いいだもも
いいだももという作家の書いたエッセイの中だったと記憶していますが、こういう俗謡を紹介してありました。常陸の国あたりで歌われていたともあったような気がします。
おせんあれ見よ
越後の雁が
飛んで来たにと
まただまされて
越後の国からはるばる出稼ぎにきているおせんさんという(若い)女がいるわけですね。子守奉公(か女中奉公)に出てきたものでしょう。故郷の便りをのせてくるかもしれない雁が渡ってきたよ、と、(おそらく若い男が)からかっている図です。まんまと、又もだまされちゃった、かわいそうなおせんちゃん。というのが、この俗謡のこころでしょう。かすかに、セクシャルな含意が隠されているらしいところに、味わいがあるといえばあります。
いいださん(本名は飯田桃という)のこのエッセイで教わったのだったか、東京の銭湯(お風呂屋さん)は、その多くが富山や新潟出身だということです。銭湯というのは想像を超える重労働なので、他の地域の出身者は長続きしない。辛抱強い越中・越後の人たちでなければもたない、という話です。
いいだももという作家(東京出身)は、たくさん作品を残しています。『斥候(ものみ)よ、夜はなお長きや』というのが出世作でした。40年ほど前に一読した覚えがありますが、なんの話だったかも忘れました。三島由紀夫と同じ年齢といいますから、今85歳くらいです。社会主義関係の評論も数が多い。昔筑摩書房から出ていた雑誌『展望』に掲載された論文を何本も読んだものです。最近は、雑誌の目次にその名前を見ることが少なくなりましたが、まだまだ旺盛な執筆活動は続けていらっしゃるようです。
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バリウム検査
昨日は1年に一度の「定期健康診断」の日でした。前夜9時を過ぎたら水を飲むのも控えなさい、という指示を忠実に守って、朝8時に隣駅の検診クリニックに着きました。私の前に4人。検査はスムーズに進んで、10時に終わりです。
注射器で血を抜きとられたり、眼底検査のフラッシュに目がくらんだり、は、どちらかと言えば、平気なほうです。血圧測定、聴覚検査、エコー内診、心電図、など、痛くない検査は、もちろん大丈夫です。苦手は、胃のレントゲン検査ですねえ。バリウムを腹いっぱい飲まされる(ように感じるけれど、発泡剤を飲んで胃袋を膨らましているから、腹が張るのですが)のは、まだ、我慢できます。バリウムも、昔と違って飲みやすくなりましたし。旨くはないけど。
終わってすぐに、もらった下剤を飲んで、ついでに水もいっぱい飲んで、出るのを待つわけですが、時間の予測が不可能なのがつらい。何年も前ですが、兆候があらわれないのをそのままにして、大腸で固まってしまい、じつに大難儀したことがありました。七転八倒の思いで放出した物件が、水洗トイレの出口に至ることができず、始末に難渋したこともあります。
そういう苦い思い出があるものですから、毎年、心もちおびえが走るというのが、苦手である主な理由です。さいわい、ことしはスムーズな展開に終わりました。
そういえば、出口から逆にバリウムを注入して、腸のレントゲン写真を撮られたこともありました。目の前のテレビ画面に自分の臓器が白っぽく映るのを見るという得がたい経験でした。虫垂が15センチくらいもあるのにびっくりしました。普通は3センチくらいだそうです。先生が、こんなの見たことない、とおっしゃっていましたから、異常な長さなのでしょうね。いまだに、なんの悪さもせずに、わが体内に鎮座ましましているはずです。
定期健診の検査数値に一喜一憂してもしょうがないと思うのは、こういうことがあるからです。身長や体重や血圧や、ましてや虫垂(むかしは盲腸と言ってましたね)の長さや、それぞれマチマチなのですから、毎年同じような数値なら、生き延びていられたということで、それが自分の正常値だと思うことにしています。「アルコールの量を少し控えましょうね」と、まいとし決まって言われますけれど。
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ノーベル賞
小林誠・益川敏英の二人の先生が、南部陽一郎先生とともに今年のノーベル物理学賞に決まったというニュースは、久しぶりに「よいニュース」を聞いた思いがしました。すると、次の日、下村脩先生がノーベル化学賞受賞のニュースが続きました。アメリカ在住の二人の学者たちの立ち居振る舞いの矍鑠としていることに、日本中が驚いたのではないでしょうか。姿勢がよくて、服装もおしゃれで。
小林先生は、つくばの高エネルギー加速器研究機構というところの名誉教授、益川先生は京都大学、南部先生はシカゴ大学、下村先生はボストン大学の、それぞれ名誉教授なのですね。
小林・益川両先生は、「小林・益川理論」という、二人の名前を冠した理論が評価された結果だそうですが、対象は「素粒子」という物質の最小単位の話で、それがどうなっているか、というのですが、解説を聞いても読んでも、まるで分かりません。小林のK、益川のM、その前にイタリアの学者カビボ(Cabibbo)のCをつけて、CKM Matrix(CKM行列)というものがあるのだそうです。イタリアの物理学会では、なんでカビボ教授も一緒じゃないのか、と不満の声が上がっているんだとか。
「クォーク」という素粒子が、それまでは3つ(アップ、ダウン、ストレンジ)だったのが、6つある(チャーム、ボトム、トップ)はずだという理論を提出(1973年ごろ)して、のちに存在がたしかめられたのだそうです。「CP対称性の破れ」がそれで説明できることになった。と書いてあるのを引き写しているだけですが、なにがなんだか分かりませんね、あいかわらず。
益川先生は、英語アレルギーであると広言なさっていて、「英語でスピーチするのが条件だったら授賞式には行きません」とテレビでおっしゃっていました。世界標準の学問を達成するのに、英語が必ずしも必須ではない、ということが明らかにされて、英語の勉強がなかなか進まない中学生や高校生たちが、少しはホッとしているんじゃないでしょうか。共同研究者の小林先生が英語のほうは受け持ったのだそうです。
さっき気がついたのですが、小林先生は1944年4月7日生まれなのですね。私より2日早く生まれたことになります。なんだか、こちらまで誇らしくなりました。
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チャングム
ケーブルテレビの LaLa チャンネルで、2年前にNHKで放映された韓国の時代劇TVドラマ『チャングムの誓い』というのを土曜日の夜に、2話ずつ放映しています。私は最近見始めたのですが、じつによくできたドラマです。
NHKで放映されたときに話題になったのは知っていましたが、見逃してしまいました。ごらんになった方はお分かりでしょうが、「おしん」と「渡る世間は鬼ばかり」と、ちょっと古いけれど「細腕繁盛記」とをないまぜにして、李氏朝鮮の王朝歴史絵巻を繰り広げる、というおもむきです。
なんといっても、出てくる女優たちが、そろいも揃って別嬪ばっかりなのがよろしい。善玉も悪玉も、若い女も、権力の座にある(女王、皇后、女官長などの)年増もみなきれいな人ばかりです。
ひきかえ、いまはやりの「イケメン」韓国男優はめったに登場しない。こわもての悪相顔から、コミカルなひょっとこ顔まで、こちらもよくぞ揃えたという面々。ただし、せりふと表情とで、権謀術数、策略、陰謀、などを表現するのですから、いずれ劣らぬ役者ぶりです。
ひとりの薄幸の美少女が、朝廷における権力の頂点に登っていく過程で、これでもかこれでもかという艱難辛苦に耐えなければならなかった、というお話。
主人公チャングム(韓国音ではジャングムのようになるらしい)を演じるのが、イ・ヨンエ(李英愛)という女優。製作当時32歳くらいでしょうが、凛として、清潔な美女です。何度か来日しているそうです。たちまちファンになりました。節操のないおじさんですねえ。下がそのイ・ヨンエ嬢です。
壁紙
パソコンを開いて最初にあらわれる画面、いわゆるデスクトップ画面の背景に表示される画像のことを「壁紙」と言いますね。英語でも wallpaper と言うようですから、コンピュータ用語としての訳語かもしれません。
好きな女優のポスターだったり、飼い猫の写真だったり、娘の写真だったり、みなさんいろいろ工夫なさっているようです。私は、いつも使っている3台のマシンのうち2台は、ウインドウズ備え付けの、丘の写真にしています。変に芸術ねらいでないところが気に入っています。
もう1台の壁紙が映画『真珠の耳飾りの少女』の宣伝写真(左)です。スカーレット・ヨハンソンが絵から抜け出たようなたたずまいを見せています。隣りに、フェルメールの原画の写真を並べてみました。
もし手に入れられたら、壁紙に使いたい絵があります。それは、ウィーンの「ホテル・アマデウス」のロビー に飾ってあった、ハプスブルク家の皇后エリーザベトのモノクロの絵です。リンクを貼っておきます。実際のロビーは写真で見るよりずっと狭いところでした。この方はシシー(Sissi)というニックネームで知られます。オーストリア(およびハンガリー)の、土産物屋の店先で、包装紙やマグカップの表面やに印刷されていました。絵画や写真がたくさん残っている美女です。見たなかでは、さっきのモノクロの絵が一番。下の絵も、ネットで拾ったものです。



