男はつらいよ 花も嵐も寅次郎 | 俺の命はウルトラ・アイ

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎

 『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』

映画 トーキー 102分 カラー

昭和五十七年(1982年)十二月二十八日公開

製作国 日本

製作  松竹

 

出演

渥美清(車寅次郎)

 

倍賞千恵子(諏訪さくら)

 

田中裕子(蛍子)

 

下條正巳(車竜造)

三崎千恵子(車つね)

前田吟(諏訪博)

 

太宰久雄(社長)

佐藤蛾次郎(源公)

吉岡秀隆(諏訪満男)

 

内田朝雄(勝三)

児島美ゆき(ゆかり)

馬渕晴子(小川絹子)

殿山泰司(和尚)

 

人見明(友男)

アパッチけん(測量技師)

光石研(助手)

笠井一彦(行員)

桜井センリ(観覧車の係員)

谷よしの(花売り)

 

朝丘雪路(桃枝)

笠智衆(御前様)

 

沢田研二(三郎)

 

製作 島津清

    佐生哲雄

 

脚本 山田洋次

    朝間義隆

 

音楽 山本直純

 

撮影 高羽哲夫

編集 石井巌

 

原作・監督 山田洋次

 

☆令和二年(2020年)七月十日

 TOHOシネマズくずはモールにて鑑賞☆

 

 ブルックリンでは美男のチンピラジュリーがいい

女をハントしていた。声をかけられたさくらは、拒否

し、「お兄ちゃんの前では芋よ」とジュリーを一蹴す

る。色男のジュリーは現れたさくらの兄を見て、「貫

禄負けや!」と兜を脱ぐ。

 ブルックリンの寅の存在感で町は平和になり、人

々は華麗にミュージカルを踊る。

 

 夢から覚めた寅さんは柴又に帰り幼馴染の色っぽ

い中年女性桃枝と再会し彼女に好意を感じるが亭主

がいることを聴き振られる。

 おばちゃんつねが松茸ご飯を作ってくれたが、寅さ

んは満男のぶんをとろうとしておいちゃん竜造に叱られ

出て行ってくれと言われ失意のうち出て行く。

 竜造はさくらに止めてくれると思っていたのに後悔す

るが、寅さんは九州に向かう。

 大分県湯平で寅さんは、動物園職員でチンパンジー

の飼育に尽力している美男子三郎と出会う。三郎は湯

平温泉で仲居をしていた亡き母の遺骨を、この地に納

骨しようと考えていた。

 温泉のあるじ勝三は三郎の親思いの心を讃える。東京

大丸でデパートに勤める女性蛍子・ゆかりと仲良くなった、

寅さん・三郎は四人で九州をめぐった。

 帰りに三郎は思い募って、蛍子に「付き合うてくれませ

んか」と頼むが、蛍子は緊張し船に入ってしまう。失意の

三郎を寅さんが励ます。

 

 三郎に恋愛指南をする寅さんは彼の想いを聴き、東京

に帰ってからもじっくり彼の心を包み取った。とらやに蛍子

が大分のお礼を言いに現れた。

 キューピット役・指導役に徹そうとする寅さんは、三郎が

一途に蛍子を愛していることを伝えるが、蛍子はあんまり

二枚目なので引いてしまうと素直に語る。

 

 寅さんは、三郎の気持ちは純粋で綺麗なもので、蛍子

の前だと思わず緊張してしまうと解説する。蛍子は優しい

寅さんの腕を取り、信頼して相談をする。

 

 キューピット役・恋愛指導役を勤め、三郎を応援する筈

だったのに、寅さんの心に動揺が起こり、蛍子への想い

が募る。

 

 三郎と蛍子はデートを為し、二人は観覧車に乗り、三郎

はチンパンジー養育一筋だった自身の生き方が蛍子と出

会い変わって、自身の気持ちとして、「好きや」と告白する。

 

  ☆

 

 ブルックリンの『ウエストサイド物語』風の夢のシーンは、

美男子ジュリーの魅力が光っている。純真な三郎よりも

プレイボーイジュリーのほうが、ジュリーの当たり役なの

ではないか?

 

 しかし、沢田研二は純情一徹な三郎を深い演技で勤め

た。

 田中裕子の色気は素晴らしい。本作における恋人役を

縁として、沢田研二と田中裕子は実生活でも恋仲になり、

後に結婚する。

 

 松茸騒動は、かつてのメロン騒動よりも更に激しく寅さん

の孤独を浮き彫りにするこのシーンのおいちゃんは怖い。

下條正巳の一徹さの表現は鋭い。

 

 内田朝雄と殿山泰司が善玉役ということも珍しい。

 

 三郎の純粋な恋心に打たれ恋愛指導とキューピット役に

専念しようと思った寅さんだが、蛍子の相談を聞くうち彼女

への恋心を燃やしてしまう。

 

 『花も嵐も寅次郎』は三角関係の緊張感も印象的だ。

 

 三郎は観覧車の中で蛍子に愛を告白し、彼女も承諾し

二人は愛し合う。

 

 キューピット役として働いた寅さんの尽力もあって、三

郎と蛍子は遂に結ばれた、全てがうまく行く筈だった。し

かし、寅さんの胸に切なさがあった。「色男はいいぜ。焼

けるぜ」と語り寅さんは旅に出る。

 

 振られ方の中では、思わぬ展開で抑えていた思いが出

て振られるという在り方で、切ない。

 

 振られても恋人たちの幸を祈る。

 

 寅さんの優しさに感動した。

 

 

                                 合掌