ニューロマーケティングなんて言葉が

ここ3~4年で根付いてきた。

.

広告において、ブランディングという概念は

当然のものであるという時代となったわけだが、

その効果測定を考えると、

まだまだクライアント側からすると

こむずかしい話なわけで、

それを簡単にわかりやすく説明できないかと

いうことを考えると、

行き着くところが脳なのかもしれない。

.

糸井重里氏の「海馬」という本は

当時おもしろいなぁと思っていたが、

日本でも健康ブームがあるある事件以降、

露出を減らすのと反比例して、

茂木健一郎氏を筆頭に脳ブーム、クオリアブームが

ブレイクしたわけだが、多少、露出のしすぎか、

脳とかクオリアといった言葉が陳腐化してきた

イメージもある。

.

とはいえ、広告等のコミュニケーションの

わかりやすい効果指標として

脳の反応というのは今後もっと研究されるべきである。

.

以下の日経ビジネスオンラインの記事で、

宗教とブランディングに関する話が面白い。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090212/185863/?P=1

.

『宗教に対する信仰心の深い人では、儀式に参加した際などに活性化する脳の部位は、愛着を抱いているブランドを見たりした時に活性が強まる部位と一致するという興味深い結果も得られた』

.

ということは、ブランドマーケティングの為に

宗教の勧誘・儀式であったり、プロパガンダ戦略とか

といったものの手法を、もっと研究・活用すべきなのかもしれない。



海馬―脳は疲れない (新潮文庫)/池谷 裕二
¥620
Amazon.co.jp

買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界/マーティン・リンストローム
¥1,785
Amazon.co.jp

★電通の新しい企業理念

Good Innovation

⇒イノベーションとは、コミュニケーション領域に加え、

クライアントの経営課題や事業領域と絶えず向き合い、

その本質を捕らえたソリューションを提供していこうとする

社員のビジネスのあり方を示す。

⇒企業家精神が必要であるとのこと。

.

★大幅な組織改編の実施

・本部制を廃止し、会長・社長の下に各局を並列的に置く

⇒組織間・グループ会社との壁を低くし、当社及び当社グループが

一丸となって事業推進に取り組める、そして環境変化に対応できる

体制に。また、クロスメディアに対応し統合的な課題解決力を

備えた真のソリューション企業となるべき専門領域の強化と

営業体制の改革を行うほか、間接部門や管理系部署の縮小・簡素化を

行う。

・上記の基本的な考え方に基づき、電通の広告ビジネスを

「営業」「ソリューション」「メディア」という3つの括りで

考えた組織に改編

・「コミュニケーション・デザインセンター」の新設

⇒クリエイティブ、インタラクティブ、ストラテジー、

メディアプランニング等種類の違うスキルを持つ人たちが

同じ局に集まる

.

個人的には、イノベーションそのものはトップ企業が

模索するよりも、成長してきた新しいイノベーションを

トップ企業が買っていくという考え方のほうが、

経営戦略としてはベターではないかと思う。

(イノベーションそのものが現状の経営基盤を

揺るがすことも多いにありうるのだから)

.

ただ、上記組織改編等をみると、

いまだに大手代理店といえども

クロスメディアへの対応は

まだまだ悩ましい問題なのかもしれない。

その辺の社員の問題意識を底辺から高めるためにも

Good Innovation」という言葉を用いているのだろうかと

も思われる。


電通「鬼十則」 (PHP文庫)/植田 正也
¥520
Amazon.co.jp

Napsterは、日本でも月1280円からの定額制で

ダウンロードサービスを行っている。

ただ、i Tunes Music Storeが全盛の時代、そして日本の場合、

特に独特の着メロ文化があり、なかなか普及していない。

.

1280円も払ってまでは音楽はいらないということか?

それともi Tunes Music Storei Podのブランドは、すでに確固たるもので

その牙城は崩せないのか?

.

このNapsterの音楽定額配信制の次の進化として

考えられるのが、広告スポンサーをつけて

無料の音楽聞き放題状態をつくることであり、

これも既にアメリカでは一部やっているそうだが、

音質が悪いとの不満が多いようだ。

.

では、日本で、広告スポンサーがついて

音楽定額配信制ができたら普及するのだろうか?

.

ちなみにmixiでは日産がスポンサーについて

PC上のラジオ的形で音楽をきけるようにはなっているが

ポータブルプレイヤーや携帯で聴ける状態にしないと

意味がないのだろう。

.

で、話は大きく飛躍するが、

おそらく、テレビの進化の方向性としても

テレビというハードではなく、

Napsterのプレイヤーソフトみたいなものを、

各自の携帯やパソコンにダウンロードして、

そこには広告スポンサーもついていて、

各自が観たいドラマやバラエティのコンテンツを

好きなときにダウンロードしてみるような、

そんな世界になるのではなかろうかと思う。

.

そうなった時に強いのはどこだろう?

コンテンツを作る能力に長けているテレビ局だろうか?

いやしかしテレビ局は、コンテンツ制作収入だけで、

あの巨大な体を支えることができるだろうか?

.

Appleはここ数年、テレビCMを必死に打って、

iPhoneiPodといったネットワーク機器を急激に普及させ、

そのブランド信者を増やしているが、

これが、かつてのテレビ受像機のように、

当然のものとして生活に存在するようになったら、世の中どうだろう?

.

今、有料であるiTunes Music Storeのコンテンツは音楽から映像へと、

確実にモデルチェンジしていっている。

Napsterあたりが、スポンサー型コンテンツ無料配信ビジネスモデルを

完成させたあと、最後にiTunesあたりが、

スポンサー型コンテンツ無料配信に踏み切ると、

テレビや広告の在り方も激変するおそれがあるのではないか。



おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)/中島 聡
¥790
Amazon.co.jp

大手代理店の極端な寡占が進む広告市場において、

公正取引委員会はメスを入れないのだろうかと思って

調べてみると、彼らも問題には思っているようで、

業界調査を行い、200511月に報告書を出している。

.

この報告書で何か状況が変わったかというと

何も変わっていないような気がするのだが、

内容自体はなかなか核心をついている。

.

広告業界の取引実態に関する調査報告書(概要)

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.november/051108.html

.

本報告書についての事務総長会見記録

http://www.jftc.go.jp/teirei/h17/kaikenkiroku051109.html#k051109_1

.

一つ目のポイントは

①CMタイム枠(番組提供)においては、電通が大部分を確保していて、

かつ既存の広告主優先の原則及び、テレビ局からの情報開示少のため、

新規参入が非常に困難。

.

二つ目のポイントはスポットについてで、

②スポット広告枠においては、大手広告代理店は基本報酬に加えて、

特別報酬も得られるため、販売する際に、中小代理店よりも値引きが

可能。

.

三つ目のポイントとしては、

③取引の書面化が、契約書を含めほとんどなく、

非常に不透明な業界である。

その原因として、そもそも広告主が

広告の効果やコストへの意識が必ずしも高くない

ということを挙げている。

.

読んでみて、まさに現状はその通りだという感想であるが、

では、中小の広告代理店にとっては、

報告書にあげられているように、

広告主における広告の効果やコストへの意識が

高まればいいかというと、

そうではなく、その意識を高めれば高めるほど、

①にあげられた、費用対効果の高い、「番組提供」や、

②にあげられた、より安いスポット枠

を広告主は求めるようになるのであり、

より大手への寡占化が進む話でしかない。

.

そのため、行政の直接的な介入がない限り、

中小の広告代理店は淘汰されるばかりなのである

(現に、広告主の費用対効果意識はかつてより大幅に

高まっており、中小の代理店の淘汰は明確に進み、

大手代理店への寡占化も進行している)。

.

インターネット広告取引については、

現在のところ問題ナシという報告になっているが、

本報告書発表ののちに、大手ネット代理店が

大手広告代理店に買収されていることであったり、

そもそもネット広告・テレビCMのそれぞれだけを売る時代は

終わっており、そのマス広告とネット広告の組み合わせをどう売るか、

そしてその中でテレビが軸になっているのだということを

考えると、今のところ問題ナシではなく、

既に、テレビ広告における寡占化が、

ネット広告市場にも連動して悪影響を及ぼしていると

解釈すべきではないか。

.

そこで公正取引委員会が、

健全で公正な市場を確立するために、

迅速に行うべきことは

報告書を書いて、放置しておくのではなく、

以下のことではないか。

.

テレビ局のCM枠の販売については、合理的・公平的・一貫的でかつ、

誰がみてもわかる透明性の高いものになるよう、強制的にメスをいれるべき

(長年、変わらなかった業界が、報告書だけで変わるわけがないのは自明)。

⇒例えば、広告主を奪われそうになった電通が、極端に広告枠の値下げを行い、

広告主の維持を行っていることが散見されることは、大きな問題ではないか

.

そもそも代理店が広告枠を販売する際に必要となるデータ

(広告の費用対効果を考えるために必要となるデータ)を調査する会社が、

現在ビデオリサーチしかなく、独占市場で費用が高額なため、

中小代理店が手を出せない状況になっている。

しかもこの金額も、代理店によって価格が違うため不透明。

このビデオリサーチの独占状況にも、メスを入れるべき。

国内のエンターテインメント系サイトで

2月に1人あたりの平均利用時間が

最も長かったのは「ニコニコ動画」で

その平均利用時間は192.9分とのこと。

ちなみに2位はYou tube187.0分。

.


広告とか広告会社とかメディアとか経営とか-エンタメ系サイト接触時間

.

先日書いた ように、Google TV Adsというのは

今後、広告業界の将来を変えてくる可能性が高いが、

国内産のニコニコ動画はどうなのだろうか?

.

ちなみにニコニコ動画は、最近「ニコニ広告」という

サービスをスタートさせている。

.

有料の「ニコニコポイント」を使い、

宣伝したい動画を検索結果ページ等で目立たせることが

できるというサービスある。

.

宣伝は100円から可能ということで、

手軽な広告手段が登場し、

広告主の裾野も今まで以上に広がるということか?

.

まだまだサービスが開始したばかりで

どうなるかわからないが、

未来の広告業界において

この「ポイント」という考え方は

一つのキーワードになるかもしれない。

SNSサイトのGREEなんかも、このポイントという

考え方が評価されて、上場時の株価評価に繋がったという

記事をみかけた)

.

国内若者層の圧倒的人気は博しているものの、

収益を上げられるビジネスモデルとしては

なかなか確立できないニコニコ動画であるが、

これを基盤に広告収益をあげられるモデルになれば、

今後、広告業界に新しい風をもたらす可能性も

ありうるのだろうか。



ニコニコ動画完全攻略マニュアル/田口 和裕
¥1,680
Amazon.co.jp

この広告不況の中、大学生・就活生での就職志望企業ランキングで、

広告代理店や、メディアへの意識はどう変わったのかみてみると、

.

博報堂 今年23位(昨年15位)

電通 25位(12位)

講談社 31位(37位)

集英社 43位(49位)

アサツーディー・ケイ49位(16位)

フジテレビジョン67位(101位)

朝日新聞社78位(87位)

.

広告代理店は軒並みダウンと

いったところか。

.

ちなみに日本放送協会は16位(31位)。

なお、1位はJR東海(4位)であり、

公に近い企業は不況にも強いということか。

.

逆にトヨタは去年6位から96位に大幅転落。

.

企業の、学生に対する長年のブランディングの努力も、

景気の影響には、すぐに左右されてしまうということか。

.

※なお、調査期間は09130日~216



マスコミ就職読本〈2010年度版 4〉広告・エンタテイメント篇
¥1,575
Amazon.co.jp

2011年以降、BS82チャンネルが追加されるとのこと。

(めちゃめちゃ増えるやん!)

.

総務省が3/23に締め切った免許申請には、

29の企業・団体が応募し、

「無料放送」を打ち出す米ウォルト・ディズニーや

米ニューズ・コーポレーションのテレビ部門「FOX」、

英公共放送BBCも名乗りを上げた。

.

ようやく単年度黒字に浮上した

キー局系BS局もさらに厳しい環境に

なることは間違いない。

.

ネットの成長により、

消費者へのコミュニケーションは

複雑になったが、

デジタル化に伴い、テレビそのものも

多様化するので、コミュニケーションは

一層複雑になるだろう。

.

ここまで複雑になると、

広告の正しいメディアプランなんて、

何が正しいかよりも、どんなプランが好きか

とか、そういった次元になりそうな気がする。

.

メディアプランの在り方も変わってくるかもなぁ。

.

※参考記事 2009/3/30付日経産業新聞



TVメディアの興亡―デジタル革命と多チャンネル時代 (集英社新書)/辛坊 治郎
¥693
Amazon.co.jp

ホリエモンの著書を読んで

もう一つ感じたポイントは、

「人」の関係の重要性である。

.

あくまで彼の著書に書かれた、

彼の言い分が全て正しいという前提に

基づいた場合であるが、

市場構造をひっくりかえそうとした者は、

現状の市場における既得権益を持つ者達の連携によって、

極端な話、市場から消されてしまうということである。

.

市場に競争論理が働くのであれば、

確かにこれは当然のことなのかもしれない。

所詮、市場というものを創り出しているのは

「人」である。

.

そのため、M&A等により市場をひっぺがえす場合には、

経営戦略・資金調達(マネーゲーム的戦略を含む)も

必要なのであろうが、

何よりも、旧来市場を構成する「人」、

特に財界人的な人達の動きを正確に捉え、

ケアして、敵に回さないことが

非常に重要なのかもしれない。

.

会社も市場も、「ヒト」で構成された集団である

というのは、やはり経営の原点かもしれない。



徹底抗戦/堀江 貴文
¥1,000
Amazon.co.jp

ホリエモンの著書「徹底抗戦」が

本屋に並んでおり、

パラパラとめくってみると、

彼の視点で、ニッポン放送・フジテレビ買収の件など

について書かれてあったので

購入したのだが、経営実務という視点で

なかなか面白かった。

.

内容で、特に気になったポイントが2つあったのだが、

まずはその1つめについて。

.

彼がニッポン放送(そしてその下に繋がっていた

フジテレビ)を買収しようとしたのは、

既存メディアとネットの融合だとか、

コンテンツをネットに活用するだとか

そういう目的ではなく、

テレビを使ってLivedoorのロゴを

視聴者の目に触れさせたかったためだという。

.

ここからは、彼の発言をそのまま受けて、

個人的な私の解釈ですが。

.

いわゆるテレビ局をはじめとするメディアの

人たちは、今後の戦略として、これまでの

コンテンツ制作能力で培った、

「コンテンツ力の活用」という話をよく掲げる。

.

しかし、ホリエモンはそのコンテンツには

余り魅力を感じなかったというわけだ。

.

そもそも既存のテレビ局等の人気のコンテンツというのは

テレビ局の莫大なるリーチと影響力があるおかげで

人気コンテンツなるわけである。

.

はじめに「強い影響力を持ったネットワーク」ありき

である。はじめにコンテンツありきでは決してない。

.

ホリエモンは、

「影響力あるネットワーク構築」の為に

テレビ局を買うのであって、コンテンツの活用の為に

買うのではないのだ。といったかんじであろうか。

.

マルチメディア化・デジタル化が進むに併せて、

メディアも広告代理店も「コンテンツ」というものを

経営戦略の一つに掲げはじめているが、

果たして、コンテンツという考え方だけで

儲かるビジネスなのであろうか?

.

例えば、これまでの電通は、

CMという映像コンテンツそのもので

儲けてきたわけではない。

吉田秀雄の頃からつくられた

都市地方の局とのネットワークの絆が

いまだ、儲けの大黒柱なのである。

.

ビジネスを急成長させるには

コンテンツよりもまずはネットワークありき

なのではないか。その結果として

コンテンツも収益を上げられる

構造になる。

.

既存のメディアネットワークを利用し、

新しいネットワークを構築しようとした

ホリエモンの著書から、そんなことを

考えさせられた。



徹底抗戦/堀江 貴文
¥1,000
Amazon.co.jp

なお、「主要広告代理店、売上ランキングより 2」で挙がっていた

代理店が広告代理店市場の全てではない。

.

外資系代理店はここ数年来、

売上を発表していないため、上記ランキングには

入っていないが、

JAPAN INTERNATIONAL ADVERTISING&MEDIA HANDBOOK ‘09

参照すると、以下の代理店が、実質はランキングに入る可能性が

あると考えられる。

.

50,00099,999百万円規模>

I&S BBDO Inc.

McCann Erickson Japan Inc.

.

10,00049,999百万円規模>

beacon communications k.k.

DDB Japan Inc.

GREY group

Ogilvy & Mather Japan KK

J.Walter Thompson Japan Ltd.

.

※各レンジ内における順序はアルファベット順

.

また,近年成長著しいネット系広告代理店も

市場構成を考える上では、当然無視できない。

.

主要ネット系代理店の売上規模を記すと、

サイバーエージェント 87,097百万円(089月期)

オプト 53,656百万円(0812月期)

サイバー・コミュニケーションズ 51,762百万円(083月期)

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム 41,907百万円(0811月期)

セプテーニ・ホールディングス 30,700百万円(089月期)

.

広告代理店市場においては、

外資系代理店のように売上規模でみるのではなく

収益性でみるべきであるという議論も当然あるのだが、

そもそも外資やネット代理店を一つにまとめた

俯瞰資料がなかなか存在しないこと自体、

業界の捉え方としてどうかなぁとも思う。