前回書いた「痛いところに鍼をする治療」の次に多く見られるのが「冷えているところを暖める治療」です。
例えば足の冷え・腰の冷え・腹部の冷えなどに対し暖めるというものです。

この治療は気持ちが良い半面、標治法(対症療法)であり、根本的に治しているとは言えません。
また、虚血部位には適応ですが、炎症部位には不適応です。

したがって痛いところに鍼をしたり、冷えているところを暖めても改善しにくい疾患を治すことが出来れば差別化できます。
具体的には関節リウマチ、腱鞘炎、ヘバーデン結節、外反母趾などが挙げられます。

私が免許を取って間もないころ、自由に鍼灸治療が出来るクリニックに勤めていました。
特に誰からも治療を教わっていなかったので結局痛いところに鍼をするという事が中心になっていました。
特に指導・研修を受けていないと「痛いところに鍼をする治療」になりがちです。
したがって「痛いところに鍼をする治療」では治せない疾患を自分の得意の治療にする事で他院との差別化をはかることが出来ます。

整形外科疾患は一般的に「痛いところに鍼をする治療」で改善し易いものも結構あります。
しかし、手の疾患や足の疾患は「痛いところに鍼をする治療」だけでは改善しないことが多く、もう一歩踏み込んだ治療が必要です。
前回のブログでお伝えしたように手の疾患では首の調整、足の疾患では足のアライメントの調整を行うことで効果的な治療を行うことが出来ます。
 

前回のブログで足のトラブルはアライメント調整が重要だという内容を書きました。
一方、手に関しては首の調整が重要になってきます。
手指の動きが悪い・腱鞘炎・バネ指がある場合は頸神経ブロック点や頸筋への刺鍼を行います。
斜角筋・小胸筋の緊張由来の絞扼性神経障害(胸郭出口症候群)として治療をすると効果的なことが多いです。

手は痛みが改善するだけでは満足していただけない部位です。
細かい作業(書字・裁縫・手芸など)を行うために、よりハイレベルな状態へ持っていく必要があります。
そのためには手指の可動性を見ていく必要があります。
 

最近つくづく感じることは、「足は奥が深い」ということです。
そのまま痛みがある部位に施術しても効果が出ないことが多いです。
その理由として、足のアライメント不整を治す治療をしないと効果が出にくいという事が挙げられます。
また、足のアライメント不整が股関節痛の原因となっている場合もあります。

足のアライメント不整で重要な3つのポイントを挙げます。
1つ目は内反足です。
内返しの捻挫をした後に内反足になる方は結構いらっしゃいます。
内反足になっていると、また捻挫を起こしやすくなります。
また内反足は股関節痛の原因にもなります。

2つ目は足関節が硬いことです。
背屈時の可動域制限があります。
足底腱膜炎・股関節痛の原因となっています。

3つ目は扁平足です。
扁平足では歩行の接地時に衝撃を和らげる機能が低下しています。
外反母趾・足底腱膜炎の原因となっています。

したがって捻挫をし易い方に対しては内反足の治療を、外反母趾の方に対しては扁平足の治療を、股関節痛の方に対しては内反足と足関節の治療を、足底腱膜炎の方に対しては足関節の治療を行う必要があります。

プライマリーケア医の間でめまいは鑑別診断が難しい疾患の1つとなっているようです。
耳鼻科なのか、脳神経内科なのか、循環器内科なのか、整形外科なのかを鑑別する必要があります。

東洋医学的にも様々な証<痰飲・血虚の他、心・肝・腎いずれかの病証>でめまいが起こることが考えられます。

したがって鍼灸治療を行う際には東洋医学的診断以外に現代医学的病態把握も併せた方が良いと思っております。

めまいの中で特に鍼灸治療の適応症と言っていいのが「頚性めまい」です。
これは頸部の筋肉の過緊張によってめまいが生じるもので、整形外科では治療手段がほとんどありません。

もうひとつめまいで特筆すべきことは東洋医学の痰飲の概念と現代医学のリンパ水腫の概念が類似していることです。

この様なことを踏まえながらめまいの鍼灸治療を行っていくと良いのではないかと思っております。

2回前のメールマガジンで五十肩の治療が難しい理由として3つの原因を挙げました。
1)治療のタイミングが難しい。
2)運動鍼のタイミングが難しい。
3)寒熱夾雑があることが難しい。

今回は寒熱夾雑について説明します。
五十肩では虚血と炎症が同時に起こっており、治療が難しい状況となっています。
一般的には虚血には暖める治療を、炎症には冷やす治療を行います。
この矛盾した状態をどのように対処していくのかが課題となります。

肩をやみくもに暖め過ぎたり、冷やし過ぎたりせずに、肩の局所取穴は必要最小限にし、遠隔取穴で寒熱を調整していきます。
熱に対しては鍼を、寒に対しては灸を用います。

特に炎症部位の局所治療は症状が増悪することがありますので要注意です。
 

前回のメールマガジンで五十肩の治療が難しい理由として3つの原因を挙げました。
1)治療のタイミングが難しい。
2)運動鍼のタイミングが難しい。
3)寒熱夾雑があることが難しい。

前回は1)の治療のタイミングについて説明しました。
今回は運動鍼のタイミングについて説明します。
運動鍼とは置鍼した状態で肩を動かす治療法の事です。
主に可動域制限に用いています。
運動鍼は直後効果が出る画期的な治療法である反面、炎症がある時期に行うと、悪化することもあります。
運動鍼を行うタイミングを適切にすることはとても重要です。

運動鍼を行うには、自発痛・夜間痛がないことが第1条件です。
動作時痛では、可動域制限があるところまで行く前に、少しでも動かすと痛む場合も要注意です。
可動域制限があるところまで行って痛みが軽ければ一般的には大丈夫です。

まだ動かす時期が来ていないのに、患者さん自身が肩の体操を行っている場合もありますので注意が必要です。

肩の治療では痛みを緩和する治療をする時期と可動域を改善する治療をする時期を意識することが大切です。
 

なぜ五十肩の治療は難しいのでしょうか?
主に3つの原因があります。
1)治療のタイミングが難しい。
2)運動鍼のタイミングが難しい。
3)寒熱夾雑があることが難しい。

今回は1)の治療のタイミングについてお伝えします。
発症直後で炎症が強い時、自発痛・夜間痛が強い時には鍼灸で著しい効果を出すのは難しいです。
身体から出るエンドルフィン・副腎皮質ホルモンの量には限度があるからです。
したがってこのような時に鍼灸治療を引き受けると「鍼灸は五十肩に効かない」と言われてしまう可能性があるのでお気を付け下さい。

自発痛・夜間痛がない場合には鍼灸治療は効果が出しやすいです。

運動痛もなく、可動域制限が残っている場合が一番治療し易いです。

昨今高齢者の増加により認知症の増加が話題になっていますが、眼科疾患も老化と関連しているものが結構あります。

1つ目は白内障です。
軽症のものも含めると有病率は50代で37~54%、60代で66~83%、70代で84~97%、80代ではほぼ100%です。
眼科では白内障に対し手術を行っていますが、本来メガネが不要になるはずの多焦点レンズの機能はまだ十分ではないようです。
高いお金を払って手術をしたのに老眼鏡を併用しているという方が結構いらっしゃいます。

白内障に対する鍼灸治療としては、目のかすみに対して行います。
また、より進化した多焦点レンズが出るまで鍼灸治療を行いながら手術を待つという手もあると思います。

2つ目は緑内障です。
有病率は50代で3%、60代で6%、70代で10%、80代で10~16%です。
緑内障に対する鍼灸治療としては、眼圧の調整を行っていきます。

3つ目は老眼です。
老眼は病気という範疇に入っておりませんが、不便なので鍼灸治療の要望があります。
鍼灸治療を行うと、近くのものは見やすくなり、視野が明るくなります。

私自身自分で目の治療を行っていますが、鍼の明目作用は素晴らしく、視野が広がることを自覚しています。
今後高齢者が増える中で、ちょっとした目の不調や軽症の白内障・緑内障は鍼灸の適応症といえると思います。

患者さんは良く「疲れやすい、疲れが抜けない。」と訴えますが、この疲れはどこから来ているのでしょうか?

1つ目は「眼精疲労」です。
パソコン・スマホなどによる目の使い過ぎ、メガネやコンタクトレンズの度があっていない、目の病気(ドライアイ・白内障・緑内障など)が主な原因と考えられます。
痰飲・瘀血証が根底にある場合も少なくありません。

2つ目は「胃腸の疲れ」です。
病証としては脾虚証になっています。
食べ過ぎによるものが多く、食欲低下・倦怠感が主な症状です。
肥満傾向のある人に多く見られます。

3つ目は「元気不足」です。
病証としては腎虚証になっています。
過労・寝不足などが原因となっています。
高齢者・精神疾患では不眠症が多く、腎虚証になっている場合が少なくありません。

過労では酸化ストレスによる活性酸素の発生が疲労の原因と考えられています。
また副腎皮質ホルモンが多量に分泌され、免疫力が低下します。
したがって老化や病気の発生と密接にかかわると考えられます。