ビーフイーター | パパ・パパゲーノ

ビーフイーター

 丸谷才一『綾とりで天の川』(文春文庫)を読んでいたら、こんな話が出てきました。
 
 この間89歳を目前にして亡くなった大野晋先生は毎朝牛肉を70グラム食べていたそうです。小説家の石川淳(1899-1987)も、88歳まで長命しましたが、入院中の病院に牛肉を200グラム届けさせて、ペロリと平らげた1週間後に亡くなったのだそうです。
 
 丸谷先生ご自身はいま83歳になったはずですが、その文章の中で、子どものころから牛肉に目がなかった、大和煮でもコーンビーフでも、なんでも好きだった。今では、ステーキとローストビーフをよく召し上がるのだそうで、丸谷流ローストビーフのレシピまで紹介してらっしゃいます。
 
 お三方とも、80を越してなお健筆を振るったし、振るっていらっしゃる。牛肉を食べると長生きするのかなあ、それだったら、もっと食べてみようかと思っているところです。どうも、「毎日」食べるというところがミソのようです。
 
 この本には、福沢諭吉の遺体がミイラで発見された(けれど遺族の強い希望で、ほどなく火葬に付された)などというびっくりするような話も出てきます。あいかわらず、あまり人の知らないエピソードやゴシップを配して、上品な味わいのエッセイを堪能させてくれます。
 
 ビーフイーター(beef eater;牛肉を食う人)というのは、スコットランドだったかのチェックのスカートを履いた男の衛兵のことだったと思いますが、その絵がラベルになっている、イギリスのお酒ジンの銘柄です。ジンのなかではこれがもっともうまい。請合います。


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