生活保護を受給中の人が、警察に逮捕、勾留されてしまった場合、

 

現行の実務の取扱いでは、

 

生活保護が、停止、または廃止されてしまいます。

 

しかし、以下で論じていますが、それはおかしいのではないかと私は考えています。

 

残念ながら、裁判例では否定されていますが、以下の見解を以前、とある訴訟で主張したことがあります。

 

 

(1)起訴を理由とする生活保護廃止処分

本件においては起訴を理由に「被保護者が保護を必要としなくなつたとき」(法26条)に当たるとして生活保護を廃止しているが、勾留中に起訴されたことを理由とする生活保護廃止決定は、要保護状態にあるにも関わらず生活保護を廃止するものであり法26条の要件を満たさない違法な廃止決定である。

 

(2)起訴されたとしても要保護状態であること

そもそも、刑事訴訟においては、身体拘束は例外であり、起訴前において勾留されている被疑者についても勾留の必要性がなくなれば勾留取消しにより釈放されたり、保釈によって釈放される可能性もある。

 

のみならず、本件において原告がまさにそうであったように、判決において、執行猶予等の実刑判決以外の刑事処分がなされれば、仮に有罪であっても、当該被保護者は再び従来の住居に戻ってくるのである。

 

このような場合、勾留中の起訴によって一律に生活保護が廃止されてしまえば賃貸物件に入居中の被保護者は、たちまち家賃滞納に陥ってしまい滞納が長期化すれば賃貸借契約が解除され住居を失いホームレス状態になってしまう。

 

したがって、起訴されたからといって、画一的に当該被保護者が保護を要しない状態に至ることはないのであって(少なくとも住宅扶助に関しては要保護状態にあるといえる)、起訴されたことを理由とする本件廃止処分は違法な処分であると言わざるを得ない。

 

(3)無罪推定法理違反

起訴を理由とする生活保護廃止処分は、無罪推定法理の考え方とも相容れないものと言わざるを得ない。

 

すべての被疑者、被告人は、有罪判決が確定するまでは無罪と推定される。

 

この無罪推定法理は、憲法31条に根拠を有するものであるが、市民的及び政治的権利に関する国際規約14条2項は「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。」と明文をもって同法理をうたっている。

 

かかる無罪推定法理は、刑事訴訟における原則にとどまらず、「公訴を提起された被告人も、有罪の判決を受けるまでは、無辜の市民として扱われなければならないとする政策的観念もこの原則による。」(法律学小辞典第4版1104頁)

 

したがって、生活保護法の取り扱いにおいても、起訴された被保護者を有罪視し、生活保護廃止という不利益処分を行うことは無罪推定法理からも許されないといわなければならない。