男はつらいよ (テレビドラマ版)  第一回 | 俺の命はウルトラ・アイ

男はつらいよ (テレビドラマ版)  第一回

  『男はつらいよ』

terebi tora

  テレビ トーキー 60分 白黒

  放映日 昭和四十三年(1968年)十月三日

 

 

  制作  フジテレビ

 

       高島事務所

 

  原作  山田洋次

 

 

  脚本  山田洋次

 

       稲垣俊

       森崎東

 

  音楽  山本直純

 

 

  主題歌 『男はつらいよ』

 

 

  出演

 

 

  渥美清(車寅次郎)

 

 

  

 

  長山藍子(車さくら・語り)

 

 

  佐藤オリエ(坪内冬子) 

 

 

   杉山とく子(車つね)

  横内正(鎌倉ミチオ)

 

 

 

  東野英治郎(坪内散歩)

  森川信(車竜造)

 

 

 

  演出  小林俊一

 

 

 

 

 

  新幹線が東京駅で停車する。昭和四十三年の

 東京駅だ。出勤・通学する人達が歩んでいる。

 

  駅のトイレで元気いっぱいに語るテキヤの男が

 いた。

 

   「紙はねえよ」と他の客に新聞紙を渡した男は

  歌いながら歯磨きをする。

 

 

 だんご屋「とら屋」の主人夫婦の姪さくらは、OLと

 

 

して働いている。幼くして両親・長兄と死別し、次兄

寅次郎が家出したが、淋しい環境においても頑張っ

てきた。

 

 

 育ててくれた叔父竜造・叔母つねの愛情をたっぷ

 

 

りと受けてさくらは美しい娘に成長していた。

 

 ミチオという素敵な恋人もいて、ミチオは結婚を

 

考えていた。

 

 さくらが乗る電車に、テキヤの男も乗っていた。男

 

はトラブルを起こし、口論した男性に謝罪させ、他の

乗客の恐怖感を呼ぶ。

 

 そのうえ、男は故意ではないが、さくらの膝の上に

 

座ってしまった。

 

 さくらは帰路、男が後ろを歩んでいることに吃驚し、

 

駆けて「とら屋」に走り込む。

 

 竜造は「痴漢」に違いないと警告する。つねは「追わ

 

せて警察に突き出す」方法を提言し、「私だったらそう

するよ」とアドバイスする。

 

 竜造は「向こうのほうで願い下げだ」と語り、妻に叱ら

 

れる。

 

 さくらも笑っているうちに、男が「とら屋」にやってきた。

 

 

 怯えるさくらとつね。

 

 

 

 

 竜造が応対する。

 

 すると男の顔は喜んでいる。

 

 

 

 男は竜造を「おいちゃん」と呼ぶ。

 

 

 

 

 寅次郎だったのだ!

 

 

 

 

 さくらは生き別れになっていた腹違いの兄の突然の帰還に

 

 

戸惑う。ミチオにどのように紹介していいかわからない。

 

 

 寅次郎は美しい女性に成長した妹の姿を見て感激する。

 

 

 

   寅次郎「さくらさんよ。随分おめえにも苦労かけたな。

 

       おめえと俺は腹ちげえだけど兄妹にちげえねえ。」

 

 

  さくら「おかえんなさい。」

 

 

 

 寅は妹に苦労をかけたことを詫び、妹は帰還に一言挨拶

 

すること以外に言葉が見つからなかった。

 

 その後寅次郎はトラブルを起こし、仲間を連れてきて暴飲し

 

て大騒ぎをして、さくらは悲しむ。

 

 さくらは、親友坪内冬子の父で、寅次郎の恩師坪内散歩先

 

生を尋ねる。

 

 散歩先生は、寅次郎と話し合い、注意することを約束する。

 

 

 

 寅次郎は美しい娘に成長した冬子に再会して一目惚れす

 

 

る。

 

 お腹が痛いと急に訴えて、冬子は心配する。

 

 

 ☆☆車寅次郎 登場☆☆

 

 

 昭和四十三年十月三日、フジテレビ系でドラマ『男はつら

 

いよ』が始まった。

 

 

 テキヤで暮らすやくざな寅次郎と美人OLさくらの兄妹の

 

 

物語である。

 

 

 脚本を担当したのは、『二階の他人』『下町の太陽』といった

 

 

名作青春映画を松竹で演出していた監督山田洋次である。

 

 山田は『馬鹿まるだし』を始めとして沢山の喜劇映画の名作

 

映画を演出していた。

 

 

 喜劇スター渥美清は、山田洋次映画に『馬鹿まるだし』を始

 

 

め複数の作品に出演していた。

 

 渥美清からテキヤの話を聞かされ、「生涯忘れられない」 (

 

『講座日本映画7 日本映画の現在』「対談・男はつらいよ」)

気持ちを抱いた山田は、テキヤを題材に選び取り、テキヤの

男を主人公に位置づけた。

 

  山田  はじめは「愚兄賢妹」なんての考えたりしたんです。

 

       そしたらディレクターの小林さんが、星野哲郎さんに

       主題歌を頼んだんだけれども、星野さんのほかの歌

       の中で「つらいもんだよ、男とは~」ってのを見つけた、

       そんないきさつだったと思います。

       

       (『講座日本映画7 日本映画の現在』   165頁

         「対談・男はつらいよ」 1988年 岩波書店)

 

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(画像出典 

 『講座日本映画7 日本映画の現在』

 「対談・男はつらいよ」

 渥美清・山田洋次

 1988年 岩波書店)

 

 暴れん坊の寅次郎が、兄妹愛を思いつつ、無茶苦茶して妹に

叱られるが、さくらは無茶な兄の真心を思って、彼女も兄妹愛に

目覚めていく。

 

 社会的・世間的には、厳しい評価にさらされても、みんなに笑い

 

と感動を与えてくれるひと。

 

 寅次郎は、みんなを困らせつつ、愛される存在になっていく。

 

 

 美人マドンナに一目惚れするが、ふられて、切ない片想いが

 

つのる。

 

 切なさと辛さと悲しみを思いつつ、逞しく歩む寅次郎の姿が視

 

聴者に感動を与えてくれる。

 

 残念ながら、テレビ版は、第一回と最終話第二十六回の二回し

 

か現存していない。

 

 

 

 この二回はDVD化もされているが、二回から二十五回は写真

や資料で想像するしか術はない。

 

 

 初めは大いに笑わせて、最後は悲惨な結末を迎えるという筋は

 

 

「明るい悲劇」と言えるとも思う。

 

 第一回は大都会東京の様子を映し、寅次郎の破天荒な姿を鮮や

 

かに描く。

 

 寅さんは、やくざとしての凄みも強烈である。

 

 

 乱暴だけれども、妹を想うこころは人一倍強い。

 

 

 寅次郎とさくらが反発しても、信頼感が生まれていく過程は素敵

 

だ。

 

 おいちゃん・おばちゃんの叔父・叔母がさくらを育て、寅を迎える。

 

 

 寅とさくらも腹違いの異母兄妹である。

 

 

 「とら屋」の人間関係は暖かい。

 

 

 合理主義や常識だけでは判断できない尊さが、寅さんの世界観

 

だと思う。

 

 寅さんの冬子への切ない想いには一途で純な心が光っている。

 

 

 片想いの一途な心には深い愛情が溢れている。

 

 

 寅さんの一徹な愛の物語を、小林俊一監督がリズミカルテンポ

 

のいい演出リズムで生み出した。

 

 渥美清・山田洋次の主演・脚本の最強コラボは、テレビを舞台に

 

して力強く第一歩を踏みしめ、力強く幕を開けた。 


(画像出典 

 『講座日本映画7 日本映画の現在』

 「対談・男はつらいよ」

 渥美清・山田洋次

 1988年 岩波書店)

 

 

 

                              文中敬称略

 

 

 

 

 

 

                                 合掌

 

 

 

 

 

                            南無阿弥陀仏

 

 

 

 

                                セブン

渥美さん