クロックワイズ
時計の針のように回ることを英語で「クロックワイズ(clockwise)」と言いますね。日本語では「右回り・時計回り」などと言う。反対回りは「アンティ・クロックワイズ(anticlockwise;counterclockwise とも)」。「左回り・反時計回り」。
この英語の単語は、19世紀にできたのだそうです。それ以前にも針が回る式の時計はあったようですから、もっと古くからある言葉かと思っていました。
「-ワイズ(-wise)」は、「…の方向に;…の位置に」という意味の接尾語です。他にもいくつか意味があるようですが。〔otherwise(別のやり方で)の -wise は「方法」の意味だそうです。〕
その言葉(クロックワイズ)ができる前には、右回りのことを英語ではなんと言っていたのでしょうか? いまは調べがつきませんが、わかったら報告しますね。
風呂(浴槽)の栓を抜くと水がドレインから流れ落ちますが、最後のあたりになると、水の流れが必ず「左回り、反時計回り」になります。すなわち「アンティ・クロックワイズ」。半可通で書いているので、間違えているかもしれませんが、この現象(というほどでもないけど)は、北半球に限って起こる、南半球では逆になる、と、ずいぶん前ですが、何かで読んだ記憶があります。
赤道直下の場所で、水を入れたバケツと漏斗(じょうご)を持って、半球を北へまたぎ、南へまたぎして、水流の回り方を実験した人がいる、というのも、同じ記事で読んだような気がします。それだけやるためにでも、赤道の通る国に行ってみたいと思ったことでした。
地球が巨大な磁石である、というのは理科で教わります。磁力の作用によって水流の回り方が変わるのだという。どういう原理だったか、説明した文章も読んだことがあるけれどみんな忘れてしまいました。
お風呂の掃除をしていて、水道のホースから出る水の加減では右回りになっていた流れが、水道をとめて少しすると左回りになるのに気がつきました。忘れないうちに書いておきます。
畏友
勝谷誠彦(かつや・まさひこ)さんのメルマガ(これが滅法おもしろい)の中に、「畏友である作家の東良美季さん」というフレーズが出てきました。東良美季(とうら・みき)という作家は読んだことはありませんが、勝谷さんが日頃その文章のうまさを褒めている人です。
東良さんが、歳おいくつかも知りません。勝谷さんはたしか今年47歳とおっしゃっていたような気がします。まあ、そのあたり。ここで「畏友(いゆう)」と書いているのは、「尊敬する友人」の意味でしょうね。ちょっと違和感があったので、手元の辞書を引いてみました。国語、漢和あわせて4冊、たまたまあった辞書ですが、なんと、すべて「尊敬すべき友人;畏敬すべき友人;また、自分の友人の敬称」のような語釈でした。1963年初版の『岩波国語辞典』でも、「尊敬する友;自分の友の敬称」ですから、ずいぶん前からこういう意味で使われてきたのでした。私も、そういう使い方をしていたかもしれません。
しかし、やはり違和感が残ります。「畏友」というのは、ただ「尊敬する友人」というばかりではなく、その友人が話し手より若い、という含意がありませんか? それも2,3歳ではなく10歳くらい若い。もう一つは、この言葉は、友人、若い友人というけれど、その友人が女である場合には使わない。使ったのを見た覚えがありません。私ごときが見た覚えがないだけで、たとえば、中村うさぎさんが、倉田真由美さんを指して「我が畏友クラタマ(倉田さんのニックネーム)」などと書いているかもしれませんが。
谷沢永一・渡部昇一『人生は論語に窮まる』(対談、PHP、1997)の中で谷沢先生はこう断言していらっしゃいます。
「後生畏るべし」から、自分より若い友人を指していう「畏友」という言葉が出ています。/この「畏友」もよく間違って使われています。たとえば渡部さんは私より一つ歳が下だけれども、ほぼ同年輩といっていい。そこで私が渡部さんを「畏友」といったらどうか。これは失礼になります。/「畏友」とは歳がある程度若い人に対して使う言葉なのです。
私の「違和感」は、ずっと前にこの本を読んで記憶していたためだったようです。ついでながら、『論語』でこの文句が出てくるのは、「子罕(しかん)第九――二二七」です。
子曰く、後生畏るべし。いづくんぞ來者の今にしかざるを知らんや。
PHPの本が引用している宮崎市定による翻訳は、「子曰く、若い学徒に大きな期待を持つべきだ。どうして後輩がいつまでも先輩に及ばないでいるものか」というものです。
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スクワット
森光子という女優は今年おそらく88歳だろうと思います。いっとき年齢を少し若く言っていたことがあるので、ほんとはもっと年が上だという説もある。だとしても、あの活躍ぶりには目を見張らされます。最近、ちょっと動きが緩慢になったか、と、体力の衰えを心配する記事が週刊誌に出ました。
この方の健康法で有名なのがヒンドゥー・スクワット(と1日何個だかの卵)ですね。野球の金田正一投手に教わったものだと、ご本人がテレビで話していたのを聞いた覚えがあります。
少し前、自分で組み立てて作る本棚を買いました。ドライバー1本と木槌だけで、幅90、高さ230、奥行き30センチを組み立てられる、という触れ込みです。木槌というのは普通のおうちにあるものかしら。私は持っていない。金槌を、木肌に直接あてないように、部材に付いてきた木片をあてがってトントンしましたから、道具としては金槌で間にあいました。
上下2段、同じ形を作っておいて、ダボで接合し、裏側を2ヶ所付属の金具で補強します。さらに、天板の両端にジャッキのような金具を付けて、それを締め付け、天板の半分くらいの大きさの板を、部屋の天井へ押し付ける仕掛けです。いま売られている縦長の家具には、まず必ず、転倒防止の、こうした仕掛けが施されているようです。
作業開始からほぼ4時間で完成しました。最後の段階こそ、タイミングよく帰ってきた息子に手伝ってもらいましたが、ほぼ独力で家具一式を作り上げた達成感というのは、しばらく経験しなかったものです。
次の日も、その次の日も、腿が痛い、ふくらはぎが痛い。知らずに、脚の上下運動を何度もやっていたのですね。弾力を失った筋肉を鍛えないことには、工作もままならないのか。ヨロコビのあとに、さてスクワットでも始めようかと思った次第です。
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ロッサナ・ポデスタ
今日発売の『文藝春秋』10月号に「大アンケート 二十世紀世界の美女ナンバー1」というグラビアと記事の特集が出ています。少し前の「昭和の美女」に続く企画のようです。アンケートに答えた人の年齢分布は分かりませんが、雑誌の性格からして年配者が多いだろうというのは予想がつきます。
映画スターが多いのは仕方がない。そうでなくて露出が多かった美女でベストテンに入ったのはダイアナ妃だけですね。30位までならナデイア・コマネチも入っています。これから雑誌を見る人のことも考慮して、ベスト20をランダムに挙げてみます。
グリア・ガースン マレーネ・ディートリッヒ
グレタ・ガルボ エヴァ・ガードナー
マリア・カラス デボラ・カー
ヴィヴィアン・リー キム・ノヴァク
マリリン・モンロー オードリー・ヘップバーン
カトリーヌ・ドヌーヴ ソフィア・ローレン
グレース・ケリー エリザベス・テイラー
ブリジット・バルドー ナタリー・ウッド
ダイアナ妃 イングリッド・バーグマン
ロッサナ・ポデスタ クラウディア・カルディナーレ
以下、フェイ・ダナウェイもジョディー・フォスターも出てくるのですが省略して、さて、上の左側の最後に出たロッサナ・ポデスタという女優(リビアのトリポリ生まれ、イタリアの女優、『トロイのヘレン』という映画に出ているそうです)の名前は初めて聞きました。ちょっと見は、ドリュー・バリモアを小顔にしてメリハリをつけたような、たしかにキュートな美人です。リンクを貼った ので見てください。
アンケートの総投票数が1万足らずですから偏りが生じるのはやむをえない。ポデスタは、26票でベスト20に入っています。熱狂的なファンが友だちに依頼したのかしら。まあ、いつもながらの『文春』のオアソビですから、グラビアを眺めて楽しめばいいのですね。ネットで検索できるロッサナ・ポデスタの写真は、雑誌に載っているのと同じ構図ですが、左右逆になっています(業界用語でいう「逆版」です)。今74歳くらいの人のようです。とっくに映画から足を洗ったそうです。
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ナブッコ
去年ヴェローナのアレーナ劇場で演じられたヴェルディのオペラ『ナブッコ』のDVDを手に入れました。日本語字幕のない輸入ものだと、新品でも3300円くらいで買うことができる。
6月に訪れたた(古代の)円形劇場の光景が俯瞰で何度か出てくるので、「おお、ここだここだ」という声が思わず出ました。写真で見るとおり、天井のない劇場なので、歌手の声がちゃんと客席(3000人くらい?)に届いているのか、心配になります。DVDでは、録音技術がしっかりしているのでしょう、隅から隅まで音が拾われていました。
タイトル・ロールのナブッコ(バビロニアの王;ネブカドネザルのことですって)を歌ったのはレオ・ヌッチです。65歳になっていたはずですが、劇的見せ場の多い大オペラを堂々と、朗々と、歌いきっています。バリトン歌手は歌手寿命が長いのでしょうか。
ナブッコの向こうを張るアビガイッレが、ロシア生まれのソプラノ、マリア・グレーギナです。このソプラノもドラマチックな歌い振りをするので、ドラマがいやが上にも盛り上がる仕掛けです。この人の表記は「グレギーナ」となっていることが多いけれど、おそらく「グレーギナ」だと思います。「グレーギン家の女」を示しているはずですから。アンナ・カレーニナが、「カレーニン家の女」を示すのと同断ですね。
筋は複雑なので省きます(→参照 )が、ヴェルディが初めて大成功を収めたオペラだそうで、たしかに圧倒的な迫力でドラマがせまってきます。このなかの合唱曲「行け我が想い、金の翼に乗って」は、イタリアの第2の国歌と言われるくらい、イタリア人に親しいものなのだそうです。
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