「ソシャゲ課金で借金作っても自己破産できない、自己責任だから払い続けるしかない」

 

という趣旨のツイートがかなりの拡散をしていました。

 

これは「借金の原因がソシャゲ課金のような浪費だと、破産しても免責(=借金がチャラ)にならない」という趣旨でしょうが。この内容は、弁護士から見ると非常に不正確で断片的な、一人歩きすると有害な情報です。

 

そこで今回は、

 

「実は、借金が4~5百万あって…その原因、恥ずかしい話なのですが、ほぼほぼソシャゲ課金なのです…ものすごくはまってしまった時期がしばらくあって…今はもうお金も資産もなくて、すっかり懲りてソシャゲはやってないですけど…確か、浪費で借金作った場合は自己破産ってできないのですよね?でも、自分の収入じゃ、返しきれなくて。」

 

こんなご相談者Aさんを想定して、「借金の原因がソシャゲ課金、というだけで、自己破産して借金を免責してもらうことを簡単に諦めないで!とりあえず、弁護士に相談して!」ってテーマで、一般の方向けに書いてみたいと思います。

(なお結論を先に書いちゃうと。私なら、少なくともAさんが①多重債務に陥ってしまったのが初めてで、②浪費の他には特段の問題はなく、③今は浪費していなくて、④自分のしてしまった浪費の内容をきっちり洗い出して、裁判所にも破産管財人にも誠実に説明できます、という方であれば、「少額予納管財事件」という形で「自己破産」することを勧めると思います。もちろん、「免責」を得るために。)

 

それでは。以下の1~6の項目に沿って、「裁量免責」のオハナシ、をはじめます。

1 免責不許可事由があっても必ず免責不許可になるわけではない

2 免責不許可事由があっても、破産管財人による免責観察を経て裁量免責、が多い

3  破産者には説明義務や破産管財人の免責調査に応じる義務がある

4 免責調査に誠実に応じたことは裁量免責にとってプラスの事情

5 免責調査の拒否や、嘘をつくのは、相当マズい

6 じゃあ、実際、免責不許可の割合ってどれくらいなの?

 

 

1 免責不許可事由があっても必ず免責不許可になるわけではない

「借金の原因がソシャゲ課金だと借金は免責にならない」

この手の情報はツイッター等で時々、見ます(ソシャゲ課金に限らず、FXなんかでも同様の内容を見ますね)。

 

この手の情報が出る背景には、破産法が「免責不許可事由」として「浪費又は賭博」をあげているからでしょう。

 

で、Aさん。ほぼソシャゲ課金で4~5百万の返しきれない借金を作った。

これは、「免責不許可事由」としての浪費にあたる、と思います。

 

では、「免責不許可事由」があれば、必ず免責不許可になるのかと言えば、全くそんなことはありません。

 

2 免責不許可事由があっても、破産管財人による免責観察を経て裁量免責、が多い

実は、「免責不許可事由」あり、と認定されても、「裁量免責」がなされる場合が多いのです。

 

破産法252条2項は、免責不許可事由があっても、「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは」免責許可にできるよ、って規定しています。

 

相談者Aさんのように、お金もお金に換えられるような資産もないけれど、免責不許可事由はある、という場合に破産手続開始申立てをすると。「免責観察型の少額予納管財事件」として処理されることになります。

 

3  破産者には説明義務や破産管財人の免責調査に応じる義務がある

免責観察型の少額予納管財事件では。

裁判所は、Aさんの免責について調査させるための破産管財人を選任します。

(破産法250条1項は、裁判所は、破産管財人に、「免責不許可事由の有無や、裁量免責に関する事情について調査させる&その結果を書面で報告させることができる」と定めています。そして破産者Aさんにはこのような破産管財人による免責調査に協力すべき義務があります。)

 

4 免責調査に誠実に応じたことは裁量免責にとってプラスの事情

Aさんが、破産管財人の調査にきっちり応じ、ソシャゲ課金で破産にまで陥ってしまった原因に真摯に向き合い、現在はそのような浪費をしていないことを家計に関する資料を提出する等して説明する。

 

このような、「破産管財人による免責調査に誠実に応じました」という「破産の後の事情」も、「免責不許可事由があっても免責許可を相当であると認める」ための「その他一切の事情」にあたります。免責観察型の少額予納管財事件には、「破産の前までの事情だけだと免責不許可になりかねない人にも、「破産管財人の免責観察に誠実に応じました」という有利な事情を作って裁量免責を得るチャンスをあげる」って性格もあるのです。

 

5 免責調査の拒否や、嘘をつくのは、相当マズい

逆に。Aさんが、破産管財人に厳しいことを言われるのを嫌って破産管財人からの呼び出しをブッチしたとしたら。あるいは、破産の申立てをするときには、4~500万円の借金があると言っていて、管財人にもそう説明していたけれど、実は、その4~500万円の他に、友人から個人的に借りていた借金もあることが発覚したら。このような場合はどうでしょう。

 

3  破産者には説明義務や破産管財人の免責調査に応じる義務がある」でも述べたように、破産者には破産管財人の免責調査に応じる義務があります。また、破産者には免責調査に限らず、「破産に関し必要な説明」をすべき説明義務もあります(破産法40条1項1号)。

 

そして、破産管財人に嘘の説明をするとか、免責調査に協力しない、といったことも免責不許可事由とされています(破産法252条1項11号)

 

実務家としては、浪費より、破産手続開始決定後に、説明義務違反や免責調査への協力義務違反がある場合の方が免責不許可となるリスクが上がる、と体感しています。

 

なお、説明義務(破産法40条1項1号)に違反した場合については、罰則規定もあります(破産法268条1項)。

 

6 じゃあ、実際、免責不許可の割合ってどれくらいなの?

 

全国の免責申立事件のうち免責不許可決定の割合は、平成21年から平成23年まで0.15~0.16%台にとどまっています。

 

平成23年のデータでは

既済件数    10万7879件

免責許可    10万5169件

免責不許可       174件

取下げその他     2536件

 

となっています。「取下げその他」には、「裁量免責も厳しいから、免責申立ても取り下げたら?」って裁判所に心証開示されて取り下げたケースが含まれていると考えられるので、「実態として免責不許可なケースの割合」は、0.15~0.16%よりは高いでしょうが、免責不許可と取下げその他を足しても、免責許可の件数からすれば、わずかな割合です。

 

また、実際に浪費が問題となって免責不許可になったケースを検討しても、浪費の他に、使途の説明が不十分である、虚偽の説明があった、詐欺的な借入があって債権者が免責に反対する意見を出していたといった事情も考慮されてのことが多いです。

 

もちろん、Aさんのようなケースでも免責不許可事由があることは確かですし、われわれ弁護士は、絶対大丈夫、と請け負うことはそもそもできません。

 

ですが、ソシャゲ課金で作った借金だからって、それだけで裁量免責を諦める必要は全く、ない。そのことが伝われば、と思います。

 

 

参考文献

全国倒産処理弁護士ネットワーク編 破産実務Q&A200問 398頁―399頁

判例タイムズ 1342 4頁~ 東京地裁破産再生部における近時の免責に関する判断の実情

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