小倉千加子
小倉千加子著『結婚の条件』(朝日文庫)という知的刺激に満ちた本を読みました。その中に、「合計特殊出生率」をめぐってこんなことが書いてあります。
二〇〇三年現在、世界で最も合計特殊出生率の低い国を順に挙げると、イタリア(1.15)、ドイツ(1.24)、そして日本(1.32)となる。……第二次世界大戦の枢軸国三国である。
これを指して「少子化枢軸国」と呼んでいます。二〇〇六年には、一位香港、二位韓国、三位台湾に交替したそうですが。
「合計特殊出生率」というのは、かんたんに言えば「ひとりの女性が15歳から49歳までのあいだに生む子どもの数(の平均)」です。2.8人くらいが、何年かのちの人口の増減分岐点なのだとか。
この本自体は、心理学を専攻した著者が真正面から、結婚(主として女性の側から見たそれ)について、観察と考察とを展開したものです。
なぜ晩婚化が止まらないか、いずれそれが非婚化に進むことになるがそれはなぜか、日本の少子化対策がことごとくツボをはずしているのはなぜか、などなど、実際に女子学生たちとつきあい、高校卒・短大卒・四大卒の女性たちに取材した実例に即して、抜群の説得力をもって語っています。
フェミニストの論客として聞こえた人ですが、初めから(『セックス神話解体新書』1988年初版、今ちくま文庫)、柔軟な思考と軽やかな文章とで、他のフェミニストたちを凌駕するおもむきがありました。
本書(2003年初版)でも、分析は冴えわたっています。というとずいぶん硬い本(見かけほど柔らかくないのはたしかです)と感じるかもしれませんが、そんなことはありません。松田聖子や岡田美里や三浦りさ子や西村知美の名前、さらには、テレビドラマ『東京ラブストーリー』の登場人物、赤名リカや関口さとみを挙げて、女性たちがロール・モデルとして選択する際の、本音と建前をえぐりだしていく手際はあざやかなものです。おそるべき書き手だと感じ入りました。
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