ジャンル:舞踏
製作国:スペイン
監督:カルロス・サウラ
愛するポイント:研ぎ澄まされた緊張感あふれるスペイン舞踏の神髄!

「血の婚礼」はカルロス・サウラ監督とアントニオ・ガデス(およびガデス舞踏団)による「スペイン舞踏三部作」(※)の一作目。
日本では二作目にあたる「カルメン」が先に公開されましたが、あまりのすばらしさにガデス人気が沸騰(?)し、先行した本作も公開することになったという経緯だったと記憶しています。
「カルメン」を愛してしまいビデオ(当時)を購入して繰り返し観た僕(と相棒)も当然映画館に観に行き、これまた(もしかしたら「カルメン」以上に)愛してしまうほど感動したにもかかわらず、 数年前にDVDを購入して観返すまではなんと導入部以外はモノクロで撮られていたと思い込んでいました。
もちろんそれは(記憶力のなさは置いておいて)悪い意味でもなんでもなく、「カルメン」のダンサーたちの目に鮮やかな衣装に比べ極限まで研ぎ澄まされ厳かささえ感じさせるダンスおよびコントラストのはっきりとした演出に、色彩を超越した深い陰影を感じたからだと思います。
その"研ぎ澄まされた"感は3人の主役、アントニオ・ガデス、クリスティーネ・オヨス、アントニオ・ヒメネスのダンスの凄みからも生まれていました。
映画版の「カルメン」(舞台版もあり日本でも上演されました)はクローズアップに耐えスタイルも抜群のラウラ・デル・ソルを主役に据え、舞台版ではカルメンを演じるオヨスは助演に回りました(オヨスがクローズアップに耐えないということではありません)が、ダンスのすばらしさの点ではデル・ソルはオヨスに及びませんでした。
デル・ソル不在の「血の婚礼」は、言わば余計な目配り・雑念が一切不要な"純粋な舞踏劇"として完成度を高めたように感じます。
ついでに言うと、三部作の最終作「恋は魔術師」もガデス、オヨス、ヒメネス、デル・ソルが主役を演じましたが、どうしてもデル・ソルが見劣りしたのが作品全体の興趣をいささかそいでいたような気がします。
また「血の婚礼」では舞台上演直前のドレス・リハーサルを映画化し、「カルメン」では舞台上演を作り上げていく現実の過程と演じられる虚構の物語を複雑に絡み合わせる、という映画らしい構成・演出がみられましたが、「恋は魔術師」は舞台の内容をそのままセットで演じた"舞踏劇の実写版"を越えられなかったのが物足りませんでした。
まあそれはそれ、この記事は三部作がテーマではなく「血の婚礼」の紹介なので話をもどすと、「血の婚礼」にはセリフもなくダンスがとことん楽しめる一方かなり緊張感があって疲れるかもしれないので、できれば制作年度を無視して「カルメン」を先に観ることをおすすめします。
ひょっとしてラウラが気に入れば「恋は魔術師」も観たくなるかもしれません、って結局三部作の紹介か?
※よく「フラメンコ三部作」と呼ばれていますが、ガデス舞踏団のダンスは正確にはフラメンコを含むスペイン起源のダンスを幅広くカバーしているので、この表現にしています。
ちなみに"フラメンコ"はダンスだけでなく、共に演じられる音楽と歌唱を含めた"総合芸術"を指す呼称だそうです。