男はつらいよ お帰り寅さん | 俺の命はウルトラ・アイ

男はつらいよ お帰り寅さん

『男はつらいよ お帰り寅さん』
映画 トーキー 116分 カラー
令和元年(2019年)十二月二十七日公開
製作国 日本
配給 松竹
 
出演者
 
渥美清(車寅次郎)
 
倍賞千恵子(車さくら後に諏訪さくら)
 
吉岡秀隆(諏訪満男)
 
後藤久美子(イズミ・ブルーナ旧名及川泉)
 
前田吟(諏訪博)
佐藤蛾次郎(源公)
美保純(朱美)
池脇千鶴(高野節子)
夏木マリ(原礼子)
笹野高史(御前様 二代目)
 
小林稔侍(窪田)
桜田ひより(諏訪ユリ)
北山雅康(三平)
カンニング竹山(飯田)
濱田マリ(書店の客)
出川哲朗(山中)
林家たま平(ケアセンター職員)
立川志らく(噺家)
橋爪功(及川一男)
 
 
浅丘ルリ子(松岡リリー)
 
 
脚本 山田洋次
    朝原雄三
音楽 山本直純
    山本純之介
主題歌 渥美清  
      桑田佳祐
撮影 近藤眞史
編集 石井巌
    石島一秀
 
原作 山田洋次
 
監督 山田洋次
 
令和二年(2020年)一月三十日
イオンシネマ京都桂川スクリーン⑫にて鑑賞
 作家となった諏訪満男は娘と二人で暮らしている。
妻とは死別し、葛飾柴又の母さくらの実家とらや老
舗(くるま菓子舗)で営まれることになった。満男・ユ
リ親子はさくら・とその夫博と再会する。満男の岳父
窪田や源ちゃんも参集していた。
 二代目御前様が導師を勤め、おいちゃんこと竜造・
おばちゃんことつねの写真が本尊前に掲げられて、
参列者は哀悼の意を表する。
 父母の前では、中年になっても甘えを示す満男は
少年時代と変わらぬあどけなさを示す。窪田は、「満
男さん。娘に義理は立てなくてもいいよ。」と再婚して
も構わないと語る。だが、満男は再婚を考えていな
かった。
 さくらは駅で満男が作家を志望しサラリーマンを辞職
すると言った時は不安だったと告げた。
 小説の売り上げは好調で編集者の節子と満男は
良いムードである。八重洲ブックセンターの満男サイ
ン会が開催される。
 昔の恋人及川泉が満男に声をかける。現在彼女
の名前はイズミ・ブルーナで結婚し、国連職員とし
て働き、ボスニアヘルツェゴビナ紛争の戦闘で戦災
に遭った人々の被害の重さを訴えていた。
 昔の恋人泉との再会に満男は大喜びし、神保町
の喫茶店を訪ね、ママのリリー松岡に会いにいく。
 リリーは加齢のせいかトイレが近くなったことを語
るが、美貌は若々しく煙草も力強く吸った。
 
 満男は泉に出会い恋し、叔父寅さんこと車寅次郎
に恋の指南を受けたことを思い出す。
 イズミが帰国した訳は父一男が病床にあって危な
いと聞き、母礼子と共に見舞いに行くためであった。
満男も同行し一男を訪ね、病床の一男はイズミに感
謝しつつ、満男に金を求めた。
 
 礼子が泣き、イズミも悲しむ。満男はイズミを慰め
再び恋心が再燃してくる。イズミには夫が居て、自身
には娘がいるという家庭を共に持っている状況なの
だが、愛しい気持ちを抑えることは難しかった。
 
 満男はイズミへの激しい恋と共に、会いたい叔父さ
んを机の前で思う。
 
 ☆第五十作は新ドラマの始まりか☆
 
 『男はつらいよ』最新第五十作『お帰り寅さん』が製
作・公開された。
 渥美清こと本名田所康雄は昭和三年(1928年)三
月十日に誕生し、平成八年(1996年)八月四日に六十
八歳で死去した。主演の渥美清は当然本作には出て
いない。過去の映像が編集されてのフィルム出演であ
る。
 おいちゃん・おばちゃん・初代御前様は亡くなったが、
寅さんは生きているという設定で満男を見守るという物
語である。 
 
 満男が独白で現在と過去の映像を解説し、とらや(く
るまや)の人々やイズミやリリーとの関りを観客に語り
掛ける。
 白髪になったさくらと博。おばあちゃん・おじいちゃん
となった二人は風格豊かだ。そこへ第一作の少女の
ような美しさのさくらと逞しい博の映像がオーバーラッ
プする。
 
 満男とイズミのドラマはシリアスで重い印象を受けた。
 
 お笑いの場面は、全て過去の寅さんの語りやアクション
が引用映像で示される。
 
 
 蛾次郎の源ちゃん以外新たな笑いを提供してくれる
人がいないというのはかなり寂しい。
 
 渥美清の寅、津坂匡章後の秋野太作の川又登、森
川信の初代おいちゃん、三崎千恵子のおばちゃん、太
宰久雄のタコ社長、桜金造のポンシユウとレギュラー・
ゼミレギュラー達の笑いの芸の深さを痛感した。
 
 中年となった満男とイズミの映像と青春時代の満男と
泉の映像が呼応する。
 
 山田洋次はジャン・ピエール・レオーがフランソワ・ト
リュフォーの五本の映画でアントワーヌ・ドワネルの少
年期から三十代を演じた、「アントワーヌ・ドワネル」五
部作を意識したことをインタビューで語っている。
 
 過去の映像の引用・紹介によって、現在の物語と照
応させることに、フランソワ・トリュフォー監督『逃げ去る
恋』との連関を感じた。
 
 満男とイズミの大人の恋は終わった訳ではない。ま
だまだ続きそうな予感がある。
 
 後藤久美子のフランス語は綺麗だ。
 
 中年になっても少年の心を失わない満男を吉岡秀隆
が生きる。
 
 ドラマの中心軸を荷っているのは確かに満男なのだ
が、柴又映像になるとやはり寅さんが主役であり、回想
出演でも強いイメージを与えてくれる。
 
 「寅さんは生きている」ことを伝えてくれる一本である。
 
 本日令和二年(2020年)六月二十九日大阪ステーショ
ンシネマシティシアター⑤に行き、『男はつらいよ』初期
傑作群を鑑賞し感動した。
 
  倍賞千恵子さん
 
  七十九歳お誕生日
 
  おめでとうございます
 
 
 
                                合掌