五十肩の治療で気をつけることは何でしょうか?
主に3つのポイントをお伝えします。

1つ目は五十肩では相反する症状がある事だと思います。
腱板や上腕二頭筋腱などの炎症―熱と肩の虚血―冷えです。
したがって暖めるだけの治療や冷やすだけの治療では効果が出ないか、出ても十分ではありません。

2つ目は肩を動かすタイミングです。
私は可動域改善に運動鍼を行っておりますが、いつから行うかのタイミングは非常に重要です。
自宅での体操も同様で、早すぎると症状悪化につながります。

3つ目は患者さんへの教育です。
患者さんの中には非常に熱心で、自分で肩を暖めていたり、五十肩の体操をしている場合もあります。
それが治療の妨げとなることもあるので注意をする必要があります。
 

肥満に対して耳鍼などを用いる方法はかなり定着していると思います。
しかし、耳鍼により満腹感が出現しているのに食べ過ぎてしまったり、食習慣の改善が不十分で十分なダイエット効果が得られないケースも多いようです。

肥満の中でも糖尿病・高血圧・冠動脈疾患・脳梗塞・脂質異常症・脂肪肝・睡眠時無呼吸症候群・関節症(股関節・膝関節)などを伴う場合には「肥満症」と診断され、治療の対象となります。

以前から現代医学では高度肥満(BMI 35以上)に対して胃切除術を行っていますが、最近の方法では腹腔鏡を用いて胃を切除する方法を取っています。
この方法は10%以上の減量が期待できる反面、胃食道逆流症や出血などの副作用が起こる可能性があるとのことです。
糖尿病・高血圧・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群の方は健康保険適応になるとのことです。

最近新しい薬が2種類承認されました。
1つはオルリスタットという薬で、脂肪を分解するリパーゼの働きを抑えるため脂質が吸収されないというものです。
副作用は便が脂っぽくなることです。
薬局で購入可能です。
発売は現段階では未定です。

もう1つはセマグルチドという薬ですが、病院で週に1回注射をする必要があります。
脳の食欲中枢に働きかけたり、胃の働きを抑える作用があるということです。
日本で行われた臨床試験で10%以上の減量効果があったと報告されています。
副作用は嘔気、嘔吐、便秘、下痢などです。
この薬は今後発売される見込みとのことです。

関節症(股関節・膝関節)の鍼灸治療は肥満があると治りにくく、更に筋力が弱いタイプではなおさらです。
肥満を積極的に改善して鍼灸治療の効果を高めるという方法論が可能にできるのではないかと期待しています。
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五十肩は結果が出る患者さんと出にくい患者さんに大きく分かれてしまう疾患です。
結果とは痛み・可動域の改善の事です。
結果が出易いか出にくいかの推定に病態把握は重要です。

五十肩とは通称で、腱板炎・上腕二頭筋長頭腱炎などを含む疾患を指します。
したがって腱板炎なのか、上腕二頭筋長頭腱炎なのか、両方合併しているのか、更に周囲の組織まで炎症が波及しているのか鑑別する必要があります。
またフローズンタイプ(固まっている)なのか、フリージングタイプ(可動域制限があるが他動的に動く)なのかの鑑別も必要です。

炎症の程度が少なく、フリージングタイプは結果が出易いといえます。

病態と来院のタイミングにより、同じ鍼灸治療をしても、劇的に効果が出たり、全く効果が出ない「五十肩」はなかなか奥の深い疾患といえます。

 

なで肩の方に多く見られるという「胸郭出口症候群」は結果を出しやすい疾患といえます。
胸郭出口症候群は良く遭遇する疾患で、斜角筋・小胸筋に強い緊張が見られます。
上肢のしびれ・脱力の症状で来院する場合もあります。

胸郭出口症候群の鍼灸治療において注意することとしては斜角筋・小胸筋の深刺を避けることです。
気胸の危険性があります。
遠隔取穴・局所の施灸・浅刺で対応する必要があります。

また、胸郭出口症候群に神経根症が合併している場合もあります。
頚部理学テストを行い、神経根症を除外する必要があります。

最近つくづく思うことは、鍼灸治療で結果を出しやすい疾患・症状と出しにくい疾患・症状があることです。
一般に言われる鍼灸の適応症の中にも結果が出しやすいものもあれば、出しにくいものも含まれています。
結果を出しやすい疾患・症状を得意治療に選ぶことで患者満足度は上がり、鍼灸師の自信にもつながります。
結果が出しやすい症状といえば「寝違え」です。
寝違えはやり方を間違えなければ痛み・可動域制限が劇的に改善します。
しかし、やり方を間違えると増悪する可能性があります。

失敗し易いやり方としては、痛みのある部位に単刺や置鍼・施灸をする方法です。
もっと痛みが強くなったり、可動域制限が増悪する可能性があります。

私のやり方は遠隔取穴で治療を行っています。
ほとんどの方が治療直後に痛み・可動域が改善します。
また、この方法では痛みや可動域制限が増悪することはありません。
この方法をセミナーで指導していますが、受講生の方はほぼ100%近くマスターしていらっしゃいます。

もう1つ寝違えで注意することがあります。
良く何度も寝違えを起こす患者さんがいらっしゃいます。
その場合単なる寝違えなのかどうか検討する必要があると思います。

特に急性期の痛みが緩和しても首の可動域が制限されていたり、上肢に痛みやしびれがある場合は頚椎症や頸椎椎間板ヘルニアの可能性があり、整形外科で検査を受けた方が良いかと思います。

頚椎症や頸椎椎間板ヘルニアでは寝違えと全く別の治療―頸椎のアライメントを調整する治療―を行っております。

 

薬物治療の副作用として胃の不調や肝機能障害は良く遭遇するものです。
更に最近気になる副作用として抗コリン作用のある薬による認知機能低下があります。
抗コリン作用とはアセチルコリンの働きを抑える作用です。
抗コリン作用にある薬の中に、睡眠薬・抗不安薬が含まれています。

2015年1月JAMA Intern Med誌にウェブ掲載されたアメリカの論文を紹介します。
65才以上の認知症のない高齢者3434名を登録し、平均7.3年の経過観察を行ったとのことです。
その間に23.2%(797名)が認知症を発症し、その中で637名はアルツハイマー病(疑いを含む)と判断されました。
抗コリン作用のある薬を3年以上毎日常用量服用していた人は認知症全体の発症リスクが1.54倍、アルツハイマー病の発症リスクが1.63倍有意に増加していたとのことです。

したがって鍼灸により睡眠薬・抗不安薬を中止することが出来るのであれば非常に価値が高いものになります。

今までの私の経験では睡眠薬を使っていない人で、軽い不眠―少々寝つきが悪い、中途覚醒するなどでは改善し易いです。
 

患者さんの鍼灸に通う態度は様々ですが、大きく二つに分けることが出来ます。
積極的に通いたい人と出来るだけ通いたくない人です。
積極的に通いたい人に理由を聞くと、症状が楽になること以外に「治療後ぐっすり眠れるから。」という答えを良く耳にします。 

不眠症で悩んでいる患者さんはかなり多いです。
明らかな不眠症ではなくても、何となく寝つきが悪いとか、中途覚醒する人も結構いらっしゃいます。

睡眠不足で悪化する疾患としてうつ病・神経症性障害・頭痛・耳鳴などが挙げられます。
したがって鍼灸により睡眠が改善することは患者満足度を高め、上記疾患の悪化を防ぐ効果も期待できます。

また、睡眠薬・睡眠導入剤の副作用でふらつきや認知機能の低下を訴えている患者さんも少なくありません。
鍼灸で不眠を改善し、薬を減らすことが出来れば、価値が高いと考えられます。

高齢者の死に関連する疾患として誤嚥性肺炎が挙げられます。
誤嚥性肺炎は食べ物が気道に入る事や睡眠中に唾液が気道に入って起こるとされています。
誤嚥性肺炎になり易い状態として口腔内の細菌の繁殖・口腔機能の低下(舌の筋力低下など)などが挙げられます。
また不良姿勢も関連している場合があります。

口腔機能の低下はオーラルフレイルと呼ばれています。
オーラルフレイルでは嚥下障害のため低栄養になり易く、それがフレイルを更に増悪させるという悪循環になりがちです。
オーラルフレイルに対して、口腔機能と不良姿勢の改善が重要と考えています。

今人生100年時代を迎えようとしています。
しかし、問題点も多く抱えています。
健康寿命を低下させる大きな要因として、寝たきりの原因疾患と認知症があります。
寝たきりの原因疾患は第1位脳卒中、第2位認知症、第3位老衰、第4位骨折・転倒、第5位関節疾患となっています。

最近は要介護の前段階であるフレイルという状態に注目されています。
フレイルの症状として、体重減少・疲労感・筋力低下・歩行速度低下などがあります。
また、フレイルは筋力低下が主体のサルコペニアと密接な関係があります。
更に老化や低栄養との関連も指摘されています。

フレイルの状態は正常と要介護の状態の中間に位置します。
フレイルから要介護・寝たきりになる場合もあれば、正常な状態に戻る場合もあります。
寝たきりの前段階であるフレイルの治療は今後益々重要になって来ると考えられます。

 

症状の多い患者さんをどう対処したら良いでしょうか?
2022年9月17日のメールマガジンで取り上げた時には1つの経穴で多くの効果をもたらすように治療するとお伝えしました。
今回は別の方法をお伝えします。

例えば、めまい・頭痛・気分が落ち込む・手がしびれるといった症状はすべて首のコリを改善することで軽減する可能性があります。
めまいは頚性めまい、頭痛は緊張型、手のしびれは胸郭出口症候群の場合効果が出ると思います。
この様に1つの身体症状が多くの症状の原因となっている状況を見つけることは重要です。
自律神経失調症は症状が多い疾患の一つですが。このような対処法で軽減する場合もあります。