いいだもも | パパ・パパゲーノ

いいだもも

 いいだももという作家の書いたエッセイの中だったと記憶していますが、こういう俗謡を紹介してありました。常陸の国あたりで歌われていたともあったような気がします。


 おせんあれ見よ
 越後の雁が
 飛んで来たにと
 まただまされて


 越後の国からはるばる出稼ぎにきているおせんさんという(若い)女がいるわけですね。子守奉公(か女中奉公)に出てきたものでしょう。故郷の便りをのせてくるかもしれない雁が渡ってきたよ、と、(おそらく若い男が)からかっている図です。まんまと、又もだまされちゃった、かわいそうなおせんちゃん。というのが、この俗謡のこころでしょう。かすかに、セクシャルな含意が隠されているらしいところに、味わいがあるといえばあります。


 いいださん(本名は飯田桃という)のこのエッセイで教わったのだったか、東京の銭湯(お風呂屋さん)は、その多くが富山や新潟出身だということです。銭湯というのは想像を超える重労働なので、他の地域の出身者は長続きしない。辛抱強い越中・越後の人たちでなければもたない、という話です。


 いいだももという作家(東京出身)は、たくさん作品を残しています。『斥候(ものみ)よ、夜はなお長きや』というのが出世作でした。40年ほど前に一読した覚えがありますが、なんの話だったかも忘れました。三島由紀夫と同じ年齢といいますから、今85歳くらいです。社会主義関係の評論も数が多い。昔筑摩書房から出ていた雑誌『展望』に掲載された論文を何本も読んだものです。最近は、雑誌の目次にその名前を見ることが少なくなりましたが、まだまだ旺盛な執筆活動は続けていらっしゃるようです。


黄色い花        黄色い花        黄色い花        黄色い花        黄色い花