津軽三味線
斜陽館のすぐそばに「津軽三味線会館」という名前の演奏会場があって、30分の演奏を聴きました。津軽民謡の伴奏部分を聞かせてくれます。「弥三郎節」という曲を始める前に、奏者が「嫁いびりの歌です」と前置きしました。聴衆は、みなさん、この民謡を知っているはずもないので、なんのことかと思ったでしょうね。歌詞がないと、妙にうらぶれた感じの曲に聞こえました。
三味線は、糸巻きの部分(天神と言うらしい)、棹、胴の3つの部品からできているのだそうです。もちろん、弦とバチも必需品。「胴に張る皮は何の皮かご存じですか」と奏者が聞きました。「猫」と応じるお客さんもいれば、「犬」と答える人もいました。バチを叩きつけるように弾くので、強い皮が求められる。犬の皮が普通だそうです。「今でも犬を食べる国があるそうで、そこから輸入したものです」と言いながら、棹は黒檀でカナダから(?)、弦は絹糸ですが中国から、バチは「タイマイ」(だったか)でアフリカから、津軽三味線と言っても、部品のほとんど全部が外国から輸入しているんです、ということでした。
吉田兄弟というスターが登場して、津軽三味線は大ブームのようです。演奏会場の外には野外舞台が設置されていて、「全国大会」が、そこで行なわれるもののようでした。
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6月の日記
◇7日 津軽半島の根元(?)にある、「不老ふ死温泉」というところに1泊。小学校・中学校の同級会。参加者19人。
◇8日 温泉から貸切バスで五所川原まで。途中、鯵ケ沢の「海の駅」というところの「舞の海記念館」のようなものに立ち寄り、さらに金木で、太宰治の生家「斜陽館」を見学。五所川原では、「立佞武多(たちねぷた)の館」を見ました。高さ20メートルもある巨大なねぷた。津軽平野の広さにびっくり。岩木山も威風堂々たるたたずまい。
◇11日 前から見たいと思っていた、映画『オーケストラ』をようやく見ました。モスクワ(だと思う)の「ボリショイ劇場」のオーケストラを30年前にクビになった指揮者が、一緒に解雇された(主としてユダヤ人の)演奏家たちを集めて、ボリショイ・オーケストラになりすまして、パリの「シャトレ劇場」で、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏します。解雇の理由は何か、ソリストになる、パリ在住の世界的ヴァイオリニスト、アンヌ・マリ・ジャケという、29歳の美女(『イングロリアス・バスターズ』に出てきた)が、なぜ協演に応じたか、始めは喜劇仕立て、だんだん奥行きのあるストーリーに進みます。チャイコフスキーの協奏曲が進行するバックに、ナレーションが坦々と聞こえ、お話がクライマックスになったところで、オーケストラの山場のフォルティッシモが鳴り響きます。涙がどっとあふれ出しました。
原題は、Le Concert (『コンサート』)、フランスで制作された作品のようです。ロシア語とフランス語が交錯しています。映画で使われた曲(冒頭はモーツァルトのピアノ協奏曲)の演奏は、ブダペスト・シンフォニー・オーケストラでした。
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上から目線
「視線」と言えば、「物を見ている方向;目の向く方」のことを指します。もうひとつ、「眼球の中心点と見ている対象を結ぶ線」という「物理学的な」意味でも使われますね。「視線をそらす」という場合の「視線」は、前のほうの意味。
「目線(めせん)」という語彙は、おそらく舞台(や映画・テレビドラマ)などで使われてきたジャーゴン(仲間うちの用語)が一般化したものだろうと思います。意味は「視線」と同じだったはずですが、言いやすい、聞くときに誤解がない、などの理由で採用されたのでしょう、おそらく。
「上から目線」という言い方も、ずいぶん聞くようになりました。「聞き手を見下すような視線」という意味でしょうが、人を非難する場合に主に使われるのは周知の通りです。しかしながら、仰ぎ見るような、「リスペクト」のまなざしを、「下から目線」とは、まあ言わないし――言うとすれば「卑屈」の傾きが強くなりそうです――、これからもその言い方が出てくるとは考えにくい。
「棚からぼた餅」のように、「棚からぼた餅が落ちてきたような」思いがけない幸運を指す省略語句はありますが、「上から+目線」で完結している造語法が面白いと思います。「藪から棒」がやや似た表現でしょうか。これだって、「藪から(いきなり)棒を突き出すように」という意味の省略語句です。
「目線」のニュートラルな使い方には、「消費者目線」とか、「女の子目線」とかがあるようです。視線に代わる造語成分になってしまったもののようです。
「め」が訓読みで、「せん」が音読みですから、これはいわゆる「湯桶(ゆとう)読み」になっています。逆の場合が「重箱(じゅうばこ)読み」。新語を作るときは、できるだけ、読みの交差を避けた方が、広い理解に応えるはずですが、使用が拡大するときには、そんなことにはかまっていられません。
書きぶりからご想像がつくでしょうが、私はこの「目線」という語は使いません。言い方が二つ(以上)ある場合は、古い方を使いたいと考えているからです。
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メルマガ
メールマガジンのことを「メルマガ」と略称します。こちらが普通になったかもしれません。無料・有料の2通りありますが、いまは有料が主流か。月額500円台から800円台。たくさんの書き手が有料メルマガを始めています。
最初無料ではじめ、のちに有料に転じた、日垣隆さんの「ガッキィファイター」というのを購読しています。発行は不定期ですが、おおむね1週間に1回。メルマガ読者を核にして、さまざまなイベントを東京・大阪などで開催しているようです。新しいビジネス・スタイルを確立しましたね。中国でも有料メルマガを発行する準備が整ったと書いています。
勝谷誠彦(まさひこ)という人の有料メルマガも購読しています。これは、恐るべきことに毎日発信されます。外国へ出かけたときにも、1日も欠かさずメールが届きました。脱帽するほかない「粘着力」というべきです。
他にも、お二人の有料メルマガを読んでいます。かつて、月刊雑誌の定期購読をしていました。多いときには10誌くらいもあった。全部を通読するわけではありません(できるはずもない)が、ページをめくるだけでも、役には立ちました。
メルマガの購読は、その、雑誌定期購読に少し似ています。必ず目を通す連載記事を、個別に手に入れているような按配です。
堀江貴文さんの有料メルマガの読者が急増して、今や月間1億円の売り上げを上げるにいたったそうです。
言論の発信メディアが、明らかに新しい段階に入ったと感じます。
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シューベルト 「グレイト」
こういうときに、メロディ・ラインを口笛で吹いて、吹き込んだらたちどころに、曲名・作曲者名などを表示してくれるソフトがあると便利だろうと思います。あるいはすでにあるのかもしれませんが。
マーラーの交響曲の一節だったか、ブラームスだったか、と頭をめぐらせて、ああそうだ、シューベルトの9番「グレイト」だったと思い当たりました。その第2楽章の冒頭でした。
メロディーのきれはしだけ覚えていて、なんという曲だったか思い出せないでいるのが、他にもあります。映画に使われたこと、インディオかインディアンが登場したこと、山腹の、落ちたら命を失いそうな細い道を馬で通り過ぎるシーンで、その曲が鳴っていたこと、などは思い出すのですが、映画のタイトルも、主役の顔も覚えていません。じつにもどかしい。
シューベルトの「グレイト」を YouTube で見つけたのですが、リンクが張れません。さがしてみてください。
私が持っているCDは、チェリビダッケです。チェリビダッケのCDというのはそんなに数多くないそうですが、これは文句なしの名演奏です。
