パパ・パパゲーノ -49ページ目

ポニョ

 宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』という映画が評判ですね。『となりのトトロ』にはホトホト感心しましたが、他の作品はかけちがって見ていません。このタイトルがひとり歩きを始めたらしい。内舘牧子のエッセイで、「肘の上のポニョ」というのが話題になっていて、婦人の二の腕のたるみのことをそう言うんだとか。


 ある程度お年を召した女性は、この「二の腕問題」に直面するもののようです。いくらエクササイズに励んでも、こればかりはどうにもならない、と嘆きの声を聞いたこともあります。「振袖」とも言うようですね。いくら飾って言っても、事態が好転するものではないところがつらい。「気にするな。それが好きな男も少なくないのだよ」(じっさい少なくないと思いますよ)などと言っても、何の慰めにもならないのだそうです。


 よく売れる女性誌の編集をしていた30代の男性が、あるとき、「いつまで、『今年こそ、夏が来る前に、二の腕のたるみを取ろう』などという特集をやっているんだろう」と気がついて、その出版社を退職してしまった、という話を聞きました。


 内舘さんは、「腰の上のポニョ」とか、他にも関連する体型表現を並べていますが、そういうふうに言い換えがたくさんできるのは、元のタイトルが卓抜であったというシルシでしょう。まだまだ観客を動員するだろうと見ています。


パンダ        パンダ        パンダ        パンダ        パンダ

デジレ・ランカトーレ

 イギリスの(というかウェールズの)ソプラノ歌手、シャルロット・チャーチが12歳でアルバムを出したときには、タイムだかニューズウィークだかで、見開き2ページくらい彼女の紹介記事が出ました。今22歳だそうですが、もう3枚以上もアルバムを出していて、もはや実力も人気もある大スターです。パパラッチに追いかけられて大変なんだそうですが。


 その、シャルロットが、大人になったら歌ってみたい、とまだ少女のころに言っていたのが、『椿姫』のヴィオレッタの役です。さぞや、大向こうをうならせることでしょう。もう、演じているのかな。


 もうひとり、すでに日本でも何度か公演をしたことのあるソプラノ歌手に、デジレ・ランカトーレという人がいます。イタリア人で、シシリー島のパレルモ出身。1977年生まれだそうですから、いま31歳か。オフィシャル・サイト を見つけたのでリンクしておきます。

 
この歌手ももちろんヴィオレッタを歌っています。とリキんでみましたが、聞いたことはありません。『ホフマン物語』でオランピア(自動人形の役)を歌ったDVDで初めて聞きました。正統派コロラトゥーラ・ソプラノです。


 ランカトーレが主役を歌う、ドニゼッティの『ルチア』(ランメルモールのルチア)のDVDをようやく手に入れました。06年ベルガモの歌劇場でのライブ。狂乱の場で、白い階段の上から、白無垢の衣装をきたルチアが、真っ赤な長い布を引きずりながら降りてくる演出は、日本公演でもご覧になった方が多いと思います。【追加:YouTube の画像が見つかったので貼り付けます。】演出および衣装デザインはフランチェスコ・エスポージトとクレジットがあります。




 この役は、エディタ・グルベローヴァの十八番で、見た人は、グルベローヴァの前にも後にもルチアはいない、というくらいですが、いくら探しても、ヴィデオもDVDも見つかりません。録画は残っているはずなので、いずれ発売されるのを待つことにします。しかし、ランカトーレのルチアも、もう、ため息が出るほど素晴らしい。美貌と美声とを備えたソプラノたちは、ヴィオレッタも歌いたいだろうし、このルチアも歌いたいと望むだろうことがよく分かります。



てんとうむし        てんとうむし        てんとうむし        てんとうむし        てんとうむし

ブーリン家の姉妹

 10月末に日本公開される『ブーリン家の姉妹』という映画を、6月に乗った飛行機でひと足お先に見ました。すでに日本語吹き替えの画面でしたが、劇場公開用(の吹き替え版)は新たに作るのですかね。
 
 英語の原題は、The Other Boelyn Girl となっていますから、「(二人いるうちの)もう一方のブーリン家の女」という意味でしょう。アン・ブーリンというのは、(6人も娶ったことで歴史に名を残す)ヘンリー8世の2番目の后としてよく知られた名前ですね。ですから、「もう一人の女」という意味なら、メアリー・ブーリンのことを指すのでしょうか。アンとメアリーの姉妹の葛藤を中心にしたドラマでしたから、どっちから見ても、片方が「もう一人」ということになるのでしょう、たぶん。
 
 アンに扮したのがナタリー・ポートマン、メアリーはスカーレット・ヨハンソンです。二人とも子役から出発した女優ですが、いまや、押しも押されもせぬハリウッド・スターです。ふたりともセクシーですし。
 
 諸説あるようですが、映画では、アンが姉、メアリーが妹ということになっていました。予告記事では、この二人が、イングランド王ヘンリー8世をめぐってあらそい、姉が王妃になる、というふうに書いてありますが、単純な恋の鞘当ての劇ではない。権力と野心とが複雑にからみあう歴史ドラマでした。
 
 姉妹の母親に扮したのが、クリスティン・スコット・トーマスという女優。『イングリッシュ・ペイシェント』にも出た人です。目立たない脇役に徹しているのですが、一瞬、激情をほとばしらせるシーンがあって印象的でした。


 映画館のスクリーンでもう一度見てみようと思っています。


パンダ        パンダ        パンダ        パンダ        パンダ

ビーフイーター

 丸谷才一『綾とりで天の川』(文春文庫)を読んでいたら、こんな話が出てきました。
 
 この間89歳を目前にして亡くなった大野晋先生は毎朝牛肉を70グラム食べていたそうです。小説家の石川淳(1899-1987)も、88歳まで長命しましたが、入院中の病院に牛肉を200グラム届けさせて、ペロリと平らげた1週間後に亡くなったのだそうです。
 
 丸谷先生ご自身はいま83歳になったはずですが、その文章の中で、子どものころから牛肉に目がなかった、大和煮でもコーンビーフでも、なんでも好きだった。今では、ステーキとローストビーフをよく召し上がるのだそうで、丸谷流ローストビーフのレシピまで紹介してらっしゃいます。
 
 お三方とも、80を越してなお健筆を振るったし、振るっていらっしゃる。牛肉を食べると長生きするのかなあ、それだったら、もっと食べてみようかと思っているところです。どうも、「毎日」食べるというところがミソのようです。
 
 この本には、福沢諭吉の遺体がミイラで発見された(けれど遺族の強い希望で、ほどなく火葬に付された)などというびっくりするような話も出てきます。あいかわらず、あまり人の知らないエピソードやゴシップを配して、上品な味わいのエッセイを堪能させてくれます。
 
 ビーフイーター(beef eater;牛肉を食う人)というのは、スコットランドだったかのチェックのスカートを履いた男の衛兵のことだったと思いますが、その絵がラベルになっている、イギリスのお酒ジンの銘柄です。ジンのなかではこれがもっともうまい。請合います。


カクテルグラス         カクテルグラス         カクテルグラス         カクテルグラス        

アクロニム

 PTAとかNHKのように、アルファベットで書いた語の頭文字を並べた一種の略語のことを英語でアクロニム(acronym)と言います。日本語の訳語は「頭字語」ですが、あんまり使われませんね。


 IT関連では応接にいとまがないほど新しいアクロニムが生まれます。医学分野にもこれが多い。テレビで「前立腺肥大と前立腺がん」の新しい検査・治療法の紹介番組を見ていたら、しきりに「PSA」を受けろということを、ゲストの大橋巨泉氏が言い、医者も人間ドックでは「PSA」を追加することを勧めていました。


 番組の最後までPSAが何であるかを司会者も言わないので、聞いているほうは落ち着かないことはなはだしい。番組が終わってすぐにグーグルで調べました。Prostate-Specific Antigen (test) のアクロニムでした。「前立腺特異抗原(検査)」という難しい訳語です。いわゆる「腫瘍マーカー」検査のひとつで、血液の中にその抗原の量が増えたら、がんの精密検査をするのがよい、ということです。3千円ほど料金を追加すると、その検査をしてくれる医療機関は多いらしい。


 NHKは、Nihon Hoso Kyokai の頭文字を取った略語だそうですが、元は日本語でも、このくらいの名前になるとどこでも通用するようです。PTAは、Parent-Teacher Association のアクロニムですね。


 たいていのアクロニムを調べることのできる英語のサイトがあります。その名もアクロニム・ファインダー 。14万語を集めてあると豪語していました。NHKで引くと、あのNHKがもちろん最初に出てきます。


 IPAというのがあって、これは、よく似た二つの用法があります。ひとつは、International Phonetic Association(国際音声学協会)、もうひとつは、International Phonetic Alphabet(国際音声記号)。音声記号を作ったのが音声学協会ですから、略語を同じにしてムダを省いたのでしょうかね。


 最近では、分からないアクロニム(だけではなく、知らない語)に出会うとまずグーグルで検索します。その後で辞書にあたることが多くなりました。


 つい1週間ほど前に初めて見たアクロニムがPOTUS(ポウタスと読むらしい)です。なんと、President of the United States の略語なのだそうです。


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