大手代理店の極端な寡占が進む広告市場において、
公正取引委員会はメスを入れないのだろうかと思って
調べてみると、彼らも問題には思っているようで、
業界調査を行い、2005年11月に報告書を出している。
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この報告書で何か状況が変わったかというと
何も変わっていないような気がするのだが、
内容自体はなかなか核心をついている。
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広告業界の取引実態に関する調査報告書(概要)
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.november/051108.html
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本報告書についての事務総長会見記録
http://www.jftc.go.jp/teirei/h17/kaikenkiroku051109.html#k051109_1
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一つ目のポイントは
①CMタイム枠(番組提供)においては、電通が大部分を確保していて、
かつ既存の広告主優先の原則及び、テレビ局からの情報開示少のため、
新規参入が非常に困難。
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二つ目のポイントはスポットについてで、
②スポット広告枠においては、大手広告代理店は基本報酬に加えて、
特別報酬も得られるため、販売する際に、中小代理店よりも値引きが
可能。
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三つ目のポイントとしては、
③取引の書面化が、契約書を含めほとんどなく、
非常に不透明な業界である。
その原因として、そもそも広告主が
広告の効果やコストへの意識が必ずしも高くない
ということを挙げている。
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読んでみて、まさに現状はその通りだという感想であるが、
では、中小の広告代理店にとっては、
報告書にあげられているように、
広告主における広告の効果やコストへの意識が
高まればいいかというと、
そうではなく、その意識を高めれば高めるほど、
①にあげられた、費用対効果の高い、「番組提供」や、
②にあげられた、より安いスポット枠
を広告主は求めるようになるのであり、
より大手への寡占化が進む話でしかない。
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そのため、行政の直接的な介入がない限り、
中小の広告代理店は淘汰されるばかりなのである
(現に、広告主の費用対効果意識はかつてより大幅に
高まっており、中小の代理店の淘汰は明確に進み、
大手代理店への寡占化も進行している)。
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インターネット広告取引については、
現在のところ問題ナシという報告になっているが、
本報告書発表ののちに、大手ネット代理店が
大手広告代理店に買収されていることであったり、
そもそもネット広告・テレビCMのそれぞれだけを売る時代は
終わっており、そのマス広告とネット広告の組み合わせをどう売るか、
そしてその中でテレビが軸になっているのだということを
考えると、今のところ問題ナシではなく、
既に、テレビ広告における寡占化が、
ネット広告市場にも連動して悪影響を及ぼしていると
解釈すべきではないか。
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そこで公正取引委員会が、
健全で公正な市場を確立するために、
迅速に行うべきことは
報告書を書いて、放置しておくのではなく、
以下のことではないか。
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□ テレビ局のCM枠の販売については、合理的・公平的・一貫的でかつ、
誰がみてもわかる透明性の高いものになるよう、強制的にメスをいれるべき
(長年、変わらなかった業界が、報告書だけで変わるわけがないのは自明)。
⇒例えば、広告主を奪われそうになった電通が、極端に広告枠の値下げを行い、
広告主の維持を行っていることが散見されることは、大きな問題ではないか
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□ そもそも代理店が広告枠を販売する際に必要となるデータ
(広告の費用対効果を考えるために必要となるデータ)を調査する会社が、
現在ビデオリサーチしかなく、独占市場で費用が高額なため、
中小代理店が手を出せない状況になっている。
しかもこの金額も、代理店によって価格が違うため不透明。
このビデオリサーチの独占状況にも、メスを入れるべき。