記憶障害は治らない。妻の首を絞めたまでは憶えているが、その後の記憶がない。
精神科医のアン・ロリソンは「麻酔療法をすれば、その時のことは思い出す」と勧めるが、スティーヴンはやりたがらない。
しばらくしてスティーヴンは麻酔療法を受けた。スティーヴンは精神病院を脱出して事件現場に向かった。アンはスティーヴンを追いかけた。


製作:1947年 監督:カーティス・バーンハート  


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 スティーヴン・ケネット(ロバート・テイラー)
 ケネット夫人(エリザベス・リスドン) スティーヴンの母親
 ヘレン・ケネット(ドロシー・パトリック) スティーヴンの妻、プラドル出版の社員
 リチャード・ケネット(?) スティーヴンとヘレンの息子
 ウィラード・I・ウィットコム(ハーバート・マーシャル) プラドル出版の社長
 アン・ロリソン(オードリー・トッター) 精神科医
 ファーガソン夫人(?) アンのおば、アンと同居
 ジョージ・ポワード(ワーナー・アンダーソン) 精神科医
 フィリップ・ダンラップ(モローニ・オルセン) 精神科医
 スタンレー・グリフィン(モリス・アンクラム) 精神科医
 スローカム(H・B・ワーナー) 音楽好きの入院患者
 デイヴィッド・ワラス(ジョン・リッジリー) 地方検事補佐
 エモリー・ガリソン(ジョナサン・ヘイル)
 ヘンリー・クロナー(ヴィンス・バーネット) ウィットコム自宅アパートの管理人
 ハックル(チャールズ・アーント) スティーブンの官選弁護士

アンのキャラクタがvery good。
 


■ あらすじ

◆ プラドル出版

ウィットコムはプラドル出版に戻ってきた。秘書に(社員の)ヘレン・ケネットを部屋に呼ぶように言うと、ヘレンは外出中とのこと。

続けてヘレンが出かけた後に、ヘレンの夫のスティーヴンが来たので、スティーブンにヘレンの行き先を教えたとのこと。

◆ 横転事故

車が危なっかしい運転で飛ばしている。運転しているのはスティーヴン。助手席には女性。

その車は川の手前で道を外して川に転落した。車は横転。

ウィットコムが警察に呼ばれて事情を聞かれている。

スティーヴンはケガをした。乗っていた女性はスティーヴンの妻のヘレン。

ヘレンは死亡したが、事故で死亡したのではなく、首を絞められて、事故時にはすでに死亡していた。

ウィットコムが「彼女(ヘレン)の夫が二年ぶりに帰ってきたとのこと。もしかしたら何かを知っているかも」と地方検事補佐のデイヴィッド・ワラスに言うと、ワラスはウィットコムを隣の部屋に連れて行った。スティーヴンがいた。

ワラスはスティーヴンを追求した。

「君は妻を殺して、事故死に見せかけた」と追及すると、スティーヴンはあやふやな態度で頭に手をやった。頭痛がしているようである。

「調書に署名を」と迫るが、他の人が「頭に手術の痕がある。精神科の診察が必要」と主張。

◆ スティーヴンは手術を拒否

スティーヴンはアムラン郡精神科病院に連れてこられた。

スティーヴンは自分の子供の写真を見せられると「戻せ!」と叫んで暴れた。そしてまた頭痛がして頭を抱えた。

診断では脳の左前頭葉に血腫があり、脳を圧迫している。これが身体的、精神的影響を与えている。

「血腫をとり除く手術を」と言われるが、かなくなに手術を拒否する。

アン・ロリソン医師がスティーヴンと面談する。病院の職員に危険だと言われるが、アンは職員を外に出して、二人だけで面談する。

「手術を受ければ頭痛から解放される」「実験台になるのはイヤ」。

その日はアンは引き下がって帰宅した。

◆ スティーヴンの母親が死亡していた

病院幹部は「心神喪失で罪を逃れるつもり」と話している。アンはそばで聞いている。

スティーヴンは戦争中は爆撃機のパイロットをしていた。戦争中に結婚したが、頭を負傷して手術を受けた。

帰国したが給与の安い仕事しかなかったため、ビルマの貨物機のパイロットになった。ヘレンは生活のために仕事についた。

一か月前に墜落事故を起こした。精密検査をすると「手術が必要」とのことだったが、手術を拒否。しょっちょう頭痛がしている。そして過去の記憶の欠落がある。

スティーヴンが拒否しているので、母親に同意を得ることにした。母親の同意でも手術は可能である。

アンともう一人の医師が母親を訪ねて行った。ドアを叩いても応答がない。帰ろうとしたが、中に子供がいるのを発見した。

子供に合図してドアを開けてもらって中に入った。母親が床に倒れていた。注、母親の死亡は事件性はない。

◆ スティーヴンが手術を承諾

アンとスティーヴンが独房で話す。

まず母親の面会の話。「なぜ面会させてもらえない、母が来ただろう」「でもお母さんは来なかった」「嘘だろ」「嘘をつく理由はない」。アンはとりあえず母親が死亡していたことは言わない。

次に手術の話。「手術の話なら無駄だ」「決めたの?」「ずっとここにいられる」「本当にここにいたいの?」

そして母親の死亡を伝える。「お母さんは、昨夜亡くなったわ。家を訪ねたら、倒れてた」。注、死亡は昨夜ではないかもしれないが、発見は昨夜。

そして子供のこと。「息子さんは施設に入る」。注、本当はアンが預かっている

「あなたは現実から逃げられる。でも子供はどうなる?息子さんは現実から逃げられない」と言うとスティーヴンは考え込んだ。

アンは独房から出て帰宅した。

アンは帰宅した。しばらく旅行していたおばがいた。おばは(スティーヴンの)子供がいるのにびっくりした。注、別にメイドがいる。

おばはアンが子供の時に、ノラの動物をいっぱい家に連れてきたことを思い出した。

病院から電話がかかった。スティーヴンが手術を受けるとのこと。「よくやったな、どうやって説得した?」。

◆ 記憶の欠落をどうするか?

アンに「スティーヴンの手術が成功」との連絡が入った。スティーヴンのところに行った。

官選弁護士が来ていた。「世間の同情を集めて無罪にする」と言っているが、我々から見ても、かなりいい加減な弁護士である。スティーヴンは弁護士と喧嘩した。

スティーヴン「息子を施設から出してくれ」。アンは「息子さんは一般家庭で暮らしている」と言うが、自分の家だとは言わない。「感謝する」。

アンと他の医師が話している。「スティーヴンの退院はまだ早い」「彼は意図的かどうかは不明だが、隠し事が多すぎる」「麻酔療法を拒否している」。

医師たちの意見は「麻酔療法をすると、自分に不利な記憶を取り戻すことを怖れている」。

ここでスティーヴンを呼んだ。スティーヴンは麻酔療法は拒否して「早く裁判を受けたいという。そして早く息子を経済的に支えたい」と言う。

アンが「隣の部屋に息子さんがいる」と言う。スティーヴンは喜ぶが、しかし「嘘だろ!」と言って他の扉から出ていった。

依然として麻酔療法は拒否しているものの、アンには友好的になって、いろんなテストに協力する。

◆ ヘンリー・クロナーが死亡

メイプル通106番地。ウィットコムの自宅があるアパート。ウィットコムが帰ってきた。

管理人のヘンリー・クロナーが話しかけてくる。クロナーは自分の事情を話して、金が必要であると言う。遠回しにウィットコムを脅迫する。

ウィットコムが応じないので「警察に行くべきですかね」というが、それでもウィットコムはそれでも応じない。

スティーヴンにクローナーが面会に来た。

「新聞で事件のことを読んだ。新聞には部屋に三人いたとは書いてなかった。気になりますよね」。我々には何のことか不明な表現だが、スティーヴンには理解できたようである。「詳しく聞かせてくれ」。

クローナーは、それには答えず金の話をだす。スティーヴンは「ここにいる間は金は動かせないが、数日後には拘置所に移る」。

「何を知っているんだ?」「金と引き換えです」。クローナーは立ち去った。

メイプル通106番地。クローナーが窓から体を乗り出して何やら修理をしている。

ウィットコムが通りかかった。ウィットコムはクローナーの足を引っかけた。クローナーは道路に落下して死亡した。

◆ スティーヴンは麻酔療法を受けた

スティーヴンは麻酔療法を受けることにした。アンに「記憶喪失は、裁判に有利だと思っていた。しかし俺は殺してない気がする。メイプル通106で何があったかを思い出したい」と話した。

注、麻酔療法を受けたら簡単に記憶が回復するとも思えないが、そのようなストーリーになっている。

アンは面会室でスティーヴンに麻酔療法を施した。

飛行機で戻ってきた。自宅に戻ると母親が出てきた。妻のヘレンはいない。会社に行っている。

プラドル出版に行くと外出中なので教えてもらう。メイプル通106。

ドアをノックすると「ダーリン、開いてるわよ」と返事。ドアを開けた。ヘレンはびっくり。

スティーヴンはヘレンに詰め寄り、興奮して首を絞めた。

ここで激しい頭痛が起きて気を失った。

ここで麻酔療法が終了。「気がついたときに何かがなくなっていた」と言う。

それから後はスティーヴンがすでに知っていたこと。気がつくとそばにヘレンの死体。その後は非常階段から妻の遺体を運び出して車に乗せた。そして事故。

◆ メイプル通106に行く

アンは面会室を出て病棟の係に「スティーヴンを(午後)八時になったら、病棟に戻して」と指示して自宅に帰った。

いやいや、そうではない。アンの車の後部座席にはスティーヴンが潜んでいた。行き先も違う。

「ばれたら大変なことになる。裁判にも不利よ。今戻れば気づかれない」「無実を証明しないと息子に会えない」「無実と言う妄想は捨ててちょうだい」と話しながら走っていく。

行き先はメイプル通106だが、近くのレストランに入った。電話をかけて留守であることを確認した。

玄関から入ると見つかるので、塀を乗り越えて窓から入った。

◆ 事件の状況を再現する

ここで二人は事件の時の状況を再現する。当時の時のように物を置いたり、イスを倒したりする。アンがヘレンの代わりに首を閉められる役をする。

スティーヴンは「何かが足りない」と考えるが、隣の部屋からバッグを持ってきて、テーブルに置いた。別のバッグなのでちょっとサイズが違うが再現できた。

「目が覚めた時に、このバッグがなくなっていた」と思い出す。注、このバッグが事件にどのように関係しているのかは説明されない。

アンが片付けようとすると「このままにしておけ」と制止した。

◆ スティーヴンはこっそり病院に戻った

二人は外に出た。病院に帰った。門番に「忘れ物をしたので取りに来た」と言って門を通過する。もちろんスティーヴンが隠れている。

スティーヴンは「医師には守秘義務がある」と言い、さらに「恩に着る。ありがとう」と言って病棟に戻った。

アンは、まだ残っていた管理者に「帰宅しようと思ったら不思議なことが」と言って話しかけた。「どんなことだ?」と聞かれたが、アンは「すみません、頭が整理できてません。また出直しきます」と退出した。

管理者は「ロリソン先生に休暇をとらせるように」と人事に連絡する。

補足。これはアンの作戦なのだが、後の場面につながらず、意味が不明。場面が省略されているものと思われる。

一方、メイプル通106にウィットコムが帰ってきた。

部屋の状況を見た。特にバッグが置いてあることに気づく。ウィットコムは考える、考える、考える。

◆ ウィットコムが面会に来る

ウィットコムは旅行会社にメキシコ行のティケットを予約する。逃亡の準備である。

スティーヴンが周りの患者に「面会人が来る」と言っている。

ウィットコムが病院を訪ねてきた。まずダンラップ医師に面会する。「ケネットさんの奥さんの上司。ケネットさんの手術後の彼の様子は?」と聞く。「問題ない」との答え。

スティーヴンに面会人の連絡。落ち着いて、ゆっくりと面会室に行った。

当たり障りのない話をした後、ウィットコムは「優秀な刑事弁護士を知っている。彼なら無罪にできる」。「断る」「裁判に勝てないぞ」「勝てるさ。弁護士が必要なのはアンタ」。

ウィットコムは「ここにきた男を当てにしてるんだろ?彼は証人になれない。事故で死んだ」と言い、さらに「私を告発しても無駄だ。異常者の妄言だ。私がヘレンを殺したと証言できる者も死んだ」。

ウィットコムが真相を白状した。スティーヴンは「やっぱり」と掴みかかる。殴る。職員に制止された。

スティーヴンは独房に入れられた。

ウィットコムはメキシコ行をキャンセルした。

◆ スティーヴンは脱走した

アンが自宅に帰ろうとしたところ、同僚の医師が「車に乗せてくれ」と言ってきた。その時にスティーヴンが独房に入れられたことをアンに教えた。

アンは「ちょっと待ってて」と言ってスティーヴンに会いに行った。

アンは独房に入った。「本人が喋った。しかし罠にかかった」。

アンは「解決策を見つけましょう。あなたの治療に手を尽くす」と言うが、スティーヴンはアンが当たり障りにないことを言って事態から逃げていると見た。「アイツを逃がしたらすべてを失う」。

スティーヴンは独房にアンを閉じ込めて独房→病室を脱出した。職員の服を盗んでアンの車に乗って逃げた。病院は「殺人犯が逃げ出した」と警察に手配した。

画面では表示されてないが、アンは先ほどの同僚が事態に気づいて独房から出してもらった。アンはタクシーでスティーヴンを追いかけた。

◆ スティーヴンとアンはメイプル通106に侵入する

病院では管理者が「もはや我々の手には負えない」と話している。

警察は緊急配備して道路を封鎖しパトカーを走らせた。そしてメイプル通106の周囲を厳重に警戒した。

スティーヴンは、もうガソリンがなくなりかけているのに気がついてガソリンスタンドに寄った。「満タンに」。

しかし手配車のナンバーであると気がついた従業員は「カギを忘れた」と言ってオフィスに戻った。スティーヴンは追いかけて従業員を部屋に閉じ込めてガソリンを入れて発車した。

スティーヴンはメイプル通106の近くに来たが厳重に警戒されている。教会に入って隠れて、また出てきた。そこでタクシーを下りたアンに出会った。

アンが戻るように説得するが、スティーヴンは受け入れない。とりあえず二人は酒場に入った。

ここで酔っ払いが二人に話しかけてきた。やたらとしつこい。大事な時に二人には大迷惑である。

しかしこれはチャンスだと分かった。三人でメイプル通106に行った。外で警戒している警官もスティーヴンであるとは思わない。

二人は酔っ払いに「また飲みに行こうぜ」と別れを言ってメイプル通106に入った。そばの警官も気がつかない。

補足。酒場にいる時にアンは「自分が息子を預かっている」と明かす。

◆ ウィットコムはすべてを話す。

ウィットコムの部屋に刑事がきた。刑事は「(スティーヴンを捕らえるのは)もう時間の問題です」と言っている。

刑事は出ていく。ウィットコムはエレヴェーターの前まで刑事を見送る。そして自分の部屋に入った。

スティーヴンとアンが中にいた!

「警察がいるぞ」「その前にアンタを殺す。俺は心神喪失で無罪だ」とやり合った後、二人は格闘。ウィットコムが気絶した。

アンはウィットコムに麻酔を打ち、事件の時の出来事を喋らせた。以下はその内容。

ウィットコムが部屋に入ってきた。ヘレンがいる。そばにスティーヴンが気を失って倒れている。

「夫に殺されそうになったの。夫は異常よ、目を覚ますまえに何とかして」と言う。

しかしウィットコムとヘレンは、その前からうまく行ってなかったようである。ウィットコムがヘレンと別れるようなことを言う。ヘレンは激怒。

ウィットコムはヘレンの首を絞めた。ヘレンは死亡。

ここまで明かしてウィットコムは目を覚ました。周りには刑事など警察関係者がいて、この話を聞いていた。

「検事局で聴取する」とウィットコムは連れ出された。

◆ スティーヴンは息子と再会する

二人はアンの家にきた。二階に上がった。息子が寝ている。スティーヴンが息子を見下ろす。

アンとスティーヴンが抱き合った。
 


■ 出演作

◆ エリザベス・リスドン
「拳銃の町/Tall in the Saddle(1944)」

◆ ハーバート・マーシャル
「月光の女/The Letter(1940)」
「女海賊アン/ANNE OF THE INDIES(1951)」
「天使の顔/ANGEL FACE(1953)」

◆ オードリー・トッター
「罠/The Set-Up(1949)」
「湖中の女/The Lady in the Lake(1947)」
「暗黒の叫び/A BULLET FOR JOEY(1955)」

◆ モローニ・オルセン
「剣豪ダルタニアン/Sons of the Musketeers(1952)」
「サムソンとデリラ/Samson and Delilah(1950)」
「汚名/Notorious(1946)」
「愛の弾丸/Annie Oakley(1935)」

◆ モリス・アンクラム
「アパッチ/Apache(1954)」

◆ H・B・ワーナー
「十戒/The Ten Commandments(1956)」
「素晴らしき哉、人生!/It's a Wonderful Life(1946)」
「嵐の三色旗/A Tale of Two Cities(1935)」
「サンセット大通り 1950」

◆ ジョン・リッジリー
「三つ数えろ/The Big Sleep(1946)」
「陽のあたる場所/A Place in the Sun(1951)」

◆ ジョナサン・ヘイル
「荒くれ男/Stampede(1949)」
「暗黒街の弾痕/You Only Live Once(1937)」