今回は期待しないでなんとなく観賞したけど、スケールの大きさが桁違い過ぎて絶賛せざるを得ないロシアの歴史アクション映画を紹介します。
ザ・コンクエスト シベリア大戦記
(ザ・バトルフィールド シベリア戦記)
主演:イリヤ・メラニン
出演:ユリア・マカロワ/アンドレイ・ブコフスキー 『フューリアス 双剣の戦士』/パーヴェル・タバコフ/ドミトリー・ナザロフ 『オーケストラ!』/アガタ・ムセニーチェ/ドミトリー・ジュゼフ 『ショウダウン 不死身の弾丸』/エフゲニー・ディアトロフ 『バタリオン ロシア婦人決死隊 VS ドイツ軍』/フィリップ・ラインハート 『エアポート2010』『スターリングラード 史上最大の市街戦』/イバン・コレシニコフ/ウルフギャング・チェルニー 『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』/イェカタリーナ・ガセーバ 『バレット&チェイス』
・あらすじ
ボルタヴァの戦いでロシアはスウェーデンに勝利し、1万人以上のスウェーデン人捕虜をシベリアに送っていました。同じ頃、東方ではジュンガルと清が衝突し、清の軍隊を撃破していた。これにより清は他国との協力が不可欠となっていました。ロシアとジュンガルを敵対させようとする動きがあったのだが、いずれも失敗に終わっていました。当時清には『パイザ』と呼ばれる金の板があり、一国の統治者に手渡されていた。受け取った国は清が戦争をする際に協力することになるのだ。
ロシア帝国 トボリスク。市場で清の者たちはガガーリン総督に総督就任祝いとしてパイザを渡そうとし、通訳を介したうえで自国である清がロシアとの交易をやめるとチラつかせます。総督が理由を尋ねると、彼らはジュンガルのせいだと応え、パイザの使用目的を話します。しかし皇帝のピョートル・アレクセイヴィッチ帝は北方戦争中であり、総督はジュンガルに攻撃しないと告げますが、清の者たちは交易を絶ちきると言い出し、賄賂とパイザを渡しました。仕方なく総督はピョートル帝を説得することにしました。総督はサンクト・ペテングルクの造船所にいたピョートル帝にそれを持ち出すが、取り合ってくれず、総督に資金調達するよう訴えます。
その後、宮殿でピョートル帝が軍隊や貴族の前に顔を出している間、隙を狙って総督がエカチェリーナ女王に賄賂を渡し、協力するよう仰ぎました。しかし皇帝にその事がバレてしまい、皇帝は総督を問い詰めますが、総督は咄嗟に金を皇帝に見せたうえである場所(ヤルカンド?)に黄金の山があるのではないかと告げます。その話を聞いたピョートル帝は仲間と笑い話をしていたイヴァン・デマーリン少尉に声をかけ、彼が戦略と戦術が専攻であると知ると、シベリアの国境の川、トボルに遠征に向かうよう命じ、デマーリン少尉は断ろうとしますが、皇帝は受け入れず、他の十数名の兵士にもそれを命じます。総督は兵数が少なすぎると進言しますが、皇帝は彼を黙らせ、「この遠征はあくまで平和的に行わねばならん。」と言います。
翌日、地理に詳しい商人のセミヨン・レメゾフとそのスウェーデン人捕虜のヨハンが建築現場をしていると、総督がセミヨンの前に現れます。総督が遠征隊が金塊を探すためにヤルカンドのほうまで行くと伝えると、セミヨンは到着まで3か月かかるため、1か月かけて到着できるカラ海峡付近の要塞で冬を過ごし、草原地帯を抜けたとしても8週間かかると進言します。そのうえで彼はヤルカンドの金塊はあくまで噂で誰にも見たことがないと告げ、その任務に対して苦言しますが、総督は「これは皇帝命令だ。」と言います。同じ頃、セミヨンの息子、ペチカは若い軍人を好奇の目で見つめ、ヨハンは1組の夫婦が言い争っているところを目撃します。
デマーリン少尉たちを指揮するイヴァン・ブッフホルツ大佐は彼らに夏頃までにトボリスクの商人の家にそれぞれ滞在するよう命じます。そのなかでデマーリン少尉はセミヨンの家に滞在することとなり、セミヨンやペチカたちは快く歓迎しましたが、少尉は彼らの使用人であるヨハンに対して冷たい視線を送り、その一方でセミヨンの娘、マーシャとデマーリン少尉はお互いに一目惚れしていました。その後、セミヨンらは家族全員で食事しますが、少尉は「敵と一緒には食えません。」と言い放ち、ヨハンは気を遣って家を出てしまいます。セミヨンは少尉に「俺の客に何てことをしてくれた!言っておくがここは俺の家だ!」と怒鳴り散らします。
一方、ヨハンは先程揉めていたあの夫婦をまた目撃していました。その妻のブリギッタは酒豪で倒れている夫のジマーを家に運ぶようお願いし、彼は彼女と共にジマーを運びます。ブリギッタは礼を言うと、ヨハンと彼女はお互いに自己紹介し、ヨハンはスウェーデンに必ず帰るという旨を話します。するとブリギッタは突然独りになり、泣き出し始めました。ヨハンでが話しかけると、ブリギッタは「もう疲れたわ。私も帰りたい。」と言います。開戦から13年経ち、彼女はスウェーデンに帰ることを強く望んでいたのです。ヨハンは一緒に祖国の家に行こうと彼女に告げ、彼女は応えるようにヨハンに抱きつきます。
マーシャはセミヨンに怒られて外の船着場にいたデマーリン少尉にパンを届け、「空の天使を見た人には幸運が訪れる。」と教えます。青空に天使の形をした雲が浮いており、少尉は意地を張って彼女に食べないと口にしますが、彼女が立ち去ると、パンを食べ始めるのでした。
数週間後、ペチカは軍隊に入隊し、太鼓の担当を任されることになります。デマーリン少尉が新兵に太鼓のリズムが信号の役割を果たすとして、それぞれの指示に合わせた太鼓のリズムを教えますが、新兵は習得することができません。そこで少尉は「難しいなら歌詞をつけてみろ!」と言い、ペチカは「雄牛よ、角でバンと突け!」と歌詞を付け加え、少尉はその歌詞に沿って太鼓を叩くよう皆に教えます。そんななか、セミヨンはその光景を見て息子が入隊したことを知り、息子に除隊するよう訴えます。そこに少尉が「これは名誉なことです。」と止めようとしますが、父親の怒りは収まりません。ペチカは「もう決めたんだ。僕はこの遠征に参加する。」と言い張り、セミヨンは少尉に家を出ていくよう訴えるのでした。
季節は冬になり、トボリスクには粉雪が降り積もっていました。マーシャとデマーリン少尉の友人、オジャフロスキーは広場を練り歩き、ブリギッタは露店の酒場で酒を飲む夫の側にいました。マーシャはデマーリン少尉と出会い、彼とオジャフロスキーに持ってきたパイを食べさせ、ブリギッタは夫が目を離してる隙に飼い犬のヨシーと一緒に散歩をし、ヨハンに会いに行きました。しかし、2人が親しげに話してる隙にヨシーは町の教会のほうに行ってしまい、ヨシーの前に偶然教会を追い出された大男が現れると、煩わしいと思った大男は剣を振り下ろしてヨシーの脚を斬りつけました。その様子に対して怒ったヨハンは大男に殴りかかり、町民がヨハンを止めに入った末に袋叩きにしますが、ブリギッタが仲裁に入り、ジマーは彼女に乱暴な態度を取る町民を腕力でねじ伏せます。しかし彼女とヨハンの関係がジマーにバレたことで彼女を殴り、ヨハンはジマーに立ち向かうも、大男は「スウェーデン人をやっつけろ!」と町民をけしかけ、事態は悪化します。ヨハンも広場にいて、騒動でとち狂った町民と乱闘します。そこにデマーリン少尉が現れ、ヨハンを助けたあと、騒動を収束させようとしますが、町民により負傷し、ヨハンが彼を助けると、町民と剣術で戦います。やがて総督と軍隊が来たことで事態は沈静化します。総督の命令でヨハンは逮捕されることになります。(あの犬がどうなったかは不明。)
その後、総督は原因は先に大男を殴ったヨハンが悪いとして、彼を処刑するよう命じますが、ブリギッタはヨハンを処刑しないよう懇願します。総督はヨハンら3人の男女関係が問題だと察し、彼女の言葉を受け入れることにしました。彼女が去ったあと、更に少尉はヨハンを入隊させたらどうかと提案し、ブッフホルツ大佐が遠征でスウェーデン人部隊を指揮するよう命じます。暫くして総督はヨハンに尋問すると、ヨハンは「私が始めたことですが、暴動ではありません。」と主張し、総督は部下を部屋から追い出すと、遠征に加わるよう命じたうえである頼み事をするのでした。
そして夏、船着場ではセミヨン大佐に地図で行き方を教えたあと、ペチカを見送りブリギッタは夫から謝罪の言葉を聞かされていましたが、既に夫に嫌気が差していました。ヨハンはブリギッタに別れの言葉を告げ、マーシャは少尉にスカーフをプレゼントし、オジャフロスキーがその場にいた彼女に「別れのキスも無しか。」とからかうと、マーシャは船に乗ろうとしていた少尉の唇を奪い、頬を赤らめました。デマーリン少尉たちは船でヤルカンドへと向けて出発します。
その道中、少尉は騒動で助けてくれたヨハンに礼を言い、彼と握手を交わします。少尉たちが談笑していると、大佐はロシア船を指揮するヨハンとスウェーデン船を指揮する少尉に船を漕いで競争するよう指示し、両者は競い合いますが、その最中にペチカが川に落ちてしまいます。少尉が彼を助けると、川に魚がいることが分かり、兵士たちは魚捕りしようと盛り上がります。
カラの要塞に到着し、要塞で1か月過ごしますが、ペチカは特に大きな出来事が起きなかったため、退屈に感じていました。少尉がペチカら部下と共に要塞の周辺を歩いていると、ジュンガルの指導者ザイサン・オンホンダイたちが訪問してきました。少尉たちは彼らを要塞に案内し、ブッフホルツ大佐は案内して手の内を見せる事で平和を望んでいると説明します。オンホンダイは「仲良くやろう。」と言って大佐に笑顔を見せ、少尉はヨハンにオンホンダイを紹介
します。
そしてその夜、ヨハンが要塞から失踪していると判明し、少尉たちはくまなく彼を捜索していましたが、彼は要塞から脱走した挙げ句、ジュンガルのもとに行って手土産に総督から盗んだパイザを渡しました。だが、受け取ったオンホンダイはロシアと清が手を組んだと思い、「やはり戦争したかったのか!」と怒りを露にします。ヨハンは砲兵で平和を望んでると自己紹介し、彼を味方として迎え入れます。一方、少尉の過度な心配をよそにペチカと他の兵士は捜索に当たりますが、ジュンガル奇襲をかけ、ペチカたちはオンホンダイたちの人質にされてしまいます。ロシア軍に扮したオンホンダイたちは要塞に入って襲撃しようとし、ペチカは警告のリズムを太鼓で鳴らして少尉に知らせようとしますが、少尉が部下に知らせたのが悪かったのか、ペチカや他の兵士は殺されるのでした。
翌日、大佐たちはペチカらを埋葬しましたが、少尉は彼を救えなかったことを後悔していました。露の兵士たちは奇襲の真意を聞くため、ジュンガルの野営地を訪ねましたが、兵士はゲルから出てきたヨハンを見て彼が裏切ったことを知ります。その後、門の前には兵士が置いたロシア兵の生首が戻されていて、それを見た少尉は衝撃を受けるのでした。
その頃、セミヨンは総督のもとを訪ねていました。総督の部屋には総督の他にイーゴリという要塞からの連絡係がいて、イーゴリはペチカがジュンガルに殺されたと彼の父親に報告します。更に総督は自国の軍がジュンガルがいるから要塞に出られず、物資不足だと話し、資金不足で物資隊は送れないと伝えます。ペチカの訃報はマーシャやその母親でセミヨンの妻にも伝わり、彼の周りの商人たちは物資隊を送るよう望んでいました。マーシャの母親、キャサリンはセミヨンが要塞に行くべきだとし、セミヨンは反対しますが、キャサリンはペチカの洗礼式の時に使った蝋燭を彼の墓に供えて灯すよう頼みます。セミヨンは「あの大バカ野郎を殺してやる!」と少尉に対して強い憎しみを訴えますが、彼を好きでいたマーシャは「それじゃあ私、パパから逃げるしかないじゃない!」と訴え、救援部隊に同行したいと望みました。資金不足のため、民衆が何とか物資を調達することができ、総督は順調に物資隊の準備を進めました。セミヨンやマーシャの他にヨハンの恋人、ブリギッタも物資隊に同行します。そして物資隊のソリは出発し、マーシャはブリギッタと同じソリに乗っていました。マーシャが恋人のデマーリン少尉に会いたいから要塞に行くと伝えると、ブリギッタも自分も恋人に会いたいから行くと告げ、「愛があるところに行かなきゃ心が死んでしまう。」と言います。
しかし、要塞に来たのは物資隊ではなく、マーシャたちを捕虜にしたオンホンダイとヨハンたちでした。ジュンガルが物資を全て奪い、部隊の兵士を殺していったのです。襲われたセミヨンが目覚めると、生存者はどこにも見当たらず、死んだ兵士だけが雪原に横たわっていました。
その一方、マーシャたち捕虜を連れたヨハンはブリギッタを自分の馬に乗せ、ジュンガルの野営地に戻っていました。彼女はヨハンとの再会を喜び、ヨハンは自由になれると信じてジュンガルに仕えてると伝えます。2人は野営地にあった馬車の中でイチャつきますが、オンホンダイはその様子を見つめ、不敵な笑みを浮かべるのでした。
その頃、セミヨンは杖をつきながら広い雪原を自力で歩き、何とか要塞に辿り着きます。少尉は申し訳無さそうに彼を迎え入れ、セミヨンは墓場に行くと、ペチカの墓に火を灯しました。デマーリン少尉は彼に近寄り、ペチカを入隊させてしまった自分が彼を死なせてしまったことを謝罪すると、セミヨンは「もういい、恨みはしない。息子は墓に入り、娘は捕虜になった。」と応えました。セミヨンは軍隊にマーシャたちの救出をお願いしますが、要塞は歩兵しかなく、ジュンガル側は騎馬兵で有利なため、不利な状況で良い策はないと結論づけます。
そこでデマーリン少尉は大佐には何も言わず、1人で野営地に乗り込みます。オンホンダイらが逆らう捕虜を殺すなか、少尉はオンホンダイに剣を突き立てて人質にし、捕虜の解放を求めると、彼や部下のバタは要求を受け入れました。しかしそこにヨハンが現れると、少尉は彼に裏切られてしまい、オンホンダイの部下から暴行を受けた挙げ句、深い穴の中に閉じ込められます。
その後、ヨハンは自由の身になり、恋人と誰にも邪魔されずにいれると思っていましたが、オンホンダイは「女を買いたい。そもそもあの女はあの物資隊にいた。だから俺の捕虜だ。」と言い出します。当然ヨハンは拒絶しますが、オンホンダイは彼を拘束し、ブリギッタを自分のゲルに呼び出します。そして彼はブリギッタを弄ぶと、ブリギッタは潔く裸になって受け入れるのでした。ヨハンは少尉が閉じ込められている穴の中に監禁され、2人は穴の中で喧嘩しました。
暫くして、清に侵攻を続けていたドンドボの部隊が野営地にやって来ます。要塞にいた大佐たちもその群れに気づき、穴にいた2人は疲れきったあと、少尉がヨハンに「なぜここにいるんだ?」と訊ねると、ヨハンは「ガガーリンに聞けばいい。これはヤツが仕組んだことだったんだ。金の板、あれが原因で戦争になってる。」と説明しました。それを聞いた少尉は「それが事実なら皇帝に知らさねば。戦争を止めないと。」と告げます。実は総督はヨハンが暴動で逮捕された翌日にジュンガルの指導者にパイザを渡すよう命じており、総督は清との交易を失うのを恐れてわざと皇帝に金塊がトボルにあると言い、軍隊を出させた上でロシアとジュンガルに戦争するよう仕向けたのです。ドンドボの部隊が野営地に来たことで清を守った事になります。オンホンダイは族長のドンドボにパイザを渡し、事情を報告しましたが、ドンドボは「皇帝では総督がこれを持っていた?妙だと思わなかったのか?総督ごときに踊らされてまんまと戦争を始めたとは。」と叱咤し、騙されていたことを知るのでした。大佐たちはジュンガルと戦う決意を固めます。
族長は確証を得るため、デマーリン少尉を拷問器具にかけますが、少尉は「皇帝の命令を直接聞いた。絶対に戦争を始めるなと。平和を望んでいる。」と事実を話します。それを聞いたドンドボは少尉を殺そうとするオンホンダイを止めて彼を信じると、ロシア人には要塞から撤退するよう指示したうえで「お前たちがこの和平交渉に同意するなら大砲1発撃って知らせろ。」と話し、パイザを渡しました。解放された少尉は馬で要塞に戻ると、マーシャは再会を喜び、大佐は少尉を英雄と称えました。そして少尉は族長に言われた事を大佐に報告し、大砲を1発撃つと、音を聞いた族長は「奴らはここを去る。我々も行こう。」と告げます。その一方、ドンドボは無益な戦争を起こしたオンホンダイを鞭打ちの刑にし、「ロシアとの国境に近づくな。私の前にももう2度と現れるな。」と告げたうえで檻に閉じ込めました。
ドンドボの部隊は自国に帰っていき、要塞にいた大佐たちはそれを確認し、自国に帰れると安心しました。ところが、バタの説得をよそにオンホンダイは帰ろうとする砲兵のヨハンに要塞の門を破壊すれば恋人を自由にすると言い出し、ヨハンはまんまと受け入れました。彼はロシアに報復したうえでヨハンが門を破壊した時点で彼を殺そうと画策していました。
その後、ヨハンは恋人と祖国に帰るため、ジュンガルの兵士と共に要塞に乗り込みました。要塞では撤退準備が行われていましたが、ロシア兵が安心している隙に襲撃し、ヨハンが大砲台の1か所を占拠しました。大砲の音を聞いた少尉たちは砲台に行き、ヨハン側と大砲の撃ち合いになります。少尉は裏切り者のヨハンが来たことに気づき、ヨハンは兵士から撃ち続けないと恋人を殺すと脅されます。彼は隙を突いて要塞の門を開き、その直後にジュンガルの騎馬兵が突入します。騎馬兵はそこにいた民衆を殺してから武器庫を破壊し、小屋に隠れたロシアの狙撃兵がなんとか騎馬兵を仕留めます。少尉はヨハンと大砲の撃ち合いを続けますが、砲弾で吹き飛ばされ、意識を失って倒れます。ヨハンは悲しげな顔で彼を見つめ、オジャフロスキーが駆け寄ると、少尉は息を吹き返しました。
そこへ要塞内にある稜堡からジュンガル部隊が突撃してきます。大佐たちはそこに来たジュンガルと戦闘し、要塞橋のロープを切って妨害します。オンホンダイ率いる騎馬兵は門から入り、ロシア側が入ってきた騎馬兵と戦闘を繰り広げるなか、セミヨンら民衆が門を塞いであとから来たバタ率いる騎馬兵を食い止めます。少尉が生きていたことにホッとしたのか、様子を見たヨハンはジュンガルの兵士に「役割はもう果たした。門は開けただろ?」と言いますが、兵士は「撃たないとお前の女を殺す。」と
再び脅しました。セミヨンら民衆も必死で戦闘し、ヨハンは側にあった火樽を門の前に投げ、兵士が放った火矢、更に別の兵士が松明で火樽に着火させたことで門を破壊に成功します。
ロシア側の民衆と兵士はオンホンダイ率いる部隊を追い詰めましたが、オンホンダイは部下に合図を出しました。すると向こうから無数の矢が放たれ、多くのロシア人が命を落とします。幸いデマーリンやセミヨンは避難したことで自分の命を守ります。その直後、バタ率いる援軍の部隊が乗り込み、少尉は再びヨハンと撃ち合いを繰り広げた末、ようやくヨハンを倒します。オジャフロスキーは追い詰られていたマーシャを敵兵から救うと、「君はとても綺麗だ。」と告げ、彼女は頬にキスしてから避難しました。(その後オジャフロスキーは戦死した模様。)
そして少尉はオンホンダイと1対1で戦闘しますが、苦戦を強いられ、オンホンダイは「お前のせいだ。お前のせいで鞭打ちされた!お前のせいで故郷に帰れなくなった。」と彼に鞭打ちしながら報復しにきたことを訴えます。オンホンダイは止めを刺そうとしますが、気絶から立ち直ったヨハンが彼の気を引いてる隙に少尉がオンホンダイの腹を突き刺し、ヨハンが大砲で止めを刺して彼を倒しました。助けたヨハンは笑みを浮かべ、バタは直ぐ様退却命令を出しました。
大佐はバタに「一体これはどういうことなんだ?」と聞きますが、バタは「これは私が始めたのではない。だがもう終わらせた。」と言って去っていきました。セミヨンは娘の無事を喜び、少尉のところに行くよう促します。無用無益な戦いは収束しましたが、和平交渉があったにも関わらず、ロシア側には多くの命が失われていました。
数か月後、デマーリン少尉から話を聞いた皇帝は総督を絞首台にかけました。彼は「処罰はするが命は助けたい。「罪を犯した」と言え。」と迫りますが、総督は「国のためとはいえやり過ぎたのです。修道院に送ってください。」と話し、皇帝は非情にも総督を処刑しました。
後日、宮廷で皇帝はデマーリンに少尉から大尉に昇進させると告げました。そのうえで大尉に「護衛、宮廷、それから戦争、何がいいんだ?」と聞くと、デマーリンは戦争のない平和な世界を望むと応え、ピョートル帝はその場にいた貴族の前で演説したあと、大尉を抱き締めました。
数年の歳月が流れ、デマーリン大尉はレメゾフ家に帰宅しました。デマーリンとマーシャの間にはペチカという息子がいて、彼らはセミヨンとキャサリンと共に暮らしていました。空には天使の形をした雲があり、一家はその雲を幸せそうに見つめます。デマーリンとマーシャは5人の子供に恵まれ、トボリスクで生涯を過ごし、セミヨン・レメゾフはロシアの地図作成史に貢献し、シベリア地図帳と年代記を遺して80歳で他界します。イヴァン・ブッフホルツはオムスク市を建設し、少将の位で退役すると、70歳で永眠し、ヨハンとブリギッタは18年後にスウェーデンに戻り、ジュンガルについての回顧録などで有名になりました。
THE END
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感想
この映画はイゴール・ザイツェフ監督、アレクセイ・ペルミャコフ、アレクセイ・イヴァノフ脚本による歴史アクション大作。18世紀のシベリアを舞台にロシアとジュンガルの戦いを描いた作品です。
実は2020年3月にレンタル開始になる作品のなかではミラジョボの中国映画とほぼ同じぐらい期待していた作品なんですが、歴史映画というジャンルものなので観たときに話が飲み込めないのではないかと思い、スルーしようかどうか迷っていた作品でした。それで期待値を下げて観賞してみた結果、少し言いたいこともあるんだけど、ストーリーは分かりやすく、アクションシーンはかなり迫力があり、物凄く面白かったです。この映画も言い過ぎかもしれないけど、また今年ベスト級の1作に出会ってしまったなあと感じました。
物語は主人公であるデマーリン少尉の視点が中心になっていて、群像劇としてそれぞれの人物描写を楽しむというよりもデマーリンらがいかにしてジュンガルと戦ったかどうかに焦点を当てていき、デマーリンとマーシャ、ヨハンとブリギッタの恋愛模様、セミヨンとその娘と息子の家族関係を描写しつつストーリーが進行していく構成となっていました。勧善懲悪のエンターテイメント作品としては歴史映画に好き嫌いがあるにせよ、とても話が飲み込みやすい作品です。
最大の見所はクライマックスでのカラの要塞の戦闘シーンでしょうか。雪原にある要塞で戦うのでVFX技術を駆使したシーンは少なく、大砲による火薬、槍や剣を使ったアクションが特徴的だったのですが、非常にテンポが良く、大砲の爆発音は迫力があり、なおかつロシア側の軍隊と民衆が力を合わせて戦うため、目が離せなかったです。ジュンガル側が弓矢の雨を降らせてロシアを攻撃するシーンはVFXが効果的に使われていて、圧巻でした。また配給元はアルバトロスとはいえ、ロケーション、エキストラ、セットの作り込みなどといった細部がしっかりしていて、かなりロシアのブロックバスター映画として頑張っているなと感じました。
ただ、ストーリーに関しては個人的には不満に思うところがあったのがこの映画の短所だと思いました。色々と突っ込むとキリがないのですが、まず前半での教会前の暴動の描写なんだけど、事の発端は明らかにブリギッタの飼い犬を負傷させたのが問題なのに飼い犬のヨシーがその後一切出てこなかったのが疑問でした。暴動でのアクションシーンではヨシーが忽然と消えてたし、暴動の原因がブリギッタとヨハンの男女問題として処理されてたのもいまいち納得できませんでしたね。加えてブリギッタの夫、ジマーに関してはブリギッタとジマーの決着が無く、後半に至ってはジマーは数秒だけ物資隊の同行を決めた彼女を見送る描写しか無かったので全体的にブリギッタとジマーの夫婦関係はちょっと消化不良でしたね。
あとはヨハンが準主人公という立ち位置を果たしているのにも関わらず、後半ではその立ち位置が中途半端な感じになってるのが気になりました。細かく言えば、終盤にヨハンは恋人のために脅されて敵側に回ってるのは分かるんだけど、オンホンダイが「門を破ったら直ぐに殺せ」と言ってたのに兵士に狙われてる様子が一切ないし、ヨハンがデマーリンが倒れたときに悲しむ場面はあったとしてもジュンガルに命を狙われてるとされる心理描写がないから深みがないんですよね。なのでヨハンとデマーリンの信頼関係を深く掘り下げていたり人質にされたブリギッタの描写を入れたりして緊迫感を出していればもっと良かったんだけど、ヨハンがオンホンダイに止めを刺すカタルシスが若干欠けていて惜しかったですね。他にはオンホンダイがロシアに報復する動機が説明不足だし、ヨハンがいい活躍ぶりを見せたのにエンドロールでさらっと彼とブリギッタのその後を紹介するのはさすがに薄味過ぎるような気も無くはないですし、突っ込みどころや不満なところをあげるとキリがないです。それでもジュンガル側の視点は少々説明不足だったんだけど、ヨハンが止めを刺す辺りは滅茶苦茶興奮できるし、残酷ながらも黒幕であるガカーリン総督も死んでから映画が終わるので本当にスカッとさせられました。
ということで、この時期なので2020年4・5月の劇場公開映画が一気に公開延期になってしまったのですが、劇場未公開であるこの映画と出会ったことで未公開映画の可能性をまた見つけてしまったと思っていますし、作品の良し悪し関係無くエンタメ映画に力を入れているロシアの底力を感じることができました。ストーリーに対しては上手いとは言い難い作りで、当時のロシアの背景を知ったほうがなお面白い作品だったのですが、前半での暴動シーンやクライマックスでの要塞でのバトルシーンは圧巻だし、出演者の衣装デザインやセットの作り込みはかなり凝っていたし、何よりもラストは非常にスカッとさせられるエンタメ映画としては色んな人にオススメできる1作でした。是非とも自宅でゆっくりとレンタルや配信で観賞してみてください。
訂正:一部の登場人物の名前を修正しました。申し訳ございません。(4月15日改訂)