看護師として
ふたつ目の総合病院で働いていた時のこと。
私は、循環器内科（心臓）と
呼吸器内科（肺）の混合病棟で勤務していました。
医療者の方ならわかると思うのですが...
えらい組み合わせです。（笑）
特に冬は、毎日戦争でした。
ピリピリしてたなぁ...
勤務後は、腑抜けでした。
心臓と肺は、
切っても切り離せないくらい密接に関係しています。
まぁ、他の部分もだけど。
そんな病棟で働いている時、
ある患者さんが入院されていました。
肺の慢性的な疾患のAさん。
ステロイドの治療をしたり、
抗生剤を使ったり、
色んな治療をしましたが、徐々に状態は下降していきます。
私が夜勤の時に、
ナースコールがありました。
病室にトイレがあるものの、
そこまで歩いていくだけでも息が切れてしまう。
動く時は酸素の量を増やしても、
そうなってしまいます。
トイレまで約３メートル。
その３メートルがものすごく遠い。
トイレが終わって、
ゆっくりゆっくりベッドまで戻ってきて座り、
肩が揺れるほどの呼吸を、
深呼吸をしながら整える。
指先につけた器械に出る、
体の酸素の数値が上がっていくのを、
必死に必死に呼吸をしながら見つめるAさん。
私はAさんの背中をさすり、
楽な呼吸法をお伝えしながら、そばで待つ。
呼吸が落ち着き、
やっと笑顔が出た時にAさんは言いました。
少し寂しげな、少し諦めのような。
そんなお顔で言いました。
こんなにしんどいのが続くなら、
もう死んだほうが楽かな。
私は、
患者さんのそばに膝ついて座り、
全く何にも言えず。
ただただ、
うなづいて体をさするだけ。
３０歳手前の私が、
この人に何を言えるんやろう...
本当に何も言えなかった。
適当な言葉もかけたくなかったし、
でも、その言葉を言ってくれたAさんを
1人にはしたくなかった。
その時の私のできる精一杯だったと、今は思います。
でも当時は、
根本、自分に自信も何もなく
さらに無力さばかり感じて、
看護師としての自分の意味が
見出せなくなるようなことも多々ありました。
私、何やってるんやろ。
脳外科病棟とは全く違う看護。
もがきながら苦しみながらも
今につながる大切なことを沢山学んでいました。
今は、こう思います。
死にたいってことは、
もっと楽に生きたいってこと。
生きたいって望みだった。
死にたいの言葉の中には、
その人の精一杯の
その時の望みがあるということ。
どんな思いにも奥の奥には、
【ひとすじの望み】があるということ。
ああ、そうか。
Aさんは、生きたかったんだ。
それが、分かりました。
それを命で教えてくれたんだと思えました。
どんなことを感じてもいいし、
思ってもいいし、言ってもいい。
自分の気持ちをないものにしなくていい。
ってことだよね、Aさん。
どんな思いも、
必ず自分自身のひとすじの望みにつながる。
Aさんからの学びは、
人生にしっかり活かしていかないと。
悩んでも、苦しくても、悲しくても。
その自分は、何がしたい？
あなたの望みは、なんですか？
水谷里恵
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