男はつらいよ 寅次郎恋歌(弐) | 俺の命はウルトラ・アイ

男はつらいよ 寅次郎恋歌(弐)

『男はつらいよ 寅次郎恋歌』

 

映画 トーキー 113分 カラー

昭和四十六年(1971年)十二月二十九日公開

製作国 日本

言語 日本語

製作 松竹大船

 

出演

 

渥美清(車寅次郎)

 

倍賞千恵子(諏訪さくら)

 

前田吟(諏訪博)

梅野泰靖(諏訪毅)

穂積隆信(諏訪修)

吉田義夫(坂東鶴八郎 座長)

三崎千恵子(車つね)

 

太宰久雄(蛸社長こと桂梅太郎)

中村祐喜(六波羅学)

岡本茉莉(大空小百合)

谷村昌彦(労務者)

上野綾子(諏訪咲江)

 

中村はやと(諏訪満男)

山本豊子

中村昇

志馬琢也

村上記代

秩父晴子

大杉侃二朗(労務者)

劇団日本児童

大塚君代(諏訪郁)

 

森川信(車竜造)

笠智衆(御前様)

 

志村喬(諏訪飈一郎)

 

池内淳子(六波羅貴子)

 

製作 島津清

企画 高島幸夫

    小林俊一

 

脚本 山田洋次

    朝間義隆

 

撮影 高羽哲夫

音楽 山本直純

 

美術 佐藤公信

録音 中村寛

調音 小尾幸魚

照明 内田好夫

編集 石井巌

進行 玉生久宗

衣装 東京衣装

現像 東京現像所

製作主任 池田義徳

 

主題歌 「男はつらいよ」

作詞 星野哲郎

作曲 山本直純

唄  渥美清

 

きもの 洛趣織

帯    いづくら帯

協力   柴又神明会

 

原作・監督 山田洋次

 

大塚君代は写真出演

 

山田洋次=山田よしお

 令和二年(2020年)六月二十九日

 大阪ステーションシティシネマ

 シアター5 Fー16席にて鑑賞

 令和二年(2020年)九月二十六日発表

 記事を再編しています

 ☆

 

 海岸町では雨が降り続いている。車寅

二郎はテキ屋の売が出来ず、芝居小屋

を見て芝居を見ようと考えた。

 

 一座の坂東鶴八郎座長は寅次郎に挨

拶し、長雨でお客様がお見えにならず昼

の部は取りやめになりましたと無念を語る。

 

 「お互いに稼業は辛いね」と寅さんは返

事をしつつ明日は日本晴れだよと励ます。

 

 寅さんが宿へ去ろうとすると、座長は一

座の花形大空小百合に送らせる。

 寅さんは小百合に辛いことはないかいと

聞き、小百合は舞台に出ると忘れますと気

丈に返事をして、テレビに出られる女優にな

れるように頑張りますと夢を述べる。

 

 寅さんは一座の皆さんにと小遣いを渡す。

大金を貰い小百合は感嘆し、寅さんに名前

を聞く。

 寅次郎はフーテンの寅と名乗り、小百合は

フーテンの寅先生と呼び、お礼を言って去る。

 

 「五千円渡しちまった!」と寅さんは後悔

する。

 

 とらやでは八百屋で親が子供を叱る際に

勉強しないと寅さんみたいになると語った

言葉を聞いたさくらが悲しむ。

 竜造・つねは怒り、社長は帰ってきた寅さ

んの姿を見て揶揄し、おいちゃんに叱られ

る。

 帰ってきた寅さんは家族のみんなが優しく

歓迎してくれることに違和感を覚える。

 

 朝日印刷で寅さんは工員達に声をかける

が、汚れた布で鼻をかみ、顔にインキをつけ

て笑われ怒り、博が止めるが激怒は収まら

ない。

 

 寅さんは怒り、おいちゃんやおばちゃんは

どうすればいいか悩む。

 

 夜になって泥酔した寅次郎は労務者の仲

間二人を連れてとらやに現れ、豚小屋みてえ

な家だと語る。

 仲間の一人はあの別嬪は誰だいと尋ね、寅

は俺の妹よと答え、その横で馬鹿面してるの

は使用人夫婦よとおいちゃん・おばちゃんに

ついて冷たい表現を語る。

 

 ビール持ってこいとさくらに命令する寅に、

竜造はお前のような極道に飲ませるビール

はないと叱る。

 

 寅は怒り竜造に喧嘩を売ろうとするが、さく

らが懸命に止める。

 

 日暮里の焼き鳥屋でばったり出会った仲間

二人に奢ってもらった事を寅さんは告げ、さく

らは二人に礼を言う。

 

   「さくら、一丁何か歌え」

 

 寅さんが命じる。竜造が怒った。

 

   「さくら!歌なんか歌うな。お前は芸者じゃ

    ねえんだ!」

 

 寅さんは怒り、さくらに歌唱を命じ、仲間達も

騒ぐ。

 

  さくらは『かあさんの歌』を歌い涙を流す。

 

 その清らかな歌声を聞いて、労務者二人は

立ち上がり、酔いが覚めた寅次郎は鞄を持って

去ることを決め、悪かったとさくらに謝罪し出て

行く。

 

 博は義兄の声を聴き現れるが、さくらは行っ

ちゃったわと報告する。

 

 とらやに諏訪家から博の母郁が危篤という電報

が届く。博はさくらに喪服を持って、今夜新幹線

に乗ろうと伝える。

 岡山県の高梁の諏訪家に着き郁の訃報を聞い

た、博・さくらは博の長兄毅・次兄修とその家族に

会う。

 

 郁の葬儀が行われ、夫飈一郎は悲しみを静か

に堪え、参列者に挨拶する。

 寅次郎が現れ、参列者に話しかけ、さくらは当

惑する。

 墓地に諏訪家の人々が集まり、写真撮影を担

当する寅さんが「笑って」と告げ、さくらが怒り注意

する。真剣に怒った毅が修に写真を撮れと言い、

寅さんの持ったカメラは奪われる。

 

 夜の諏訪家では父飈一郎と三人の兄弟との家

族が膳を並べ、今後について語り合う。毅は同居

するが、飈一郎はこの家に残ると意志を伝える。

 毅と修は母郁が幸せだったと語り、修は「心の

貧しき者は幸なり」と聖書の言葉を引用する。

 

 だが、博は母さんは父さんと結婚して、都会の

舞踏会で踊りたいという夢をあきらめ家庭に全て

を捧げたんだと悲しむ。

 

 修は博の言葉に怒り、毅も不機嫌になる。

 

 息子達夫婦はそれぞれの家に帰り、飈一郎の

元に寅次郎が残った。夜寅さんは歌い、先生の

息子さん達は冷たいんじゃないですかいと言い、

飈一郎は苦笑する。女房も子供いないから気楽

な稼業と寅さんは語る。

 飈一郎は歌う寅次郎に歌唱を中断させ、一軒

の家において庭にりんどうの花が咲き、食卓で

家族が語り合う。そこに人間の生活があり、人間

は一人では生きていけないんだと飈一郎は説く。

 

 

 寅さんは心に強い衝撃を受け、手紙を書いて

諏訪家から去る。

 

 とらやに上品な美人が現れ、喫茶店を開業い

たしました六波羅貴子ですと丁寧に挨拶する。

 彼女が帰るとおいちゃんは「寅がいなくてよか

った」と胸を撫でおろすが、おばちゃんが帰って

来たよと告げ、緊張する。

 

 寅さんは高梁で人間の運命について考えたと

神妙に語り、おいちゃん・おばちゃん夫婦とさくら

は二階に寅さんを上げる。貴子が団子を買いに

来て子供が好きなんですと告げる。彼女が喫茶

店に帰ると、寅さんが降りてきて、近くにできた喫

茶店に珈琲を飲みに行こうかと語り、とらやの人

々は慌てて止める。

 

 とらやの食卓で寅さんは庭にりんどうの花が咲

く家で家族が団欒する光景に人間の生活がある

と語り、小学三年生くらいの子供がいる人と結婚

してみてえなと夢を語り、竜造は即座にそんな人

はいねえと答える。おいちゃんの即答に不審を感

じた寅さんだが社長と語り合って二階に寝に行く。

 

 おいちゃん・おばちゃんは寅と貴子さんが会わ

ないようにと祈るような気持ちで語り合うが、博は

何時か顔を合わせるでしょうと告げる。

 

 題経寺門前で貴子の息子学が寂しそうにして

いる光景を見て、通りがかった寅さんが励ます。

 現れた貴子は息子が早退したことを学校から

伝えられましてと報告する。寅さんは一目惚れを

隠しつつ、すぐに慣れますよと述べ、学にお母さん

に心配かけないようにと告げて帰路につく。

 

 とらやで寅さんは社長に三十代くらいの和服美

人を見たが誰だと問う。社長は知らねえと答える。

 

 題経寺門前で草履に当たった釘を抜く寅さん

和服の女性がハンカチを貸してくれたことに感動

し、恋する人との再会と思い込み喜ぶが、さく

らだった。

 

 社長が爆笑し寅次郎は怒り、追いかけ社長が

入った喫茶店において叱る。そこは貴子の店だ

った。

 

 さくらはとらやでおいちゃん・おばちゃんにお

兄ちゃんが逢っちゃったのと報告する。

 

 寅さんは食欲がない。俺は他人の奥さんに

懸想する程馬鹿じゃねえよと自分に言い聞か

せているとさくらに報告する。

 貴子が学と団子を買いに来た。寅さんは坊

やのお父さんによろしくと伝える。「主人は三

年前に亡くなりました」と貴子は語る。彼女と

学が帰ると寅さんは腹減って来ちゃったと明

るく述べる。

 

 貴子の店に寅さんとさくらが来店し、印刷工

場の若者達も入店する。寅さんは財布を出し

さくらに奢ってやってくれと告げて去るが、さくら

が見ると五百円札のみで彼女がそっと自分の

財布から代金を払う。

 

 学が人間関係に悩んでいることを察した寅

さんは題経寺の仏前の供物の饅頭を彼とそ

の級友達と盗み出す。

 貴子は息子が寅さんの導きで級友達と仲

良くなれたことに感動する。

 

 とらやに 一郎が来店し、寅さん・博・竜造

と語り合う。

 

 夜、寅さんはりんどうの花を持って貴子を

尋ねる。

 

 

 ☆りんどうの花☆

 

 『男はつらいよ 寅次郎恋歌』は、心の底に深く

染み入ってくる傑作である。

 

 家族・望郷のテーマを静かに深く語ってくれる。

 

 子連れの美しい未亡人に恋した寅次郎。切なさ

が観客の胸を打つ。

 

 加藤泰監督の傑作『沓掛時次郎 遊侠一匹』に

おいて、池内淳子はおきぬ、渥美清は身延の朝吉

を勤めた。

沓掛時次郎 遊侠一匹 加藤泰監督作品

 山田洋次は加藤泰を尊敬していた。『馬鹿まるだ

し』の脚本、『みな殺しの霊歌』の構成で二人は組

んでいる。

 『沓掛時次郎 遊侠一匹』においておきぬと朝吉

の関りはドラマの構成上多く語られるものではない。

 『男はつらいよ 寅次郎恋歌』においては、寅さん

の六波羅貴子への片思いが主題になり、しみじみ

と伝えられる。

 

 わたくしは出町座の古本で昭和時代から探して

いた『世界の映画作家 14 加藤泰 山田洋次』

を購入した。

 有難い事に本作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』の

シナリオが収録されていた。

 

 佐藤蛾次郎はポスターに名が掲載されているが、

撮影前の事故で出演が無理になった。脚本では源

公の出番・台詞はかなり多い。

 

 

 

 序盤の雨のシーンでは寅さんと坂東鶴八郎座長

の出会いが示される。

 

 名優吉田義夫が渋い。旅芝居に中々お客が入っ

てくれない中に来てくれた寅さんを先生と呼び、寅

さんもパトロン意識を持ってしまう。

 

 岡本茉莉の大空小百合役も本作が初登場であ

る。寅さんは小遣いを五千円あげて-後にあげ

過ぎたと後悔するがーテレビドラマ女優を目指して

頑張る彼女を応援する。

 吉田義夫・岡本茉莉の劇中劇名舞台は、その

後の作品で映され、山田洋次の演劇演出の凄ま

じさを物語る。

 

 優しさと思いやりの世界は、長谷川伸の戯曲『沓

掛時次郎』の精神が溢れている。山田洋次は加藤

泰を継ぎ、映画で長谷川伸戯曲の愛の精神を明ら

かにしようとしたのではないか?

 

 とらやに帰ってきた寅さんは、おいちゃん・おばちゃ

ん・さくらに優しくされ不審を感じ、朝日印刷では失

敗を笑われ激怒する。

 

 物語の最初の山場は酔った寅さんが仲間二人を

とらやに連れてきて、さくらに歌唱を命じるシーンだ

ろう。

 渥美清の暴力性の演技が光る。兄貴の立場を利

用して美しい妹に無理矢理歌わせて仲間の前でいい

カッコをしようとする。昭和四十年代の寅さんはチン

ピラ・不良で我儘な極道である。やくざの荒々しさが

溢れている。

 谷村昌彦・大杉侃二朗の枯れた味も強烈である。

 

 森川信が暴君の甥から可愛い姪を守るおいちゃん

を熱演する。「さくらは芸者じぇねえ」という叱責にま

すます怒る寅さんは無理矢理歌わせる。

 

 谷村昌彦の労務者は『男はつらいよ 望郷篇』に

おける竜岡正吉親分の子分と同じ人物かどうかは

分からない。だが、服装・ムードは似ている。「都は

るみか、水前寺か?」の掛け声がかかるか、都はる

みと水前寺清子は当時から大スタアだったのだ。

 『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』において都は

るみはマドンナ京はるみ役で出演することとなる。

 

 優しいさくらは涙を流しつつ清らかな声で「母さんが

なべをして手袋編んでくれた」と歌う。

 倍賞千恵子の美しさが光り輝く。母性愛の暖かさが

観客の胸を熱くする。

 二人の労務者は申し訳なさを感じたのか出て行き、

流石の寅次郎も愚行を反省する。

 

 諏訪郁が危篤になり、博・さくら夫妻は岡山県高梁

市に行き、郁の訃報を聞く。実兄の毅・修が「母さん

は幸せだった」と語るのに対し、博は反発し「母さん

は胸の開いたドレスを着て舞踏会にも出たかったん

だ」と強く反発する。朝日印刷ではいつも優しい博だ

が実家諏訪の家に帰ると抑えていた怒りが出る。

 

 梅野泰靖が毅の厳しさ、穂積隆信が修の冷たさを

鋭く表現する。

 志村喬が重厚である。妻を亡くした夫の悲しみと

寂しさを静かに深く表す。

 

 葬儀に参列した寅さんがはしゃぎ、諏訪家の撮影

では「笑って」と声をかけて、毅・修を立腹させる。

 さくらは恥ずかしさで心を痛める。

 

 『寅さん 48年前の撮影現場』の動画では本読み

の貴重映像が一部紹介され、倍賞千恵子の「なん

て事言うのよ!お兄ちゃん。笑ってって言う事ない

でしょ、お墓の前で」の読みで、梅野泰靖も思わず

笑ってしまう映像が収録されている。志村喬が台本

を見つめる光景も印象的だ。

 本篇では「修。お前が撮れ」と激怒して注意する

演技がなされていて、流石である。

 

 梅野泰靖は、『男はつらいよ 寅次郎春の夢』で

は寅さんの恋敵の船長、『男はつらいよ 口笛を

吹く寅次郎』において再び毅役で出演する。世田谷

区九条の会において尽力された。

 令和二年(2020年)八月二十五日八十七歳で死

去した。

 

 博・さくら夫妻が柴又に帰り、 一郎と語り合う寅

さんは、りんどうの花が咲く庭に集う家族の生活に

人間の根本的な在り方があることを教わる。妻を

亡くし、研究一筋で彼女に苦労を掛け通しだった

事を反省する 一郎の噛みしめるような重い言葉

に寅さんは人生を反省し、人間の運命を考える。

 

 一郎の「りんどうの花」に人間生活を教わる寅さ

ん。静かだが、これが第二の山場であろう。

 

 そして、いよいよマドンナ貴子の登場となる。

 

 池内淳子は昭和八年(1933年)十一月四日東京

府生まれ。本名を中澤純子(なかざわ・すみこ)と

申し上げる。昭和三十年(1955年)に映画デビュー

を果たす。以後映画・テレビで大活躍され、人妻

役・母親役・未亡人役を当たり役にされた。

 平成二十二年(2010年)九月二十六日七十六歳

で死去した。

 

 子連れの美しき未亡人で喫茶店店主の六波羅

貴子役は、初めから池内淳子が想定されていた

のではないか?

 

 池内淳子の気品豊かな美貌が貴子役に輝い

ている。

 とらやに神妙に帰宅した寅さんが、一目惚れ

すれば必ず振られ傷つくから、貴子さんに会わ

せないようにしようとおいちゃん・おばちゃん・さ

くらは気遣うが、題経寺門前で二人は会ってし

まう。勿論寅さんは貴子にその場で恋してしま

う。

 寅さん片思いが、第三の山場である。

 

 貴子は未亡人と聞いて有頂天になった寅さん

は早くも幸福な結婚を夢見てしまう。恋する男

は走ってしまうことを痛感する。

 

 「まくら、さくら取ってくれ。御免間違えた」の台

詞は第一作の森川信のアドリブという説がある

が、本作のシナリオでは台詞として書かれてい

る。

 

 転校してきた学校に馴染めず孤独を感じる学

少年と寅さんが題経寺悪戯で交流し、学が級友

達と仲良くなるエピソードも印象的だ。

 『沓掛時次郎』における太郎吉少年と時次郎

の絆を想起した。

 

 貴子にはお店の支払いのトラブル問題の悩み

があった。寅さんは彼女の力になりたいと望む。

 

 りんどうの花を持って六波羅家に現れる寅さん。

 

 貴子が放浪生活への憧れを静かに語るクライ

マックスに池内淳子の至芸が光る。

 

 寅さんの旅の生活に憧れつつ、家庭人・母親と

して生きる身である。切なさが貴子の胸に溢れる。

 振られた事を確かめ、貴子と学の幸を想い、静

かに身を引く寅さん。

 とらやにおいておいちゃん・おばちゃん・社長が

心配するが、孤独感と切なさを胸に抱いて去って

いく寅さん。

 

 さくらが追いかけて声をかけるが、寅次郎は

歩み続け背中で哀愁を語る。

 

 山梨県八ヶ岳の緑豊かな自然の光景を寅さん

は進む。

 

 高羽哲夫の撮影が日本の美しい自然を確か

める。

 

 トラックで移動する坂東鶴八郎一座と寅さん

の偶然の再会。

 

 愛される寅さんは迎えられ、トラックに乗る。

 

 

 

 映画公開から約三か月後の昭和四十七年(19

72年)三月二十六日森川信は肝硬変で死去した。

六十歳。

 

 二代目車竜造は松村達雄が継承する。

 

 『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』(昭和五十八

年十二月二十八日公開)において梅野泰靖の諏訪

毅・穂積隆信の諏訪修が再登場し、博の姉信子を

八木昌子が演じ、博との諏訪四兄弟姉妹のドラマ

が語られる。

 

 『寅次郎恋歌』では厳格に見えた毅が父の育った

家だけは残したいと考え、修と対立するエピソードは

切なかった。

 

 本作から十年以上経過していることもあってか、

『口笛を吹く寅次郎』においては、毅・修は寅次郎

を忘れていて僧に扮した寅次郎を本物の僧と思い

込む。

 

 松村達雄は石橋泰道住職で出演する。

 

 寅次郎と泰道が「諏訪先生」と語り合う台詞に、

本篇には映らない志村喬の重厚な存在感が心

に響いた。

 

 本作公開の時代管理人は幼稚園児で記憶が

ある。東京や山梨のロケ地が映るが、本作には

昭和四十六年(1,971年)の日本の空気が映って

いる事を感じる。

 

 さくらの『かあさんの歌』。

 

 岡山に走る汽車。

 

 諏訪飈一郎の「人は一人では生きていけない」

という教え。

 

 望郷と拠り所の大切さを教えてくれる。

 

 ラストの明るい寅次郎の口上に、失恋の痛みを

秘めて笑顔で生きる男の道を学んだ。

 

 りんどうの花に恋を託した寅次郎の純情は輝い

ている。

 

男はつらいよ (テレビドラマ版)  第一回

 

男はつらいよ(フジテレビ版) 最終回

 

男はつらいよ

 

 

続男はつらいよ

 

男はつらいよ フーテンの寅

 

男はつらいよ 望郷篇

 

 

男はつらいよ 純情篇

 

男はつらいよ 奮闘篇

 

男はつらいよ 私の寅さん 

 

男はつらいよ 寅次郎相合い傘

 

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

 

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 

 

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎

 

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇

 

男はつらいよ お帰り寅さん

 

 

 

 池内淳子没後十一年・十二回忌命日

 

        令和三年(2021年)九月二十六日

 

 

                         合掌

 

 

                   南無阿弥陀仏

 

                        セブン