女と男のバディムービー | 映画の楽しさ2300通り

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引き裂かれたカーテン」が面白い理由の一つは、ポール・ニューマンジュリー・アンドリュースが、よくありがちな助ける側(多くの場合男)と助けられる側(女のことが多い)の関係ではなく、ほぼ対等な立場と能力で協力して難題に立ち向かうことです。

そこで「カーテン」のレビューに「ヒッチコックは男女のバディームービーが上手い!」と書いたのですが、他にも好きな男女のバディムービーがある!と感じ、"愛する映画たち"を眺めてみたところ、やはり以下のような該当作品がありました。


コンビの男女間の比重が若干違うケースがあるものの、メル・ギブソンの比重がダニー・グローバーに比べて圧倒的に重い「リーサルウェポン」がバディムービーの典型なのであれば、多少の差は許容範囲でしょう。

"愛する映画"だけにでもこれだけ該当作があるのなら、これまでに観た2200本強のうちのその他2000本足らずの作品にも面白い女と男のバディ・ムービーがあるだろうと振り返ってみたところ、それほど多くはなかったものの、なんと、ヒッチコック作品の割合が高いという結果になりました。それらを以下、公開年順にご紹介します。

 

裏窓 (1954)


ヒッチコック作品。

ジェームズ・ステュアートの婚約者がグレース・ケリー。足を骨折して車椅子状態のステュアートの足代わりとなってグレース・ケリーが危地にも飛び込みます。小林信彦氏だったか和田誠氏だったかが、ヒッチコックは色気のない女優をセクシーに撮るのが上手いという実例として、本作のグレース・ケリーを挙げていましたが、全面的に賛成します。

知りすぎていた男 (1956)

 
ヒッチコック作品。

ジェームズ・ステュアートとドリス・デイの夫婦カップル。ステュアートが体を張って活躍する一方、ドリス・デイが息子に歌って聞かせる「ケ・セラ・セラ」が重要な役割を果たします。
レビュー記事もありますので、よろしければご覧ください。

引き裂かれたカーテン (1966)

ヒッチコック作品。

ポール・ニューマンとジュリー・アンドリュースの婚約者カップル。ストーリー上の主役はニューマンですが、アンドリュースの出番(特にクロースアップ)が多く存在感では同等。逃亡の際には面が割れているニューマンをかばいつつ行動します。
ドリス・デイ同様スター歌手であるアンドリュースが歌う場面がないのは、本作でヒッチコックが長年の相棒バーナード・ハーマンと訣別したせい?レビュー記事はこちらです。

俺たちに明日はない (1967)

フェイ・ダナウェイウォーレン・ベイティが犯罪史上有名な強盗カップル、ボニー・パーカーとクライド・バロウを演じました。アメリカン・ニュー・シネマの先駆けと言われ、映画史的にも重要な、よく出来た作品と思うものの、超有名である悲惨な結末がやはり好きになりきれません。
個人の好みとしては、男女バディの話はハッピーエンドで終わってほしいです。

ファミリー・プロット (1976)

ヒッチコック作品。

バーバラ・ハリスブルース・ダーンの恋人カップルがいい人役で、悪役サイドのカレン・ブラックウィリアム・ディバインも夫婦強盗でした。
強盗場面のシリアスな描写と、インチキ霊媒師(ハリス)としがないタクシー運転手(ダーン)コンビの愉快な取り合わせのアンマッチが楽しい、ヒッチコックらしい作品だと思いますが、日本での評価は今一つだったような。

と思ってWikipediaをみたところ世界的にはそこそこ好評価のようでした。ヒッチコックファンでなくても未見の方にはおすすめします。

ナチュラル・ボーン・キラーズ (1994)

ウッディ・ハレルソンジュリエット・ルイスの凶悪恋人カップル。これまた暴力的な内容なので、けしておすすめできないものの、刺激的で印象的なよく出来た作品で、"愛する映画"一歩手前でした(レビューはこちらです)。

ただ、エンディングにあいまいさがあり、かつ異なる結末もあるということで、同様のテーマを扱った「トゥルー・ロマンス」(脚本が「キラーズ」の原案と同じくクェンティン・タランティーノ)のようにはすっきりしない感じが残りました。

ハムナプトラシリーズ (1999~)

第1作は"愛する映画"の1本ですが、2作目では古代エジプトに関する知識をベースに活躍するエヴリンが格闘技の達人でもあるという進化を遂げており、面白くはあるものの唐突な感じは否めませんでした。1,2作目がブレンダン・フレイザーレイチェル・ワイズの他人(1作目)から夫婦へのコンビ。3作目ではワイズがマリア・ベロに交代しています。どちらも好きなのでまあ良いですけど。


トワイライト・サーガシリーズ (2008~)

1作目「初恋」は"愛する映画"の1本ですが、人間であるクリステン・スチュワートがヴァンパイアのロバート・パティンソンに護られている感が強く、男女バディとは認めにくいのに対し、結婚してベラ(スチュワート)もヴァンパイアになってからは、エドワード(パティンソン)に勝るとも劣らない能力を発揮し、完全な夫婦バディに。
異生命体間恋愛ストーリーがアクション映画っぽくなってしまったのが物足りないですが、シリーズ全体として好きな作品です。

以上、女性の社会的地位や身体能力が向上した近年では、女女バディ(テルマ&ルィーズ)や女性が主導権を握るカップル(ロング・キス・グッドナイト)、さらに女性の単独ヒーロー(ラーラ・クラフト)も登場していますが、まだまだ特にアクション映画では男性が主役の作品が多い中、ヒッチコックの先見性に改めて気づかされました。
ヒッチコックの妻アルマ・レヴィルは「ヒッチコックの最も親密な協力者で(中略)何本かの脚本を執筆し、ヒッチコックの全ての作品の擁護者であった。」(Wikipediaより)ということですから、ヒッチコック自身が女性の能力の高さを認め、かつ強い信頼感をもって協力し合うことの大切さと強さを理解していたのでしょう。

こうなると戦前に既に存在したウィリアム・パウェルマーナ・ロイの夫婦カップルによる「影なき男」が観てみたいです。