男はつらいよ 寅次郎真実一路 | 俺の命はウルトラ・アイ

男はつらいよ 寅次郎真実一路

『男はつらいよ 寅次郎真実一路』

映画 トーキー 105分 カラー

昭和五十九年(1984年)十二月二十八日公開

製作国 日本

製作言語 日本語

製作  松竹

 

出演

渥美清(車寅次郎)

 

倍賞千恵子(諏訪さくら)

 

下條正巳(車竜造)

三崎千恵子(車つね)

前田吟(諏訪博)

 

太宰久雄(社長)

佐藤蛾次郎(源公)

吉岡秀隆(諏訪満男)

 

津島惠子(静子)

風見章子(和代)

関敬六(ポンシュウ)

桜井センリ(運転手)

津嘉山正種(部長)

 

 

美保純(あけみ)

米倉斉加年(富永健吉)

 

笠智衆(御前様)

辰巳柳太郎(富永進介)

 

大原麗子(富永ふじ子)

 

製作 島津清

    中川滋弘

 

企画 小林俊一

 

脚本 山田洋次

    朝間義隆

 

撮影 高羽哲夫

音楽 山本直純

美術 出川三男

調音 鈴木功

照明 青木好文

編集 石井巌

スチール 長谷川宗平

 

主題歌 「男はつらいよ」

作詞 星野哲郎

作曲 山本直純

唄  渥美清

 

原作・監督 山田洋次

 

山田洋次=山田よしお

 令和三年(2021年)

九月二十六日 大阪ステーションシティ

シネマシアター8にて鑑賞

 ☆

 日本に怪獣ギララが現れ暴れ出した。蛸総

理大臣は対応に困り車寅次郎博士に対応を

依頼する。かつては冷たく自身を拒絶した学会

への怒りから断っていた博士だが、日本国土

の危機にギララを倒すことを決意する。

 

 ギララには罪はない。怪獣にしたのは文明

である。車博士は涙を呑んでギララ打倒を為す。

 

 夢から覚めた車寅次郎は蛸社長こと梅太郎

とあけみの喧嘩に巻き込まれて大暴れして、さ

くらを嘆かせる。

 

 不満多い寅次郎は上野の焼き鳥屋で飲食し

たが、金がなく電話でさくらに代金を頼むが、

遂にさくらは拒否する。留置場で一晩過ごす

決意を寅次郎が決めると親切な会社員富永

健吉が代金を払ってくれた。

 

 貰った名刺から富永の勤務先の証券会社

にバナナを持って訪ねた寅次郎は控室に通

される。部長や富永は会議をなし、深夜まで

寅次郎は待った。

 

 仕事を終えた富永は寅次郎と語り合う。枕

崎から上京した富永の話を聞く寅次郎は旅

で行ったことがあることを述べる。

 

 二人は飲んで牛久沼の富永の自宅に寅次

郎は泊めてもらう。

 

 翌朝目覚めると寅次郎は富永の美人妻ふじ

子と出会い一目惚れする。富永は東京まで出

勤した後だった。

 優しいふじ子にもてなされ、寅次郎の片思い

は熱くなる。

 

 富永は過労から体調が辛くなりストレスも増え

突然失踪してしまう。

 

 母和代と相談したふじ子は、寅次郎にも夫の

失踪を告げ、寅次郎はふじ子と息子の隆を励

ましとらやに招く。とらやで家庭の団欒にふじ子

は不安の中で和みを感じた。富永の窮状を思い

金策しようとする寅次郎はおいちゃんの金を持ち

出そうとして叱られる。

 

 鹿児島で健吉を目撃したという情報があった。

寅次郎は懸命に探す。健吉の父進介は薙刀を

振るって息子に怒るが、寅次郎は厳父とも語

り合い気に入られる。

 

 ふじ子は尽くしてくれる寅さんに感謝する。

 

 彼女への恋の為に富永の不幸まで考えてし

まった寅次郎は自身の醜さを反省する。

 

 富永健吉は生きていて家族のもとに戻り妻子

に謝る。

 

 健吉・ふじ子・隆が涙を流して再会を喜ぶ光景

を見て寅次郎は旅に出る。

 

 ☆邪心との対決☆

 

 『男はつらいよ』シリーズ第三十四作である。

 

 冒頭の夢のシーンはギララが現れるが台詞で

は「怪獣」と呼ばれる。暴れる怪獣は元々罪は

なく、怪獣に変化せしめたのは人間の文明で

ある。

 車博士は悲壮な気持ちで怪獣を倒そうとする

が、ドラマの空気は喜劇的である。

 

 柴又での喧嘩の後、上野で飲んで食べた寅

次郎が無銭飲食の肩代わりをさくらに頼み遂に

断られる。

 

 優しい会社課長富永健吉の計らいで払っても

らう。

 

 寅次郎と健吉の友情はドラマの基盤になる。多

忙な日々で疲労している健吉は、美しい妻と息子

がいて綺麗なマイホームもあるが苦しみからの解放

を求めている。貧しくも豪快な寅次郎に憧れる。

 

 米倉斉加年(よねくら・まさかね)は昭和九年(19

34年)七月十日福岡市生まれ。本名は米倉正扶

三で後に米倉斉加年に改名する。劇団民藝で活

躍し演出家・画家・絵本作家としても活躍した。

 『男はつらいよ』シリーズでは第十作『寅次郎夢

枕』の東大助教授岡倉金之役以来となる恋敵で

ある。海賊役・巡査役でも鋭い存在感を見せた。 

 平成十六年(2014年)八月二十六日八十歳で

死去された。

 

 大原麗子は昭和二十一年(1946年)十一月

十三日東京都生まれ。戦後日本映画・テレビの

スタアである。

 『男はつらいよ』シリーズでは『噂の寅次郎』

の荒川早苗役に継ぐ二度目のマドンナ役であ

る。

 美貌の人妻ふじ子は当たり役だ。

平成十七年(2009年)八月三日六十二歳で死

去された。

 

 ふじ子の母和代役で風見章子が出演した。『続

男はつらいよ』以来のシリーズ出演であろうか?

  風見章子は大正十年(1921年)七月二十三日

に群馬県に誕生した。日本映画の大女優であらせ

られる。平成二十八年(2016年)九月二十八日

九十五歳で死去した。

 

 健吉が東京の都会で悩み失踪してしまうシー

ンは経済大国日本の苦悩を示していると思う。

 

 成功した人も悲しみ傷つき激務から逃れたい

気持になってしまう。

 貧しくても豪放な寅さんに憧れて旅に出る。

 

 『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』のパパこと

兵頭謙次郎(船越英二)は昔好きだった女性信

子(岩崎加根子)会いたいさで東京を失踪し北

海道に行くが、富永健吉は勤務疲労のストレス

で失踪する。

 

 寅さんはおいちゃんの金を奪ってでも健吉を

探し出そうとする。

 

 辰巳柳太郎が薙刀を振るう老父進介で豪快

さを見せる。新国劇の辰巳舞台に間に合わな

かった自分にとっては薙刀シーンの殺陣は有

難い映像である。

 

 津島恵子の静子は家政婦なのか妻なのか

厳密な判定は難しいのだが、怒りに燃える進

介を支える優しさを繊細に伝えてくれた。

 

 

 ふじ子への片思いから寅次郎は奮闘する。美

しい人妻への叶わぬ片思いに燃える寅次郎だが、

彼女の優しい言葉で心が動く。

 

 本作の見せ場は「富永健吉が死んでいたら、ふ

じ子は俺のものになるかもしれない」という恐るべ

き欲望を寅次郎が感じてしまうことである。

 美しいふじ子への片思いは綺麗な心であったが、

彼女の感謝に接し、我がものにしたいという欲

が芽生え、友健吉の死まで望んでしまう。

 

 山田洋次は寅次郎内面の闇を見つめ、渥美清

が鋭く表した。

 

 疲弊した健吉が妻子のもとに帰ってくるシーン

は家族の大切さを教えてくれる。

 

 一度がっくりすることを隠さない寅次郎だが、

ふじ子の幸を思い、身を引く。

 

 「真実一路」は邪心との対決において見出され

た。

 

 山田洋次が寅次郎の心中の葛藤を鋭く尋ね

た本作は、シリーズの中で強烈な存在感を発揮

している。

 

男はつらいよ (テレビドラマ版)  第一回

 

男はつらいよ(フジテレビ版) 最終回

 

男はつらいよ

 

続男はつらいよ

 

男はつらいよ フーテンの寅

 

男はつらいよ 望郷篇

 

男はつらいよ 純情篇

 

男はつらいよ 奮闘篇

 

男はつらいよ 寅次郎恋歌(弐)

 

男はつらいよ 私の寅さん 

 

男はつらいよ 寅次郎相合い傘

 

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

 

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 

 

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎

 

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇

 

男はつらいよ お帰り寅さん

 

 

 

                         合掌