パパ・パパゲーノ -84ページ目

それを言っちゃあ

 昨日は、エイ→アイとなる英語の訛りの話でしたが、東京の下町ことば(いわゆる「べらんめえ」)にもいくつかの特徴があります。


 有名なのは「ヒ」と「シ」の区別がつけられない、あるいは、逆になる、ことがあります。NHKのアナウンサー適性試験みたいなものでは、昔、「日比谷発渋谷行き」を読ませてちゃんと「ひびや」「しぶや」と読み分けられるかを見たそうです。


 「アイ」「アエ」が「エー」に変ることがあるのも一つの特徴。


 たかい→たけー  はやい→はえー

 おまえ→おめー  てまえ→てめー


などがそれです。寅さんのせりふで、


 それを言っちゃあおしまいよ


というのがありました。これを、ときどき「おしめーよ」と発音する人がいます。実際には、渥美清がこういう発音をしたことはないと思う。響きが下品ですしね。小島よしおの「でもそんなの関係ない」も、当人は(ふざけるとき以外は)「関係ない」と発音しているようです。


 寅さんのせりふは含蓄のあるものが多いけれど、きわめつけはこれですね。ここにもアイ→エーが出てきますが、品の悪いほうは出てきていません。


 俺とお前は違う人間に決まってるじゃねえか。

 早え話が、お前がイモ食ったって俺のケツから屁が出るか


 これを初めて聞いたときには、大笑いしながらも、昔読んだ実存主義哲学のリクツが一言のもとに言い表されたと思ったことでした。







スペインの雨

 YouTube というはなはだ便利な画像サイトがあって、古い映画の一場面や、演奏会のシーンなどを音声付きで見ることができます。しかも一銭もかからない。


 たまたま「スペインの雨」という『マイ・フェア・レディ』のナンバーに言及していたブログがあったので、探したら見つかりました。(YouTube の貼り付け方をまだ会得していないので、場面を見たい方は、グーグルで the rain in Spain と入力して探してみてください。)


 The rain in Spain stays mainly in the plain.

 (スペインの雨は主に平野にとどまる。)


という、発音矯正用に作った(意味のあるようなないような)例文です。これを、イライザ(オードリー・ヘップバーン)は、初めは、


 ザ ライン イン スパイン スタイズ マインリ イン ザ プライ


としか読めない。いわゆる「コックニー」(ロンドンの下町訛り)です。この歌が始まる直前、


 ザ レイン イン スペイン ステイズ メインリ イン ザ プレイ


と読めるようになった。居眠りしていたらしいヒギンズ教授(レックス・ハリスン)が、びっくりして、


 again! (アゲイン!)


と(はっきりした二重母音で)言います。今では、イギリス英語でも80%以上が、「アン」と発音するそうですから、貴重な記録かもしれません。


 この『マイ・フェア・レディ』の舞台になる地域は、ロンドンのメイフェア(Mayfair)なのだそうで、イライザはこの地名も「マイフェア」と発音していた。タイトルと地名とが掛けことばになっている、ということを、ずいぶん前のことですが、毛利可信先生 に教えていただきました。


 「エイ」が「アイ」になるのは、オーストラリア英語にもあるので有名です。


 I came here today. が、I came here to die. に聞こえるので、慣れないと驚くそうです。



 


 

亡き王女のためのパヴァーヌ

 モーリス・ラヴェルが作曲したピアノ曲 のタイトルです。サンソン・フランソワの弾いたラヴェル・ピアノ作品集の解説記事によれば、1899年パリ音楽院在学中の作品。パヴァーヌというのは、古い宮廷舞曲ということです。


 この曲によってパヴァーヌという舞曲が長く残ることになるでしょう。ギターの曲にもこのタイトルがついたものがあるそうです。


 ゆっくりした2拍子です。ドーレシラソーと始まり、フレーズの結びに、ソドシラーというメロディーがくりかえされます。


 12年後に、作曲者自身がオーケストラ用に編曲しました。今では、こちらのほうを聞く機会が多いと思われます。最後のメロディーが弦楽器で演奏されるところは、しみじみと亡き人をしのぶのにふさわしいおもむきがあります。もちろん、ピアノで聞いてもすばらしい。


 亡き王女というのは、一説では、ルーブル美術館にある、古いスペインの肖像画に描かれた皇女を指すと言われます。その絵から霊感を得て作曲したという。


 そういう来歴を忘れても、この魅力的なタイトルに導かれて、美しい挽歌を聴くのは悪くありません。フランス語の原題 Pavane pour une Infante defunte を直訳しただけですが、日本語の響きも捨てがたいものがあります。


 なお、いま調べたら、infante は、「(スペイン・ポルトガル王の長女以外の)王女」のことを指すのだそうです。


________________________________


カラヤン100年

 今年はカラヤン生誕100年なのだそうです。石丸電気のクラシック売り場に行ったら、おびただしい量のカラヤン指揮のオペラ、交響曲、協奏曲などのCD、DVDが展示販売されていました。


 IIZUKA T さんのブログ に紹介されていた『カラヤンとフルトヴェングラー 』(中川右介、幻冬舎新書)を少し前に読みましたが、フルトヴェングラーとの確執が手に取るようにわかる本でした。チェリビダッケという指揮者も重要な登場人物ですが、タイトルに入れるとうるさくなるので削ったのでしょうね。権力争いの舞台裏に興味のある人にはおすすめの新書です。


 今では、指揮者の指揮ぶりを再生画面で何度でも見ることができるので、指揮法を勉強中の若手は重宝しているのでしょうね。


 カラヤンが振った『バラの騎士』の、DVDを持っています。マルシャリンがアンナ・トモワ・シントウのほう。瞑目して荘重な指揮をするカラヤンの姿は、世界の苦悩を一身に背負ったようで、若い頃ならカッコいいと思ったかもしれませんが、年をとってから見ると、なんだかスタンド・プレイが目立つようでおもしろくない。


 グルベローヴァが若い頃、カラヤンに、『ナクソス島のアリアドネ』のレッスンを受けたことがあるそうです。全曲のどの部分でも即座にピアノで伴奏してくれて、指示も、当たり前の話ですが、的確無比だった、と回想していました。このエピソードは大好きです。


 ザルツブルグのどこかに「カラヤン通り」だったか、「カラヤン広場」があったと覚えています。フルトヴェングラー公園というのもあるのですね。「カラヤン広場」は六本木ヒルズの前の広場の名前ですね。

西瓜ミルクかけごはん

 どうせおなかに入れば一緒になるのだから、と、ごはんの上にスイカを載せて、そこへ牛乳を注いで食べてみた、という文章を群よう子のエッセイで読んだことがあります。考えただけで気持悪くなりますね。同じようなことをしたことがあると、ヨネヤマさんが言っていました。組み合わせはなんだったか忘れましたが、おかずとごはんとコーラと、やはり果物を一緒に口に入れてみたのだったと思います。彼は、まずくはなかった、と言ってました。


 イケダさんは前から、ごはんを食べながら牛乳を飲む人でした。おそらく家では今でもやっているのではないかしら。「おいしいよ」と、ケロッとしたものです。ごはんを食べながら、ビールを飲むのは平気だ、という人もいて、自分では実行しそうもない組み合わせのヴァリエーションもさまざまです。


 C・W・ニコルが書いた文を読んで試してみたのが、納豆サンドです。トーストしたパンにバターを塗り、レタスがあればそれを敷いて(なければキャベツでも)、その上に1パック分の納豆を広げます。その上からケチャップをかけて、もう1枚のパンで蓋をしてかぶりつく。意外にうまいものでした。何人かにすすめたら、試した人が二人いました。二人とも「まずかった」と言ってましたから、口に合わない人のほうが多いかもしれません。


 アメリカ人で日本の大学で教えているリサさんに、このサンドの話をしたら、「わたし大好き。よくやってる」と言うので意気投合しましたね。「ぼくは牛乳と一緒に食べる」と言ったら、ロコツにイヤな顔をして、そんな野蛮な食べ方はしない、というようなことを言ってました。


 納豆サンド、トライしてみますか? ちなみに、我が家では、他のだれもやりません。