もう少しで愛してしまうところでした。もちろん愛してしまっても構わないのですが、これだけ暴力的で凄惨な映画を愛しているということにヒトとして抵抗があるのです。
かろうじてそれを引き止めてくれたのはオリバー・ストーンの演出でした。タランティーノっぽいアニメの挿入やクロースアップの使い方がどうにもしっくり来ないのです。おまけに特典つきDVDだったのでつい観てしまった「もうひとつのエンディング」がまったく好きになれず、であれば良かったと思えばいいのでしょうが、ストーンはこんなエンディングも撮ったんだ!ということに対する嫌悪感が先にたってしまったのです。
それはともかく、パワフルで魅力的な作品です。ミッキー(ウッディ・ハレルソン)が結構しゃべりますが、行動との間に論理の破綻がないし、けれんのないアクションは見事。より一層素晴らしいのがマロリーを演じたジュリエット・ルイス。「蜘蛛女」同様キンキーなキャラクターなのにこれもミッキーが一目惚れして永遠の愛を誓うのが納得のいく女っぷり。ダンスも含めた体の使い方も素敵です。
この二人の出会いと愛、すなわち運命がワンアンドオンリーのテーマな訳ですが、そこにまったく破綻がないという説得力にとにもかくにも魅せられました。だからこそ、邪魔な映像が気になったのだろうと思います。
自分が偏見も承知で「地上最強の動物」と呼んでいる北極熊が二頭、別々に飼われていたところから逃げ出してカップルになった上で、好いヒトも悪いヒトもどちらでもないヒトも見境いなく殺傷し、一旦は捕らえられたものの見世物にされた動物園から脱走(そのついでにまたひと暴れ)して自然に帰っていった、そんな印象を持ちました。などと書いているとやっぱり愛してしまいそうです。