映画「MUD-マッド-」

9/21(月)23:00~25:30 (実時間130分)、J:COMのムービープラスHD (CH450)で観た。



【受賞】

2012年5月、第65回カンヌ国際映画祭・・・プレミア上映、コンペティション部門でパルム・ドールなど主要賞にノミネート。
2013年1月、サンダンス映画祭・・・上映。
2013年11月、第29回インディペンデント・スピリット賞・・・監督賞にノミネート、ロバート・アルトマン賞を受賞。

日本では、昨2014年1月にヒューマントラストシネマ渋谷で「未体験ゾーンの映画たち」(未公開作を連日上映)シリーズ企画でのみ上映した作品。


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【原題】

MUDとは、泥・泥濘(ぬかるみ)の原義。主人公の逃亡犯マッドの名前であるとともに、共演の子役エリスのメタファー(暗喩)。


*


★ 感想

エリス少年の冒険、友情、初恋と失恋、両親の不和と離婚、
マッドを始め様々な境遇の大人たちとの出会いを通じた成長の軌跡など盛り沢山に描かれている。
只、総じて登場する女性像は冷ややか。

全体として米国南部のスローテンポで風情を持って流れるが、アクションシーンもありヒーマンもあって、心に沁(し)みて慕情さえ感じた。




【スタッフ】


脚本・監督: 
ジェフ・ニコルズ
・・・2011年の「テイク・シェルター」で脚光を浴びた新鋭。マーク・トウェイン「トム・ソーヤーの冒険」「ハックルベリー・フィンの冒険」の熱烈ファン。

音楽: デヴィッド・ウィンゴ
撮影: アダム・ストーン
編集: ジュリー・モンロー

製作年・国: 2012年、米国
製作会社: エベレスト・エンターテインメント、ブレース・コーヴ・プロダクションズ、フィルムネーション・エンターテインメント
配給・公開:
ライオンズゲート、 ロードサイド・アトラクションズ・・・カナダ2012年5月、米国2013年4月
東京テアトル=アース・スターエンタテインメント・・・日本2014年1月

主要ロケ地: ニコルズ監督の故郷アーカンソー州南部等で2011年9月~11月






【キャスト】


マッド: マシュー・マコノヒー・・・指名手配犯。

トム・ブランケンシップ: サム・シェパード・・・マッドの育ての親、元海兵隊員。

ジュニパー: リース・ウィザースプーン・・・マッドの恋人。 


エリス: タイ・シェリダン・・・14歳の冒険好きの少年。

シニア: レイ・マッキノン・・・エリスの父。魚の訪問販売業。
メアリー・リー: サラ・ポールソン・・・エリスの母。


ネックボーン: ジェイコブ・ロフランド・・・冒険好きのエリスの親友。
オーディションにより地元アーカンソー州イェール郡出身のジェイコブ君が選ばれた。

ガレン: マイケル・シャノン・・・ネックボーンの叔父。その日暮らしで甥・ネックボーンの面倒を見て来た。


メイ・パール: ボニー・スターディバント・・・エリスが初恋をした上級生の少女。

カーヴァー: ポール・スパークス・・・被害者の兄。

キング: ジョー・ドン・ベイカー・・・被害者とカーヴァーの父、殺し屋のボス。





【あらすじ】


ジュニアハイスクールに通う14歳のエリスは、アメリカ中南部・アーカンソー州のデルタ地区に在る田舎町に住む。
自宅は、ミシシッピ大河の河辺に停泊した急場拵(ごしら)え==違法==のボートハウス。
父シニアは、川魚を獲っては岡で売り歩いている。
が、息子のエリスは、そんな父の仕事を不満ではなく、トラック荷台に乗って手伝っている。
一方、母メアリー・リーは、そんな恰好悪い暮らしが嫌で、夫婦仲は冷え切っている。


エリスは、夏休みの或る朝、親友のネックボーンと冒険ごっこをしたいため、家を抜け出して中州の小島に出かける。 
小島で秘密基地を作ろうかと探検して回ると、森の木の上に大きなボートが乗り上げているのを発見する。
大洪水の時に引っ掛かったのだろう。
興奮に胸を躍らせながら2人は、木を登りボートに乗り込む。
ところが、真新しいパンや足跡が見つかって、既に先を越されていたことに気づく。 


ガッカリして島を立ち去ろうと河岸に着いた時、ボートで見た足跡の主、マッドと出会う。
マッドは、浮浪者紛(まが)いの汚れ切った服装、前歯も欠けている。
呪(まじな)いや護符を信じる敬虔さを覗かせ、かと思えば拳銃を持ち危険な臭いも漂わせ、自信に満ちた振る舞いで堂々としている。
しかも、食べ物と引き換えに、彼の隠れ家にしている件(くだん)のボートを渡すことを提案して来た。 
ネックボーンは、マッドのことを怪しんで躊躇(ためら)う。
一方のエリスは、危険でありながら興味を持たずに入られない彼の魅力に押され、食べ物を渡す。
狼眼石が縫い込まれたシャツ、十字の靴跡のセブンリーグブーツ、幸運の鳥ナイチンゲール、蛇のタトゥー、等々、何もかもが新鮮に映るのだ。
純粋に人助けをしたいと望むエリスに負けて、ネックボーンは、交換条件として45口径拳銃を譲ることを提案したところ、マッドはアッサリ飲んだ。


そんな中、街道で警察の検問が行われ、エリスはマッドが逃亡中の指名手配犯であることを知る。
島に戻りマッドに知らせると、彼は、テキサス州で恋人ジュニパーに言い寄って関係を持ち妊娠させた男を暴行、争っているうちに彼女に暴力を振るった仲間の男を殺害し、警察と賞金稼ぎに追跡されていると打ち明ける。
逃げ伸び、育ての親だった元海兵隊員の叔父トムを頼って匿(かくま)ってもらおうと考えていた。
マッドは、トムのことを"暗殺者(スナイパー)"と揶揄(やゆ)しているが、今は、川底に沈んでいる廃棄物を漁る生活。そんな"アンクル・トム"のことは慕っている。


ジュニバーは、幼馴染みでもあり命の恩人でもあり、何よりも自分の最愛の女性だと言う。
そして今は、自分を追って近くの
モーテルに身を寄せているが、彼らに監視されていると知る。
賞金稼ぎの中には、被害者の父であり殺し屋の
キング、兄のカーヴァーもいた。
エリスとネックボーンはマッドに協力し、ジュニパーへの伝達係を務めることにする。
が、カーヴァーがジェニパーにマッドの居所を聞き出そうと乱暴をしているところに出くわし、目をつけられてしまう。



*


[終盤のキーワード]

マッドの最愛女性ジェニパーが、マッドのことを「嘘吐き」呼ばわり、監視に疲れ「逃亡犯と逃げ回るなんて嫌」と吐き捨てる。火照(ほて)った女体を持て余し余所の男とイチャつく。
エリスは、尊敬の念が芽生えていたマッドに、このことを逸早く伝えようと走る。


両親の不和は進行して崩壊し、母メアリー・リーの方が扶養権を得る。父シニアからの寂しい別れの言葉。

思いを寄せる年上の女子メイ・パールに、同級生たちの目を気にしたのか? 振られてしまう。



*


エリスは、夏の日々に沢山のことに遭遇し、多くを学ぶ。
信じること、信じ合えることの大切さを。