大阪府枚方市で、学童保育の支援員の女性が保護者から集めたおやつ代を、家賃の支払いに私的に流用した、という事件が報道されました。
学童のおやつ代不正流用 支援員を停職、大阪・枚方
https://www.sankei.com/affairs/news/181122/afr1811220048-n1.html
上記の産經新聞の記事によると、
●懲戒処分を行ったのは、大阪府枚方市教育委員会
●支援員の女性の身分は、放課後子ども課の任期付短時間職員
●2018年10月に、当該支援員が、保護者から集めたおやつ代から私的に流用した額は約18万9千円
だということです。
支援員の身分が市の職員であることから、枚方市の学童保育は市が運営する公設公営であることが分かります。
市が直接、運営を行う学童保育なのに、任期付短時間職員である支援員がおやつ代を集め、かつ、私的に流用することが可能であったことを疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。
実は、学童保育の「利用料」の中に、「おやつ代」が含まれるとは限らないのです(そもそもおやつを実施していない学童保育も存在します)。
厚生労働省の
平成29年(2017年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(平成29年(2017年)5月1日現在)
実費徴収なしのクラブが44.7%を占める一方で、利用料とは別に3500円以上の実費徴収がある放課後児童クラブも1.5%存在します(実費徴収ありで一番多い価格帯は1500円〜2000円未満で16.3%。なお、利用料については減免制度がある自治体でも、実費については減免がないことが多いです。このことも、自治体毎の「学童保育の利用にトータルでかかる費用の比較」を分かりにくくしていると思います。)。 そして、公設公営学童保育であっても、おやつの実施に関しては、実施主体が市町村ではなく「保護者会」であり、徴収の仕方も利用料とは区別される場合も多いんですね。 平成30年度枚方市留守家庭児童会室入室募集要綱の11頁をみると、「なお、おやつの会計・取扱い等は、保護者会に代わって、放課後子ども課・留守家庭児童会室の職員が務めています。」との記載があります。そして、おやつ代は、児童1人につき月額2000円で毎月徴収されることが分かります。 平成30年度枚方市留守家庭児童会室入室募集要綱の3頁をみると、保育料や延長保育料については、所定の納付書で納付され、口座振替制度もありますが、これとは別に、おやつ代等の実費負担があることが書かれています。
つまり、おやつの実施主体は保護者会で、保護者会の予算のみで実施されているけれど、保護者会からの委託を受けて、職員が金銭管理・発注・提供を行っているという実情であろうことが読み取れます(大阪の学童保育関係者の方からも、そのような状況であるとの情報提供をいただきました)。
また、18万9千円という流用金額から、当該支援員の女性は、「複数の支援の単位」(一つの学童保育に複数のクラスがある、とイメージして頂ければと思います。一つの支援の単位における児童の数は、おおむね40人とされています。)のおやつ代の会計・取扱いを任されていたであろうことも推測されます。一つの支援の単位のおやつ代は、毎月2000円×40=8万円。毎月徴収され、毎月使用されるであろうおやつ代について、2ヶ月以上のおやつ代にあたる金額を流用できることは考えにくいからです。
枚方市のサイトで確認してみたところ、枚方市では最大5クラスの学童保育があり、かなり大規模化しているようです。
平成30年度留守家庭児童会入室状況で確認したところ、事件があった学童保育の定員は150名で、平成30年7月1日現在で124名の児童が在籍する大規模学童保育でした。124名分のおやつ代であれば、月あたり24万8千円ですので、その月に集めたおやつ代からでも、18万9千円を流用することは可能だなと、納得しました。私的流用はもちろん、許されないことではありますし、毎月徴収し毎月使用する「おやつ代」という、すぐに流用が発覚するであろうお金を流用してしまった背景も気になるのですが。子どもとの関わりに加えて、120名以上の児童のおやつ代を毎月徴収し、金銭管理・発注・提供するといった仕事も、「任期付短時間職員」が行っている実情については、知られてほしいと思いこの記事を書いてみました。 なお、学童保育のおやつから分かる、学童保育の多様性について興味を持たれた方は、学童のおやつに関するツイートをまとめた 「学童のおやつ」から見る学童保育の多様性と現状も是非ご覧になってみてください。
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