佐渡裕 | パパ・パパゲーノ

佐渡裕

 『題名のない音楽会』(テレビ朝日系列)の司会者が4月から指揮者の佐渡裕(さど・ゆたか)さんに代わりました。4代目だそうです。関東地区では日曜日の朝9時から。
 
 前の、ピアニスト羽田健太郎の司会も軽妙で好きでしたが、残念ながら病気で亡くなってしまった。中村紘子がゲストで出たときのこと、きっと羽田さんは中村さんにあこがれていたのでしょうね、ずいぶんはしゃいでいました。中村さんが「スキーが好きです」と言ったら、すかさず、「中村さんが一番好きなスキー知ってる。チャイコフスキー!」とふざけていました。前田憲男、佐藤允彦といっしょにジャズを披露した週の音楽会もつよく記憶に残っています。
 
 さて、佐渡裕さんです。先週(4月20日放映)の番組は、千葉県少年少女オーケストラの、ベートーヴェン「交響曲第5番」第1楽章のリハーサル風景でした。ジャジャジャジャーンで始まる「運命」。最初に出だしの音を出させておいて「素晴らしい!」とほめたあとで、少しずつダメ出しをしていきます。もう、見る見る音楽が変わっていくのが分かりました。少年少女たち(中学生・高校生)の吸収力はものすごいものです。
 
 いっせいに音がクレッシェンドして行って、急激にピアノ(小さな音)に変わるところがあります。ストンと音量が落ちるところを「スービト・ピアノ」と言うと思いますが、普通のオーケストラは(あるいは凡庸な指揮者は)、クレッシェンドの限界まで登りきることができないまま、ピアノの音を出してしまいます。そこは、百戦錬磨の佐渡裕、限界ギリギリまで音を大きくさせて、急に身体を縮めてストンと落としました。お見事!
 
 バレンボイムがエドワード・サイードと対話した『音楽と社会』(みすず書房)の中に、この曲ではないけれど、ベートーヴェンの「スービト・ピアノ」について、「崖っぷちまで音を大きく引っ張っていく」ことができない指揮者たちの「度胸のなさ」を非難しているところがありました。目の前の画面で、つい最近読んだばかりの、この対話のエピソードが開けていくさまを見る思いがしました。
 
 佐渡裕、1961年京都生まれ、まだ50歳前です。小澤征爾、バーンスタインに師事。これからも、番組が楽しみです。京都アクセントの残る話しぶりも魅力のひとつです。


クローバー        クローバー        クローバー        クローバー        クローバー