索引の作成
1冊の本を作る最終段階に、索引作成ということがあります。これが一筋縄では行かない。
著者(達)に、索引にとるべき項目(事項・人名・語彙など)にシルシをつけてもらいます。今ではマーカーでチェックすることが多い。昔は、鉛筆などで、マル囲みしてもらっていました。
まず、昔(40年ほど前)教わったやり方。マークした語句を、単語帳に使うようなサイズの紙片(6×2センチくらい)にひたすら書き付けていきます。このとき絶対忘れていけないのは、その語句が出てきたページを記入すること。
ジャンルごとに小カードを分けておいて、あいうえお順、あるいはABC順に並べていく。木製の専用仕分け棚のようなものを、大工仕事の得意な人が作ってくれてあって、それを使いました。5段10列のもの。裏表に使う(片面が「あいうえお」、片面がABCの文字を木枠に書いておく)ために、中空になっています。
その小棚にカードを並べていきます。「あ」から「わ」まで並べ終わったら、「あ」で始まる語句をさらに、その中で順になるように並べ変える。すなわち、今なら、コンピュータで「ソート」するところを、頭で考えながら並べていました。使い古した原稿用紙などにそのカードを並べて、セロテープ(はもうありましたね)で止めて、ダブリを消してページ(本の用語としては「ノンブル」)のところのみ、カンマでつないで印刷するように指定します。言葉で説明するのももどかしいものですが、作業もなかなか難儀しました。
今は、コンピュータで自動的にできるから楽でしょう、と言われることがありますが、作業の内実は、上で書いたようなことをコンピュータが手助けしてくれるだけです。
索引のコツは、どれを拾い、どれを捨てるか、に尽きます。多すぎるのが一番こまる。その本のどこへ行けば目指す項目があるか、それが目的だからです。著者(達)のマークに対して注文をつけなければならないこともあるので、難儀はひとしおなのです。索引について書いておきたいことはまだまだありますが、煩雑なのでここまでにしますね。
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佐渡裕
『題名のない音楽会』(テレビ朝日系列)の司会者が4月から指揮者の佐渡裕(さど・ゆたか)さんに代わりました。4代目だそうです。関東地区では日曜日の朝9時から。
前の、ピアニスト羽田健太郎の司会も軽妙で好きでしたが、残念ながら病気で亡くなってしまった。中村紘子がゲストで出たときのこと、きっと羽田さんは中村さんにあこがれていたのでしょうね、ずいぶんはしゃいでいました。中村さんが「スキーが好きです」と言ったら、すかさず、「中村さんが一番好きなスキー知ってる。チャイコフスキー!」とふざけていました。前田憲男、佐藤允彦といっしょにジャズを披露した週の音楽会もつよく記憶に残っています。
さて、佐渡裕さんです。先週(4月20日放映)の番組は、千葉県少年少女オーケストラの、ベートーヴェン「交響曲第5番」第1楽章のリハーサル風景でした。ジャジャジャジャーンで始まる「運命」。最初に出だしの音を出させておいて「素晴らしい!」とほめたあとで、少しずつダメ出しをしていきます。もう、見る見る音楽が変わっていくのが分かりました。少年少女たち(中学生・高校生)の吸収力はものすごいものです。
いっせいに音がクレッシェンドして行って、急激にピアノ(小さな音)に変わるところがあります。ストンと音量が落ちるところを「スービト・ピアノ」と言うと思いますが、普通のオーケストラは(あるいは凡庸な指揮者は)、クレッシェンドの限界まで登りきることができないまま、ピアノの音を出してしまいます。そこは、百戦錬磨の佐渡裕、限界ギリギリまで音を大きくさせて、急に身体を縮めてストンと落としました。お見事!
バレンボイムがエドワード・サイードと対話した『音楽と社会』(みすず書房)の中に、この曲ではないけれど、ベートーヴェンの「スービト・ピアノ」について、「崖っぷちまで音を大きく引っ張っていく」ことができない指揮者たちの「度胸のなさ」を非難しているところがありました。目の前の画面で、つい最近読んだばかりの、この対話のエピソードが開けていくさまを見る思いがしました。
佐渡裕、1961年京都生まれ、まだ50歳前です。小澤征爾、バーンスタインに師事。これからも、番組が楽しみです。京都アクセントの残る話しぶりも魅力のひとつです。
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小倉千加子
小倉千加子著『結婚の条件』(朝日文庫)という知的刺激に満ちた本を読みました。その中に、「合計特殊出生率」をめぐってこんなことが書いてあります。
二〇〇三年現在、世界で最も合計特殊出生率の低い国を順に挙げると、イタリア(1.15)、ドイツ(1.24)、そして日本(1.32)となる。……第二次世界大戦の枢軸国三国である。
これを指して「少子化枢軸国」と呼んでいます。二〇〇六年には、一位香港、二位韓国、三位台湾に交替したそうですが。
「合計特殊出生率」というのは、かんたんに言えば「ひとりの女性が15歳から49歳までのあいだに生む子どもの数(の平均)」です。2.8人くらいが、何年かのちの人口の増減分岐点なのだとか。
この本自体は、心理学を専攻した著者が真正面から、結婚(主として女性の側から見たそれ)について、観察と考察とを展開したものです。
なぜ晩婚化が止まらないか、いずれそれが非婚化に進むことになるがそれはなぜか、日本の少子化対策がことごとくツボをはずしているのはなぜか、などなど、実際に女子学生たちとつきあい、高校卒・短大卒・四大卒の女性たちに取材した実例に即して、抜群の説得力をもって語っています。
フェミニストの論客として聞こえた人ですが、初めから(『セックス神話解体新書』1988年初版、今ちくま文庫)、柔軟な思考と軽やかな文章とで、他のフェミニストたちを凌駕するおもむきがありました。
本書(2003年初版)でも、分析は冴えわたっています。というとずいぶん硬い本(見かけほど柔らかくないのはたしかです)と感じるかもしれませんが、そんなことはありません。松田聖子や岡田美里や三浦りさ子や西村知美の名前、さらには、テレビドラマ『東京ラブストーリー』の登場人物、赤名リカや関口さとみを挙げて、女性たちがロール・モデルとして選択する際の、本音と建前をえぐりだしていく手際はあざやかなものです。おそるべき書き手だと感じ入りました。
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アリダ・ヴァッリ
アドリア海をはさんだ対岸の国がクロアチア。女優アリダ・ヴァッリはクロアチア(その頃はイタリア領)で生まれました。1921年。2006年にローマで亡くなりました。享年86。
凄艶という言葉がピッタリの美人でしたね。たくさんの映画に出演しましたが、私が見たのは3本だけのようです。ただし、どれも映画史にながく残る作品です。
まずは、『第三の男』(英語、1949年、28歳)。ウィーンのプラーター公園だったか広い墓地だったか、向こうから決然と歩いてくる。恋人だったジョゼフ・コットンが道の脇で待っているのに目もくれずに歩き去るシーンが、ものすごく印象深いものでした。
『かくも長き不在』(フランス語、1961年、40歳)。ナチに連れ去られた夫アルベールとおぼしい記憶喪失の男がセーヌ川の岸に掘立小屋を作って住んでいる。アリダ・ヴァッリは酒場を経営している。記憶喪失の男とその酒場で踊るダンス・シーンがよかった。去っていく男の背中に向けて「アルベール!」と声をかけると、一瞬男が肩をすくめます。ただしそのまま悲劇的な結末へ向かう。
『夏の嵐』(イタリア語、1954年、33歳)。原題は「官能」という意味だそうです。オーストリア軍に占領されたヴェネツィアが舞台。ヴァッリの演じたのは多分貴族の奥さんだと思う。なんと占領軍の若い将校フランツに恋をしてしまう。フランツは心変わりをして別の女のところに走る。仮病をつかって軍を抜け出したことをオーストリア軍の司令官に告げ口します。その罪でフランツは銃殺刑に処せられます。ピストルの音が聞こえたとたん、「フラーンツ!」と絶叫するヴァッリの声があわれです。
何語でも演技ができるのはイタリアの俳優たちの長所なんでしょうか。モニカ・ベルッチのも、英語・フランス語・イタリア語、三つの言語で演じた作品を見ました。モニカのほうは、ととのった顔立ちの正統派美人ですが、『マレーナ』(イタリア映画)以外に心に残る映画がないような気がしています。

萩の月
酒飲みの常としてお菓子にはあまり手が出ません。それでも、あれば口に入れたくなるものがあります。
ついこの前ももらった仙台名物「萩の月」を、今日も頂戴しました。卵の香りのするカスタード・クリームが好きです。仙台に行くと、自分でもつい買ってしまいます。「シャケ腹子めし弁当」というのも、よく買った。こっちは店によってあたりはずれがあるような気がしますが。「萩の月」を作っている「菓匠 三金」さんには、どうかがんばってもらいたい。
「赤福」も好きなお菓子です。あんこの使いまわしをしたことがバレて大騒ぎになりました。誰もおなかをこわしたわけではないのに、ウソをついたのがいけないと、気の毒な結果になりました。「白い恋人」のほうは、「禍を転じて福となし」たようで、今やどこでも売り切れなんだとか。
ジャンルとして好きなのは断然「シュークリーム」です。東京・文京区に、千代田区・駿河台下から移っていった「S Weil(エス・ワイル)」という店のものが一番。1個280円(2008年現在)。「チーズケーキ」も、甘すぎなければ食べます。と言ったって、甘すぎても食べはじめたらおしまいまでいっちゃうけれど。
酒飲みのくせに、つまみは甘いものがいいのです。豆を甘く煮たのが合います。刺身で1杯、というのがあんまり得手ではありません。お刺身は、ごはんと一緒のほうがうまいと感じます。酢飯よりも白いごはん。
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