こんにちは、木戸でございます。
2023年が始まりました。今年は東西南北スタートの最後の年で、最西端
(本土限定)の長崎県佐世保市神崎鼻から始動しました。東西南北の中では
最も地味でしたが、れっきとした本土最西端でありました。
ん?最西端、、最西、、サイセイ・・再生?! というわけで今回は、企業
再生に伴って生じる人事、転籍について整理します。今年も強引さ全開。。
変化の激しい時代、無関係と思っていても他人事ではないかも知れません。
■別企業への転籍を拒否されたとき
本来は、転籍には労働者の同意が必要ですので、同意なき転籍命令は無効
と考えられます。ですので、転籍を拒否した労働者に対して、人事考課を
低評価としたり解雇したりという行為もまた、無効とされる可能性大です。
しかし一方で、転籍前の企業に適当な異動先部署がないなどの場合、転籍
する選択肢しか残されていないことはよくあります。そうなりますと、
転籍を拒否された場合は解雇せざるを得なくなります。
そこで、整理解雇の4要素に該当すれば、必ずしも違法や無効という判断
にはならないと考えられます。整理解雇の4要素とは、①経営上の必要性、
②解雇回避措置の実行、③対象者選定の合理性、④手続きの相当性 です。
■転籍前より転籍後のほうが労働条件が悪いとき
転籍には大別して2種類あるといわれています。1つは転籍元を退職して
(労働契約を終了して)転籍先に入社のパターン、2つは転籍元企業から
転籍先企業に事業主が変わるだけで労働条件は変わらないパターンです。
転籍後の労働条件が悪くなることがあるのは1つ目のパターンですが、
転籍先企業に入社するにあたって、雇用契約書のほか、新たな労働条件が
記載された転籍同意書も用意し、該当者から合意を得ておくのが無難です。
経緯も含めて、労働条件低下の説明を尽くす必要があります。労働条件の
不利益変更については、内容や程度により労働者代表の合意か労働者個別
の同意か、いずれかがあれば必ずしも無効にはなりません。
■転籍後の社会保険や有給休暇残日数
社会保険は、転籍元で資格喪失届を提出(一般的な退職と同じ扱い)して
転籍先で資格取得届を提出します。雇用保険についても同様ですが、転籍
の経緯が事業譲渡や分社化などの場合、例外的な対応もあります。
人数にもよりますが、喪失届・取得届の作成提出よりも、必要書類一式の
提出だけで転籍手続きが済むこともありますので、具体的な転籍の経緯を
年金機構(健保組合)やハローワークに説明し指示を仰ぐ必要があります。
有給休暇については明確です。転籍元との労働契約を終了(=退職)する
パターンであれば、転籍先入社時の残日数はゼロです。しかし、労働条件
が変わらず転籍する場合は、残日数は転籍直前の残日数を引き継ぎます。
■転籍後に転籍前の懲戒事由が発覚
そうそう起こらない事象のように思いますが、これまでの考え方と異なる
部分もありますので留意が必要です。転籍の2種類のパターンのどちらも、
転籍元の懲戒事由を転籍先に引き継ぐことはないという考え方になります。
もちろん、転籍前後の両社の取り決めにもよりますが、多くの場合転籍先
が引き継ぐのは労働条件のみです。転籍前に何かの問題を起こしていても、
それが転籍先の企業秩序に問題を及ぼすとは考え難い、という考え方です。
そうはいっても、懲戒事由を起こすような労働者を受け入れるのは転籍先
にとってリスクですから、転籍対象者に対して、転籍前に懲戒処分の元と
なるような違法行為がなかったか、申告させておくのも有効な対応です。
ところで、転籍と出向は似て非なるものです。出向は、出向元企業との雇用
契約を維持しつつ、出向先企業で指揮命令を受けて労働します。
つまり出向は、出向元・出向先の両社と雇用契約があります。
今回挙げた例はほんの一例ですが、転籍や出向のような労働者が動く事象が
あると、そこに必ずといっていいほど処遇の問題は発生します。
何かと労働者有利の判断がされがちな昨今ですので、慎重な対応が必要です。
以上、業務のご参考になれば幸いです。