綴り字大会
アメリカでは毎年綴り字大会が行なわれているようです。もう80年以上も続いているそうです。
12歳くらいまでの少年・少女が、審査員が発音する単語を聞いて、その綴りを1字ずつ言っていく。地方予選を勝ち抜いて、全国大会があり、最終20人くらいからは、テレビで中継される。昨日は、たまたま、1998年だかの大会の様子をドキュメントしたテレビ番組の再放送があって見物していました。
準備のための勉強がすさまじい。『ウェブスターの英語辞典』(B4版くらいのサイズで、細かい字で2600ページ)が、ボロボロになるくらい読み込んで覚えていくのでした。コンテストのスポンサーが、版元のメリアム・ウェブスター社ですから、さりげなく宣伝していたわけですが。
英語の単語は、ラテン語(フランス語)起源、ドイツ語起源、それに最近はスペイン語起源が入り混じって、複雑怪奇な様相を見せますから、いちいち覚えるのは負担だろうなあ、と同情しました。
読み上げられる単語が、順に難しくなっていくというのでもないので、運悪くあやふやにしか覚えていない単語に当たるとそこで敗退してしまう。
私が見たのでは、少女が優勝しました。パリンプセスト(羊皮紙写本)とか、語漏(ごろう、無意味に言葉を垂れ流す一種の病気、ロゴレーアというらしい)などの語をクリアーしていました。
『綴り字のシーズン』という、この大会をテーマにした、リチャード・ギア主演の映画も3年ほど前にありました。この大会のことを英語で Spelling Bee と呼ぶようです。ミツバチと同じ綴りですが、語源はどうも別のようです。編み物の集まり、とうもろこしの皮剥きの集まり、などを bee と言っていたようです。アメリカで主に使われました。
ぼんち
市川崑監督、山崎豊子原作『ぼんち』(1960年、大映)をDVDで見ました。大阪船場の足袋屋の若旦那(市川雷蔵・30歳)が主人公。最初の奥さんになるのが中村玉緒(22歳)。
母親役が山田五十鈴(44歳)、祖母役が毛利菊枝(58歳)、雷蔵のおめかけさん役が二人、若尾文子(28歳)と草笛光子(28歳)。他に、関係を持った女が二人。京マチ子(37歳)と越路吹雪(37歳)。
日本映画が一番元気がよかったころの配役陣ではありますが、それにしても豪華キャストに驚きます。当時の年齢も調べました。みんな若いのにも驚きます。
空襲で家屋敷が全焼してしまい、倉だけが残ります。そこへ、若尾文子と越路吹雪がやってきて鉢合わせ。さらに京マチ子も訪ねてきます。腹巻から出した現金をそれぞれに持たせて、河内の菩提寺に避難させます。旦那(もう若旦那ではない)が1年後にそこへ訪ねて行くと、女三人が仲良く風呂に入っている。顔を見せずにそのまま帰ってしまいます。
この入浴シーンは、今のようにあからさまではないけれど、色っぽくて素敵でした。
神保町シアターという小さな映画館が去年できました。3月まで、中 村登、市川崑作品の特集を、4本(3本)ずつの日替わりでやっています。『ぼんち』もこれからやるようです。
イヤフォン・ガイド
IIZUKA T さんから、美術館などで借りるイヤフォン・ガイドを英語でなんて言ってたか、と質問されました。思い出せなかった。メトロポリタン美術館のサイトで調べたら、オーディオ・ガイド(audio guide)と呼んでいたそうです。今たずねたら、たしかにそうなっています。
料金が1日7ドルでした。ちょっと高い。もっとも、入場料は払わなくても展示品を見ることができたはずです。寄付したい気持のある人は、入り口の募金箱のようなものに何ドルか入れていました。これは、ロンドンのナショナル・ギャラリーも同じやり方だったと思います。
ウィーンの美術史美術館では、ガイドを借りました。こっちは、入場料が必要な代わりに、オーディオ・ガイドのほうは、ただだったか、料金がすごく安かった記憶があります。日本語のイヤフォン・ガイドだったので飛びつきました。そこで語られている日本語がなんとも不自然でしたが。
イヤフォン・ガイドで感心するのは、歌舞伎座のそれです。歌舞伎のセリフも、聞き取るのはむずかしいし、筋が入り組んでくると、誰が何をすることになるかも分からなくなってきたりします。そのときに、大きな声ではないけれど、耳から聞こえてくるガイドは、まことに頼りになります。
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの『夏の夜の夢』だったかを、新宿の劇場で見たときは、男女の役者が、翻訳したセリフを読み上げていました。これは耳障りでいただけなかった。イヤフォンをはずして、早口の英語を音楽のつもりで聞いていたことでした。
四字熟語
四字熟語というものがあります。
怪力乱神・巧言令色・剛毅朴訥
のように、遠く『論語』に典拠を持つ熟語が今も使われています。孔子は紀元前500年頃の人ですから、2500年も前の発言が残っているというのも、ものすごいことです。
「四字熟語」という文字がタイトルに使われた本は、国会図書館のデータで調べると、200冊近くに上ります。
不思議なのは、1980年代以前には1冊もないことです。
最初期にこの字を使ったのは、おそらく、『「四字熟語」の辞典』(真藤建志郎著、日本実業出版社、1985年)だろうと思います。「 」に入っているのは、いわゆる「四文字からなる熟語」という意図でしょう。このころは、まだ「四字熟語」という単語は日本語の中に登録されていなかったフシがうかがえます。
牽強付会・質実剛健・弱肉強食
などなど、短い字数でインパクトの強い表現を可能にしてくれる、力強い味方ですが、それに名前がついたのがつい最近だったということを知ってちょっとびっくりしています。
そう言えば、漢字のことなら何でも知っていそうな高島俊男先生も、「四字熟語」という表現そのものには、強い違和感を表明していたのを思い出しました。
田園交響曲
ベートーヴェンの交響曲は1番から9番までありますが、どれが好みかというのは人によってわかれます。私の場合、30代後半から、6番「田園」がいつでも、まず最初に名前が出ます。
7番も8番も、いや全部素敵な曲なのです。3番だって出だしからしてワクワクしますしね。
ブルーノ・ワルターが演奏した、コロンビア管弦楽団の6番が、もう、よくてよくて。最後の第5楽章――ついでながら、この交響曲は普通の4楽章構成と違って、5楽章構成で、なおかつ、3,4,5の楽章が切れ目なく演奏される――が始まると、至福の感につつまれます。
アンドレ・クリュイタンスというフランスの指揮者のやる6番を今日聞きました。ワルターとちょっと違います。第2楽章のテンポがゆっくりしています。他の違いは、まあ分かりませんが、印象は違う。どちらもゆったりとした、しかも、ロマンティックな演奏です。
楽聖ベートーヴェンということになってしまって、どうしても崇め奉る対象になってしまった感のあったB氏ですが、メロディー・ラインの美しさは無類ですから、音の豊潤に酔えばいいのではないかと思います。
ノリントンという、古楽器で、テンポもベートーヴェンの指示の通りに(というふれこみですが、本当かなあ)演奏する指揮者もいますけれど、聞いていい気持になれるかどうか、それが決め手です。その点では、古典的なワルターやクリュイタンスのほうが私には親しみやすいものです。